2008年08月07日

とにかくFWは要求を突きつけろ!

 色々な切り口がある試合だとは思う。

 確かに森重と本田圭のシュートミスは酷いものだったが、入らない時はああ言うものだ(もっとも、我が代表では、「ああ言うものだ」が他国に比べて多いような気もするが)。そうはわかっているのだが、愚痴を言いたくなる。森重だが、あれは完全な練習したトリックプレイのはずなので、どうしてあのように慌てたキックをしてしまったのか。また、本田圭は自分でオフサイドだと思って(懸念して)ヘディングに入ってしまったのだろうか。
 後半の立ち上がりは注意すべき時間帯なのだが、単純に縦を抜かれた長友も、カバーに入らなかった本田圭も水本も残念だったが、そのような危機感覚を持てと言うのは、少々厳し過ぎる要求なのだろうか(とは言え、3人ともA代表経験があるのだから、何とかして欲しかったが)。そしてブラインドだったのだろうが、西川には何とか止めて欲しかったところだ。あの場面を除けば、4DFが崩される時間帯はほとんどなかったのだが。
 主審の判定だが、これはもう基準の違いだろう。ただし、転倒させられてすぐに主審の顔を見ると、ダイビングだと判定するのは明らかだったのだから、谷口も豊田も倒された後とにかく敵陣に向かってもがき前進すればよかったのではないか(長友が日本のペナルティエリア内で敵を倒したかのように見えた場面や、本田拓が警告を食らった場面も同様)。
 上記のヘディングだけではなかった。本田圭が、あそこまで右足を全く使えないのには失望した。しかし、だったら名波のようにラボーナを使えるようにするとか、俊輔のように少ないポイントでは右も使えるようにするとか、何か対応を考えて欲しい(って、五輪終了までは無理かな)。グラウンドとの相性もあるのだろうか、敵陣に近づくほど、プレイが雑になっていくように見えるのはどうした事か。梅崎も柏木もいないのだ。代わりはいないのだから、もっと自覚を(って随分長く言い続けているな)。
 いくら負けてはいけない試合だからと言って、梶山と本田拓がほとんど前進しないのも残念だった。特に前半は無理をしないと言う判断なり指示だったのかもしれないから、敵陣前まで進出しろとは言わない(でも、「行ける」と思ったら行って欲しかったが)。しかし、パスをさばいた後、ちょっとでいいから前進して香川や本田圭のパスコースを増やしてもバチは当たらないと思うのだが。アルゼンチン戦の梶山はとてもよかったのだが...この日の出来ならば、細貝を使うか、吉田を入れて森重を上げるか、谷口を下げて忠成をアタマから使うか、と言う事になってしまう。奮起して欲しい。

 ただ最大の問題は、チーム全体として「どうやって点を取るか」が曖昧な事だろう。
 前半確かに押し込んではいたが、掴んだ決定機は案外と少なかった。内田の攻撃参加は非常に効果的だったが、パスワークで崩したのは香川のカーブがかかったパスで抜け出し、谷口が触る直前に敵DFが奇跡的なクリアに成功した場面くらいか。セットプレイにしても、上記のトリックプレイは鮮やかだったが、以降はあまり有効ではなかった。
 本田圭のサポートを受けた香川の仕掛けから、内田なり長友が突破を狙うまではよく出来上がっている。しかし、そこからがサッカーなのだ。それなのに、そこからは何か、内田と長友に全てを任してしまっていているように見える。
 これは上記した梶山と本田拓の消極性のためもあるが、FWの個性がチームに浸透していないからに思えた。この日4人のFWが使われたが、皆よく頑張っていたと思う。しかし、終盤豊田が見事な高さを披露し後方からのロングボールを巧く流して好機を演出した以外は、いずれのFWも「『どこでどうやって俺を活かせ』と周囲の選手に理解してもらっていない」ように見えたのだ。
 豪州戦の終盤の決勝点は、谷口が意図的に低いボールを入れて岡崎のダイビングヘッドを呼び込んだ。そのような意思疎通が、この試合では全く見受けられなかったと言っては言い過ぎだろうか。
 中2日のとても短い期間だが、4人は「俺はこうやって点を取りたいから、ここに寄こせ」と残り14人に主張しまくって欲しい。

 幸い終盤に、忠成、岡崎、豊田の3人が並び、3人共よく走り、敵陣を目指した。その強引さと、香川や本田圭や内田の妙技のバランスは決して悪くなかった。そして、あの蒸し暑く苦しい時間帯も、3人に引っ張られて皆があきらめずに最後まで戦った。だから、もっと要求するのだ。

 苦しい状況なのは確かだ。しかし、我々は何も失ってはいない。とにかく...と、どこかで聞いた事のあるフレーズを思い出すのだが、2年前とは少々状況が異なる。それは明日に。
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2008年08月06日

北京五輪開幕

 「痛恨の勝ち点2損失」ではあるが、「あれだけの不運が重なっての2点差をよく追いついた」と前向きに捉えるべきだろう。1次リーグはまだ1試合しか終わっていないのだから。
 ニュージーランドは、ボール扱いはあまり巧くないが、身体の使い方は悪くない。上背と言うより体重がある選手も多いので、日本がファーストタッチに手間取ると、ルーズボールで劣勢となり、キープしづらい時間帯が継続する事もあった(たとえば1点差に追いついてからは、さすがに日本選手にも疲労の色が濃く、中盤でボールを奪われる事が多く、攻めあぐんだ)。また「一番勝ち点の取りやすい」日本戦と言う事か、おそらくこの試合に合わせて準備をしてきたのだろう、精神的にも非常に充実していて、勝負どころでの集中力は中々だった。この日のニュージーランドのプレイ振りは、戦闘能力がより高いチームと対戦する高校や中学のチームにとって、非常に参考になると思う。
 とは言え、ボール扱いや俊敏性には格段の差があり、日本は幾多の決定機、好機を掴んだのだが、敵GKの大当たりに苦戦しているうちに、逆襲と謎の判定で2点差とされてしまっては苦しい。
 1失点目は、攻勢に立ちやや前掛りになった日本守備網に対し、やや幸運に右オープンで前を向いてボールを受ける事ができたFWが、勝負どころと見極めたのだろうか、見事な縦突破に成功したのは敵ながらあっぱれ。ただ、近賀の対応は痛恨だったのは言うまでもない。前半立ち上がりに押し込まれたのを、落ち着いてボールを回し攻め返し、完全に攻勢に立っていた時間帯。オープンで前を向かれた事も、近賀が対応を誤った事も、攻め込んでいる時間帯での「一瞬の抜け」と言うやつか。
 そして、2失点目の主審の謎の判定だが、伏線はあった。ちなみに警告を食らった岩清水は、映像を見る限り全くプレイに関与していなかったように思うので、ダメモトで日本協会は抗議すべきだろう。この判定がくつがえる事はなかろうが、この試合以降審判団が日本に対する対応が変わるはずだ(もっとも、ニュージーランドも日本のPKに対して抗議するかもしれないな、あれはあれで映像は明確だから「誤審」と言いやすい)。話を戻そう。PK提供直前のCKの場面、この日最初のCK守備と言う事もあり、日本は自陣前で相当厳しいマークを試みようとしてもみ合いとなり阪口が警告された。あのもみ合いで、主審は日本の守備陣に対して苛立ちを感じ、それがバイアスとなったように見えた。厳しい守備で敵を苛立たせるのは常道だが、それで主審が苛立ってしまうのだから、国際試合は難しい。
 とは言え、その後も慌てる事なくヒタヒタと攻め込み最低限の結果を残したのだから、まあよしとしなければならないのだろう(ただ同点での澤の喜びようは残念。気持ちは痛いほどわかるが、あそこはすぐに「もう1点」モードに切り替えて欲しかった)。リーグ戦では何より負けない事が重要なのだから、切り替えるのが得策。1次リーグの残り2試合は、より戦闘能力の高いチームだろうが、今日の攻撃ができれば、それなりの好機を掴む事ができるだろう。守備も、中盤でプレスさえかかれば、最終ラインは出足と読みのよさで、大柄な敵に十二分に対応できていたし。
 ポイントはセンタリングではないか。日本の選手はどうしても筋力が弱いためか、縦の変化で敵を抜いた(あるいは外した)直後に、進行方向直角にクロスを上げるのが難しいようで、精度にも強さにも課題が残る。ロスタイムに丸山が右サイドを切り裂きながらセンタリングを上げ損ねた場面はその典型。筋力や技術は一朝一夕では向上しないが、「突破後にもう一仕事」と言う意識で臨む事で改善は可能だと思う。

 さて、男は合衆国戦。今さらどうこう言っても仕方がない、よい試合と結果を期待したい。
 少々気になるのは、オランダやナイジェリアに比較して組みしやすい、勝ち点3は必須と言う評価、報道だ。もちろん、勝ち点3を狙って勝負ところで仕掛けるのは当然だが、4チームのリーグ戦において「負け」と言う結果は(敵に勝ち点3を提供すると言う意味でも)最悪なのだ。
 反町氏はリアリスト(のはず)だから、そのあたりをわかった采配を振るってくれると思うのだが、選手各位にも冷静で熱い戦いを期待したい。
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2008年07月31日

攻撃連携がどこまで完成するか

 あの豪雨だし、「82分でおしまい」と言う判断に不満はない。あの時間帯は、閃光と轟音の時間差はかなり小さくなっていたし、何より真上から雷鳴が轟き始めていたし、結構危ない雰囲気が漂っていた。また、そこまでの双方の攻防も存分に満足できる価値があり、82分間経過時点で4000円の投資に対しては、既に十分なリターンも得ていた(事情があって、珍しく指定席だったのです)。しかし、先制後しっかりと試合をクローズしに来ているアルゼンチンに対し、香川がどこまで抵抗できるのかは見たかったと言う残念な思いも強い。昨日も述べたが、この日ほど彼我の差を少なく感じたアルゼンチン戦はかつてなかった(唯一の例外は98年に俊輔のループで勝った試合だが、あれは先方は必ずしもベストとは言えない編成だった)。それだけに、クローズ体制に入ったアルゼンチンでも、それなりに慌てさせられないかと、淡い期待を抱いていたのだ。あの10年前のトゥルーズ(ああ、あれから10年経ったのか)でさえ、最後の15分間は井原が最後の力を振り絞ってラインを上げ、中田を軸に攻勢をかけ、決定機とは言わずとも好機を複数回掴んだのだから。さすがに水本や森重では当時の井原とは比較にすらならないが、香川を当時の中田と比べるのは構わないだろう。
 まあ、いいや。「サッカーの神の『北京本大会での再対決にとっておくべし』との思し召し」と考えよう。

 守備について。
 まず遅攻への対応。マスケラーノとガゴにあれだけ高速に展開されれば、どんなチームだって押し込まれる事は覚悟しなければならない。さらにトップの動きも狡猾ゆえ、どうしてもその間隙に入り込むリケルメが前を向いてプレイ可能になってしまう。それでも本田拓(不用意なファウルをしたり軽率に当たる悪癖は随分と減ってきた)は、よくコースを限定。過去再三突然消える事で他選手に多大な負担をかけていた梶山も中盤でそれなりにはアルゼンチンの攻撃を「切る」事に成功していた。豪州戦で課題だった組織的中盤守備はまた改善されたと言ってよいだろう。
 ただし、内田は幾度も内側に絞り過ぎ、ディマリアを外側でフリーにしてしまった。もうちょっと外側で粘って欲しいところ。これは内田の悪癖で、たとえば2月の東アジア選手権の韓国戦でもこれで先制を許している。攻撃がよかっただけに、守備にもう一工夫欲しい。
 逆サイドの安田は、アグエロの圧力によく耐えた。ただ、そこでアグエロが突破を断念し、後方にサポートするガゴに下げると、昨日嘆いたようにここでのトラップが超正確で、本田拓が止めに行く間もなく展開されてしまう。これはもうどうしようもない。
 ただし、西川を含めた真ん中の3人は、そこから見事な反発力で、執拗な攻撃を凌ぎ切った。
 残りの準備期間で中盤守備の組織化はより推進されるだろうから、「守りを固める」モードに入れば、そう容易には失点しない守備網が構築できそうだ。

 速攻への対応もよかった。アルゼンチンの高速ドリブルに対し、どの選手も的確なディレイをして、破綻を防いでいた。中でも森重の落ち着いた対応は素晴らしかった。吉田と合わせ、これだけの守備タレントをベンチに置くのはもったいないから、森重を中盤に上げて使ったらどうかと真剣に思ったのだが。水本はすっかり一時期の不振を脱し主将なので固定されると仮定しての事だが。
 失点は完全に個による力負け。アグエロのターン(ちょっとハンドっぽかったが)だが、あれは読んでくれよ、水本。ディマリアの抜け出しに敢え無く抜かれた安田も、もう少し身体を張って欲しかった。安田が本当の意味で大成するためには、縦への技術と共に相当な「ファイト」を前面に出す選手になる必要があるはず。あそこは、全身を横に倒して、顔面を使ってでも止めてくれ。たとえば、韓国の金致佑ならきっと止めたぜ。
 そのちょっと前、香川が巧いドリブルで(たぶん)マスケラーノを外し、そのボールを奪い取るようにして打った本田圭のミドルシュートがバーを叩いた。何となく、この場面以降日本選手に「行けるのではないか」と欲が出て、梶山より前の選手が皆妙に前掛りになったように見えた。そうしたら、ドンと逆襲速攻で崩されちゃった訳なのだが、あそこで我慢するのは若い選手には難しいのか。いや、この場面の経験で、2度とヘマはしないと前向きに考えよう。
 全くの戯言だが、失点場面直前に内田の攻撃参加を、かなり激しいタックルで止めたのはディマリアだった(と思う、このあたり、雨でだいぶ遠目が苦しくなっていた)。2枚目の黄色が出てもいいくらいの厳しいタックルだった。これが勝負のアヤと言うものだろうな。

 攻撃について。
 守備でもよく闘った梶山が、攻撃でも妙な欲を出さずにしかも消える事なく、香川と本田圭を前に向かせる事に専念し、いい起点となっていた。梶山については別に講釈を垂れたいと思う。
 そして、香川が前を向いてボールを持てれば、相当の頻度で攻め込む事に成功した。中でも内田の突破は前に出るタイミングが絶妙でアルゼンチンの左サイドのモンソンとディマリアを悩ませた。そして、セットプレイになると本田圭のクセ球が活きる。ちょっとの幸運があれば、日本が先に点を取ってもおかしくない、とまで言うと言い過ぎだな、日本が先に点を取る可能性もある展開となった。
 ただし、ペナルティエリアの中に入ると、いささか厳しい。強力センタバックに対し、技術でもスピードでも崩し切れなかった。考えてみれば、内田も突破までは進めたが、決定的なクロスを上げた訳ではなかった。日本の決定機はいずれも本田圭のキック絡み。
 とにかく残りの日々で、連携と共通認識を高め、各自の判断力に期待する事につきるだろう。たとえば、左サイドで香川との連携でうまくフリーになった安田がカーブをかけたセンタリングを上げたが、敵陣前には豊田しかいない場面があった。受け手は「香川と安田を信じて上がらなければならない」と言う意味では連携の向上が必要だし、安田は「瞬時の判断にもっと磨きをかけて欲しい」と言う意味では判断力に課題が残る場面だった。

 ここまでの経緯は別として、4年前に比べれば、監督が大会までにチームを完成させようとしているだけ、期待が持てそうに思えてきた。
 
余談その1
(モンソン)
 左バックをやっていたモンソンは90年ワールドカップで活躍し、決勝で退場になったDFモンソンに雰囲気が似ていたと思うのですが、親子なのでしょうか。全く無関係なのでしょうか。誰か知っている人がいたら教えてください。

余談その2
(猛暑期の雨対応について)
 暑い盛りの試合ゆえ、上下の雨合羽を持参しなかった(あんなのを身につけたら脱水症状を起こしてしまう季節だ)。そのため傘とビニールの膝掛けと言う軽対応しかなかったため、特に下半身がそこそこ濡れてしまった。本業帰りの観戦だったため、靴やズボンへのダメージは避けたいところだったのだが(大きなビニール袋を2セット持っていたので、PCや書類を入れた本皮の鞄の完全保護には成功)。今後日本の亜熱帯化が進むと思われるが(これとシーズン制の議論は別ね(笑))、猛暑期の下半身対応(こう書くと何か危ない)に課題が残った一戦だった。
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2008年07月29日

追いついたから改めて理解した遥かなる差

 詳細は明日以降。
 アルゼンチンとは、A代表戦を中心に、幾度も手合わせしている。幾度もキリンカップでも来てくれているし。
 そして、この日の五輪代表同士の試合ほど、彼我の戦闘能力差が縮まったと思えた試合はなかった。アルゼンチンの高速パス回しにじっくりと対応し、本田拓と梶山のところで一旦止める事にも成功。西川、水本、森重は堂々たる守備を披露。香川を起点に内田と安田が押し上げ、豊田が粘る攻撃は散発ながら再三敵陣を脅かす。本田圭のキックと谷口の前進は複数回の決定機を演出した。
 もちろん、双方とも体力的にピークではない試合。しかし、ここまで闘えたからこそ、ここまで差が縮まったからこそ、ここまで追いついたからこそ、明らかな差が目についてしまった。

 それはトラップの精度。
 トップスピードで突破を狙った時を除くアルゼンチン選手のトラップは絶対(そう、今日私が見た限りでは100%)に浮かず、必ず身体が日本陣を向いた適切な方向になり、次のプレイを行える場所に行く。一方日本選手のトラップは、最もスキルがあるはずの香川でさえ、再三(3回に1回程度ではあるのだが)浮くなり、ずれてしまっていた。それにより、ほんの僅か、ゼロコンマ数秒展開が遅れる。その遅れが次の展開で決定的な差になる。この差をどうやって詰めていったよいのだろうか。

 豪雨でビショビショになりながら、追いついた喜びと、遥かなる差に対する絶望感(と追いすがるための希望)を感じた次第。
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2008年07月28日

アルゼンチン五輪代表戦前夜

 昨日の日程破綻に関するエントリに、早くも多数の反応をいただき多謝。中でも、秋春制の具体的日程案を提示いただいたNOさんには、改めて事実上秋春制が実施不可能である事を示していただき、感謝の言葉もない。ウィンタブレークの代わりにオフを短くして、かつ代表の活動期間とウィンタブレークを一致させなければ、日程消化すら困難な事をわかりやすく説明いただいた。提示いただいた案のように、新チームの選手契約の時間がほとんど取れないくらいのトリッキーな日程を作っても、ワールドカップ予選がある年への対応は困難な事、ACLに出場するクラブが地獄の日程をこなさなければならないのも、よく理解いただけるだろう。

 さて、明日は五輪代表のアルゼンチン戦。
 2年の月日をかけてじっくりと選手選考し、最後の2週間だけで連携を強化する独特の...(おっと、これは禁止したのだった)馬鹿を言っている場合ではないな。豪州戦では特に攻撃面で顕著な進歩が見られたが、今度は世界最強国にどこまで通用するか。今まで個の能力に頼ってきた(しかしアジアでは圧倒的な強さを見せていた)守備力が、いかに組織化されリケルメやアグエロに対抗できるのか。大変愉しみな試合だ。

 いくつか思い出話。

 まずは監督のセルヒオ・バチスタ氏。おお、あの史上最高のトヨタカップのアルヘンチノス・ジュニアーズの、あのバチスタではないか。
 あのアルヘンチノスの鋭い攻撃は、今なお、目を閉じれば思い出す事ができる。最前線の高速ギアチェンジが冴え渡る若きエース、クラウディオ・ボルギを軸に、次々と後方から選手が湧き出してくるアルゼンチン独特の攻撃の美しさ。そして、中盤後方でその攻撃を組織していたのが、バチスタだった。当時若手の有力代表候補だったバチスタは、その後もどんどんと昇進し、翌年のメキシコワールドカップでは、ディエゴの後方を支え世界チャンピオンに。90年イタリア大会でも、負傷者、出場停止者山積のチームで冷静な球さばきを見せ、決勝進出に貢献した。
 その後、バチスタはPJMフューチャーズで来日するなど、日本にも縁が深い。当時の自分くらいの年齢の若者達を率いて、ミシェル・プラティニ、故ガエタノ・シレア、アントニオ・カブリニらと、美しい攻め合いを演じた国立競技場に23年振りに立つ時、セルヒオ・バチスタは何を思うのだろうか。

 アルゼンチン五輪代表との手合わせは4回目。
 最初は東京五輪。私はまだ幼く全く記憶がない頃の話。川淵の決勝点で日本が逆転勝ち(日本はA代表、先方はユース代表クラスだったのだろうが、強い相手に勝ったのだから素晴らしい実績だ)。ちなみに引退後も川淵氏は外国人代表監督の招聘など、日本サッカー界に多くの貢献を行ったが、晩節を汚し、心あるサッカー人達から軽蔑されているのは皆さんご存知の通り。しかし、どんなに馬鹿にされても、このようなプレイでの記録だけは色褪せない。
 一方、一番最近は98年トルシェ氏就任直後の練習試合。A代表のエジプト戦に続いて、トルシェ氏は独特のフラット3を披露。稲本のクサビを福田が落とし、俊輔がこれ以上ないと言う芸術的なループで決勝点を決めた。ループの軌跡の美しさ、このような強豪を技巧で崩すことができる時代が到来した事、いずれも忘れ難い思い出だ。
 88年ソウル五輪。異様な守備戦術で出場権を逃した日本のA代表は、ソウル入りする前の強豪国の調整相手として格好で、アルゼンチンとソ連の五輪代表と国立で手合わせを行った。当時のA代表は、不可解な3−3−2と言うフォーメーションを操る監督が率いる暗黒時代。しかし、選手の能力はそれなりに高く、若き井原正巳を軸によく守り、A代表のレギュラを多数抱えるアルゼンチン五輪代表とよく戦い、終盤まで0−0で試合は進む。そして終了間際にGK松永のいかにも彼らしいファンブルで失点し敗北。強いチームにはどうにも勝ち切れない頃だった。

 ともあれ、過去も様々な因縁があるアルゼンチン五輪代表。好試合を期待したい。
 もっとも、私の願いは明日ではなく5回目の対決となる北京本大会。「44年目の返り討ち」に乗じて、大嫌いな川淵氏が偉そうに現役時代を振り返る映像を、待ち望むものである。
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2008年07月24日

上々の豪州戦

(失点場面のテレビ解説を揶揄しているのですが、どうやらその発言は小倉氏ではなくて、相馬氏だったようです。小倉さん、失礼な事言ってごめんなさい)

 よい試合だったと思う。
 このチームはこれまでも攻撃力、それも連携面が課題だったので、見事な2得点を含め攻撃は及第点だろう。香川が完全にチームを仕切り、本田圭が助演を務めるMF。さすがにA代表のレギュラは違うと思わせた内田と長友。そして、最後に得点を決めて突き放す事にも成功。一方で、これまでこのチームの長所だった守備には問題点が散見された。

 同点弾は美しかった。
 左サイド奥深くにオーバラップした長友が獲得したスローインからスタート。長友が顔を出した細貝(前半終了間際に負傷し、後半早々に退いたが、やはりこの選手が中盤に入ると守備が安定する)が一拍はさみ香川へ。香川は本田圭にはたきリターンをもらうと、視野の広さを活かして逆サイドの内田へ。その横パスを敵DFが引っ掛けるも内田が巧く拾い、内田は中央にグラウンダの斜めパス。飛び出してきた忠成がスルー、森本が(上から見て)時計回りに反転し、左足シュートを狙うかと思わせて、ボールを流すと、後方から長躯してきた香川が巧く抜け出してGKと1対1になり冷静に流し込んだ。
 これは実に重要な得点だ。このチームでは過去ほとんど見る事ができなかった遅攻からの相互連携を活かした美しい得点だったと言う意味でも、(このチームでほとんどプレイしていないにもかかわらず、このチームの攻撃の中核となる事を要求されている)香川が展開の起点となり最後も締めたと言う意味でも。
 約2年の月日の準備を重ねた上で、連携トレーニングが今回の合宿から始まったのではないかとの突っ込みは禁止します。

 決勝点は、香川が左タッチ際で敵に絡まれボールを奪われそうになった所に、岡崎、安田の2人が巧くプレスをかけてボールを奪取したところから始まった。ボールを受けた梶山が岡崎に当て、岡崎が谷口に落とし、谷口が左オープンに開いた安田を走らせ、安田がゴールライン近傍でDF2人を引き付けて、谷口に下げる。全くフリーの谷口がアーリークロスを上げ、岡崎がダイビングヘッド。豪州GKがボールを見送る仕草をしたため、テレビ桟敷からは「外れたのか」と瞬間残念に思ったが、何の事はない、敵GKの判断ミスで、歓喜の決勝点と相成った。もっとも、あのコースなので、GKが正しく反応しても取れなかっただろうが。
 高さのある豪州に対して、よい位置でボールを奪い、巧く外をえぐった上での後方からの速いクロスに「闘う」FWがアタマでねじ込むと言う理想的な決勝点だった。

 攻撃面で、速いパスと鋭い走りで豪州守備陣を切り裂いた事は高く評価されるだろう。ここまでやれるならば、オランダや合衆国の守備網をそれなりに悩ませる事ができるはずだ。
 何より一番驚いたのは、香川と本田圭の間によい意味での主従関係が出来上がっていた事。本田圭という選手はボールをさばく能力は疑いないが、自分の間合いでボールを持たないと仕掛けが始まらない。そして、その自分間合いに持ち込もうとしないあたりが不満だった。ところが、この日は香川に主役を譲り、使われる中で再三持ち味も出していた。同点劇の仕込みでの香川へのリターンや、後半香川の長いスルーパスから抜け出した場面などは秀逸だった(もっとも、左アウトのシュートを当て損ねて大減点だったが)。香川にマークが集中したら、この2人ならば役割を切り替える事も可能だろう。この2人にとって幸いなのは、北京に向けての一連の準備や本大会での厳しい試合は、お互い同士のみならず、気鋭のA代表サイドバック達と連携を高める絶好機である事。A代表のポジション争いのライバルである先輩達には、このような機会は南アフリカ本大会直前の集中合宿までは訪れない。北京で光り輝いて、山瀬と松井を追い抜く気概で努力して欲しい。
 先般酷評した岡崎と豊田の充実も嬉しかった。岡崎は得点場面の他でも期待通りタフなプレイを連続、守備であれだけ貢献して、なお見事な得点を決めた。豊田も後方からの長いボールをしっかりと保持し、後半の攻勢の起点となった。この調子で精進し、本大会での謝罪機会の提供を期待したい。

 一方で守備面は気になった。
 失点場面は、完全に吉田個人の問題。最初のボール提供も酷かったが、水本がうまくウェイティングしたにもかかわらず、そのカバーにのみ専心し後方の選手の進出を見損ねたのは論外。アタマのよさそうな選手なので、ミスが重なり失敗も具体化したこのような場面は、よい意味での「反省体験」としてくれると、前向きに捉えよう。余談ながら、この失点場面のTV解説の小倉氏(だよね、まさか相馬氏ではないよね)の発言は大問題。何と、「ウェイティングした水本が当たりに行かず、余裕でラストパスを出されのがいけない」と語っていた。昔から「TV解説者で生き残るためには、アナウンサが間が持てるように、とにかく喋る事」と言われているが、ここまで極端に間違った事を喋るとやばいんじゃないの。それとも、松本育夫氏の道を狙っているのか。
 失点場面より気になったのが、中盤の守備。もっと、敵の攻撃を中盤で止めたいところだ。特に後半の半ば以降、せっかく豪州の足が止まった時間帯に、こちらも中盤がスカスカ気味になってしまった。結果的に、試合終盤やや殴り合いに近い状況に陥った。それでも先方の疲弊度がより高く、かつ疲弊後の戦闘能力差が歴然としていたために、トドメを挿す事ができたに過ぎないのだ。
 同様に、敵が長いボールを入れてきてセンタバックがはね返したのを拾いそびれるのが目に付いた。終盤に、吉田が1度はね返したボールを拾われ、サイド左サイドからアーリークロスを上げられてクロスプレイになり、今度は吉田がかろうじてCKに逃げた場面はその典型。特に合衆国やナイジェリア戦の終盤は、このような交通事故の機会を最小にする工夫が必要だろう。
 中盤守備の甘さは、アジア予選でも再三問題になったが、最後のところで水本と青山直がハンマーのように敵の攻撃を止めていたので問題は顕在化しなかった。しかし、これからは相手の質が違う。しかも、両サイドバックの攻め上がりが攻撃の軸となるチームだけに、中盤の守備の一層の充実が必要だ。おそらく中盤後方は細貝が軸になるのだろうが、森重、本田拓、谷口とどのような併用を行い、消耗を防ぎつつ守備を固めるのだろうか。

 豪州、アルゼンチンを準備試合に招聘したのは大ヒットだろう。同等レベルの豪州戦(しかも初戦で闘う合衆国に比較的近いスタイル、もちろん合衆国のパス回しはより速く、一方で単純な強さは豪州の方が上だろうが)で見えた良さ、悪さが、最強国相手に再検定できる。
 アルゼンチン戦では、中盤で劣勢になるだろうが、どの程度の頻度でしっかりとした攻め込みができるか。その数少ない攻め込みから、攻め切る事ができるか。高速パスワークをどのくらい中盤で止める事ができるか。こぼれ球をどの程度拾う事ができるか。最前線勝負となった時に、当方のセンタバックは強力FWにどこまで抵抗できるか。

 少なくとも、五輪本大会前にベストメンバも固まりそうだし、4年前のアテネよりは状態よく大会を迎えられそうな気運になってきた。残り時間は短いが、反町監督得意の逆算に期待したい。
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2008年07月17日

続反町康治に改めて期待する

 私は、五輪代表監督に就任してからの反町氏のチーム作りには多々疑問を抱き、散々悪態をついてきたが、一方で相応に五輪本大会に期待していた。今回の五輪代表は最前線こそ人材に欠けるきらいはあるが、中盤より後ろの人材は強力な事。東アジア独特の多湿な気候でしかも比較的短期な大会なので、気候に慣れていて体調を整えやすい日本に有利な事(2002年大会でも列強の早期敗退の要因の1つに気候があった、もちろん独特の審判判定もあったけれど)。そして、アルビレックス時代の実績から考えても、反町氏は短期決戦に逆算的にチームを作るのは巧いのではないかとの期待もあった。
 実際、アンゴラ戦、トゥーロン大会、カメルーン戦と、日本の試合振りは悪くなかった。特にただでさえ強かった最終ラインに新たに吉田、森重が加わり、サイドバックの面々は次々にA代表で実績を挙げるなど、後方の選手の充実は中々だった。反町氏も以前のように、2軍3軍を構成して悦にいったり、強力なサイドプレイヤがいるのにその前にFWを3人並べたりする無意味な策を繰り返したり、攻撃が得意な選手を並べて守備的に戦い自ら事態を悪化させるような策を弄する事もなくなってきた。あれほど嫌っていた谷口(この年代の中盤選手では最高の実績を持つ選手と呼んでも過言ではなかろう)を起用するようになったのも納得できる采配だった。もっとも、森本のワントップには感心しなかったが。

 そう思っていた矢先の過日のオーバエージ選考の顛末には大いに失望させられた。オーバエージを使わないのが日本だけとの報道を耳にすると、いよいよ日本協会の不首尾にも、反町氏の無策にもいらだちを感じずにはいられない。繰り返すが、サッカーは経験豊富な選手がいた方がずっと強いチームを作れる競技なのだ。そして、そのような強いチームで上を目指すからこそ、若者達は一層成長する事ができる。そのための準備の拙さにも失望してきたが、諦めの良さには驚きを禁じ得ない。A代表選手を除いても、いくらでもこのチームを強くできそうな選手は多数いるのは再三繰り返した事。例えば、以前も少し触れたが、中田浩二をこのチームに加えると言う手段もあったと思う。
 そして、今回の最終メンバ選考。さらに考え込んでしまった。明らかに攻撃面では華やかさに欠けるメンバ編成。ではリアリズムに徹してとにかく全試合無失点を目指すのかと言うと、そうとも言えない。何とも中途半端なメンバ構成だと感じずにはいられないのだ。

 さすがに青山直晃の不選考には驚いた。このチームの予選突破時点での最大の武器は、西川(負傷離脱の際は山本がよく頑張った)、青山直、水本の強力な守備と、青山直の得点力だったのだが。
 最大6試合戦うレギュレーションの戦いにも関わらず僅か18人登録と言うのがそもそも非常識なのは確か。そして、不思議な事に世代別代表チームというのは、特定のポジションに人材が偏る事がある。今回はそれが最終ラインだった訳だ。枠の少なさから、スペシャリストよりもジェネラリストが優先され、細貝と森重が選ばれ、純粋なセンタバック3人を2人に減らすと言う事になったのだろう。「だったら、今期のJでの実績から、水本を落した方が妥当なのではないか」などの茶々を入れたくはなるけれど。
 もっとも、よい守備者がたくさんいるならば、そのようなタレントを生かし守備を固めるチームを作ると言う方策もありだと思う。たとえば、水本や森重をサイドに回し、A代表サイドバックトリオのいずれかをサイドMFに起用したり、吉田や細貝を中盤の底に並べ徹底して守る策だ。これは奇策と言ってもいいだろう。しかし、アジア予選と違い相当な強い相手に複数回勝とうと言うのだから、それなりの奇策も必要なはずだ。
 けれども、反町氏はそれを好まなかったと言う事だろう。攻守両面の潜在能力は非常に高いが、しばしば消えたり気を抜いたりする悪癖が抜け切れない梶山を選考したのも、「単純に守る気はない」と言う気持ちの現れだろう。

 一方で最前線のメンバを見ると、別な意味でわからなくなる。
 今回のチームは明らかにFWは人材不足気味だ。もっともこの世代がユース時代には、「平山と前田俊介がいたので、日本にはまれなストライカ(FWではなく、ストライカである事に注意)が揃った」とぬか喜びしていたのだが。現状でJでレギュラを獲得していて、このチームで実績があるのは、李忠成くらい。反町氏もここの選考に相当悩んだのだろう。そして、決定的なタレントが少ないためか、逆にFWに4枠使うと言う選択を行ったようだ。
 李忠成は当然の選考、森本は一皮さえむけてくれればボカスカ点を取る雰囲気を持っているのでこれまた当然か。しかし、豊田も岡崎もよい選手だとは思うがこの2人を揃えてメンバに残して、攻撃力が豊かな強力MFを落すとなると、どうにも納得できない。具体的に言えば、梅崎や柏木、あるいは思い切って金崎と言った、実績のある面々の方がよかったのではないかと思うのだ(試合勘の欠如からか切れ味を失った水野は仕方がないだろうが)。もちろん、本田圭と香川は悪くない。しかし、この2人だけで列強の守備ラインを幾試合も続けて破ることができるだろうか。
 もちろん、豊田も岡崎も敢闘精神あふれる戦えるFWだ。技巧派の起用を最小限にして、敢闘型の選手を多数選考するのも一手段だろう。けれども、そうするならば、青山直を残し、梶山を外すなど、「守る」と言う事に徹底したチームを作るべきだったのではないか。

 と、考えれば考えるほど、今回の選考は、どこかで中途半端なものを感じてしまうのだ。オーバエージの混乱と合わせ、反町氏は監督としての自分が最も輝いていたアルビレックス時代の再来を狙い、わざと中途半端で窮屈な選手選考を行ったのではないかとすら思ってしまう。
 しかし、決まった事だ。こうやって講釈を垂れるのはそれはそれで愉しいが、とにかく応援に専念しよう。

 ちょっと話題を変える。
 ここ最近のワールドカップや五輪を思い出してみよう。日本は世界中のいずれの国に対しても、それなりには戦えるのだ。ドイツでは、あれだけチーム全体のコンディションが悪く、監督の交代策が異様だったにも関わらず、豪州を終盤までリードし、クロアチアとは引き分けた。アテネでは、大会に入っても監督がテストを繰り返す信じ難い状況下で、(敗れはしたが)イタリア、パラグアイからたくさん点を取り、敗退決定後にも頑張ってガーナを倒したのだ。ただし、「それなりに戦う」と、「勝ち切る」一歩譲って「守り切る」との差は確かに大きいのだが。
 「マカイのいるオランダに勝てる訳がない」と言うのは、サッカーをしっかりと見ていない人のたわ言に過ぎない(もちろん私だって、簡単に勝てるとは全く思っていないし、負ける確率もそれなりのものだとは思っているよ)。先日、オランダ監督が「よいグループに入れた」と語ったインタビューが話題になったが、よく読むと彼が最も警戒しているのは「会場国に距離が近く気候が似ている」日本だった。
 さすがに、リケルメとメッシがいるアルゼンチン、カカーと(たぶん)ロナウジーニョがいるブラジルに勝つのは相当難しいだろう。けれども、今からコンディショニングを含めたよい準備をして、スカウティングを充実させ、敵の嫌がる事を徹底し、ほんのちょっとの幸運に恵まれれば、ほとんどの国とは相応に戦えるはずだ。安田の意気やよしである。

 五輪予選での主軸選手で、本大会メンバからギリギリで落ちたと言えば、遠藤と啓太が思い起こされる。ここは青山直には、この2人の先輩の後を継ぐ捲土重来を期待したい。いや、選考外になった全ての選手も。勝負はまだまだ先なのだ。
 また、梶山、岡崎、豊田らには大変失礼な表現をさせていただいた。今回の五輪最中に彼らに(そして彼らを選考した反町氏にも)謝罪する機会が来るのを、切に望んでいる。そして、全選手には誇りを持って準備に取り組み、戦い抜いて欲しい。4年前とは違い、活躍さえすればA代表はすぐそこだ。

 上記したが反町氏は、ここから先は、正にアルビレックス時代に得意とした世界に突入する。相対的には決して恵まれない戦闘能力のチームを率い、審判の癖や敵将の性癖を分析し、壁の順番や想定される敵の交代それぞれにまで事細かに指示を行い、自分のインタビューを選手が聞く事まで織り込んだ発言をして、多くのサポータに歓喜を提供し続けた(「した」ではない「し続けた」のだ)あのアルビレックス時代だ。
 よい成績を期待したい。
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2008年07月04日

五輪代表オーバエージ招集不発問題

 「だから言ったではないか」
と言うのが、今回の五輪代表オーバエージ騒動、特にヴィッセルの大久保派遣拒絶に関する私の意見である。
 以前より幾度も述べているが、日本のトップレベルのサッカー界は破綻する日程問題の最中にあり、五輪開催中もJリーグは開催される。また、ワールドカップ予選で代表選手は過酷な試合数をこなさなければならない。このような状況下で、いかに五輪代表がオーバエージを使うか。過日述べたが周到な計画性が不可避であり、具体的には早い段階でA代表選考からもれている優秀なオーバエージ選手の指名を行うべきだったのだ。
 いや、それでもA代表選手を使いたいと反町氏が考えるならば、もっと早い段階にどの選手を選考するか決定し、早い段階からクラブと折衝すべきだった。クラブ側も準備期間が長ければ対処のしようもあるし、交渉が決裂したら他の選手(クラブ)に打診する時間的余裕があったはず。
 それでも、通常のリーグ開催時の中心選手の長期離脱は、相当クラブからの反発を招いたはずだ。その反発を予想していない反町氏と協会首脳の能天気さは何なのだろうか。いや、アルビレックス時代の反町氏の(よく言えば)用意周到(悪く言えば)細か過ぎる準備を考えると、もっとうがった見方(もちろん邪推です)をする事も可能だな。反町氏に対して、協会首脳が「大丈夫、いざとなったらJチームに拒絶権はないから」と語っていたにも関わらず、直前で反町氏はハシゴを外されたのではないかと。

 遠藤の離脱については非常に不運としか言いようがないが、五輪云々以前に遠藤の体調が心配だ。一昨年も遠藤は病気で長期離脱を余儀なくされたが、ワールドカップ予選、アジアチャンピオンズリーグと重要な試合が控える状況を考えれば、そもそもオーバエージとして五輪に連れて行くことそのものに無理があったような気がする。まずは体調の回復を祈りたい。

 また、逆説的な言い方になるが、元々オーバエージを2人しか起用しないと言う判断も気になった(「西川離脱に備えて楢崎に期待した」と言う報道があったが、どうも論理的な整合がよくわからない、「もし西川が負傷した際はGKにオーバエージを起用し、別なオーバエージのフィールドプレイヤを外す」と言う理屈ならば理解できるのだが)。さらには、反町氏に問いたいのだが、大久保、遠藤が招集できなくなったのは仕方がないが、もうオーバエージの招集は諦めてしまっていいのだろうか。上記で述べたように、小笠原、明神、寿人あるいは中村直志あたりを呼ぶ手はあると思う。また、A代表のトライアルと言う視点から、最近好調の我那覇、飛び出せるMF小川あたりなど面白いのではないか。
 言うまでもなく、オーバエージを加えた方が格段に強いチームが作れるはずだ。サッカーと言う競技において経験が非常に重要。もちろん、23歳以下でもトップレベルの能力を持った選手は世界中に多数いる。北京大会に出場しそうな選手でもメッシなどはその代表格だ。日本においても、釜本邦茂、井原正巳、中田英寿らは、その年齢で既に日本代表において中心選手と言うよりは、傑出した存在になっていた。
 けれども、多くの選手は23歳以下では完成せず、そのあたりの年齢層のみのチームでは、駆け引きや安定度や精神的な粘りに課題が残る。そこに経験豊富な選手を3枚入れる事ができれば、チームのバランスは格段に向上し、戦闘能力は高まる。まともな監督が、まともなオーバエージ選手を3名選考すれば、格段にチームは強くなるのだ。この場合選考される選手は、必ずしも「スーパー」な選手である必要はなく(もちろん「スーパー」な選手ならば、なおさら有効だろうが)、若い選手にない精神的な落ち着き、老獪な読み、、チームのための献身性などの特長があれば、それだけで非常に有効な「補強」になるはずだ。そのような意味で「オーバエージ枠を五輪に設けた事」で、五輪サッカーの質は格段に上がった。
 よく「若い選手にベテランを急に入れるとチームのバランスが崩れる」などと言う向きがあるが、もしそうならばそれは監督が無能なだけである。しばしばアテネ五輪でオーバエージの加入がチームのバランスを崩したとの論評があるが、それは問題をすり変えている。4年前の山本氏は3月に予選に勝利した後も、時間が限られていると言う事を考えずに「競争」と言う名の下に多数の選手を選び続け、オーバエージ選考の選手を含めベストメンバを判断し切れなかっただけである。
 そのような観点から、私は反町氏が妙にオーバエージ選考に拘泥しない事が気になってしかたがないのだ。
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2008年04月21日

北京五輪組み合わせ発表

 北京五輪のグループリーグの組み合わせが決定した。
A組:アルゼンチン、象牙海岸、豪州、セルビア
B組:オランダ、ナイジェリア、日本、合衆国
C組:中国、ニュージーランド、ブラジル、ベルギー
D組:カメルーン、韓国、ホンジュラス、イタリア
 悪くない組み合わせではないか。と言うのは、組み合わせ決定のやり方は、
(A)シードは中国、オランダ、カメルーン、アルゼンチン
(B)地域ポッドは
    アジア:中国、豪州、韓国、日本
    欧州:オランダ、セルビア、ベルギー、イタリア
    アフリカ、オセアニア:カメルーン、象牙海岸、ナイジェリア、NZ
    アメリカ:アルゼンチン、ブラジル、ホンジュラス、合衆国
だった事を考えると、
1)アメリカポッドからアルゼンチン、ブラジルは回避できた
2)中国とは同じアジアなので同グループにはなれない。五輪への「本気度」を考慮すれば、残りのシード国のうち、カメルーン、アルゼンチンよりはオランダが低い事が期待できる。
3)アフリカ、オセアニアポッドのNZは中国と同じグループになる事は決まっていた(はずだ)。残りのアフリカ3国はどこが来ても同じくらいの強さだと推定される。
 豪州よりは楽な組だし、韓国とはどっこいと言うところではないか。贅沢を言えば、カメルーンのグループに入り、ベルギーと、ホンジュラス、合衆国のいずれかと、同じグループになれば、よりよかったように見えるが、ベルギーとオランダとどちらが強いかなど、想像もできない(ただし、今回のオランダは4年前のワールドユースで痛い目に会った世代同士の戦いではあるな)のだから、これ以上の組み合わせは期待できなかったと考える方が健全だろう(ベルギーが中国のグループに入る事も決まっていたと言う見方もあるが、そう考えると中国のグループにホンジュラスでなくブラジルが来たのは不思議だ)。

 五輪と言えば、4年前山本氏が、大会に入った以降もベストメンバを固められず惨敗した記憶が新しい。しかし、今回の五輪代表のチーム完成度は明らかに4年前以下だろう。少なくとも、山本氏は02年末のアジア大会時点で、チームの基盤を作るのに成功していた。そして、1年間「テストごっこ」を継続する事でチームをガタガタになってしまったが、04年早々に帰化した闘莉王、ユースから今野が加わりチームに軸線ができて、一気にチーム力が向上、苦戦もあったが実力を発揮し、最終予選を突破した。その後、またも「テストごっこ」が五輪本大会まで継続するのだが。とは言え、最終予選終了時点で、闘莉王、那須、今野、阿部、大久保、達也と言ったあたりはチームの中軸となる事が判明しており、そこに小野や曽ヶ端などのオーバエージを巧く組み合わせれば、それなりにチームをまとめる事は可能だったと思われるだけに残念だった。

 ところが、今回のチームは中軸そのものが揺らいでいる。西川、水本、青山直、本田圭、水野、それに柏木あたりが中軸として実績を上げている。ところが、彼らの多くに大きな変化が生じている。中でも、予選を通じて抜群の能力を見せ続けた水本の大不振と、抜群の突破力を誇った水野(守備面で大ポカもあったが)が強豪クラブに移籍した関係で試合出場機会が全くない事の2点は極めて深刻な事態と言えよう。もちろん、今のJリーグからは水本、水野の代わりが務まりそうな吉田、森重、河本(あれ、吉田の他は今回の合宿に呼ばれてないのか)、梅崎、香川、大竹のような好素材が次々に登場しているが、Jリーグが中断するまでは集めての強化の機会は、ほとんどないのがつらい。
 結局、勝負はJの中断期間でのチーム作りにかかるのだろう。考えてみれば、今回のチームは、必ずしも組織的とは言えないが、アジアの中での圧倒的な「個」の力で予選を勝ち抜いた。つまり、元々の基盤がないのだから、A代表の構想外になった優秀な選手をオーバエージとして選び、6月までのJで調子のよかった選手を並べ、集中的なトレーニングと強化試合でチームを作るやり方はそう無理ではないと思う。
 予選を通じて、反町氏は豊富な選手層から良好な選手を並べて連携を作る能力を示す事ができなかった。しかし、アルビレックス時代には、恵まれない戦力を最大限に引き出し、プロジェクト的に戦う能力は高かった。これって、現状の五輪代表にピッタリした能力なのではないか。それでいいのかと言う事はさておき。
posted by 武藤文雄 at 23:51| Comment(5) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月23日

反町康治に改めて期待する

 サウジ戦の開始早々のピンチ。軽率なファウルで与えてしまった(このファウルそのものも残念だったが)ゴール正面やや遠方でのFKが起点だった。敵のシュートが壁に当たり、そのまま日本がよい体勢で逆襲速攻できそうな状態になった。ところが、右サイドハーフウェイライン直前で、水野が強引に敵DFに1対1を仕掛けて完敗、ボールを奪取される。そして、そこから右サイドを完全に崩され、強シュートを西川が止めきれず、「ありがとう青山敏弘」に至った次第。
 水野と言う選手は、このチームの切り札的存在。攻撃においては圧倒的存在感でこのチームを引っ張ってきた。これは前身のユース代表時代からなのだが。一方で過去の試合も幾度となく低い位置で軽率なプレイを見せてチームの危機を誘引した。そして、この場面、またも同じミスをしてしまったと言う事だ。

 そもそも、反町氏はベトナム戦でよく機能していた4DFを、この試合で3DFに変えたのは
サウジの2トップは強烈です。予選の試合は全部見ましたが、ほとんどこの2トップが得点をとっていました。つまり、それプラス7番と20番の選手をどう押さえるかが、このゲームの命題でした。この2トップに仕事をさせないことを考えないと厳しいと考えていました。手ごたえとしては、ダンマンでの試合でも同じことをやっていい対応ができていたので、それを続けることで、選手の不安を一蹴するということでした。
と試合終了直後のインタビューで語っている
 しかし(試合終了直後で混乱していたのかもしれないが)、この発言には相当な矛盾がある。両翼に張り出してきた7番のアルゴワイニムと20番のアルダウサリに対し、水野と本田圭が適切に対応できなかったのが、前半の最悪の展開の要因だった。さらに言えば、敵地(ダンマン)での試合は右アウトサイドMFは内田が起用され、水野はもう1枚前でプレイしていた。そもそも、このチームの課題は国立ベトナム戦まで3DFで戦い、右アウトサイドMFの水野が守備に引っ張られる事だった。それが、敵地サウジ戦で内田を右アウトサイドに起用した事で解決され(この試合に関しては水野の使い道が決まらなかったのは新たな課題だったのだが)、さらに4DFで縦に内田、水野を並べる事でより状態がよくなって、ここに至っていた。それなのに、この日のフォーメーションは何だったのだろうか。せっかく解決していた課題を、再度噴出させてしまい、あの悪夢のような前半を招いただけに思うのだが。
 もっとも、ハーフタイムを境にチームは劇的に改善された。好意的に見れば、反町氏の修正能力と言うのかしれない。しかし、現実的な評価は「不適切なスタメンと試合前の指示」と言うべきだろう。

 私は過去も五輪代表反町監督を再三再四批判してきた(リンクも貼るのも疲れるから、興味のある方は、左側の検索窓に「反町 五輪」とでも入力して過去のエントリをお読み下さい)。そして、歓喜を呼んだ予選最終戦における反町采配も、上記の理由で全く評価しない。

 けれども、私は北京五輪における反町監督に大きな期待をかけたいと思っている。
 何のかの言って、アルビレックスをJ1に昇格させた反町康治の手腕は絶品だと思っているのだ。日本人の指導者で反町康治に勝る実績を持つのは、岡田武史氏と小林伸二氏くらいだ。そして、反町康治はまだ若い。

 何ら評価に値しない反町康治の五輪代表経験。
 しかし、彼は「最低限」の結果を残した。考えて見れば、経験と言う観点から言えば最も貴重なのは「失敗経験」なのだ。そして、反町氏はこの五輪代表予選とその準備試合で、再三再四「失敗経験」を繰り返した。しかし、あれだけ「失敗経験」を重ねながら、とうとう反町康治は北京にたどり着いた。本当に本当に「最低限」の結果は残したのだ。
 もう1つ。これまでの反町康治にとっての、ほんの僅かな不運は、GK、DF、MFにはあふれ出る人材を抱えながら(もっとも、そのあふれ出る人材を有効に活用したとは言えなかったが)、FWだけはこの世代は(現状では)タレントに欠いていた事。平山はアレだし、カレン・ロバートはここのところ不振だったし、李忠成が今期安定したプレイを見せていたくらいだった。しかし、北京ではそのような世代的な凹みを気にする必要はない。高原でも前田遼一でも大久保でも達也でも、好きな選手を補強できる。
 加えて、中盤後方で拾いまくる選手が欲しいならば、啓太はもちろん明神でも今野でも補強できる(試合終了後の祝賀会で、だいぶ酔っ払って「オーバエージは明神、啓太、今野の3人で行こう!」と叫んで、皆にたしなめられました)。しかも、このチームは最終ラインに西川、水本、青山直が揃っているから、通常補強メンバとなるGKとCBの補強が不要なのだ。いや、中澤か闘莉王を補強して(2人共でもいいけど(笑))、超強力な3DFを組んでもいいし、南アフリカを見込んで水本を左DFにしてもよい。いや、中村だって、遠藤だって、憲剛だって、松井だって、駒野だって、加地だって。
 そう、反町康治はオールマイティのカードを握っているのだ。我々は史上最強の布陣で北京に臨めるのだ。

 だから、改めて俺は反町康治に期待したい。金色だよ、金色。
 金色のメダルを取ってくれ。
posted by 武藤文雄 at 23:36| Comment(27) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする