2018年07月08日

でも、勝ちたかった

 私は、CKを蹴る本田圭祐のはるか後方2階席にいた。
 本田のキックがやや甘く、ベルギーGKクルトワが飛び出し、パンチングではなく、キャッチしようとする体勢なのがよく見えた。クルトワが捕球する直前、聞こえるわけがないが、私は絶叫した。
「切り替えろ!」
 日本の選手達も同じ考えなのはよくわかった。しかし、赤いユニフォームの切替が、青い我々の戦士よりも、コンマ5秒ほど早いのも、よく見えた。その約10秒後、反対側のゴールで、若い頃からの夢が完全に実現するのを目の当たりにすることになる。そして、このコンマ5秒差こそ、ここ25年間ずっと抱き続けてきた「近づけば近づくほど、具体化されてくる差」そのものだったのだ。

 私のワールドカップリアルタイム?経験(実際には1日半遅れの新聞報道をワクワクして待って行間を夢見る日々だったが)は、クライフとベッケンバウアの西ドイツ大会から。大会終了後、サッカーマガジンとイレブンを暗記するまで読み込んだ折に、「4年前の70年大会はもっとすごかった」との報道を目にした。そこで、図書館に行き、70年当時の各新聞の縮刷版を調べることとした。そこで、知ったのは準決勝のイタリア対西ドイツの死闘。子供心にも思いましたよ。「いつか、このワールドカップに出る日本代表を見たい、そしてこのような死闘を演じるのを見たい」と。
 それから20余年、マラヤ半島の先端ジョホールバルと言う都市で夢は叶った。ただし、日本が、イタリア対西ドイツを演じることは中々難しかった。8年前、南アフリカでのパラグアイ戦は、それに近い戦いだった。ただ、相手が世界のトップと言えるかと言うと少々微妙だった。けれども、今回のベルギーは正に世界のトップレベル、優勝経験こそないが、プレミアリーグのエースクラスがズラリと並び、80年代は欧州でも最強クラスの実績を誇っていた歴史もある。そして、このロストフ・ナ・デヌと言うアゾフ海そばの美しい都市で、私の子供の頃からの夢は叶ったのだ。ワールドカップ本大会で、大会屈指の強国と丁々発止をすると言う夢が。
 本稿では、あの絶望的な最後の10秒間を含めた約95分間の至福の時間を、40余年のサッカー狂人生と共に振り返りたい。なお、ハリルホジッチ氏だったならば論と、西野氏への土下座については、別に書く。本稿は、あくまでも、あの試合への感情を吐露するまで。

 あのコンマ5秒差。これが、戦闘能力差、実力差なのだ。
 試合後、結果を見て、本田はコーナキックをもっとゆっくり蹴って時間を稼ぐべきだったとか、トップスピードでドリブルしてくるデ・ブライネを止められなかった山口蛍を責めるなどの議論があるようだ。
 あの時間帯でゆっくりCKを蹴ろうとすれば、主審がタイムアップの笛を吹くケースは結構ある。大昔だが、78年ワールドカップ1次ラウンドのブラジル対スウェーデンでアディショナルタイムにネリーニョのCKをジーコがヘディングで決めたが、キックの前に主審が試合終了の笛を鳴らしノーゴールとなったことがあった。最近でも、09年の南アフリカ予選、敵地ブリスベンの豪州戦で、当の本田がゴール前の直接狙えるFKに時間をかけ過ぎて蹴らせてもらえなかったことは、どなたもご記憶だろう。
 直前の本田の直接FKはすばらしい弾道を描いたが、クルトワに防がれた(何か、本田の有効な直接FKは、南アフリカデンマーク戦以来8年ぶりではないかとの感慨もあったが)。その直後のCKである。残り時間僅かな中、ベルギーにイヤな印象を与えているこのCKで難敵ベルギーを崩そうと言う考えは実に真っ当なものだ。しかし、「崩そう」からの切り替える早さで、完全にベルギーにやられてしまった。これは上記した通り、戦闘能力差、実力差なのだ、駆け引きの差ではない。日本の選手も、それなりに反応していたのだ。でも、どうしようもない差だった。
 勝負はデ・ブライネが完全に加速した時についていたのだ。あの加速し、さらに3方向にパスコースを持つデ・ブライネを、どうやって蛍に止めろと言うのか。カゼミーロならば、あるいは往年のフォクツや、当時のルールのジェンチーレや、昔年のドゥンガや、全盛期のマスケラーノや、もしかしたら今日のカゼミーロならば対応可能だったかもしれないが。いや、カンナバーロならば確実に止めていたかな。さらに蛍がファウル覚悟で対しても、あの加速は止まらなかったかもしれない。さらに、あそこで蛍が退場になったら10人で残り30分をあのベルギーと戦わなければならない。そして、残念なことに、蛍はマスケラーノでもカゼミーロでもない。できる範囲で、ディレイを試みた蛍は、正しかったのだ。それにしても純正ストライカのルカクがあそこでスルーをするとは。
 今の日本選手は、過去になく多くが欧州五大リーグ、あるいはそれに順ずるリーグの各チームで、中心選手として活躍している。欧州で実績を挙げながら、今回23人に残れなかった選手も多い。過去、ここまで多くの選手が欧州で評価された時代はなかった。それが今大会の好成績につながったのは間違いないだろう。けれども、残念ながら、欧州チャンピオンズリーグの上位常連クラブ(いわゆるメガクラブ)で中心選手となった、いや定位置をつかんだ選手はまだいない。一方、ベルギー代表はプレミア選抜のようなものだから。その差が出たとしか言いようのない10余秒だったのだ。
 ついでに言うと、今の日本選手では、あのような長駆型速攻は難しいようにも思っている。日本では、5から10mのごく短い距離のダッシュが得意な選手は多いが、数10mの距離は必ずしも速くない選手が多いからだ。もちろん、例外はあり、かつての岡野や最近の永井謙祐のようなタレントもいることはいるのだが。
 まったくの余談。韓国には、朴智星、孫興慜と言った日本選手よりもランクの高いクラブで活躍した選手がいる、車範恨、奥寺時代を含め、ちょっと悔しい。もっとも今大会韓国がどうだったのか、もうドイツ人除けば世界中の誰も覚えていないだろうけれども。

 2点差を守れなかったことについて。日本固有の課題もあったし、当方の準備不足もあった。
 少なくとも今の日本代表には、上記した選手の活躍の場の相違と言う「格の差」とは、別な課題がある。それは体格、体幹の差、フィジカルフィットネスの差だ。たとえば、今大会、ロシア、スウェーデン、アイスランドと言った国が、見事な組織守備で強豪と戦った。ロシアがスペインをPKで粉砕する試合は生で観戦する機会を得たし、プレイオフでイタリアがスウェーデンに屈する試合はテレビ桟敷で堪能した。このようなサッカーで、欧州や南米の列強に対抗するのは、今の日本には不可能ではないか。選手のフィジカルが違い過ぎるのだ。前述したロシア対スペイン、7万大観衆のロシアコールの下、疲労困憊したロシアイレブンの奮闘は感動的だったが、私は一方で羨望も感じていた。どの選手も大柄で、プレイイングディスタンスが広いのだ。後方に引いてブロックで守備を固め、ゾーンで網を張るやり方は、失点しないためには有効なやり方だ。けれども、今の日本では、ワールドカップでああ言ったやり方では守り切る事は難しい。疲労してくると、プレイイングディスタンスの限界から、ゾーンの網がほころびてしまうと思うのだ。なので、2点差となった後に、後方に引きこもった守備を行うのは、得策には思えない。
 もちろん、一方で日本は、ごく短い距離の速さや、相手の意表をつくドリブルや短いパスの名手が多く、ロシアやスウェーデンからすれば、我々を羨望するところではあろうが。
 試合後、一部の方々が、「フェライニ投入後に、植田を投入するべきだった」と述べている。しかし、フェライニが投入されたのは、65分だったのだ。残り25分(実際はどの試合もアディショナルタイムがあるので30分)、CBを増やした布陣、つまり前を薄くした布陣で、守り切れるとは思えない。残り5分くらいまで、1点差で行って、ベルギーがえぐるのを諦めて放り込み始めたならば、そのような選択肢もあっただろうが。
 では、どうすればよかったのか。採るべき手段は、ラインをまじめに上げて、コンパクトにして粘り強く戦う、つまり戦い方を変えないことしかなかったと思う。実際、フェライニ(とシャドリ)投入後、ベルギーが無理攻めを開始後は、前半以上に日本にも逆襲のチャンスも出てきた。香川のスルーパスから酒井が抜け出した場面で、もう少し中央との連係がとれていればとも思うではないか。すべてはお互いの攻守のバランスなのだ。
 そこで、今回のチームの準備不足問題に突き当たる。今回の日本代表はすばらしかったけれども、守備面では課題が多かった。過去のワールドカップでの大会別の平均得点と失点を以下まとめた(小数点1位で四捨五入)。
98年 0.3 1.3
02年 1.3 0.8
06年 0.7 2.3
10年 1.0 0.7
14年 0.7 2.0
18年 1.5 1.8
 今大会の得点力が他大会をより優れていたこと、一方で守備については過去と比較して普通だったこと、それぞれがわかる。失点については、2次ラウンド進出に成功した02年、10年はおろか、98年よりも悪くなっているのだ。しかも98年は、戦闘能力では大会随一と言われたアルゼンチンと、最終的にベスト4にたどり着くクロアチアと同じグループ。また、当時の日本人選手の個人能力も、02年以降と比べるとまだまだで(10代の頃からプロフェッショナルになろうと決心した選手が揃うのは、02年以降)、攻撃力はそこそこあるが守備力は怪しい選手も多かったのを、井原正巳の圧倒的個人能力でまとめた守備ラインだった。そして、今大会はそれよりも失点が多かったのだ。
 2点目の失点は現場では、逆側のゴールだったこともあり、何がまずかったのかはよくわからなかった。試合後、しっかり画像分析している方が整理してくれているのを見たが、選手間でラインコントロールでのずれがあったようだ。ある意味、今大会の守備ラインを象徴していると言えるだろう。そう考えると、1点目直前の混乱にしても、ポーランド戦の失点、セネガル戦の1点目など、守備者間の意思疎通がもう少しあれば防げたものも多かった。要は、守備選手同士の連係が不足していた訳である。
 現実的に西野氏に与えられた準備期間の短さを考えると、これはしかたがないようにも思う。この準備期間の短さ問題(つまりハリルホジッチ氏解任問題)については、別にまとめる。ただ、2失点を守れなかったことは、今回の過程で作られたチームの必然だったのかとも思う。
 余談ながら、やり方を変えず、最終ラインの連係が時に崩れたとしても、守備力を強化する手段として、「人を換える」と言う手段があったとは思う。しかし、これまた時間不足で、山口蛍や遠藤航を使った守備強化をする余裕がなかったのだろう。私が思いつくのは、槙野を香川に代えて左DFに投入、長友を左サイドMFに、乾をトップ下に回すくらいだろうか。あとは、一層の切り合いを目指し、香川か原口に代えて武藤を投入し右サイドを走らせるか。いずれにしても、リスクを含む手段であり、メンバを替えずに我慢する方が選択肢としては安全だったように思う。そう考えると、同点にされても80分まで我慢して、原口→本田、柴崎→蛍、と言う交替は、相応に合理的だったと思う。この交替については後述する。
 ここで、まったく無意味なIFを3つ語りたい。サポータの戯言である。もしボール奪取とボール扱いに両立した井手口がクラブ選択を誤らず、昨シーズン同様のプレイを見せてくれていれば。もし西野氏が、中盤前方での守備がうまい倉田秋を選んでいれば。そして、2シーズン前に世界最高の守備的FWとしてプレミアを獲得した岡崎の体調がベストであれば。

 一方で、今大会の日本の攻撃はすばらしかった。
 コロンビア戦。大迫は個人能力で敵DFを打ち破り、香川の一撃と併せ、早々にPKを奪った。本田の正確なCKからの大迫の完璧なヘッド。セネガル戦。柴崎の美しいロングパスを受けた、長友と乾の連係。大迫の妙技によるクロスからの岡崎らしいつぶれ(とつぶし)、本田の冷静さ。
 いずれの得点も、各選手の特長が存分に発揮された美しいもので、それぞれの場面の歓喜を思い起こすだけで、今でも目が潤んでくる。いずれも、日本の強みである、素早い長短のパスによるショートカウンタからのもの。短い準備期間で作られたチームが、次第に完成していくのがよくわかった。しかも、このようなサッカーは、日本中の少年サッカーで、毎週のように行われているものだ。言わば、よい意味での日本サッカーの特長が発揮されつつあったのだ。
 そしてベルギー戦。前半を耐え忍んで迎えた後半序盤の2発。柴崎のパスで抜け出した原口の妙技。香川との連係からの乾の一撃。いずれも、最高レベルのものだった。追いつかれた後も、我慢を重ね速攻をしかける。80分の本田、蛍の投入も、本田の守備面のマイナスを蛍がカバーし、柴崎がいなくなった攻撃力を本田の技巧で補完しようという意図は奏功しかけた。実際、終盤本田と香川の連係を軸にいくつか好機をつかめたのだし。

 一部に02年に互角に近い戦闘能力だったベルギーと、大きな差をつけられたことを悲観する方がいるようだ。けれども、ベルギーは80年代から90年代前半にかけては、ヤン・クールマンス、エレック・ゲレツ、エンリケ・シーフォと言ったスーパースタアを擁し、欧州屈指の強豪だった。そのような古豪が、02年の日本大会以降出場権を得られなかったことを反省し、若年層育成に合理的に取り組み、優秀な選手を多数輩出してきたと言うことだろう。我々の歴史や努力を卑下する必要はないが、先方は先方で大変な歴史の厚みを持っての成果なのだ。焦る必要はない。
 一方で、近づけば近づくほど、具体的になる差。その差を埋めるのは容易ではないことも間違いない。しかし、差が具体的に可視化されれば、たとえその道は遠くても、課題解決に進むことはできる。考え方は2種類ある。長所を伸ばすか、短所を解消していくか。
 今の日本の長所をさらに伸ばし高みを目指す行き方。もっともっと選手の技巧と判断力を高め、敵がどのような布陣を引いてきても、一定時間以上ボールキープができれば対抗は可能になる。ブラジルやアルゼンチンが何が起こっても、どのような相手でも、毅然としたサッカーを演じられるのは、そのためだ。
 ベルギーとの戦いを通じて、長駆型の速攻と後方に引いた守備の難しさを論じた。けれども、原口のように長距離の疾走後にもう一仕事ができるタレントが多数いれば、タッチラインを一気に走る抜ける速攻が可能になれるのではないか。酒井宏樹のように技術と判断力に加え体格にも優れたタレントが揃えば、ブロックを固める守備を世界の列強に対してやれるようになれるのではないか。
 いずれのやり方も、容易な道ではない。いや、「これは無理なんじゃないですか」とも言いたくもなるような話だ。しかし、ベスト8を、さらにその上を目指すと言うのは、そう言うことだろう。まだ我々には学ばなければならないことが無数にあるが、ここまで来られたから、その差が具体的になったのだ。
 焦らず、野心的に、粛々と上を目指し続けることは、楽しいことだ。

 一方で。
 冒頭で述べたように夢は叶った。そして、その叶った夢は、あまりに悲しく絶望的なものだった。
 以前も述べたが、ベスト8に入るためには、ベスト16に残らなければならない。それがいかに難しいことなのかは、我々は十分に経験している。だからこそ、今回のような好機が次にいつ訪れるのか、絶望的になる思いもある。あの不運な1失点目がなければ、本田のFKがもっといやらしく変化していれば、などと、今でも考えずにはいられない。
 しかし、過去も幾度か述べてきたように思えるが、思うようにならないから、サッカーは楽しいのだ。ドーハの悲劇について述べたことがある。誰かが命を落としたわけでも、傷ついたわけでも、多額の資産を失ったわけでもない。それでも、あれだけ悲しい思いを味わうことができるのだ。そして、またも。
 我ながら幸せな人生だと思う。このような経験を積むことができたことに、ただ、ただ感謝したい。ありがとうございました。

 でも、でも、勝ちたかった。
posted by 武藤文雄 at 23:31| Comment(2) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月02日

ベルギー戦を前に

 6回連続出場、3回目の2次ラウンド進出成功。

3度の2次ラウンド進出は、アジア史上初めてのはずで、何とも誇らしい。サッカーに浸り切って40余年、私達はとうとうここまで来たのだ。

だからこそ、このベルギー戦は勝たなければならない。何としてもベスト8に進出すると言う、新たな成功体験を積むのだ。当たり前の話だが、ベスト8に進出するためには、ベスト16にまで到達するのが必要だ。そして、その必要条件を満たすまでが、いかに大変かと言うことを、我々は存分に経験している。そして、今回はその大変なことの実現に成功したのだ。この好機を活かさずしてどうするのだ。


確かにベルギーは強かろう。けれども、1次ラウンドを見た限りでは、各選手が圧倒的な個人能力の高さを誇るが、その連動性は十分にはしあがっていないように思えた。

いつものことだが、各選手が丁寧に位置取りを修正し続け、身体を張り、粘り強く対応することで、敵に提供する好機の数を減らすこと。柴崎に前を向かせる工夫を重ね、大迫が受けやすい状況を作り、乾と長友、原口と酒井宏樹を連動させること。これらをやり続ければ、活路は必ず開けるはずだ。

また、歴史的にベルギーとの相性はよいのだ。記憶頼りだが、敗れたのは昨年が初めてのはず。岡田氏の時はキリンカップで大差で、ザッケローニ氏の時には敵地で、それぞれ勝利している。もちろん、当時とはメンバが随分と異なるが、歴史的に見ても、我々の欧州国との相性は、南米よりは悪くないのだ。


ポーランド戦の終盤の戦い方が議論となっていると言う。これはこれで、けっこうなことだ。我々の論点はただ一つで、「セネガルが同点とするリスクをどう見たか」と言うことのみだ。私は現場にいて、セネガルの試合はスコア以外は何もわからず、西野氏の判断の是非をどうこう言える立場ではなかった。しかし、西野氏はしっかりと結果をつかんだ。現場の責任者が、己のリスクを掛け、その賭けに勝ったのだ。見事なものではないか。

ただ、我々サッカー狂とは異なる方々が、異なる視点でものを語るのは理解できなくはない。彼らは、我々と異なり、サッカー狂ではないのだから、「これでは面白くない」とか「このやり方が公正なのか」など、我々とは異なる視点からの意見もあるのだろう。多様な意見があるからこそ、世の中はおもしろいのだ。そして、ワールドカップと言う世界最高のお祭りは、このような多様なものの見方をする方をたくさん集めることができる。結構なことではないか。

彼らが、この機会にサッカーと言う底なし沼の魅力を持つ娯楽に触れてくれればそれでよい。そのうち何人かは、この底なし沼にはまってくれるかもしれないし。


また、大会直前の監督人事についても触れておこう。

私はあの更迭劇は、何ら合理性はなかったものと考えている。だからと言って、ここまでの西野氏の手腕を否定するのはおかしいだろう。確かに、ポーランド戦終盤、他力本願に追い込まれたのは、残念だった。けれども、いくつかの幸運をしっかりつかみ、不運を丹念にはね返し、西野氏はここまで我々を導いてくれた。これ以上、西野氏に何を望むのか。

以前よりしつこく述べて来たように、私は西野氏が大嫌いだ。だからこそ、この2次ラウンド進出と言う偉業を成し遂げてくれたことに対し、心より土下座し、感謝の念を捧げたいと思っている。この土下座行為については、大会後じっくりと作文したい。


ロストフ・ナ・ドヌと言う都市は、ドン川がアゾフ海に流れ込む河口近くの湿地帯。ロシアと言うよりは、地中海世界を思わす、キラキラした輝きにあふれる都市だ。

この美しい都市で、我々は偉業を達成する。そのスタジアムの片隅にいられることに、興奮を禁じ得ない。私は今から、長谷部とその仲間たちと共に戦い、歴史の一員となる。

posted by 武藤文雄 at 23:24| Comment(9) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月28日

ポーランド戦を前に

 ポーランド戦に向け、ボルゴグラードに向かうバスの中で。


 ポーランドと言えば、74年西ドイツワールドカップだ。

 私がサッカー狂になりかけていた中学2年生、言うまでもなく最大の憧れはヨハン・クライフであり、最大の尊敬はベルディ・フォクツだったわけだが、ポーランド代表も忘れられないチームだった。

 右ウィングのグジェゴシュ・ラトー(大会得点王)と左ウィングのロベルト・ガドハのスピードと突破がすばらしかった。ガドハの高精度CKを、飛び込んだ小柄なラトーがニアポストからヘディングシュートで決める美しさと言ったら。また、同大会で2本のPKを止めた長身GKのトマシェフスキも忘れ難い。

 82年のボニエクのチームもすばらしかったが、やはり私にとってのポーランドは、74年のチームだ。あれから44年、11ワールドカップが経ったのか。

 2002年の大会準備で、トルシェ氏が率いる日本が、高原と中田の得点で完勝したのは、記憶に新しい。当時は「あのポーランドに敵地で勝てるようになったのか」と感動したものだ。


 そして、きょうを迎える。

 先方がグループリーグ敗退が確定しての3戦目と言うのは、少々予想外だったが、レバンドフスキを抱えるチームが弱いわけがない。ここ20年来の日本代表の特長である、中盤での厳しく丁寧な組織守備で戦い切り、2次ラウンド出場権を獲得したいところだ。

 直前の監督交代劇と言う、合理的には説明しづらい人事もあった。

 一方で、元々今回のチームは、いずれのポジションも穴がない。02年はチーム全体の若さ、06年は左サイドと監督、10年は点取り屋、そして14年はCBと、チームとして弱みがあったが、今回はそれがほとんどない。多くの選手が複数年欧州のクラブで実績を積んでいるのも、それを裏付けている。これは、日本の津々浦々で、少年たちにサッカーを教えている我々の勝利とも言えるものだと、自惚れている。

またチーム全体のコンディショニングが上々なのも見事なものだ。特に負傷からの回復が心配されていた酒井宏樹、乾が間に合ったのみまらず、見事なプレイを見せてくれているのが、その典型となる。

今日の試合、ポーランドは、日本の攻撃の起点となっている柴崎をつぶすと共に、長友、酒井宏樹の両翼に人数をかけて押さえに来るだろう。そこを

どのように対処し、自分たちのペースの時間帯を増やすか。これまで、「秘密兵器」として隠していた?、武藤と大島をどのように使うのかも興味深い。特に、「武藤よ、頼むぞ」、私にワールドカップ本大会での、同姓の選手の得点と言う歓喜を味あわせてください。


 現地は猛暑とのこと。

 3試合目の選手たちには、相当厳しい条件となるだろう。けれども、彼らにすれば、今日の試合ほど、自らの誇りを発揮できる機会はないはずだ。我々も灼熱の中、でき得る限りの声援を送ります。

 がんばりましょう。 

posted by 武藤文雄 at 19:47| Comment(1) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月24日

エカテリンブルグに向かう道で

 いきなり初戦で勝ち点3獲得と、理想的に大会をスタートできた。

 相手が10人になってしまったのが幸運だったのは間違いないが、その退場劇を生んだのは大迫の見事な個人技と、香川の落ち着いたシュートの賜物である。日本が適切な攻撃で、コロンビア守備網を破ったから、この幸運が舞い降りたのだ。

 また、後半の戦い方はとてもよかった。10人で後方に引いたコロンビアに対し、素早く左右にボールを回しながら、大迫の格段の引き出しのうまさを活かし、両サイドで数的優位を作り、幾度も好機を生むことができていた。人数が減ったチームに守備を固められて攻めあぐむことがよくあるが(典型例が、ブラジル大会のギリシャ戦)、この日の日本はとてもよかった。各選手の相互理解と体調は上々、よい状態で大会に入れたと言うことを素直に喜びたい。

 前半、中途半端な攻撃を試みてコロンビアの速攻に悩まされたことを非難する向きがあるようだ。確かにあのような状況では、後方でじっくりボールを回し、コロンビアを前に引き出せばよかっただろう。けれども、晴れのワールドカップの初戦で、いきなりPK退場で先制してしまったのだ。我らが代表選手達は機械ではなく人間である。そこまでリアリズムに走れなかったことを、私は否定しようとは思わない。

 また体調不良のハメスを投入した、敵将の失策を指摘する方もいるようだが、私はそうは思わない。あれだけ日本が攻勢をとっていたのだ、あれを放置したら、いつか失点していた可能性は高い。ペケルマン氏が、ネームバリューがある(さらに、日本にとっては4年前のトラウマもある)タレントを前線に起用し、日本が後方により気を使う状況を作ろうとしたことは、1つの考え方だったろう。氏が何もしなければしないでも、あの日本の勢いある攻撃をコロンビアが止め切れたとは思えない。

 ともあれ、日本は幸運をよく活かし(怪しげな判定のFKによる失点と言う不運もあったが)、初戦勝ち点3獲得と言うベストに近い結果を残すことができた。しかも、ほぼ90分間に渡り10人の相手と戦ったため、次戦の相手セネガルは、日本がどのように戦ってくるかの予想が非常に厄介な状況となっている。これらを含め、まずはめでたいことだな。


 昨晩は、エカテリンブルク近郊のチャリビンスクと言う町に泊まり、競技場に向かうバスの中。一本道の左右は、白樺の森か草原が果てしなく広がる。このあたりの白樺は、ロシアでも最も白く美しいことで有名とのこと。


ちょっと豆知識。

セネガル戦が行われるエカテリンブルグは、大昔は流刑地で、ロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世一家が惨殺された都市とのこと。と言う事で、モスクワ行きのアエロフロート内で「最後のロシア皇帝(植田樹著)」と言う本を読んだ。絵に描いたような付け焼き刃w

エカテリンブルクはウラル山脈の東で、当時のロシア人からすればシベリアの一角。

 ソビエト革命政府が逮捕していた皇帝一家をエカテリンブルク近傍の地に送る決定をしたとのこと。その背景がすさまじい。帝政ロシア時代、歴代の皇帝により、多くの革命家や進歩的知識人が同地近郊に送られた。ニコライ2世もレーニンを含む多くの革命家をシベリア送りにしていたそうだ。

そして、ロシア革命の成功で、多くの革命家がシベリアから解放され、首都のペテログラードに帰ってきている。逆に、そこにニコライ2世一家を送り込むことそのものが、革命家たちの圧政者への報復だったとのこと。

 ロマノフ朝が滅びた要因の一つに、日露戦争があったことはよく知られている。その最後のツァーリ(皇帝)一家が流され惨殺された都市で、私達がアフリカの強豪とあいまみえる。このような地に、ニコニコと皆が集まり、サッカーと言う究極の娯楽を楽しもうとしている。

 歴史の雄大さと平和の尊さを感じずにはいられない。


 などと考えると、今晩の歓喜が一層のものになるのではないかと。

 いま私にできることは、長谷部とその仲間たちが全力を発揮してくれるべく、声を枯らすのみ。

 がんばりましょう。


posted by 武藤文雄 at 17:17| 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月16日

田嶋さん、あなたは何のためにリスクを背負ったのか

 四十余年、サッカーと言う玩具を堪能してきたが、今回のハリルホジッチ氏更迭騒動ほど、理解できない事態は初めてだ。本当に驚いている。

 ここで私が「理解できない」と言うのは、この更迭が「サッカー的に不適切だ」と言う意味にとどまらない。つまり、ワールドカップで勝つために最適なのか、あるいは、将来日本がワールドカップを制覇するステップとして適切なのか、と言う「サッカー的に」重要な視点から、「理解できない」のではない。
 非サッカー的、つまり政治的な思惑とか、スポンサなどサッカー外からの圧力などを考慮しても、田嶋会長の今回の意思決定の理屈、根拠、判断基準が、まったく「理解できない」のだ。サッカー的な妥当性にも理解できないのはのみならず、それ以外の事情を考慮しても理解できず、ただただ愚かしい意思決定に思えてならないのだ。世の中には、色々な事情と言うものが存在し、サッカー的是非だけからは物事は判断できないとか、記者会見では正直にすべてを語れない、と言うことを考慮しても。
 冒頭に明言しておくが、私はハリルホジッチ氏のチーム作りを評価しており、ここまでの日本代表での成果も上々で、氏が率いる日本代表がロシアで相応に好成績を挙げてくれるのではないかと期待していた(詳細は別途まとめたいと思っている)。だから、今回の更迭劇には失望している。けれども、それはそれだ。田嶋会長のの意思決定の背景を理解できない話は別である。

 過去も日本サッカー界には、サッカー的に不適切な意思決定はいくつかあった。ただ、それぞれにおいて、サッカー的に納得はいかず非常に不愉快な思いは相当だったものの、それ以外の事情は推定可能だった。そしてその推定要因が、非常に残念だったからこそ、不愉快だったのだが。
 たとえば、加茂氏留任時の「腐ったミカン」事件、今回と類似の代表監督選択劇だった。これは、当時の意思決定者とネルシーニョ氏の在籍クラブの権益争いを考えると、それなりに背景は想像できた。でも、ネルシーニョ氏が率いる日本代表でフランスを目指したかった事は間違いなかったけれど。
 たとえば、フリューゲルス消滅。これは、当時の意思決定者が、出資企業の暴論との交渉に屈したことによる。いま考えても、あのすばらしいクラブが消滅したことは、ただただ悲しいだけだけれど。
 たとえば、我那覇選手の冤罪事件。これは、当初の誤った判断を、Jリーグ当局がその誤りが明確になったにもかかわらず認めなかったことによる。認めなかった理由は、面子のためなのか、かばいだてのためなのかは不明だが、そのような不公正な判断をする意思決定者が存在することは現実だったのだろう。繰り返すが、とてもとても残念なことであり、今回の代表監督人事以上にひどい話ではあったが。
 このように、過去サッカー的にはとても残念な意思決定はあったが、非サッカー的な基準で意思決定されたと考えると、その背景を理解できないこともなった。しつこく繰り返すが、とても残念だったけれども。
 
 けれども、繰り返すが、今回の代表監督人事については、意思決定者である田嶋会長の判断の背景が理解できないのだ。

 まず、サッカー的見地から考えてみる。上記の通り私はハリルホジッチ氏の手腕は高く評価している。しかし、異なる意見もあるだろう。

 まず、氏と選手たちの溝が大きく修復不能と言う、田嶋会長が記者会見で述べた説明通りのトラブルが発生しており、これにより会長が更迭を決断したと考えてみよう。ところが、落ち着いて整理してみると、この説明は、あまりに説得力が乏しいのだ。
 まず誰か中心選手が、ハリルホジッチ氏と意見が合わず、この人の下では勝てないと主張したとしよう。まあ80年代くらいまでは、クライフ御大を筆頭に「俺はこの監督の下ではプレイしない」と言う方々もいらしたが、ここ最近世界のトップ選手も、金満クラブへの集約が進み、ベンチで待機することにも慣れているから、この手の騒動は、ほとんど聞かなくなったが。
 そして残念ながら、いまの日本にはメッシやネイマール(いやレバンドフスキとかマネでもよいですが)のように、その選手がいるといないとではチームの戦闘能力がまったく違う水準になるようなタレントが、そもそもいない。したがって、もしハリルホジッチ氏と修復不能の関係の選手がいたのならば、その選手を外せば済むことだ。もし、いまの日本代表の誰かがそんなことを発言し、その選手の言い分を聞いて、監督を切ったとしたら、これほど愚かなことはない。
 では集団で選手が「この監督ではやれない」と、考えているとしたらどうか。現実的にはそのような事態が起こったとしたら、マスコミ関係者が必ず前兆を報道するだろうから、現実的には考えづらい。また、そこまで情けない代表チームたちだとも思っていないけれども。とは言え、万が一そのような事態になり修復不能の事態になったと言うならば、、最も責任が重いのは技術委員長だった西野氏と、日本人コーチとして入閣していた手倉森氏である。そして、そこまで事態が混乱していれば、たとえハリルホジッチ氏を更迭したとしても、すべての選手たちがこの2人を信頼していくとは思えない。したがって、西野氏を後任とする人事は、極めて愚かしい選択となる。

 それでは、協会がハリルホジッチ氏の監督としての能力を疑問視し、上記した選手との溝とは別に、「氏では本大会に勝つのは難しい」と判断し、田嶋会長が更迭を決断したとしよう。私は意見が異なるが、現実的に韓国に大敗したり、準備試合で思うような成績を挙げられていないのだから、そう考える人がいても、おかしくはないだろう。
 ただし、そうなると、問題はタイミングだ、
 後任の監督が準備する時間を作るために、更迭は早い方がよいに決まっている。ところが、ここまで引っ張った。そうなると、考えられる一つ目のケースは、ずっと前から、更迭したいと考え、後任を探したが見つからず、ここまで引っ張ってしまい、頼めるのが西野氏だけだったと言うことになる。後任を見つけられない協会会長の責任は限りなく重い。西野氏に任せるならばもっと早く決断できたはずだ。
 次に考えられるケースは、本当にマリ戦、ウクライナ戦で決断し、他の監督を探す時間がなかったと言う状況だ。一部の評論家は「ハリルホジッチ氏でなければ誰でもよい」と語っているようだが、協会としてそのような判断を下すのはないとは言えないのかもしれない。相当珍しい状況とは思うけれど。しかし、それを記者会見で「氏と選手たちの溝」と言う、偽りでしかも後から一層物議をかもすような理由を説明したのだから、これはこれで愚かとしか言いようがなくなる。

 以上、サッカー的な見地から、田嶋会長の決断、発言に合理性は見られないことを整理してきた。
 では、非サッカー的見地から、今回の決断を理解できるだろうか。

 たとえば、最近日本代表のテレビ視聴率が下がっているから視聴率が稼げる監督が必要だと、広告代理店が圧力をかけたとの説がある。しかし、西野氏で視聴率が上がるとはとても思えない。もし、カズなり中田英寿氏、あるいは大技で松木安太郎氏を監督に抜擢すれば、状況は好転するかもしれないが(もちろん、「そうした方がよい」と言っているわけではないので、誤解しないでくださいねw)。

 たとえば、adidas殿が自社と契約している香川を代表に選ばないから圧力をかけたとの説がある。しかし、同社と契約しているのは香川だけではない。必要ならば、ハリルホジッチ氏が選考した選手をプロモートすればすむことだ。現実的にこのような噂が広がることが、香川にとって気の毒な事態であり、西野氏の選択の幅をせばめかねない。何より、多額のキャッシュを提供してくれているスポンサに失礼だよね。余談ながら、私は、ハリルホジッチ氏は香川への期待は相当大きかったと見ている。香川があまりよいプレイを見せなくとも、しつこく香川の起用を継続していた時があったからだ。香川が選考されなくなった以降代表の状態があまりよくないこともあり、ハリルホジッチ氏が留任した方が、香川が選考される可能性は高かったようにすら思っている。

 結局のところ、広告代理店の意図がどうしたとか、スポンサの意図がどうしたとか、皆が色々言うけれど、皆の意向は日本代表が勝つことに尽きるのだ。

 たとえば、田嶋会長が政敵の成果をなくしてしまいたかったとの説がある。具体的には、ハリルホジッチ氏を日本に連れてきたのは、田嶋氏と会長の座を争った原氏、あるいは原氏と近い霜田氏であり、田嶋会長としては、彼らの功績となることを、とにかく消し去りたかったという説だ。しかし、落ち着いて考えれば、ハリルホジッチ氏がワールドカップで好成績を収めれば、田嶋会長は横でニコニコして「本当によくやってくれた」と言ってさえいれば、皆に尊敬されたことだろう。一方、西野氏が不成績に終われば、帰国後重苦しい記者会見でハリルホジッチ氏を更迭した責任を問われる。いや、残りの人生の間、常にロシアワールドカップを滅茶苦茶にした男と呼ばれ続けるのだ。今の田嶋会長がそこまでやる理由にはならない。

 以上、非サッカー的な見地からも、今回の田嶋会長の意思決定の背景が理解できないと述べてきた。さらに言えば、今回の決断で、田嶋氏がトクをすることなど何もないように思うのだ。唯一、西野氏がロシアで見事な成績を収めても、称賛されるのは西野氏だ。「見事な決断」と田嶋会長を評価する向きはあろうが、必ず「ハリルホジッチ氏を留任させても、よかったのではないか」との意見が付随する。
 そう考えると、田嶋会長が、心底サッカー的発想で日本サッカーのために行動する男だと考えても、酸いも甘いも嚙み分けた剛腕の男だと考えても、周りに気を使いながら調整する小心な男だと考えても、合理的な理解ができないのだ。いったい、田嶋さんは何を考えて、ハリルホジッチ氏をこのタイミングで更迭し、西野氏に日本代表を託したのだろうか。

 もちろん、陰謀論を深めれば、いくらでも邪説は考えられる。誰かが田嶋会長を追い落とそうとしているのでないかなどと。
 たとえば、田嶋氏の以前の上司が、最近自分の言うことを聞かなくなったから切ろうとして不適切な助言を行い、田嶋会長はそれと知らず言うことを聞いてしまったとか。たとえば、田嶋会長には、西野氏とは別な意中の人物がいたが、その人は田嶋会長と心中する気はなく、会長がハリルホジッチ氏に更迭を伝達後に代表監督就任を拒絶したとか。たとえば、最近大きな成果を挙げ田嶋会長の次をねらえる人に、会長が乗せられてしまったとか。
 まあ、考え過ぎでしょうが。

 私が選手田嶋幸三を認識したのは、今でも忘れもしない75-76年の高校選手権の決勝戦だ。浦和南の主将田嶋は、静岡工業の石神良訓の執拗なマークをかいくぐり、ビューティフルゴールを2発決めた。久々に登場した技巧も優れた大型ストライカ、近い将来日本代表の中軸になるのではないかと、期待は大きかった。筑波大時代に代表にも選ばれ、名門古河に加入。ところが早々に「自分は指導者を目指す」と引退してしまった。
 その後、指導者として明確な成果を挙げることはできなかったが、日本協会では中枢の立場をとり続け、着々と地位を上げ、満を持して会長に就任した田嶋氏。おそらく、我々には理解しがたい判断基準があるのだろう。
 今となっては、その意思決定が、ロシアと将来の我々の歓喜につながることを、祈るのみである。
posted by 武藤文雄 at 00:45| Comment(8) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月10日

ロシアに向けたの準備が整った試合

 日本1対1シリア。

 前半はひどかった。ボールがしっかりと回らず、およそ中盤が機能しない。 思うようにボールを保持できない故、無理な縦パスが多く、ボールを失う悪循環。さらに、ハリルホジッチ氏が「デュエル」を要求するからだろう、敵のボール保持時間が多いのに、無理に強く当たりに行くから、かわされピンチを増やす。
 それでも、今の日本はFWの個人能力が高い。前線で大迫はしっかりと持ちこたえるし、原口は幾度もシュートまで持ち込む。前半終了間際の久保のシュートも惜しかった。しかし、シリアのDFも強い。特に主将のアルサリフは、ロンドン五輪予選から、我々に立ち塞がっていた名手(大迫との丁々発止当時も今も見事な戦いだ)で、今日もすばらしいプレイを見せてくれた。と言うことで、前半日本がリードしてもおかしくはなかった。もちろん、リードされても不思議はなかったが、充実の川島と麻也を軸に、何とか守り切る。
 後半開始早々も同じ展開。そして、押し込まれた展開から許したCK、ショートコーナへの緩慢な対応、期待のCB昌子の目測ミスから、あえ無く先制を許した。

 元々、この試合はとても難しい試合だ。
 何よりアウェイ(と言っても中立地だが)イラク戦に勝ち点3を確保するのが最重要事項。そのための準備となるこのシリア戦は、体調のピークを合わせるわけにはいかない。しかし、ビジネス上の理由で、満員の大観衆を集めて仰々しい試合としなければならないのがつらいところ(いつもいつも語っているが、カスミを食うだけでは生きられないのだから、しかたがない)。そうなると、そうひどい試合を見せると勢いが出ない。
 さらに、以下の特殊条件が重なる。今回の代表強化セッションは、欧州のシーズンが終了し、選手達は休暇前にもうひと頑張りと言うタイミング。加えて、久々にハリルホジッチ氏が、欧州クラブ所属選手を集中強化(あるいは観察)できる貴重な機会。
 そうこう考えると、何とも焦点の絞りづらい試合なのだが、このままでは、内容は悪いは、結果も出ないと言うことになる。その状況でイラク戦に臨むのでは、何とも重苦しい雰囲気になってしまう。

 内容が悪いと言えば、タイ戦もそうだった。中盤でのボール回しが明らかに劣勢にもかかわらず、香川、岡崎、久保の見事なシュート力で点差を広げ、麻也を軸に最終ラインでしのぎ続け、あげくは川島のPKストップ。チームとしての機能は褒められたものではなかったが、気が付いてみれば、スコアだけ見ると4対0の完勝だった。悪いなりに拾った試合ではなく、すごく悪かったけれど完勝だったのだ。日本代表を40余年見続けているが、あれほど内容が悪い中で、結果だけがすばらしかった試合はなかった。また、その前のUAE戦は、アウェイゲームで、序盤に久保が先制したこともあり、守備的にペースを握ればよい試合だったが、中盤から崩した好機は少なかった。つまり、今年に入って能動的に中盤が機能した試合はなかったのだ。これは長谷部の負傷離脱の影響もあったのだが。
 言ってみれば、今年に入っての日本代表は、モドリッチのいないレアル・マドリード、イニエスタがいないバルセロナのようなサッカーを見せていたのだ。これでは、安定した試合は望めないし、何より相手DFが当方のFWより能力が高ければ、点はとれない。そして、残念ながら、大迫も原口も、クリスチャン・ロナウドやメッシの域には達していない。
 さらに振り返れば、日本にとって貴重な強化期間だった1次予選で、ハリルホジッチ氏は先を見据えた準備をあまり行わなかった。必ずしも本調子でなかった本田、香川を軸にした攻撃ラインを拘泥、組織守備が崩壊しても試合結果がよければ、それでよしとの態度だった。
 そして、最終予選でいきなりUAEに苦杯し、イラクに苦戦して、慌てて組織守備を整備。原口、大迫を抜擢し、攻守を建て直した。平行して、吉田麻也が格段の成長を遂げたのが大きかった。このあたり、ハリルホジッチ氏の追い込まれたときの手腕はさすが、と言うべきだろう。
 ただし、上記の通り、スコア的に完勝だった敵地UAE戦にしても、ホームタイ戦にしても、中盤でのボール回しは褒められたものではなかった。そして、このシリア戦の前半、これが3試合続くと言うことは偶然ではない。長谷部がいないと、中盤の展開力が激減するのだ。そして、イラクはアジアの中では、日本、ウズベキスタンと並び、中盤の展開力が高い国だ。この状態で、この厄介な相手と戦うのか。いや、それでも予選は勝ち抜ける確率は高かろうが、33歳の長谷部を頼りに、ロシアに向かおうと言うのか。さすがに楽観的な私も、イヤな気分にとらわれ始めた。

 しかし、答えは簡単に見つかった。
 本田圭佑のインサイドハーフ起用だった。
 ザッケローニ氏時代の本田は、年齢的にも全盛期、トップ下で圧倒的な存在ではあった。しかし、細かすぎる崩しに拘泥したり、強引な持ち出しを狙い過ぎる傾向があった。そして、その本田の自己過剰評価と共に、ブラジルで日本は沈んで行った記憶は新しい。
 けれども、この日の本田は違った。
 交代時間が前後したが、アンカーに入った井手口の、早くて速い展開のサポートを受け、本田が長短のパスを繰り出し、中盤をリードした。そこに乾が加わり、溜めを作りつつ突然得意のドリブルで突破も狙う。こうなると、倉田も持ち味が出て来て、中盤で落ち着いてバランスがとれる。
 この日の本田は、自己過剰評価などみじんも感じさせず、よい意味で自己顕示欲を発揮しつつ、落ち着いて中盤を構成した。試合を積んで、大迫との位置関係が整理されれば、いっそう変化あふれる中盤が作れるようになるだろう。こうして軸ができれば、周囲の選手も役割が決まってくるはずだ。
 我々は、本田圭佑と共に、1人のトッププレイヤの登場、成長、飛躍、停滞を愉しんできた。そして、そのドラマに、成熟と言う新たな章が、刻まれようとしている。代表サポータならではの人生の贅沢である。

 遠藤保仁の後継者は、すぐそばにいたのだ。

 川島−麻也−本田−大迫と、縦のラインがしっかりと固まった。これにより、ロシアのベスト8以上に向けてチームの中軸がようやく整理された。本大会まで約1年、ちょうど、タフなイラク戦、豪州戦、サウジ戦を控える。準備状況としては最適なタイミングなのではないか。
 本田が、このシリア戦と同じポジションで常時出場できる的確なクラブを選択することを期待したい。そうすれば、このシリア戦は、ロシアに向けた準備が整った試合と記憶されることだろう。
posted by 武藤文雄 at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月28日

埼玉タイ戦前夜2017

早いもので、あの腹が立った埼玉UAE戦から半年以上が経過した訳だ。そして、迎えた敵地UAE戦、さすがにハリルホジッチ氏は、慎重で几帳面な策を選手達に指示、各選手がそれを冷静に遂行し、見事な2-0の勝利と相成った。細かい部分で、手放しで喜んでよいのか、と言う試合ではあったが、本大会出場にグッと近づいたのは間違いない。まずはめでたいことだ。

まずは、UAE戦を振り返ろう。
この日何より見事だったのは、吉田麻也の充実だった。前半から、的確な位置取りと丁寧なカバーリングを見せていた麻也の真骨頂は、後半2-0となったところで発揮された。技巧にすぐれた選手を多く抱えるUAEの逆襲を、丹念につぶし続けたのだ。
半年前埼玉でUAEに苦杯した試合では、逆襲対応に慌てる悪癖が出 てしまい、同点となるFKを提供するなどミスが目立った。けれども、豪州戦あたりから、非常に落ち着いたプレイを見せてくれるようになり、サウジ戦、そしてこの敵地UAE戦では、ほとんど完璧だった。
腕章も中々よく似合い、チームリーダとして風格も漂っていた。サザンプトンでも完全に定位置を確保したことを含め、完全に一段ランクを上げた感がある。この ベテランCBの向上は、ロシアでベスト8以上を目指そうと言う我々にとって、とてもとても嬉しいことだ。
余談ながら、後半幾度か日本が逆襲を許し、吉田が活躍する展開になったのは、皮肉な流れからだった。後半立ち上がり、日本は、ちょっとフワッとした感じで後半入ってしまい、UAEに2度ほど決定機を許した。その直後に、今野が突き放す2点目を決めたわけだが、タイミングも得点経過も絶妙だった。
麻也の正確なフィードを、大迫が完璧なヘディングで敵CBに競り勝って、フリーの久保にボールを落とず。久保は敵DFが寄せる前に、切り返して逆サイドへの正確なクロス。大迫が競り勝った際は、その後方でフォローしていた今野が、その間にファーサイドに進出、敵DFの裏から、久保のクロス を受けて落ち着いて決めてくれた。
同点機を複数回逸した直後に、2点差とされただけに、UAEには相当ショック だったはずだ。しかも、得点に至る流れが、個々の個人能力の差を活かしたものだっただけに、各選手が相当落ち込んだのがよくわかった。
その結果、日本が前半以上にパスを回せるようになったのだが、逆にチーム全体として分厚く守る方針が曖昧になり、前線で不用意なドリブルからボールを奪われて、時折逆襲を許す状況となった。
試合前の計画としては、2点差となれば、ホームのUAEが必死に前線に出てくるとので、後方を厚めにしっかり守って速攻をねらうやり方を考えていたのではないか。ところが、あまりに日本にとっては都合よく(UAEとしてはショッキングに)2点差となってしまったので、日本にとって制御が難しい流れとなってし まった。難しいものだ。

もちろん、この日の勝利を支えたのが、川島永嗣と今野泰幸の両ベテランだったことは言うまでもない。
正直言って、川島のスタメン起用には相当驚いた。ここ最近重要な試合では西川周作が起用され続けていたし、川島自身がFCメスでもほとんど出場機会が得られていなかったからだ。
前半半ばの好プロックにせよ、UAEのクロスをしっかり完封したことにせよ、川島はすばらしかった。プレイする機会が限られているにもかかわらず、よいトレーニングを積んでいるのだろう。ただ、ハリルホジッチ氏が、なぜ川島を起用したのかは、よくわからない。川島が公式戦でよいプレイを見せたならば理解できなくもないのだが、今回はそれにはあたらない。記者会見で、川島の経験やメンタルについて言及した模様だが、氏の真意はどこにあったのだろうか。
ポジティブに考えれば、試合出場機会に恵まれていないものの川島が相変わらず充実している、と言うことになる。ネガティブに考えれば、ハリルホジッチ氏は、西川ら他のGKのパフォーマンスに満足していないことになる。もちろん、Jの序盤戦で水際立ったプレイを見せていた東口の負傷も、氏の判断を左右したのかもしれないけれどね。
一方で今野のスタメン起用は驚きではなかった。今までハリルホジッチ氏が選考してきた中盤後方のタレントのうち、長谷部と井手口が負傷、永木はアントラーズ定位置を確保し切れていない、遠藤航はレッズで中盤では使われていない、と言う状況で、今野は呼び戻された。つまり、今野の招集は緊急事態に備えたものだっただけに、スタメン起用もある程度予想されたものだった。そして、今野はこの起用を存分に愉しみ、ついには得点まで決めてくれた。
ただし、今野をいわゆるボランチではなく、インサイドハーフに起用したハリルホジッチ氏の策は中々だった。アンカーに山口をおき、両サイドバックを自重させ、後方に人を残す。そうしておいて、今野を中盤の前方に配し、いわゆる刈り取りと攻撃支援を担当させたが、これが見事にはまった。原口と久保の2人はいわゆる相当後方まで引いて守る時間帯もあるので、今野のような守備力の高いタレントをここに起用するのは有効だった。このポジションに、今野の若いチームメートの井手口を使うとおもしろいのではないかと思ったりした。
今後今野が代表に再定着できるかどうかは、何ともいえない。代表チームが負傷者などが続き、メンバ構成が苦しくなった際に、30代半ばの経験豊富なベテランを呼び戻すのは有効な手段だ。ただし、そのような大ベテランを継続して招集するかどうかは、ワールドカップ本大会への準備を考えると、微妙なところだろう。特に83年1月生まれの今野にとって、ほぼ同世代の84年1月生まれの長谷部の存在が、代表再定着の大きな壁になる。
など考えていたら、今野が負傷で離脱したと言う。残念だ。同郷人が代表にいるのは、大きな喜びなのだよ。早期の回復と、上記した厳しいバトルへの復帰を祈るものである。
ともあれ、川島にせよ、今野にせよ、元気で充実したベテランの存在は頼もしいことこの上ない。そして、これらの貴重なベテラン達が、日本代表を一層分厚いものにしてくれているのだから、喜ばしいことだ。

日本のよさが目立った試合だったが、UAEのオマルを軸にした中盤の展開力には改めて感心させられた。上記した川島がファインプレイで防いだ前半の崩し、後半立ち上がりの素早くボールを左右に動かして許した決定機。日本の中盤守備がよかったにもかかわらず、隙を見て幾度か崩されてしまった。正直言って、豪州やサウジよりも、「戦いづらい」相手と言う印象がある。今回のUAE代表チームは若年層時代からの育成が奏功した世代と聞くが、このような強化が継続されれば、アジアサッカー界でのプレゼンスは高まっていくことだろう。これは日本にとっては歓迎するべき事態、知性と技巧を活かしたチームをアジア各国が作れば、アジアのレベルは格段に上がり、アジア域内の国際試合 で的確な強化を積むことができる。

さて、タイ戦。
勝ち点3の獲得が重要なのは言うまでもないが、贅沢を言うと得失点差を稼ぎたいところ。
大迫の離脱は痛いが、ここには岡崎がいるので問題はない。むしろ、ポイントは原口、久保の強力な両翼に、サイドバックをどのように絡ませるか。UAE戦は、長友と酒井宏樹に前進を自重させ、その役割を今野に託した。タイはUAEほど中盤でのキープ力はないだろうから、この個人能力の高い両翼に、サイドバックを含めた攻撃を交通整理して欲しい。このような交通整理が、攻撃力の強化に重要なはずだ。
ワールドカップまで、あと1年ちょっととなった。1つ1つ、丁寧に丁寧に積み上げ、ベスト8以上を目指すのだ。
posted by 武藤文雄 at 00:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月13日

サウジ戦、そんなに心配はしてないけれど

 いわゆるAマッチデイにワールドカップ予選がなかったがために準備されたオマーン戦。久々に代表復帰した大迫が前半に2得点し、4対0で快勝した。まずは、15日火曜のサウジ戦に向けた準備と言う視点で、いくつか考えたことを。

 スタメンで起用された大迫、齋藤学、清武のできが上々だった。しかし、これは当たり前と言えば当たり前のこと。3人とも能力は折り紙付きのタレントでブラジルワールドカップのメンバ。そして、大迫と学はチームの大黒柱として好調ぶりを発揮しているし、清武はレベルの高いクラブで定位置確保に苦労しているようだが、起用されればよいプレイを見せている。
 既に完全に定位置を確保し代表の中心選手となりつつある原口と合わせ、彼らが代表の攻撃の中心を担うのは当然のことなのだ。ただ、原口を含めた彼らはみなそれほど若いわけではなく、20代半ば過ぎ。チームとしては極端な若返りでも何でもなく、今まで起用機会が少なかった実力ある選手達が、当然のごとく起用され始めたと解釈すべきだろう。
 こう言ったタレントたちが、中々代表で定位置を確保できずにいたのは、ハリルホジッチ氏が気弱の性格のためか、1次予選で岡崎や本田など既存の経験豊富な選手の起用にこだわったため。もっとも、この2人の輝きが格段だったことも確かで、ハリルホジッチ氏を責めるのは気の毒からもしれないが。
 さて、そうなると気になるのは岡崎と本田。岡崎はレスターで一時定位置を失っていたが、ここに来て取り戻しつつある。オマーン戦でも、得点こそなかったが、前線での存在感は格段。そもそもUAE戦にしても、イラク戦にしても苦戦の要因は、岡崎を勝負どころの後半半ばに交代させてしまったことにあった。サウジ戦でも頼りになることだろう。
 一方の本田は、オマーン戦ではスタメン起用。決して悪い内容ではなく、清武に前を向くスペースを提供し、よいクロスには大迫とタイミングをずらして飛び込むなど、よく機能してはいた。ただ、かつての体幹を活かした格段のボール保持力は失われ気味。これは年齢的な問題もあり、プレイスタイルの変更を考える時期に来ていると言うことなのではないか。そんなバランスの崩れが、豪州戦の前半、原口が作った決定機を外したことにもつながったようにも思える。さらに9、10月の試合では後半半ばに明らかなスタミナ切れを見せていた。ミランで「干されてる」のは、プレイスタイルの問題があるのだろう。そして、干されているが故にスタミナに課題が出てきているのだろう。いわゆる悪循環である。しかし、これだけの実績を残した男である、このまま衰えていくとはとても思えない。この苦しみの中から、新しい本田圭佑が登場することを期待したい。

 などと考えると、このオマーン戦はもう少し戦い方に工夫ができたのではないかと思えてくる。
 たとえば、サウジ戦で予想される中盤より前のスタメンは、長谷部、蛍、本田、清武、原口、大迫、と言うところか(私ならば、本田ではなく岡崎をスタメンとするが)。どうしても点をとりたければ、岡崎(または本田)、学、浅野を随時投入することになる。ただ、ここで、誰をどう並べるのかが、整理できているのだろうか。
 たとえば、リードしている状況以外で、原口を外すことは考えられないが、そうなると学をどう使うのか。2人を両翼に並べるとしても、2人とも左サイドから挙動を開始するのを得意としているのを、どう整理するのか。それをオマーン戦で試すべきだったのではないか。
 たとえば、大迫と岡崎を並べて起用する時間帯が必ずあると思うが、どのように並べるのか。岡崎を右サイドに置くのか、いわゆる2トップにするのか、大迫をトップ下にするのか(その場合の清武の起用法をどうするか)。こう言ったことこそ、もオマーン戦で試すべきだったのではないか。
 たとえば、ワントップの布陣を基本にしているのにかかわらず、岡崎、大迫、浅野、久保と、いわゆるトップで起用すると機能する選手を4人呼んで、どう並べ、使い分けるつもりなのか。特にオマーン戦の終盤、岡崎、浅野、久保を並べたわけだが、その3人の位置関係が不明確だった。オマーンが精神的に切れてしまい、日本継続猛攻状態になっていたから、いい加減な配置で問題は起こらなかったが、日本からすれば貴重な準備試合の時間を無駄にしたことになる。また、いわゆるストライカタイプの選手は足りているのだから、異なるタイプの選手を招集しなくてよかったのか。
 さらに言えば、リードをしたときのクロージングのやり方が見えてこない。タイ戦でも1対0でリードして、各選手が消耗した時間帯、ハリルホジッチ氏はぎりぎりまで選手交代を使わず、終盤ピンチを招いたのは記憶に新しい。香川にいたっては自分が得点できない焦りから、チームのリズムを崩すプレイを連続していたのに。豪州戦でも、守備組織はよく機能していたが、香川や本田が前線でキープもできなくなっており、交通事故のリスクが出始めたのに、氏の動きは遅かった。今のメンバを見ても、永木や井手口など、中盤守備で貢献できそうな選手はいるが、彼らをどのように起用するのか、よくわからない。岡崎や本田や香川がベンチに控えていれば、彼らを「守備を期待して」起用する選択肢もあるのかもしれないが。
 昨年、1次予選でシンガポールと埼玉で引き分けたあの凡戦。直前の準備試合のイラク戦で、大勝に浮かれたのか、香川の交代選手の確認などを怠ったことを思い出したりするのだ。

 そうは言っても。
 チームは着実に前進している。特に、春先のシリア戦以降、情けない限りだった守備面が、先日の豪州戦では格段に改善された。「やれるのだから、もっと早くやってくれ」との思いもあったけれど。さらには、豪州戦にしても、このオマーン戦にしても、麻也が落ち着いて守備の中核をどうどうと担ってくれたのは頼もしい限り。一時のおバカがなくなってくれれば、これほど嬉しいことはない。
 実際、オマーン戦では、前半日本のCK崩れのあと、蛍や丸山が対応を誤り持ち出された場面は感心しなかったが、組織守備は機能していた。いくら何でも、このサウジ戦の守備は期待できるだろう。
 攻撃にしても、冒頭から述べているように、働き盛りの多くの名手が、爪を研いでいる。色々迷走気味だったハリルホジッチ氏さが、さすがに的確なメンバを選考してくるだろう。
 何のかの言っても、ハリルホジッチ氏は着実にチームを前進させているのは、間違いない。そうこう考えると、過剰にサウジを警戒するのは、かえって逆効果かもしれない。むしろ、しっかりとスカウティングされた敵の長所、短所を把握したうえで(ハリルホジッチ氏のスタッフは、そのようなシゴトはしっかりしているはずだ)、当方のよさを前面に出す戦いが適切なようにも思える。
 サウジ戦、しっかりと組織化された試合で、確実に勝ち点3を獲得することを期待したい。
posted by 武藤文雄 at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月13日

香川真司の今後

 ここのところ、香川真司は逆風下の状況に置かれている。ドルトムントでのプレイ機会が相当減っている。UAE戦でもタイ戦でも冴えが見られなかった。そして、イラク戦では代わって起用された清武が上々のプレイ。豪州戦でも清武のスタメンが予想されていた。
 しかし、豪州戦、ハリルホジッチ氏の選択は香川だった。両翼の原口と小林悠が相当引き気味に位置取りをする中、ワントップの本田と連係をとりながら、いわゆるファーストディフェンダとして、派手ではないが落ち着いたプレイを見せ、90分間フル出場をした。しかしながら、我々が香川に期待するところの、鮮やかな個人技による好機演出は、ほとんど見せてくれなかった。また、後半半ば、押し込まれた苦しい時間帯に、格段のボール扱いでチームを落ち着けることもできなかった。
 この日の日本の守備は見事なもので、その一員として、香川が機能したことは評価すべきだろう。ハリルホジッチ氏が、清武でなく香川を起用した意図は明確でないが、守備をしっかりと行うねらいの試合において、体調を整えた香川の方が清武より適切と言うことだったのだろうか。
 けれども、このようなプレイを望むのならば、香川よりもっとうまくこなせる選手が他にいるのではないか。例えば、昨日も述べたが、田口、倉田、矢島と言ったタレントならば、もっと巧みに守備もこなすだろうし、押し込まれた時間帯に的確にボールキープしてくれるのではないか。いや、もっと簡単な話で、そのようなシゴトは岡崎ならば完璧にこなすだろう。岡崎はボール扱いと言う面では、香川に遠く及ばないが、激しくファイトし自分に出されたボールを全身でキープする能力は格段なのだから。

 香川真司と言う選手は、これからどうあるべきなのだろうか。

 香川が格段の個人技を持つタレントであるのは言うまでもない。特に、2010年から12年にかけては、ドルトムントでも日本代表でもすばらしかった。トップスピードに乗りながらも正確にボールを扱い、ほんの小さなスペースで加減速や左右の変化を操るドリブルで、敵守備陣を崩し切っていた。
 ところが、マンチェスターユナイテッドに移籍したあたりから、少しずつ往時の切れ味が失われたような印象がある。そして、香川自身が、その往時のプレイを目指すのだが、思うようにならず、いらだっているように見えるのだ。ブラジルワールドカップでも、アジアカップでも、我々は「乗り切らない」香川を見ることになった。
 UAE戦が典型だが、香川は敵陣近くでボールを持つと、敵ペナルティエリアで難しいことを狙い過ぎる。確かに往時の香川は、敵ペナルティエリアに入ってからのわずかスペースから、巧みにボールを動かし、敵を崩していた。しかし、今の香川には、そこまでの切れ味がない。おそらくだが、往時の香川は20歳そこそこだったが、そこから身体が大きくなりバランスが崩れてしまったのではないか。
 しかし、香川は往時の切れ味を追い求め、当時のプレイを目指すが、今一歩うまく行かない状況が続いているのではないか。さらに、わずかなスペースでの細工を狙い過ぎるために、瞬間瞬間の刹那的なプレイの連続になる。もちろん、サッカーの最大の魅力は、トップ選手の瞬間的なヒラメキであることは間違いない。けれども、香川はヒラメキきらずに、難しいことをしてボールを失うか、敵DFを抜き切れないと判断するや外側に逃げるような持ち出しをする結果に陥っているように見えるのだ。

 香川は異なったスタイルを目指すべきなのではないか。たとえば、一枚後方にポジションを移し、いわゆるゲームメークを担当し、中盤でいったん持ちこたえ、時に広範な展開を狙い、時にラストパスを狙うなどできないだろうか、中村憲剛のように。あるいは、今のポジションのままで行くにしても、刹那的なヒラメキを狙うのではなく、事前に計画的に複数考えておいた崩しのいずれかを狙うことはできないだろうか、中村俊輔のように。
 香川はまだ27歳、もう若いとは言えないが、格段の技巧とこれまでの経験を活かし、新境地を開くことはできるはずだ。
 そうすれば、この豪州戦で見せた知的な守備もできるし、元々体幹が強いのだから、従来にはないスケールの大きな中盤選手に転身できるのではないか。
 私は、もっと光り輝く香川を見たい。しかし、今、香川が必死に尽力している方向の延長に、光り輝く香川が見えないように思うのだ。
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2016年10月12日

やはり、我々が一番強い

 何より、守備がすばらしかった。相互の連係、前線からの追い込み、セーフティファースト。イラク戦での危なっかしさがほとんどなくなっていた。考えてみれば、UAE戦の守備は残念だったが、タイ戦は格段に改善されていた。今回も同じと言う事かもしれない。約1週間の強化期間が与えられれば、選手のコンディションも揃い(同時にハリルホジッチ氏も各選手の見極めができる)、氏も約束事を徹底できる、と言う事なのだろうか。
 開始早々に、原口が、自らのボール奪取を起点に本田の軽妙なボールさばきを受け先制したことで、完全に日本ペース。一見、攻め込まれているように見えるが、危ない場面はほとんどなく前半終了。ここまで、ハリルホジッチ氏は攻撃の整備や連係については、あれこれ工夫していたが、守備についてはあまり感心しなかったので、これは嬉しい驚きだった。「これだけやれるならば、もっと早くからやってくれ」との野暮は言うまい。
 原口のPK提供は、「我らがエースが、恰好の失敗経験を積んでくれた」と前向きにとらえればよいだろう。それにしても、あの豪州の速攻に、ちゃんとあそこに戻るのだから、大したものだなとも思うが。タイ戦以降のここまでの3試合、「もし原口元気が存在していなければ」と想像するだけで、何とも言えない恐怖感に襲われてしまうではないか。原口には、「自分が日本を支えているのだ」と、いっそうの自覚からの活躍を期待したい。
 ただ、同点にされ、押し込まれる時間が続いたあたりで、ハリルホジッチ氏が動かなかったのは疑問だった。豪州の攻撃は確かに単調だったが、あれだけ押し込まれれば、交通事故のリスクがある。タイ戦でも、疲労したDF陣が裏をとられかけ、西川の好捕に救われたではないか。負傷上がりとのことだが、献身と言う意味ではこれ以上にない岡崎がいるのだから、いくらでもやりようはあったと思うのだが。
 そういう意味では、技巧にすぐれ、中盤の前の方で使える、守備でも計算できるタレントの招集が必要なのではないか。田口、倉田、さらに五輪代表の矢島など。終了間際に、丸山を原口に代えて起用し守備固めを行い、その丸山が最前線に進出し空中戦から好機を作ったのには、笑ったけれども。
 ともあれ、最後まで交通事故になりかけることもなく、無事1対1で試合終了。守備で相当な自信を持つ事ができて、結果も上々。まことにめでたい試合となった。

 交代と言えば、ちょっと残念だったのは浅野。無理をせず引き分けでよい展開で、しっかり守りを固める場面、縦のスピードが格段の浅野を入れるのは、論理的な策に見える。しかし、浅野は2回早く出過ぎてオフサイド。さらに、上記した丸山が作った好機で、敵DFにマークされているのにかかわらず、オーバヘッドで狙いデンジャラスプレイの反則をとられてしまった。これでは、何のために起用されたのか、わからないではないか。いつまでも、このような青いプレイを続けられては困るのだが。

 長谷部以下の選手たちが悔しそうな表情をしているのは、よく理解できた。豪州に許した決定機は皆無。一方、当方は、前半の原口が作った本田のシュート、高徳のクロスからの小林のヘッド、終了間際の原口のクロスを浅野が狙った場面、と相当数回の決定機があった。勝つべき試合を落とした感のあるの試合だったのだから。
 次のサウジ戦だが、早くから集まり、オマーンと準備試合も戦える。しっかりとした準備を行い、完勝することを期待しようではないか。
 少々、感情の露呈が激し過ぎるハリルホジッチ氏だが、しだいに本領を発揮してくれてきたようだ。そして、この豪州戦を見た限り、やはり我々がアジア最強だと確信することができた。日本が、しっかりと組織守備を確立すれば、やはりアジア最強なのだ。まずは、体調が悪い時でも、今日のような守備をそれなりに安定して行えるよう期待したい。その上で、上記のような決定機を作る頻度を高める連係と判断力の向上を。予選段階から、これらを丁寧に積み上げていけば、本大会のベスト8を目指せるはずだ。
posted by 武藤文雄 at 00:41| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする