2007年08月01日

迷走続く五輪代表

 諸事情あって、五輪代表の北朝鮮戦の映像は見る事ができていない。ともあれ、北朝鮮に2−1で勝った事は評価に値しよう。スポーツニュースで見たが、得点場面も悪くなかった。

 それにしても、五輪代表の強化はまともに進まない。
 先日の国立マレーシア戦の時の陣容総取替えにもあきれたが、あれは「3軍」だった訳だ。そして今回は「2軍」で中国遠征(正確には大黒柱の西川が参加しているから1軍半と言うべきかもしれないが)。以前も述べたが、「2軍」や「3軍」の選手同士で試合をしても、本質的なテストにはならない。「2軍」のメンバ編成を見れば、既にJリーグなりカナダワールドユースで存分な実績を上げている選手ばかり(執拗に言い続けている事だが、谷口などは反町氏選考するところの「1軍」メンバより実績があるのだが)。彼らが「やれる」事はもうわかっている事なのだ。問題は梅崎や若森島が、本田圭や水野といかに連携を組めるか。誰と誰の組み合わせが一番有効なのかを見極める事のはずだ。大事な事は連携を高める事であり、「1軍」選手と「2軍」、「3軍」の選手を一緒にプレイさせなければ、強化の意味はほとんどなくなってしまう。

 大体、今回の遠征メンバ選考事情がわからない。レッズとサンフレッチェの選手を呼べないのは仕方が無い。Jの公式戦優先は当然だろう。梶山と本田圭が体調を崩したのも残念だが、これもやむを得ない。
 しかし、オールスター優先については、相変わらず私は全く理解できない。確かにたかが若年層の代表チームではあるが、最終予選直前の準備試合よりも花相撲がやはり優先されるのか。それなのに、J2のリーグ戦を控えた若森島は招集されている。「オールスター>五輪代表の最終予選直前の準備試合>J2の公式戦」と言う序列は、おかしいと思いませんか。
 その他にも、ユニバーシアード優先も全く不可解。より上位の代表チームである五輪代表を優先させるべきではないのか。アジアカップメンバとは言え、試合に全く出ていなかった伊野波は中国に連れて行ってもよかっただろう。
 逆に言えば、このようなメンバしか反町氏に渡せないならば、無理にこの小トーナメントに参加せずともよいくらいではないか。むしろ、オールスター出場選手を加えて、国内でキャンプを張って、Jのチームと練習試合する方が強化にはプラスだったのではないか。

 かくして、時間が全く足りなくなっている。
 反町氏率いる五輪代表は、過去多数の選手を試してはいるが「1軍」の基本メンバは固定されている。西川−青山直、伊野波、水本−青山敏(本田拓)、梶山(上田)−水野、家長(増田)本田圭−平山、カレン(李忠成)と言ったメンバだ。しかし、ほぼ固定されているチームながら、よい内容だったのは国立シリア戦など、限られた試合しかない。まだ修正が必要なチームだ。
 たとえば修正点としては以下が考えられる。
 細貝、北斗(また負傷してしまったが)、内田、安田らを起用し4DFの採用の是非。現状の3DFだと、サイドの水野と本田圭は相当守備に神経を使う事になる。そのような観点からは、4DFで2人から守備の負担を減らしたいところなのだが。
 ボランチの構成をどうするか。梶山と柏木との競争は非常に重要だろう。また、青山敏と本田拓が争う守備的ボランチだが、ペアを組む柏木なり梶山の守備力がやや不安なだけに、より守備の強い選手の起用も検討されるだろう。具体的には伊野波、小椋あたりか。ここには谷口と言う超大物も控える。
 攻撃的MFの構成。水野、本田、家長と並んだ布陣に、梅崎をどう加えるか。言い換えると、誰をベンチに回すか、とも言うのだが。
 そして、全く調子の上がらない平山をどうするか。私はこの大型ストライカには大きな期待をかけているのだが、とにかくFC東京で試合にほとんど出ていないのだからどうしようもない。高さと言う事ならば、若森島がいるので、李忠成なりカレンと組み合わせる事でよいFWラインが作れそう。あるいはMFから梅崎や家長を前線に起用する手もあるだろう。

 しかし、とにかく時間が足りない。残念なのは、これまで幾多の準備試合があったのに、反町氏はその多くを浪費してしまった感すらある事。無意味な3トップのテスト、今日散々毒を吐いた「2軍」「3軍」対応。
 とは言え、過ぎた時を嘆いても帰ってくるものではない。これらのトライは、最終予選を戦いながら行なうしかないだろう。

 とは言え、最近五輪代表を語ると、愚痴ばっかりだな。
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2007年06月13日

五輪代表最終予選組み合わせ決定

 サウジ、カタール、ベトナム。

 正直言ってあまりよい組み合わせではなかった。いくら過去の相性がよいと言っても、サウジと同じグループは避けたいところだったからだ。どう考えても、サウジよりはバーレーンやレバノンの方がやりやすいだろう。もっとも、サウジと豪州と同じグループになった方が、緊張感と言う意味では格段のものがあった事も確かだが。とは言え、アトランタ予選では前園や中田や伊東や田中誠や服部や川口がサウジを打ち破って本大会出場を決めているのだから、水野や本田や家長や青山や水本や西川が同様の成果を残す事は当然の責務ではある。
 リアリズムの観点からすると、サウジとの直接対決以上に、カタールとベトナムへの認識が重要になると思う。ベトナムには大変失礼な言い方になるが、現実的にベトナムの本大会出場は難しかろう。すると、カタールが日本やサウジからもそれなりに勝ち点を奪取し3チームの争いになるのか、日本とサウジの一騎打ちになるのか、が非常に重要になってくるのではないか。逆に日本からすると、ベトナムに2連勝し、カタールに最悪1勝1分けの成績を収められるかどうかがカギになるように思う。
 日程を俯瞰すると最大のポイントは、9月8日の敵地サウジ戦と、12日のホームカタール戦の連戦だろう。ここを1勝1分け以上で乗り切れるかどうか。初戦のホームベトナム戦と合わせて、ここまで勝ち点7以上を取っておきたいところだ。

 以前より述べているが、反町氏のここまでの準備には相当な疑問がある。特に不安なのは守備ライン。西川、青山、水本と卓越した能力のある3人がいるせいか、およそ組織的とは言えない守備網で、ここまでの予選を戦ってきた(守れてきた)。中盤の選手選考も、守備よりは攻撃を重視した編成が目に付き、チーム全体の守備のバランスが取れていない。一方で、後方の選手として、増嶋、河本、細川、上田、小椋と言った優秀な選手が次々とJで活躍し、大人の選手として一本立ちしつつある。ここに、ユース代表の内田、安田が加わる(伸び悩んでいる福元にも絡んできて欲しいところなのだが)。常識的に選手を並べ、常識的な組織作りを行なえば、安定した守備ラインが作れるはずだ。

 攻撃ラインの方は、最前線の平山が論外の状態にあるが(私は平山には本当に期待しているのだが、FC東京でベンチにも入れない惨状を見るにつけ、予選は平山抜きで戦うべきではないかと考えつつある)、カレンと李忠成を軸にすれば、攻撃的MFに水野、本田、家長がいるので、点を取ることにそう大きな悩みはないはず。ここにユースの柏木が加わるのは言うまでもない。

 これだけの人材がいる事を考えれば、反町氏が妙な采配さえ振るわなければ、よい組み合わせではなかったものの、普通に戦えば4勝2分け以上の成績で、問題なく五輪出場を決められると思うのだが。
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2007年06月06日

五輪予選国立マレーシア戦

 以前も述べたが、新しいメンバだけを並べた編成で試合を行なっても、あまり有効とは思えない。最終予選進出を事実上決めた以降の、今日を含めた予選3試合をうまく使って、中心選手と新しい選手の組み合わせを試すべきだったのだ。
 もっとも、何とも不経済な強化が継続しているのを認識しつつも、人材の豊富さを考えると問題なく本大会には出場できるだろうなと思うのもまた確かなのだが。

 ともあれ、何人かの選手について。

 まずやはり小椋だろう。立ち上がりバタバタしていた日本だが、小椋が頻繁にボールを触るようになってから、すっかり落ち着いた。運動量も豊富で、DFがボールを持つとすぐに顔を出す。ボールを持った選手への指示もよく出していた。A代表における鈴木啓太を思い出させてくれるプレイ振りだった。小椋交代以降、日本の攻撃が機能しなくなってしまったが、なぜ反町氏は小椋を交代させてしまったのか。五輪代表のこのポジションは、青山敏と本田拓が争う形になっているが、小椋が割って入る可能性は十分あると見た。小椋のプレイそのものが、この日の最大の成果だろう。もっともホーリーホックでのプレイ振りを考えれば、この程度はできて当然か。2次予選に向けて、どのような強化体制が組まれるか不明だが、本田圭、家長、水野らと一緒にプレイする機会を与えてやりたい。小椋の挙動開始点はより後方ではあるものの、豊富な運動量と丁寧なボールタッチによるゲームメークに、かつての前田秀樹を思い出したりして。

 長友の闘志あふれる前進も収穫だろう。先制点も見事だったが、突破の1対1も強く、守備の激しさも中々。ただ、このポジションは3DFで戦う以上は事実上水野で決定だし、4DFでサイドに2枚選手を並べるとしても、水野の後方に配する選手の候補としては、内田と(負傷離脱中だが)北斗がいる。大学でプレイしていると言うのも、実績を積むと言う意味では不利になる。そのハンディをどう乗り越えるか。

 腕章を巻いた細貝も上々の出来だった。この選手の一番のよさはプレイ選択の的確性にある。ボールを奪ってから前に上がれると判断するや、一気に押し上げる動きなど大したものだ。元々は中盤の選手でセンタバックもサイドバックもこなせると言うが、非常に多様性のある選手だと思う。実際、レッズでも五輪代表でも起用された試合ではいずれも上々のプレイを見せていた。ただ、この選手は所属チームのレベルが高過ぎて、試合出場の機会が少ないのが悩み。闘莉王と坪井はさておき、ネネ、堀之内、内舘より序列を上げるのは相当厳しいか。レッズはこの逸材育成のために、レンタルを考えるのも一案だと思うのだが。

 上田の左サイド起用も、このチームにとっては重要。これによって本田圭をもう1列上げる事が可能になる。この日は長友の意欲のせいか、攻撃が全体に右寄り偏重になってしまった傾向があったものの、局面ではよいプレイ振りだった。この選手は地味だが、Jでの実績、左足の精度、粘り強い守備など、もっと注目されてよい存在だと思うのだが。

 そして萬代。
 一言で語れば、ベガルタでできない事は、五輪代表でもできないと言う事だ。前半2回ドリブルでフリーで抜け出した場面は、いずれも抜け出す最初のボールタッチがやや外側に行ってしまった。そのために、シュートの角度がなくなってしまった。もちろんシュートそのものもGKとの駆け引きに課題があるのだけれども。後半、枝村のスルーパスで抜け出した時のトラップミスは論外。そして、残念ながらそのような僅かなミスは、今期(プレイのレベルが一段上がったのは確かだが)まだ見受けられるもの。残念だが、まだまだと言う事だろう。
 確かに、プレイ振りそのものは、そう悪いものではなかった。よく動いてボールを引き出していたし、高さも速さも技術もそれなりのものがある事はアピールできたと思う。
 しかし、それだけではダメなのだ。今日のプレイではカレンや李忠成や菅沼と比較して上位に立てるかと言うと難しいだろう。平山に対しても優位を示したとは言えないのではないか。だから、点を取らなければならないのだ。PKを蹴らせてもらったのはそれだけ反町氏が期待している事だと前向きに捉え、今日の失敗を反省し、愚直に反復練習を繰り返して欲しい。
posted by 武藤文雄 at 23:44| Comment(5) | TrackBack(4) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月25日

理解しづらい五輪代表候補選考

 五輪1次予選の最終戦マレーシア戦に向けた候補選手が発表になった。

 1次予選開始後、頑なに固定メンバに拘泥していた反町氏。3連勝の後の敵地シリア戦では早々に選手を拘束し、中心選手を供出した各クラブがJリーグで勝ち点を失うと言う事態を巻き起こした(だから「反町ケシカラン」とは言わないけれど事実は事実として)。しかも、早期召集してしっかり調整したはずなのに、後半は多くの選手の動きが止まってしまったのは大変残念だった。さらに出場権を確保した後も「1位になるために」と称してベストメンバを召集し、香港まで連れて行った(もっとも、水本の負傷離脱があった事もあり、4DFを試すなどオプションを増やす事はできたのだが)。

 ところが、1位を確定して安心したのか、ホームマレーシア戦に向けてはこれまでのサブ組と新しい選手を24人も招集し選考合宿を行なうと言う。増嶋も河本も小椋も豊田も岡崎も、もちろん萬代も、当然ながら枝村も試すのは意味がある事だと思う。しかし、新しい選手だけを組み合わせても何も生み出さないと思うのだが。例えば、増嶋を伊野波に代えて起用し、水本や青山と連携させるのは非常に重要だろう。枝村を本田圭祐や水野や家長や梶山と共存させられるのか、それとも誰かを外すべきなのか検討するのも大切なテストだ。豊田と萬代に必要なのは、本田や水野にいかほど合わせられるか、梶山の縦パスをどのくらい納められるかの確認のはず、そうでなければ平山との比較のしようもないではないか。
 いずれにしても、そのようなオプションの増加には、中心選手の存在が不可欠なはずだ。だから、敵地シリア戦から少しずつメンバを代えておき、少しずつ色々な選手を試すべきだったのだ。
 さらに言えば、マレーシア戦前はJ1はA代表の強化期間に入るため、敵地シリア戦や香港戦の時ほどには中心選手を提供する痛みは少ない。一方、J2クラブは試合が継続するから、結構つらいものがある。したがって、J2の選手を呼ぶならば中心選手と一緒に呼んだ方が効率がよかっただろうし、J1クラブに気を使うならば前の2試合の時こそ気を使うべきだったのではないか。
 加えて、ユース代表の内田や柏木など、ワールドユース終了後は選考が確実ではないかと思わせる程のJ1での実績ある選手もいる現状で、わざわざ大量の選手に間口を広げる必要があるのか(もっとも反町氏はJ1での実績はあまり気にしないで選手選考しているが)。誤解されては困るが「選手招集の窓口を閉めろ」と言っているのではない。今回召集された選手、あるいはそれ以外の選手でも、明確な実績を揚げて来た時点で、少しずつトライしてみればよいと言っているのだ。

 もう1つ。谷口不在に関しては、ある意味反町氏に感心した。「自分の構想に合わない選手をを選ばない権利」を監督は持っているのだ。もっとも、氏は一時谷口を「控え選手」として再三召集しており、かつ試合ではほとんど試していない(さらに言えば、谷口は起用された試合でいずれも悪くない出来だったように思う)。反町氏は、「僅かな時間の試合」と「練習」で谷口を観察し、よほど拙い何かを発見したのだろう。そしてそれは、今回の24人に谷口が入らないほどの決定的なものなのだろう。ただし、そのあたりは、「説明責任」を果たした方が、反町氏にとってはプラスになると思うが。
 ちなみに、過去の五輪代表を思い起こすと、バルセロナ予選で横山総監督が「プレイが小さい」と断じて藤田俊哉を外したのは当時大変な驚きだった。また、アトランタ予選で西野監督が(明確な説明はなかったが)J1のトップクラブの中心選手である平野孝と三浦淳宏を全く選考しなかった。五輪代表で、Jのトップクラブの中心選手が選考されないのは、谷口が初めてではない。

 以上述べてきたように、反町氏の選考にはどうにも理解できない事が多い。これまでの勝ち点勘定を考えれば立派な成績だし、チームも次第に機能し始めているし、選手層も厚くなっているのだけれども。

 ところで、先日私の事を「反町氏が嫌いな武藤さん」とおっしゃった方がいる。それは誤解です。選手としても大好きだったし、監督として物凄く期待しているのだ。五輪代表監督としても、ほんの少しのボタンの掛け違いさえ直せばと心底思っているのだ。ただ、最近掛け違ったボタンが随分と増えてきたようにも思うのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(4) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月18日

体調が悪いのか、頭が悪いのか、采配が悪いのか、それとも

 昨日イヤミを語ったが、多くのJクラブに多大な迷惑をかけた五輪代表。せめても鮮やかな勝ちっぷりを期待したのだが、非常に微妙な試合内容。ともあれ、無事2次予選進出を決めた。
 前半はよかった。すっかり引きこもったシリアに対し、青山敏を中心に丹念にボールを回す。早々に水野の一撃で先制した後も、カレンの活動量と水野、本田圭、家長の個人技、時にミスがはさまるが梶山の起点となる動きから落ち着いてボールをキープ。本田圭がインタセプトを許し逆襲速攻を許した場面を含んで、シリアの思い切りのよりミドルシュートはドキっとしたが、西川がゴールにいると交通事故のリスクも非常に少ない。敵GKが再三負傷で寝転がると言う集中が切れやすい難しい状況だったが、チーム全体の集中が継続、なかなか追加点が入らない難しい状況の中、終了間際に水野のCKから敵のミスを突き、本田圭が豪快な一撃を決め2−0。前半で事実上、2次予選進出を決めた。
 敵が引きこもってしまったため、平山にスペースがなくなりほとんどボールを触れなかったのは残念だったが、前半から無理に平山を使う必要もないので、「まあ仕方がないかな」と言う印象だった。

 ところが後半。出足が改善されたシリアに押し込まれる。右サイドで巧くボールを奪ったにもかかわらず水野がミスパスをして、崩されたかけた場面以降、シリアの出足のよさに再三攻め込まれる。
 テレビ解説をしていた中西永輔が嘆いていたが、とにかく出足が悪い。ルーズボールのほとんどを奪取されてしまったのではないか。おそらくシリアとしては、戦闘能力差を考えて前半は守って後半勝負を考えていたのだろう。それにしてもあの出足の悪さは、体調管理が巧くいかなかったと言う事だろうか。そうなると、何のために先週末のJリーグから選手を強制収用し早めに現地入りしたのかと言う事になるのだが。

 しかし、選手達の状況判断の悪さが自体を悪化させたのも確か。特に本田圭と水野には苦言を呈したい。押し込まれて、ようやくボールを奪取した時は、まずチーム全体が落ち着く事が必要になる。ところが、この2人はそのような状況でも、得点機になるようなラストパスを狙っていた。そのようなパスは、当然ギリギリのところを狙う事になり、押し込まれていたが故に押し上げが遅れている事もあいまって、敵にせっかくのボールを奪われる事になる。かくして、再度攻め込まれると言う悪循環となる。この2人への期待値は格段に大きいものがあるだけに、失望も大きい。
 悪さは伝染する。さすがにこの日の梶山の「軽さ」には反町氏の堪忍袋の緒が切れたのだろう。氏には珍しく、早々に上田と交代させてしまった。次回の選考に梶山は残れるのだろうか。課題は余りに多い選手で、この日のシリア戦のプレイはその課題を全く自覚していないのかと言う風情だったが、一方で何とも言えない魅力もあるのだが。ただし、本田圭、水野、家長と芸術家が揃ったチーム、このままでは相当苦しいだろう。柏木も控えているし。
 さらに困った事に、前半よいリズムでつないでいた青山敏も軽率なパスで事態を悪化させてしまう。
 結果的に家長と平山は完全に孤立。カレンの引き出しへの努力が空回りする展開が継続した。

 素朴な疑問として、反町氏はこの試合をどう考えて臨んだのだろうか。1次リーグ最大の難敵とのアウェイゲーム。ともあれ、前半でほぼ勝負を決める事ができた。万が一、この後こけても残り2試合ある。とすれば、より厳しい2次予選への仕掛けを行なう格好の機会だった。
 ところが、反町氏はそのまま漫然と後半に入る。上記のように押される。どうしようもない梶山を上田に代えたのは、仕方がないところ。その後はパスが回ってこないので機能しない家長に代えて増田。終盤、レイソルで好調の初召集菅沼をカレンに代えて投入。最後の菅沼起用の意図は別かもしれないが、その前の交代2本は明らかに停滞したチームの状態をただ改善する事が目的に過ぎない交代だった。
 残念ながら、反町氏はこの日の後半に「トライしてみる」つもりはなかったようだ。冴えない後半だったのも残念だが、それ以上に貴重な45分間を無駄にしてしまったように思う。

 ただ、この日一番イヤな感じを持ったのは、後半も30分くらいだったろうか。本田圭のパスから上田が巧く左をえぐった場面。素直にセンタリングを上げればよいのに、妙な切り返しなどを交えて時間をかけた後、結局敵DFに止められゴールキックになってしまった。
 この場面が典型的なのだが、このチームはシュートなりクロスを上げればよい場面で、やたら細かいプレイを行う事態が多過ぎる。何かチーム全体に「遠慮」を感じてしまうのだ。
 杞憂であればよいのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:59| Comment(13) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月29日

五輪代表の観客動員2

 スタンドが閑散としていると何がいいかと言うと、簡単に友人と会える事かもしれない。過日のシリア戦、友人のTさんと同席していたところに、Zさんがやってきた。TさんとZさんはお互いは初対面。紹介すると、お互い「ああ、あなたですか」双方ともネットサッカー界では著名人だから。で、数分後我々の横を細身の紳士が通ると、TさんとZさんが同時にその細身の紳士に「やあ」と手を上げる。つまり、TさんとZさん同士は初対面だったが、共通の友人が私以外にもいた訳。で、Zさんがその紳士−Iさん−を私に紹介してくれた。なるほど、私もネットの中でIさんのお名前と書かれた文章は知っていた。先方も私の事をご存知だった由。まあ、ネットの世界は狭いなと。
 おっと話題がそれた。閑散としたスタンドでは知人が見つけやすいと言う話だったな。しかし、閑散としたスタンドのメリットは、その他には気の利いた野次を飛ばすと周囲から受ける可能性が高い事くらいか。
 とバカ話を語っている場合ではない。以前危惧した通り、五輪代表チームの観客動員がいよいよ決定的に落ちている事が明確化してきたようだ。当時懸念した通り、大変な事になってきているのではないか。
 相も変わらず、最も責任を負うべき人間はいいかげんな発言をしているようだが、この男が無責任極まりないのは昨年7月に日本中に知れ渡っているので、今さらと言うところか。トップの無責任振りとは別に、現場の営業部隊は広告を大量に打つなど手は打っているようだ。しかし、効果は薄く、シリア戦は「強敵との試合」、「そこそこの気候」などのよい条件が重なったにも関わらず、入場者2万人に満たなかった(もっとも、それらの広告に誘われて当日券を求めた人々は、チケット販売の拙さからキックオフに間に合わないと言う散々な目にあったと言う残念な報道もあったけれど)。まあ、香港戦と言いシリア戦と言い、20年前の五輪予選を思い出すような観客の入りだった。まあ、そういう意味では、何かしら懐かしさも感じたりもしたのだけれども。

 上記の協会会長の無責任発言のように「ピッチ上の選手に問題がある」と言うくらい本質を外した発言はない。確かに長期的な観点から、不甲斐ないプレイを見せ続ければ確かに観客動員は減るだろう。しかし、今回の五輪代表の観客動員苦戦は、チームの立上時期からのもの。ただでさえ観客動員が思わしくないところに加え、これまで今回の五輪代表のプレイ振りが迷走していたのだから、全くそのような問題ではない。これは平山や本田圭祐や反町監督の問題ではないのだ。大体、選手や指導陣の一般的な知名度と言う意味では、今回のチームの方が4年前のそれを上回っていると思えるし。つまり、本質的に五輪代表の試合そのものの人気がなくなっているのだ。しばしば、したり顔で「欧州、南米では、五輪代表など着目されていない、クラブを愛するサポータが増えてきたのだから、日本も正常化したのだ」と語る方がいるが、以前観客を大量に集める事ができていたサッカーの公式戦に客が入らなくなってきているのだから、大事には変わり無い。そして、昨シーズンはJリーグの観客動員も頭打ち、いや減少気味だった。つまり、見方を変えれば、五輪代表の不人気振りは特に顕著だが、日本サッカー界全体で観客動員力が落ちていると考えられるのだ。

 ではどうしたらよいのだろうか。それには、観客減少の要因をしっかりと押えるところから始めるしかないだろう。昨年のワールドカップでの不首尾、その後の当時の監督、協会会長そろっての見苦しい発言は、「サッカー人気ダウン」の要因の1つだろう。それだけならば監督には既に手を打ったのだから、会長に辞めていただければそれで問題は解決するかもしれない。それはそれで魅力的な事態の進捗だが、おそらく要因はそれだけではないだろう。他にも何かしらの要因があり、手を打つ必要があるのではないか。
 そして、それを把握するのに一番よい手段は、日本協会とJ各チームでそれぞれが把握している観客減少の要因を共有して検討する事ではなかろうか。昨年度までは少しずつ観客動員を増やすことに成功していたJリーグが何故昨シーズンに観客を減らす事になったのか、各クラブのミクロな状況をまとめて検討する事で、マクロな要因が見えてくるように思うのだが。
 協会会長の仕事は、このような総合的問題に旗を振る事だと思うのだが。もっとも、心ある協会のスタッフは既にそのような活動は行っており、マスコミの前面にそのような本質的な議論が出てこないと言う事なのかもしれないが。
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2007年03月28日

戦闘能力でねじ伏せる

 開始早々からシリアがよく日本の研究をしていた事がわかった。ストッパは平山を厳しくマークし、左サイドの選手は水野の縦へのフェイントに簡単に引っ掛からないし、右サイドの選手は本田を中に追いやろうとする。読みの鋭いスイーパは梶山のスルーパスをよく読んでギリギリのところでスライディングで防ぐ。さらにCK崩れから先制点まで許してしまった、と思ったら反則でノーゴール。確かに序盤戦は「これは厄介な試合になるかな」と思われた。
 しかし、そう考えさせられたのも15分過ぎまでだった。速攻から右サイドフリーになった水野が逆サイドの家長にピンポイントの展開、左サイドで家長のみならず本田圭の2人がフリーに。シリアのDFは縦に走り抜ける本田圭を必死にマークする(日本をよく研究しているからこそ、本田圭を空けないようにしたのだろう)のを見て、家長は決然と切り返し後中央に切り込む。そして思い切りよく右足でミドルシュート。ややブラインドだったのかGKの反応も悪く、そのままゴールに突き刺さった。水野と家長の個人技のレベル、本田圭を含めた3人の発想の豊かさ。シリア守備陣の能力を、日本の攻撃陣の能力が完全に上回った、シリアからすればどうしようもない失点だった。現在の五輪代表は、優れた選手を並べその個人能力を伸び伸びと発揮させれば、このように美しい得点を決める事ができるのだ。
 そして、どうしようもない得点を許し、シリア守備陣は「これは勝てない」と身がすくんでしまったようで、その後は圧倒的な日本ペースとなる。そして2点目。確かに水野のボールは素晴らしかったが、これまで平山を必死にマークしていたストッパが、あろう事か最初の出足で完全に平山に置き去りにされてしまっては、もうどうしようもない。この場面、平山としては得意とする挙動開始の直前に見せるちょっとした逆への動きが奏効したと言う事だろうが、この肝心なところで平山があそこまでフリーになってしまっては勝負にならない。
 後半の立ち上がりこそ、シリアがある程度ボールを保持した時間帯があったが、一方で日本の守備はエゲツ無い事この上ない。常に、強力無双の水本、青山の2ストッパと俊敏な伊野波が深く引いており、シリアの攻撃をハンマのように叩き潰してしまう。常時3人が引いているため、シリアは速攻をしかけても人数が足りない。そして、日本は運動量こそ少ないが丹念にボールを回し、遅攻から再三好機を掴む。そうこうしているうちに、梶山?からのボールをカレン(たぶん)が流し、オフサイドぎりぎりから抜け出した平山が決めて3点目。その後も日本が分厚い守備を軸に時計を進め試合終了。後半の戦い振りには不満も多いが、2点差で勝っていてシーズン真っ最中の国際試合、各選手ともJリーグを考えて、やや省エネモードになったのは仕方がないか。

 この日の日本は完全な3−5−2。敵地マレーシア戦のメンバからは、青山敏の代わりに本田拓、増田の代わりに李忠成。家長が攻撃的MFでフリーマンのような役割で左右に顔を出し、守備の時は両翼の本田圭と水野の守備の負担は相変わらずだが、家長が相当働きどころを理解してきており、水野なり本田圭なりをよくサポートするので、攻撃は格段に鋭くなってきていた。この3人の技巧に梶山が絡む攻撃は魅力的だ。さすがに正常なチーム作りが始まって2試合半も経過し、攻撃は相当機能してきた。
 ただし、この芸術家4人だが、水野はさておき残りの3人は配列は変えた方がいいようにも思う。左サイドに家長、ボランチに本田圭、フリーマンに梶山と言う組み合わせの方がよいように思うのだが。それぞれのポジションチェンジがあるにしても。
 そしてこのチームには何のかの言って平山がいるのが大きい。もちろん平山にはまだまだ不満は多い。左右に流れすぎる事、ボールをもったらとにかくシュートを考えるべきなのに妙にチームメートにはたく事など(極端な事を言えば、平山は自陣でボールをもらっても自分がシュートを打つ事を考えるべきだと思う)。しかし、このシリア戦に関して言えば、相当シュートの意識が戻ってきたように思えた。2得点の他にも、バーとポストに1発ずつ、その他にも相当回数シュートを狙っていた。別な機会に平山について述べる事にするが、この日は私が期待する平山にやや近づいてくれたとは思う。
 それから、頑張っている選手を悪く言いたくないけれど、本田拓についてはどうにも納得できない。本田拓自体はよい選手だと思う。大学チーム在籍選手が五輪代表に入ることそのものは否定しない。しかし、この日の試合にしても、運動量、配球、ボールタッチ数、守備力、いずれも不満を感じた。青山敏、上田、谷口、細貝ら、このポジションをこなせそうなJリーガはいくらでもいる、自分のチームでこのポジションでプレイしていなくても、判断力に優れた選手ならば起用してみる意味は十分あると思うのだが。

 ともあれ、この五輪代表の潜在力は凄いものがある。個の強さと言う絶対値、ここ2試合半の成長振りと言う微分値いずれも素晴らしい。唯一の問題は、監督が昨年の準備試合を無駄に費やしたため初期値が低かった事だが、急速に問題は解決しつつある。やれやれ。
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2007年03月27日

五輪代表シリア戦前夜  −そう悪くはなかったマレーシア戦だったが−

 先週末にようやく、五輪予選の敵地マレーシア戦の映像を見る事ができた。各方面での試合後の評価はあまり芳しいものではなかったが、映像を見た限りではそれほどひどい出来ではなかった。「反町氏率いる五輪代表はいつも悪い試合ばかりする」と、皆が固定概念で思い込んでいるのだろうか。
 まず、相手のマレーシアは決してそう弱いチームでもなかった。伝統の個人技とショートパスの巧さ、またミドルシュートが正確に枠を捉えるタレントが複数名いた。守備陣も一歩目の出足が素早く、チーム全体としても、日本のパスをインタセプトし、そこから速攻に移る連携もよく取れていた。また4チームのリーグ戦で2位に入ればよいレギュレーションで、初戦に敵地で2位争いの最大のライバルと言えるシリアに敗れており、剣が峰の思いで戦ってきた。しかもホームで応援も多く、さらに大雨が降った事で、日本の個人技がまともに発揮されづらい展開だった。
 日本からすれば、難しい条件が揃った試合であり、結果面から見るだけでも、2−1の勝利は大成功。さらに内容面から言っても、不安定な足元、敵の鋭いカウンタをそれなりに考慮しながら慎重に戦い、相当数の決定機を作りながら、敵にはほとんど決定機を与えていなかった。足元が悪かったから、重馬場用に「蹴って走るサッカー」に持ち込む選択肢もあっただろうが、長所である個人技を前面に押し出すやり方そのものを選択し、決定機をそれなりに作ったのだから、それはそれで問題なかったと思う。
 このチームの各選手の個人能力は非常に高いから、期待値はやや青天井気味である。私自身もこのチームへの期待は相当大きい。そして、この日の結果内容は「青天井」と比較すれば物足りない事も間違いなかった。けれども、結果と内容がそう悪くなかった試合だった事もまた確かだったのだ。

 日本の守備ラインは、恒例の青山直、水本の両ストッパに伊野波をセンタにした3DFを常に最後方に残しておく超安全方式。本来であれば、このラインを押し上げてコンパクトにすべきところだろうが、敵地でオフサイドトラップをかけるリスクを取らなかったと前向きに理解しておこう。さらに言うとこのフォーメーションを取るならば、伊野波は2ストッパの前に位置取りすべきだと思うのだが。とは言え、実際、青山直と水本は敵の攻撃の第一波はことごとくはね返してしまうのしまうのだから、大したものだ。
 問題はマレーシア守備ラインの押上げが早く、そのはね返しを拾われることが多かった事。平山はしんどいだろうが、しっかりと敵守備ラインと共に下がり、2列目の選手が裏を狙わなければいけない。ただし、まともにチーム作りが始まったのは、先日の国立香港戦の後半からなのだから、このあたりの連携に難があるのは仕方があるまい。
 失点に関しては、林と上田のミスとしか言いようがない。完全に目測を誤り、敵にゴールエリア内でのヘディングを許してしまった林。完全に出足で遅れてしまった上田。幸いな事に2点差になってからのミスで大きな問題にはならなかっただけに、「よい経験」と猛省を促したい。繰り返そう、あの失点は林と上田2人の責任である

 一方の攻撃だが、家長、増田、梶山が変幻自在にあちこちに顔をだすのは、中々面白かった。特に国立香港戦で孤立無援の状態から不慣れな長いボールを使ってはミスを繰り返していた青山敏は、この日は豊富な選択肢の中からよいパスを幾度も出していた。ただし、家長、増田はフリーマンと言う位置づけなのか、守備の役割が曖昧。結局、水野、本田圭が両翼の守備に専心しなければならないのは、以前からの課題そのまま。後半上田が入り、青山敏といわゆるドイスボランチを組んだ後は、2人で中盤の底で外のカバーに入ったり押し上げたりできるようになり、一層流れはよくなった。ただし、そう組み合わせてしまうと、梶山の使い場所が難しくなるのだが。
 水野がボールを持つたびに家長なり梶山が右外に飛び出すのは、非常に有効だった。一方、本田圭のサイドはもう一工夫欲しかった。敵DFも本田圭の特長をよくわかっており、クロスを上げさせず縦を押える動きで中向きにドリブルさせられる場面が多かった。もう少し周囲の工夫が欲しいところだ。
 この本田圭周辺を含めた連携、連動の甘さにせよ、よいクロスが上がりそうな場面で飛び込む選手が足りないのは、真っ当なチーム作りが始まって日が浅いので、これからと言う事か(飛び込むと言う機能に関してJでも屈指の実績を持つ谷口と枝村が冷や飯を食わされているのはこのチームの特色なのだが)。
 得点については、先制点は本田圭の意表をつくグラウンダのCKから敵DFのミスを平山が冷静に詰めたもの。アイデアも秀逸だったし、時間帯として申し分なし。2点目は家長の個人技と忠成の飛び込み。上田を投入してよいペースになっていながら突き放せない嫌な時間帯だっただけに効果的だった。

 そうこう考えると、不満を挙げればキリがないものの、マレーシア戦はそう悪い試合ではなかったと考えた次第。まあ、よい方向にチームが進んでいる訳で、明日は大黒柱の西川も復帰する訳で、キッチリとホームでシリアに勝ってくれる事であろうと、ついつい反町氏に甘くなってしまうのであった。
posted by 武藤文雄 at 23:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月28日

ようやく始まったチーム作り

 TVのスポーツニュース。
「収穫は勝った事だけ」
反町氏が試合後語った。
「自分達が練習してきた事が全然活かされていなくて」
平山が試合後語った。
 反町氏の発言には全く納得できなかったが、平山の発言はよく理解できた。

 反町さん、日頃、貴兄には厳しい私だが、今日の試合は評価しているのだ。今日の収穫は非常に大きかった。何故ならば、ここ数ヶ月無駄な作業を繰り返していた貴兄だが、今日の試合の後半から、ようやく北京五輪に向けて正常なチーム作りがスタートできたと思うからだ。

 前半の先制点(カレンの好ドリブルからのスルーパスを平山が決めたやつ)、直後のカレンの突破からポストに当てたシュート。いずれも、カレンの個人能力による好機だった。立ち上がりにマークを押えきれない香港に対して、精力的なFWが見事にその能力を発揮したのだ。
 しかし、香港の守備ラインが機能し始めると、日本は全く好機を作れなくなる。その要因については、合衆国戦で述べた通り。合衆国戦同様、3トップが水野と本田の蓋をして、さらに青山敏と伊野波は引いてきてパスを受けに来る味方がいないので、遠方のチームメートに向けて、(必ずしも得意でない)ロングパスを狙っては敵にボールを渡す。酷い前半だった。これまた合衆国戦同様だが、出来が酷くても最終ラインが非常に強いので、ほとんど敵に決定機を与えないのも、このチームの問題点を顕在化しないのだが。
 その状況が改善されたのは、後半の家長の起用以降。李に代わって起用された家長は、挙動開始点こそ左サイドだったが、時に後方に引き、右サイドに顔を出す。ボールを受けるや、鮮やかな技巧で次々に仕掛ける。流れは一変した。速攻ができない場面、3DFと青山敏は落ち着いてボールを回し、無理なロングパスを仕掛けずに遅攻が利くようになった。家長がよく動くから、本田の前にスペースが出き、そこから好機が作られるようになる。
 さらに増田が起用される。増田の精力的な上下動により、水野も再三右サイド前方への進出が容易になる。2点目に至る水野の執拗な右サイドのえぐりは凄かった。1人で3人を相手にあそこまでやるのだから。
 終盤、青山敏に代わり、上田が起用されたのも納得。元々の3トップが悪かったのだが、そこに不正確なロングパスを連発して敵にボールを渡した青山敏は、この日残念な出来だった。とすれば、ジュビロで実績を挙げている上田の起用、テストは当然だろう。芸術家が多いこのチームだけに、戦える選手がもっと欲しい。

 つまり、この日の後半からは、ようやく真っ当に五輪代表チームがスタートしたと考えられる。本田と家長を共存できる組み合わせの確認。梶山の特長を活かすためにも中盤の人数を増やす事。水野の活かし方。技巧派が多いMFで戦う選手として誰を使うべきか。Jで実績を挙げているタレントの組み合わせ、連動が、ようやく形になろうとしている。今日の後半のような組み合わせを、谷口、枝村(さらには柏木?)ら、Jで実績があるタレントを含め、試していく事が強化につながるはずだ。
 誤解されては困るが、カレンも李もよい選手だ。スタメンからこの日の後半のやり方(家長、増田を起用)をしておいて、終盤タフなカレンや李を起用すれば、相当香港の守備ラインは悩んだ事だろう。要は選手の個人能力を活かすために組み合わせがあると言う事。監督の思いによる組み合わせのために選手の個人能力があるのではない。

 冒頭に戻ろう。この日の収穫は非常に大きかった。不可解な3トップをやめればチームが機能する事が実証されたのだから。そして、チーム作りのコンセプトが狂っていたのだから、練習が有効でなくても仕方がないだろう。平山にとって重要な事は、幾多の優秀なチームメートに対し、「俺のここにボールを出してくれ、ここに出してくれたら、必ず俺が点を取る」」と伝える事につきる。



 ついでに余談。別なTVのスポーツニュースで、北澤氏が「『勝とうとする意思』が足りない。このままでは五輪には出場できない」と酷評し、指摘した終了間際の場面。チーム全体の技巧と発想で、完全に崩しながら最後のフィニッシュで増田のシュートがずれ、敵のハンドで防がれたものの、主審が反則に取らなかった場面だ。確かに審判の判定は拙かったよ。でも、北澤氏の指摘は正しかったと思う。巧く言えないけれど、「勝とうとする意思」が、何か伝わってこない試合だった。
 さて、かつて日本代表の攻撃的MFを北澤氏と争っていた反町氏。この厳しい北澤氏の問いにどう答えるか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(26) | TrackBack(3) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月27日

過去の五輪1次予選

 いよいよ五輪予選が幕を開ける。どうにも反町氏には厳しくなる私だが、20年前ならいざ知らず、香港が相手なのだから、少なくとも明日に関しては何の心配もいらないだろう。せっかくだから、過去の五輪1次予選を振り返ってみる。
 88年のソウル五輪までは、アジアからは五輪にフル代表チームが出る事ができたので、ある意味で全く異なる大会と考える事べきだろう。したがい、議論はバルセロナ五輪を起点にする。
 と言う事でバルセロナ予選。この予選はJSLがプロ化に向かう過渡期に行われた。下川、石川康、永山、名良橋、名塚、藤吉、神野と言ったJSLで活躍しているプロ選手と、澤登、原田、小村、相馬、藤田、名波、永井、文丈と言った大学生チーム所属選手を組み合わせると言う非常に難しい時代だった。しかも主将の澤登が大学チーム所属なのだから。それでも1次予選はインドネシア、台湾、香港とのホーム&アウェイで5勝1敗(1敗がよりによって香港なのですねえ)。2次予選については、書き始めると怒りが止まらなくなりそうなので割愛。
 続くアトランタ予選。Jリーグ開幕以降、初めての五輪予選。豪華絢爛な攻撃ラインに期待は高まった。既にA代表の中核が約束されていた前園。そして小倉と城の2トップ。さらには幻のスーパースター山口貴之。知的なドリブラ森岡茂(彼をウィングバックに起用する発想の貧しさが当時は悲しかった)。1次予選の初戦、当時ドリームチームとまで自称したタイと敵地で戦う事になった。結果は完璧な試合で5−0で完勝。小倉が壊された事を除けば完璧な試合だった。そして、この日またも負傷した小倉は選手生活中ずっと負傷と戦い続ける事になった。この小倉と城が完璧に機能したタイ戦については、また機会を改めて講釈したい。そして、負傷に苦しむ小倉に代わり、このチームに中田英寿が加わるのは約1年後の事である。
 シドニー予選。トルシェ氏は1次予選を完全にテストの場として利用。次々にメンバを入れ替えた。東京ラウンドは、トルシェ氏は山本氏に采配を任せA代表のコパアメリカに行ってしまった。まあ、この1次ラウンドの「テスト」は凄かったが、トルシェ氏は最後にしっかりと結果を出した事が重要だ。この予選で何が悔いが残るかと言うと、小野が壊された事。それもフィリピン選手の極めて悪意あるタックルだったから腹が立つ事この上なかった(予選も終盤になり、フィリピンの選手はリーグ戦を戦い続ける事そのものに疲労していたのだと思う、当時からシード方式があればあの悲劇はなかったのではないかと思うと残念)。
 アテネ予選。ミャンマーとホームで2試合と言う変則的な予選となった。この時は前年のアジア大会で準優勝するなど、既にチームの骨格は出来上がっていた。せっかくの骨格を「テストごっこ」で監督が自ら壊していくのは、この後の話になる。そのような意味では、未だ骨格を作る事ができていない(と言うより自ら放棄している)反町氏は、山本氏より劣る事になるのだが。

 以上振り返ってきたが、過去4回とも何ら1次予選は問題にならなかった。しかも、今回は、総当りリーグ戦で2チーム抜けの方式であり、日本の予選敗退は全く考えられない状態(面白いのはサウジ、豪州のいるグループだけがやたら厳しい事)。ただし香港、マレーシア、シリアと、それなりに抵抗が期待される国との対戦が続く。選手達は、厳しい国際試合で、やや力の落ちる相手から確実に点を決めると言う経験がたっぷりつめるのが、今回の1次予選だ。
 再三講釈を垂れてきたが、日本サッカー界全体が育んできた優秀な選手を適切に競争させながら配置し実力通りに本大会に出場する事。そして本大会では、創意工夫を含めて勝ち進む事。その結果、各選手に経験を積ませて成長させ、1人でも多くのA代表選手を送り出す事。それが反町氏の仕事だ。そのためには、現状では奇策は一切不要なはずだ。
 まず香港戦。豊かな発想と高度な技巧で敵陣を次々に打ち破る試合を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:15| Comment(3) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする