あのドーハのゴール裏で味わった未曾有の驚愕、今でもあの瞬間を思い起こすと奥歯を噛み締めたくなる。あれから12年の歳月が経った。
12年前も8年前も、チームの戦闘能力と言う意味ではアジア最高レベルだった。しかし、タイトルマッチ独特の厳しさの中、七転八倒の苦闘を余儀なくされ、12年前は沈み、8年前は浮沈を繰り返した後に最後の最後に浮上した。
この日の北朝鮮戦、前半の落ち着いた展開はなかなか。
そして後半、日本は淡々と時計を進めるのに成功。ドイツが近づくにつれ、微妙な寂しさと、しかし何とも言えない感慨がヒタヒタと押し寄せてきた。
落ち着き払った選手達は冷静にボールを回す。両サイドを広く使ったボール回し、無理をせずに丹念に時計を進める。高温多湿の環境、ボールを確保している時間が短い北朝鮮の疲労が次第に顕著になってくる。そして日本は、ゆっくりとボールをキープしながらも、時折柳沢と大黒が、北朝鮮守備網の裏を突き得点を狙う。小笠原の妙技と稲本の押し上げによる後方支援。大黒が精力的にボールを引き出すのは当然として、柳沢が大黒に誘引されたのか強引にシュートを狙い出したのが嬉しい。難しい試合での完璧なゲームコントロール。見事なサッカー、完璧な試合展開。
そして74分。稲本が上げたロビング風のフィード、大黒の飛び出しに北朝鮮CBがかろうじてヘッドでクリア。そこに、いつになく積極的になった柳沢が飛び込んだ。1−0。いよいよドイツが近づく。引き分けでよい試合で丹念にボールをつなぎ、敵の疲労を待ち、トドメを刺しに行く冷徹さ。
さらに89分。やむを得ずに前に出てくる北朝鮮守備ラインの裏側を、田中誠と大黒が完璧に突いた。大黒がドリブルで抜け出し、余裕を持ってGKをかわし、全くのフリーになって左足で決めるまでのプロセスを、興奮しながら見守る快感たるやなかった。
戦闘能力で劣る相手に対し、引き分けでよい試合で、冷静極まりないプレイを見せ、注文通りに完璧な勝利を収める。これ以上望むべくもない勝利。ここまでの安定感。ワールドカップ出場を決める試合で、ヒヤヒヤドキドキを味わう事ができない感慨、そして寂しさ。
私の代表チームは、大事なタイトルマッチで淡々と90分を進める能力まで確保してくれたのだ。言葉にならない歓喜を味わいつつ、過去のような不運はもう味わえないのかなと思うと、それはそれで寂しい。繰り返そう、寂しさと感慨と。
しかも、中田も小野も中村も、そして久保もいなかったのだ!!!
しかも、予選勝ち抜き世界初と言うオプションまで付いて来た。何と誇らしい成績だろう。
そしてあのソウルオリンピックスタジアムのメインスタジアムで味わった未曾有の絶望、今でもあの瞬間を思い起こすと気が遠くなる。「いつかアジアで勝てる時代が来るのだろうか」と。あれから20年の歳月が経った。そして、我々はアジア最強国となった。あれから20年間、日本代表と共に人生を歩んで来た事を誇りに思う。








