2015年02月05日

さようなら、アギーレさん

 短いお付き合いだった。
 「采配を除いて」非常によい監督である事が明確に判明していただけに残念だ。あれだけ、気が弱く采配面で課題が多いにもかかわらず、見事なチームを作りかけたアギーレ氏。ロシア大会で上位進出を目指す日本代表の基盤作りに最適な監督に、せっかく出会う事ができたのに。

 個人的には「推定無罪」原則を、日本協会が貫かなかった事は、いかがかと思う。事前には検討のしようがない今回の八百長騒動。残念ではあるが、しっかりと契約を結んだ仲間に降りかかった疑惑。事実はどうあろうが、「推定無罪」原則を日本協会が丁寧に主張し続ける矜持を持ち続ければ、サッカーに限らず日本史に残る快挙になると期待していたのだが。
 告発が受理されて強化云々がと言うが、大仁会長もいい加減、面倒くさくなったのだと思う。足を引っ張るマスコミ、我々はそのレベルの代表チームしか所有できないのだ、と諦める事も一つの経験だろう。

 アギーレさん、ありがとう、そしてさようなら。

 で、後任について。
 巷で「日本人監督を」と言う意見を述べるジャーナリストの方々が多いが、いかがだろうか。
 南アフリカ大会前に繰り返された岡田氏へのバッシング、と言うよりは誹謗中傷の嵐を考えると、日本代表監督の基本要件に「日本語が読めない事」を挙げた方がよいと思うのだが。

 ただし思考実験として、日本人監督を検討するのは、酒の肴としてはとても愉しい。実際、日本人を暫定監督として起用する可能性もなくはないだろうし。
 過去、幾度も講釈を垂れてきたが、「戦闘能力の低いチームをそこそこ勝たせる」能力と「戦闘能力がそれなりのチームを勝ち切らせる」能力は異なる能力なのではないかと思っている。日本人監督として、前者の代表が小林伸二氏、石崎氏、反町氏、城福氏あたり。後者で実績あるのが、西野氏、森保氏、長谷川健太氏。前者と後者の中間的存在が、関塚氏と我らが手倉森氏。ついでに言うと、後者で別格の実績があるのが、岡田氏と佐々木則夫氏。
 そして、日本代表監督に要求されるのは後者なのだ。反町氏の北京五輪代表での失敗、関塚氏のロンドン五輪でのそこそこの成功も、それを示唆している(まあ、2人とも予選の戦いぶりは本当にひどかったけれどね)。そして、上記にリストアップした日本人監督たちで、現在フリーなのは城福氏のみ。氏のヴァンフォーレでの成功と、FC東京での失敗を考えると、「やはり違うな」と考えてしまう。もっとも、このような評価は、甚だ主観的と言うか、好みの問題なのですがね。成功しようが失敗しようが、小林伸二氏に日本代表選手全てを手渡して、どのような鮮やかな采配を振るってくれるのだろうかと、思いをはせたい気持ちもあるんですよね。

 では外国人監督。こちらが、スポーツ新聞辞令をリスト化してくれている。もっとも、このリストで、真面目に検討されるべきは、オリベイラ氏くらいだろう。ただ、氏は既に64歳。この激務を託すには少々お年を召し過ぎた感もある。そこをどう判断するか。
 そして、この中途半端な時期ゆえ、フリーで良好な監督が市場にそうはいないだろう。

 ここは慌てるべきではないだろう。ワールドカップ1次予選で何かしらトラブルが起こる事はあり得ない。暫定監督として原専務理事または城福氏を指名する。戸塚哲也氏でもいいけれど。そして、半年先を目途に外国人監督を探す。城福氏なり戸塚氏を暫定監督とした場合は、彼らは当然本格監督を目指すだろうから、それはそれで成果を期待し、候補に加えればよい。

 サッカーに堪能し、40余年が経った。日本代表監督について、このような経験が積めるとは思いもしなかった。これはこれで、サッカーの魅力なのだろうな。たとえば2025年あたりに、今回のアギーレ氏退任劇を振り返った際に、どのような評価となるか。愉しみに10年後を待とうか。
posted by 武藤文雄 at 00:29| Comment(11) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月29日

この悔しさを再度語ります

 繰り返すが、UAE戦の敗戦。初めての経験だった。
 先日も講釈を垂れたけれど、選手達が健全に戦い、圧倒的に攻勢をとり、幾度も決定機を掴み、いくつかのハプニングもあり勝ち切れず、よりによって本田と香川がPK失敗、ベンチで憮然と敗戦を見る岡崎と遠藤。そして悔やんでも悔やみきれない序盤の軽率さ。これほどの悔しさを味わえるなんて。
 少々思い上がっているのは否定しない。でも先日講釈を垂れたように、気分はもう74年のオランダ人、あるいは82年のブラジル人。こんな無常観を、味わえるなんて、思ってもいなかった。いや、アルゼンチン人は、ワールドカップの度に、こんな思いを味わっているのだろうな。だから、彼らは「変化をつけよう」等と考え、南アフリカ大会では冗談のような監督人事ができた訳だ。これはこれで、究極の屈折。とても、我々に叶わない次元の高級さだな。

 ちょっと振り返ってみよう。こう俯瞰すると、いかに我々が幸せか、わかってくるではないか。
2010年、
  持てる能力を最大限に発揮し、最後は痛恨の涙。
2011年、
  持てる能力を最大限に発揮し、最後は堂々たる歓喜。
2014年、
  持てる能力を何ら発揮する事なく、4年間の積み上げが一気に崩壊。
2015年、
  持てる能力を監督が無駄使いし自滅、無常観を存分に味わう。

 腹は立つし、悔しくて悔しくて仕方がないけれど、こんな素晴らしい敗戦、そうは味わえない。日本代表は、ここまで来たのだ。
 本田と香川がPKを外したけれど、本田と香川がいなければ、こんな魅力的なサッカーはできない。この2人がPKを外した事そのものが、幸せだったのだ。
 「点を取る」と言うサッカーで一番厄介な問題を簡単に解決してくれる岡崎は大会途中で負傷、それを無理して起用し続けて壊してしまったアギーレ氏。老獪で勝負所で一番頼りになる遠藤爺をヨルダン戦でも酷使し、肝心の2次ラウンドで長い時間使えなかったアギーレ氏。いずれにしても、氏の間抜け振りは相当なものだ。
 ブラジルで常に冷静に戦い、守備を引き締め、攻め上がっては勝負ところを見極め決定機を幾度も演出した内田が不在。内田がいれば、岡崎には低く速いクロスを、豊田には高く裏を狙うクロスを、それぞれ的確に判断して、上げてくれただろうな、と。ラームがいないドイツ代表。あるいはフォクツがいない西ドイツ代表みたいなものだ。酒井高徳はよく頑張ったし、成長の跡を見せてくれたが、まだまだ内田との比較をするレベルではない。
 全くの余談。そう考えると、ジョルジーニョがいなくても、カフーがいた94年のブラジルは凄いな。

 と、徒然に講釈を垂れてきたが、改めて語りたい。このような試合を体験するのは、やはり初めてだった。こんな悔しさを味わえるなんて。やはりサッカー。UAEに負けた、アジアで優勝できなかった、下手くそな韓国や豪州がアジアチャンピオンになる、監督の采配がどう考えても間抜けだ、このような悔しさの羅列を堪能できるのだから、幸せなものだ。
 (ついでに暴言)こう言う試合を体験して、「若年層育成が云々」、「アジアで勝てなくなる」などと、考える人を、心底お気の毒に思います。

 もっとも。
 本質的にはインテリジェンスの不足と言う問題が、再度顕在化したのだけれども、これは別に作文します。
posted by 武藤文雄 at 00:47| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月25日

敗因はアギーレ氏にあるが、アギーレ氏はよい監督だ、任せよう

 悔しい。

 日本代表を応援して40余年。重要な大会で、組織的に整然と攻撃を繰り返し、精神的に崩れずに戦い抜き、相手を圧倒しながら、堂々と敗れ去るのを見る事ができたのは初めてだった。また新たなサッカーの魅力を経験する事ができた。昨年のブラジルとは異なるサポータ冥利に尽きる敗退。現地に行かなかった己の愚かさを呪うと共に、見事な試合を見せてくれた両チーム関係者と審判団に感謝したい。
 過去のアジアカップ、96年のクウェート戦にしても07年のサウジ戦にしても、チームが機能不全に陥り、好機もあまり作れずに敗れ去った(92年の初優勝前は、まともにアジアカップに参加すらしていなかった)。ワールドカップを思い起こしても、予選を含めた敗退劇のいずれも、敵を圧倒できた事などなかった。
 つまりだ、私は74年のオランダ、82年のブラジル、毎回毎回のアルゼンチン、そこまでは行かないが、それに近い無常観を味わる事ができたのだ。日本サッカーはここまで来たのだ。過去幾度も幾度も、悔しくて悔しくて悔しくて仕方がない思いを味わってきたが、また異なる悔しさを堪能できた。ありがたい事だ。

 敗因の多くは、現場責任者のアギーレ氏にあった。
 まず何より、ヨルダン戦で主力を引っ張り岡崎と遠藤を消耗させてしまった事が問題だった。特にあれだけシュートを打ちながら1点しか取れなかった訳だが、「点を取る」と言うサッカーで最も悩ましい問題の多くを解決できる岡崎をヨルダン戦で無理に引っ張ったのは、あまりに愚かしかった。負傷で選手が離脱するのは運不運だが、長い大会を見据えて負傷したエースを大事に使うのは、当たり前の事なのだが。さらに言えば、ヨルダン戦で岡崎に代えて豊田をつかっておけば、周囲の選手も豊田との連係をより磨く事もできていたはずだ。
 交代を早く行い過ぎた事も問題だった。負けていたし、前半から好機を生かせぬイヤな展開だったのは確かだ。けれども、幾度も崩す事には成功していたし、UAEが相当な運動量で無理をしていたのは自明だった。少なくとも、54分に2枚目のカードを切る試合ではなかった。結果論だが、負傷を抱えていた岡崎を交代させるために、65分に最後のカードを切る事となってしまった。交代出場した武藤と柴崎が上々のプレイを見せてくれたのも結果論に過ぎない。乾も遠藤も決して悪いプレイ振りではなかったのだから。もっと我慢していれば、じわじわと締め上げるように猛攻をかけた終盤に交代策を使えたのだ。負けている事で焦り、早々に交代を使ってしまっのだろう。
 延長に入り、長友が故障したにもかかわらず、ポジション変更を怠り貴重な延長前半を無駄にした事も残念だった。延長後半、柴崎をサイドバックに下げ酒井を左に回すポジション修正を実施した以降は、再度猛攻できたのだから、延長前半の無策は本当に痛かった。
 再三ここまで愚痴を垂れてきたが、準備試合で坂井や皆川を選考し時間を無駄にした事。細貝なり田口なり(他の選手でもよいが)守備ができる中盤選手の3人目を豪州に連れた来なかった事、大会前の準備の拙さも、アギーレ氏の責任である事は言うまでもない。
 もちろん、決定機をことごとく決めきれなかった事、軽率な守備で失点した事など、多くの問題は、選手に起因する。また、UAEの工夫を凝らした戦いぶりもまた見事だった。敗戦の要因すべてがアギーレ氏によるものではないのは言うまでもない。けれども、上記のように、あれだけ監督が不首尾を重ねてしまっては、勝利の確率が大きく減ってしまった事は間違いない。繰り返そう、この悔しくて悔しくて悔しくて仕方がない敗戦の責任の多くはアギーレ氏の采配にあったのだ。過去も幾度か講釈を垂れたが、アギーレ氏は気が弱く、近視眼的に采配を誤る事も多い。そう言う監督なのだ。

 一方で。ここまで監督が采配に失敗しながら、UAEが組織的によく守っていたにもかかわらず、選手たちは整然と戦い、幾度も決定機を作った。これは、日本代表の選手たちの能力の高さと、アギーレ氏のチーム作りの適切さが、いかに素晴らしかったかの証左である。さらに選手たちがこの難しい試合で、粘り強く戦ってくれたのは、現場の責任者であるアギーレ氏のリーダシップが並々ならぬ事を示している。
 我々は「采配を除いて」非常に優秀な監督を獲得したのだ。これはよい。ワールドカップ本大会で好成績を得ようとするために必要なのは、まずはチームの基盤を適切に作れるかどうかが重要だ。うん、まずはアギーレ氏に任せるべきだ。ただし、上記のような采配の拙さが継続するとしたならば、ロシア本大会前に人事は考える必要があるかもしれないがこれは別な話(この「別な話」をどうすべきかは、酒の肴としては最高ですね)。あるいは選手たちが一層成熟し、アギーレ氏の拙さをカバーしてくれれば最高だし。

 もう1つ。UAEの戦い振りは見事だった。過去の同国に見受けられた(当方選手が深刻な重傷を負いそうな)危ないファウルも、見苦しい時間稼ぎもなかった。全選手が丁寧にボールを保持する事を基盤に、分厚く守備を固め、丹念に戦ってきた。そして、後半終盤以降にほとんどの選手が動けなくなってしまったが、粘り切られてしまった。悔しいけれど、彼らの見事な戦い振りに感心した。90年に名将マリオ・ザガロ氏に率いられワールドカップに出場し、90年代はアジアカップでも上位の常連だったが、最近は目立った成果は見受けられなかった。今後非常に厄介な存在になっていくのだろうか、これはこれで愉しみな事だ。

 冒頭に嘆息したように、このような敗戦は、日本サッカー界にとっても初めての経験だ。選手達の思いはいかばかりだろうか。それぞれが何とも言えない思いで自分のクラブに戻る。今回の苦渋の経験をさらに活かして成長して欲しい。これが一層の日本サッカーの発展につながる。
 選手達に対する思いも多々あるが、やはり柴崎に言及したい。同点弾も見事だったし、丁寧な組み立てを見せ、PKも冷静に決め、なるほど遠藤の後継者になり得るプレイを見せてくれた。けれども、結果は結果だ。私はこの試合を「柴崎が延長最後のフリーキックを枠に飛ばせかった試合」と記憶していく。あの痛恨を忘れないで欲しいから。
posted by 武藤文雄 at 19:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月21日

余裕のなさが不安(ヨルダン戦)

 日本はヨルダンに2対0で快勝、3試合を無失点で問題なくトップで準々決勝進出を決めた。もちろん、嬉しいし、日本の強さも間違いないのだが、「相当強いのだからこど、もっと余裕を持って戦ったよいのに」と思うのは、私だけだろうか。

 1点目は今大会の強みが存分に発揮された。長谷部の精度が高く速いボールが乾に入り、乾のちょっとした溜めから岡崎が抜け出し強烈なシュート、こぼれを全くフリーの本田が押し込んだ。本田が飛び込んだ時、「またポストに当てるのではないか」と思ったのは秘密だ(そしたら、終了間際、また当ててましたな)。
 2点目は前掛かりのヨルダンの裏を突き、交代出場直後の武藤が清武のパスから抜け出す。よくルックアップして低く強いクロス。香川が鋭く決めた(もっとも、香川のシュートはサイドキックで狙った割にはGKシャフィの正面に飛んだ、これを名手シャフィがこぼしてしまったのだからご愛嬌かもしれないが)。
 文句を言うとキリがないが、いずれもよい崩しからの得点だった。
 90分間のほとんどを日本ペースで戦いながら、ヨルダンが失点を恐れ後方に人数を残していた事もあり、速攻がそれほど機能せず決定機の数は少なかった。けれども、イラク戦に続き組織守備がよく機能、危ない場面はほとんどなく、上記のようにきれいな2得点。
 この3試合で、敵にほとんど決定機を与えず、当方は変化あふれる攻撃を幾度も見せ続けたのだから、結構な事この上ない。現実的に日本の戦闘能力がトップな事は確かだ。

 しかしながら、ここまで1次ラウンドで、無理をする必要があったのだろうか。日程的には一番苦しいグループであり、いかに選手を休ませるか、比較的経験の浅い選手を1次ラウンドで試しておくかが重要なはず。それなのに、アギーレ氏は「一戦必勝主義」を通してしまった。
 そもそも、スタメンを1、2戦と同じにする意味はあったのか。柴崎を起用し乱戦に慣らしておく、太田を使って(右に長友を移し)両翼攻撃を試しておく、豊田によるシンプルな攻撃を他国に見せておく、等色々な手立てはあったはず。もちろん、武藤をスタメンにして強引に突破を狙わせてもよかった。現実的に、そのようなスタメンにしても、ヨルダンに苦戦していたとは思えない。
 さらに試合が進み(内容的にも圧倒し)、ヨルダンのかなりラフなプレイ、イルマトフ氏の退場者を出さない配慮によるヨルダンへの甘い判定、後半開始早々の岡崎に警告を出すと言う氏としては珍しいミスジャッジ等が錯綜した試合で、岡崎(イラク戦で負傷していたと聞く)も遠藤爺も終盤まで引っ張る必要があったのだろうか。よほどの不運に遭遇しなければ、この2人がピッチから去っても、ヨルダンに点を奪われるリスクはなかっただろう。それよりは上記したような控え選手をどんどん起用して2次ラウンドに備えると共に、レギュラを休ませればよかったはずだ。まして、1枚目の交代カードで、清武を起用し(過去2試合途中交代していて消耗も少ない)乾を交代させる意味があったのだろうか。

 余談ながら、ヨルダン選手がラフプレイでファウルを取られる度に不満そうな表情をするのには失望した。4年前のアジアカップで健闘した以降、ワールドカップ予選でも日本に相応の抵抗を見せ、順調に強化が継続してきたはず。この日も気合が入っており、日本に対して激しいプレイを見せたのは結構な事だ。しかし、明らかなラフプレイで笛を吹かれたにもかかわらず、名主審のイルマトフ氏に不満を見せているようでは進歩はない。往年のイングランドの名手、レイ・ウィルキンス氏がせっかく指導しているのだから、選手達にはもっと矜持をを見せて欲しかったのだが。
 さらに余談ですが、アギーレ氏とウィルキンス氏は現役時代、戦った事があるのだろうか。誰か詳しい人がいたら、教えてください。。

 さらに今野がイラク戦の終盤負傷したと言う。恐れていた事態が現実になってしまった。この日、長谷部はかなりラフなタックルで削られてしまった。また、森重が敵との交錯で一時ピッチ外で治療を余儀なくされた。現実的に長谷部が壊されたら、代わりにCBを起用し、森重をアンカーに上げるのだろうか。ところが、その森重も壊れかけたのだ。
 過去も散々愚痴を語ったが、細貝も田口も選考しなかったリスクが顕在化してしまった。いや、別にこの2人でなくてもよい。ベテランの阿部勇樹でもいいし、高橋秀人と言う手段もあったはず。若手の遠藤航もアジア大会でこのポジションで頑張っていた。とにかく3枚目の守備的中盤選手を選んでおきたかった。
 このチームはCBのバックアップは昌子、塩谷、植田と3枚もいる。またFWの控えでは清武、武藤、豊田より序列が低いように思える小林悠もいる。けれども、これまでのアギーレ采配を見る限り、この4人が起用される可能性は、負傷者が出ない限りは非常に少ないと見る。
 そう考えると、「やはりもう1枚守備的中盤選手が欲しかったな」と、今さら無い物ねだり。

 案外と。
 アギーレ氏は、顔に似合わず、小心者なのだろう。1対0でリードし、あれだけペースを握りながらも、遠藤爺や岡崎の交代に躊躇するくらいなのだから。
 この小心振りが、ロシアでプラス方向に働く事を祈るばかりである。

 と、まあ色々文句を語ったが、日本が優勝候補最右翼である事は間違いない。韓国も豪州も、日本よりもっと余裕のない戦いを余儀なくされ消耗している。ある意味で一番厄介なウズベクは、中国に苦杯し別ブロックとなっている。
 文句を言い続けながらも、着々と日本は勝ち進むのだろうな。
posted by 武藤文雄 at 01:20| Comment(6) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月18日

贅沢言ってはいかんのですが(イラク戦完勝)

 日本は1対0と最少得点差ながら、イラクを圧倒。順調に2連勝。

 最後尾中央に引いてくる長谷部の展開から、麻也、森重の2人のCBが両翼に高精度のロングパスを出して押し込むのが攻撃の基盤。両翼に対するマークが厳しい、あるいはCBへのプレスが厳しい時は、サイドバックを使って丁寧にボールを回し、前進した長谷部が岡崎や本田に低く速いパスを通して局面打開を狙う。一度押し込んで、突破を狙った局面では、ボールを奪われた直後から厳しいプレスを仕掛ける。「経験豊富な選手が多いから」と言ってしまえばそれまでだが、個人能力の高い選手達が整然と組織的に戦うのだから、若いイラクとしてはどうしようもなかっただろう。
 ただし、これだけの展開を90分間継続するのは難しい。しかも現地は真夏で気温が相当高いと言う。実際、後半の序盤は、長友と酒井高徳が前半ほど前線進出できなくなり、イラクの攻勢を許す時間帯となった。特にマハムードのタイミング、強さ、正確さ全てが格段の落としが素晴らしい。岡崎は現在アジア最高のFWだと思っているが、この落としの見事さだけは、マハムードが上だな。
 しかし、50分にマハムードがピッチを去った事で、イラクの攻めは鋭さを失った(マハムードは現在所属なしとの事だが、よいトレーニングが積めていないのだろう、その事そのものがアジアのサッカーレベル向上を阻害しているのかと思うと口惜しい)。それでも、若いイラクは幾度か日本DFラインの裏を突こうとしてきた。しかし、60分、アギーレ氏は的確な交代劇でイラクの攻勢を止める事に成功した。遠藤に代えて今野を起用して中盤のボール奪取力を増強し、さらに清武を乾に代え、前線の流動性を加えたのだ。4-3-3(あるいは長谷部を最終ラインと考えれば3-6-1)から、4-2-3-1(岡崎の流動性を加味すれば4-2-4と呼ぶ方が妥当か)に切り替えたのだ。以降の時間帯は、再度日本が圧倒的な攻勢をとり、危うい場面はほとんどなかった。

 しかし、あれだけ攻勢をとり、危ない場面も少なかったにもかかわらず、スコアは1対0。強豪イラクとは言え、今回のチームは平均年齢が低く従来大会ほど「精強」とは言えなかった。1次ラウンドで内容のある試合ができたのだから結構な事だが、検討の余地があるのも確か。

 問題は2点目が取れなかった事。
 まず本田が、ゴールエリア内で全くフリーのシュートを2本ポストに当てたのがあり得ない事態。いずれも、敵のマークは全くなかったのだから、言い訳の余地はない。まあ、それでも大事なPKをしっかりと決め、終盤交代するまで攻撃はもちろん、守備も粘り強く行っていたのだから、さすがと言えばさすがなのだが。ともあれ、「何故あれをポストに当ててしまったか」は猛省して欲しい。
 香川のシュートが入らなくなっているのも悩ましい。10分過ぎだったか、本田のスルーパスを受けDFラインの裏に抜け出しながら、ファーサイドを狙った一撃は枠を捉えられず。さらにPK獲得の直前に乾のクロスからのシュートをGKにぶつけてしまった。2010年から12年にかけてドルトムントで猛威をふるってきた香川の狭い地域でのシュートの巧さは、失われてしまったのだろうか。
 しかし、このアジアカップに関しては、この問題の解決策はそれほど難しいとは思っていない。全選手が、まず「岡崎に点を取らせる」と考えればよい。そうすればそうするほど、敵のDFはみな岡崎に集中する。たとえば、終盤に香川が右サイドから岡崎にクロスを合わせた場面が典型だが、あんなダイビングヘッドはDFにとっては悪夢としか言いようがない。そこで、変化をつけて他の選手に合わせれば、それはそれで決定機となる。序盤の本田のポスト弾はその典型だった、要はあのような攻撃頻度を増やせばよいのだ。

 遠藤と今野を代える事で守備を固めるやり方は確かに有効だ。しかし、長谷部と今野のバックアップが不在なのはとても気になる。今野が(香川と清武の軽率のボールロストが要因だったが)つまらないイエローを食らってしまったが、この2人は大会を通してフルに戦い続ける事ができるのだろうか。幾度も幾度も語ってきたが、細貝なり田口をメンバに加えておけばとの思いは消えない。
 また、イラクが攻勢をとってきた時間帯、上記したようにマハムードの受けの巧さから、脚力と技巧を持つ選手が再三日本長友と酒井の裏を狙ってきた。2人とも丁寧のその攻撃をつぶしてくれたが、本当であればCBが両翼をしっかりとカバーして、火がつかないうちにさっさと止めてしまいたいところなのだが。麻也にそれを期待するのはもう無理なのはわかっているが、森重はそろそろそのような感覚を見せてくれないだろうか。いつまでも、井原や中澤を懐かしがるのは、そろそろ卒業したいのだが。

 まあ贅沢を言ってはいかんな。大会は長い、決勝戦でベストに到達すればよいのだ。
posted by 武藤文雄 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月13日

無難な初戦、アジアカップ始まる

 アジアカップ初戦、日本はパレスチナを4対0で破り、無難なスタートを切る事に成功した。

 前半立ち上がりから、長谷部が後方に引き、森重、麻也の3人が高精度のロングボールを入れ、パレスチナ守備ラインを押し下げる。右サイドは本田と酒井、左サイドは長友と乾が開き、4-3-3と言うよりは3-6-1と言う配置。思惑通り、パレスチナが引き過ぎたため、日本は個人能力の差をそのまま出す事ができた。
 遠藤爺の一撃はその典型、日本の揺さ振りにより、この大ベテランは全くのフリーとなっていた。2点目も長友に森重(だと思った)が長いボールを通した時点で、香川が飛び込むバイタルは無人状態。それにしても、遠藤と岡崎のシュートは凄かったけれども。
 パレスチナの経験不足も大きかった。PK時の香川押しつぶし等は日本のトップレベルのユース選手でも絶対にやらないミス、さらにそのPKで本田が蹴る前にあれだけGKが前に出てしまっては。4点目にしても、香川の技巧は鮮やかだったが、あれだけで最長身の麻也を見失ってしまっていた。その後も、武藤や香川に一発レッドが妥当なファウルを連発、意欲の空回りとでも言おうか。

 ともあれ、難しい初戦で50分で4対0としたのだから、大変よろしかった。ただ、遠藤爺が退いた以降は感心しない展開。
 香川も清武も2人の連係に個人技突破を交え、局面を打開しようとするが、もう一つ機能し切れなかった。この日香川は後方から30〜40mのサイドチェンジにトライしていたが、もう一つ精度を欠いていた。20代半ばとなったのだから、このような中盤の展開を身に着けて欲しいところ、この大会での成功をその転身のきっかけにして欲しいのだが。一方の清武は、自分で仕掛けるのとパスを狙うのと、敵に読まれない工夫が欲しい。バイタルでフリーでミドルシュートを狙い枠に行かなかった場面は猛省が必要。あと、本田に遠慮せず、ゴール狙えるFKは蹴れよ、どうせ本田のは滅多に枠に飛ばないのだから(笑)。香川、清武と来れば乾なのだが。早々に清武と交代させられた事に危機感を持ってほしいのだが。前半の猛攻時にも、ボールに触る頻度が少なかった。あの独特のキープを活かすためには、もっともっと局面局面に参加してくれなくては。
 後半の停滞については、残念ながら武藤への失望も語らなければならない。何かしら消極的だったのが気にいらない。強引にドリブルでシュートに持ち込むのが持ち味の若者が、その一番得意なプレイを狙わないのは残念だった。勘違いしていなければよいのだが。宇佐美も原口も大前も、そしてエヒメッシもいるのだよ。
 こうなると外からの展開に期待したくなるが、結果的に内田不在の不安を感じる事になってしまった。酒井高徳はよく前進してクロスを狙うが、タイミング、コースの選択、精度それぞれに課題を露呈、さらに中に切り込んでのミドルも枠に飛ばず。ただし、かつての軽率さは相当改善され、敵エースのヌーマンにも慎重に対処し丁寧に守ってくれた。岡崎、豊田と言う秀でた点取り屋と共にプレイできるこのアジアカップで化けて欲しいところだ。
 流れが悪いと把握した長谷部が前進して、変化をつけようとするのだが、もう一つ機能しなかった。点差が開いた夏の試合と言う事もあり、岡崎も本田も前半ほど無理をしなくなっていたため、効果が中々でなかったのだ。しかし、大会後半に入れば、岡崎も本田も真剣にフリーランを繰り返す事となる。その時に、遠藤爺の展開とは異なるリズムの、長谷部の変化が機能すれば嬉しいのだが。うん、これはこれで愉しみ。

 と、のんびり文句を言えるのは悪くない。初戦完勝のおかげだな。
 次はイラク。アジアにおいて、ボールキープや変化と言うサッカーの本質において、(ウズベキスタンと並び)日本と同等に戦い得る数少ない難敵だ。イラクは今日もヨルダンと火が噴くような試合で競り勝った、見事な試合だった。
 そして、アジア制覇が目的の我々としては、非常にありがたい試合順だと思う。まずは経験不足のパレスティナから勝ち点3を獲得、続いて優勝候補のライバルのイラクと戦う事で現状把握が可能になるはず。決勝での再戦まで意識した丁寧な試合を期待したい。

 パレスティナも、試合半ばまでは経験不足を露呈していた。しかし、終盤には日本のテクニックや変化にだいぶ慣れたようで、身体を張ってよく守ってきた。最後の5分間の我々の猛攻を防いだパレスティナの守備は見事だったではないか。
 我々との戦いの経験を活かし?イラク、ヨルダンを悩ましてください。
posted by 武藤文雄 at 00:01| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月12日

アジアカップ2015に向けて

 この正月休みに一生懸命ブラジルワールドカップ総決算の作文を進めた。だいぶまとまってきたのだが、休み中には完成できなかった。高校選手権には、自分がプレイしていた30数年前以来久々に熱狂した。あのマイケルが静学戦で得点を決めてくれた瞬間を思い出すと、今でも目が潤んでくる。等と愉しい日々を過ごしているうちに、アジアカップが開幕してしまった。そして明日は日本対パレスチナ。
 色々書ききれてない事が多々あるのだが、まずはアジアカップの展望について、少し講釈を垂れておこう。

 日本の戦闘能力について、不安は細貝(あるいは田口)の未選考により中盤の守備的選手が長谷部と今野しかいない事と、内田の不在(さらにその交代選考がセンタバックの植田だった事)の2点。しかし、前者については、アギーレ氏が敢えて攻撃的選手を多数選考しているのだから、ここは氏を信頼するのが筋と言うものだろう。後者については、内田のようなトップ選手がいなくなる事そのものは、世界中どのような代表チームでもあり得る事で、そこをカバーできるかどうかがその国のサッカーの実力を示す。
 豪州も韓国もイラクもイランもウズベクも、皆相応に強いだろうが、「我々はそれ以上に強い」と各選手が誇りに満ちた戦いをして最高の結果を持ってきて欲しい。

 毎朝毎夕、駅の売店で見るスポーツ新聞の見出しは「アギーレ八百長」ばかり。
 本件については先日述べた通りで、誰が何を言おうと「推定無罪」がすべて。マスコミがどんなに足を引っ張ろうが、我々はアギーレ氏を支えればよい(もちろん、采配など監督稼業の本質で疑問があれば、アギーレ氏をどんどん批判するのだけれども)。
 期待するのは、日本が着々と勝ち進み、スポーツ新聞の論調が変わって行く事。ナポレオンのエルバ島脱出報道を目の当たりにできるのではないかと。

 元々、アジアカップはワールドカップの隔年に開催されていた。ジーコの2004年までは。ところが、ワールドカップの隔年は五輪とバッティングする事もあり、ワールドカップの翌年開催と変更になり、オシム爺さんの2007年大会からそうなったのは皆様ご存じの通り。この時はまだよかった。ところが、前回のカタールは夏場開催が不可能。だったら、2012年の1月にやればよいのに、2011年の1月に開催してしまった。結果、ワールドカップから僅か半年での開催となった。そして今回の豪州大会も同じ日程。愚の骨頂と言うべきだろう。繰り返すが、どうしても冬季に開催したいならば、何もワールドカップの翌年ではなく、五輪とはぶつからないので隔年に開催すればよい。このような愚行が、アジアのトップレベルのサッカーの強化も金儲けも阻害してしまっている。まあ、アジアサッカー連盟と言うのはそのような団体なのだ。ちょっと考えてくれれば、もっともっと愉しいアジアカップを見られるのだけれども。
 ついでに言えば、豪州サッカー界がラグビー等の競合競技とのバッティングを考慮し、夏季開催を要望した気持ちはわからぬでもない。けれども、日本、豪州、韓国などのアジアのトップ国の中心選手のほとんどが欧州でプレイしているのだから、本当に冬季に開催すべきだったのか。まあ、先方には先方の考えがあるのだろうけれど。
 と言った愚痴を言っても仕方がない。2回続けて、アジアカップはワールドカップの半年後に行われる。戦うしかない。

 散々文句を言ったけれど、4年前のカタール大会は愉しかったよね。カタール戦の退場劇の理不尽。韓国戦の意味不明のPK。アジアの混迷を存分に堪能し、それでも長谷部達は勝ってくれた。いや2006年の中国大会もヨルダンとのPK戦、バーレーン戦の延長の死闘も最高だった。
 当然ながら、今回も同じような感動を期待する事になる。いや、2000年レバノン大会のように堂々と勝ち進んでくれたもよいのだけれども。
 いつもいつも講釈を垂れているが、92年アジア初制覇を含め6回のアジアカップのうち、我々は4回を制覇している。我々はアジアカップに負ける事に慣れていないのだ。うん、このままずっと慣れずに行こうではないか。
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2014年12月18日

日本サッカー史に残る不運、細貝萌

 少々後手を踏みましたが、アジアカップ選考メンバについて。

 愉しい話をする前に、アギーレ氏が八百長問題でスペイン検察当局から正式告発された件にも触れておこう。
 重要な事は「推定無罪」。現時点では、氏は告発されたに過ぎない。何も天地がひっくり返った訳ではないのだ。日本協会は、アギーレ氏を守り、アジアカップ連覇を狙う代表チームに最大限のサポートを継続すればよい。そして、「推定無罪」であるアギーレ氏を、しっかりとサポートする姿勢を崩さない事が、日本協会のみならず日本サッカー界の、世界中からの信用確保につながる。
 日本協会の現状の対応は、おおむね妥当だと思う。ただし、国によって法律、運用は異なる。スペイン現地の事情を正確に把握した上で、常に「最新状況」の発表継続をすべきだろう。説明責任は重要なのだ。
 現時点で考慮すべきは、アジアカップ最中の出頭義務(あるいは出頭拒絶がアギーレ氏に非常に不利になる事態)が生じるかどうか。関連報道を読む限りは、そのリスクはほとんどない模様。とすれば、上記説明責任を果たしつつも、現場を守りアジア制覇を淡々と目指せばよい事になる。
 もちろん、「推定無罪」ではなくなる「万が一」への準備は必要だが、これはアジアカップ以降の事。水面下で行っておけばよいのだ。

 と言う事で、愉しい話に戻ります。

 それにしても、細貝の不選考については、さすがに予想だにしていなかった。ブラジルワールドカップに続き、このアジアカップも不選考。ブンデスリーガで安定し格段の活躍を見せてくれる、脂の乗り切った28歳のこのタレント。実力と実績の割に、あまりに代表運がなさ過ぎる。過去の日本サッカー史を振り返っても、ここまで悲運な選手は珍しい。しいて言えば、ジーコ時代の明神智和だろうか。ただし、明神は不運極まりなかったが、ジーコはジーコなのだか「仕方がない」と言う考え方もある。それに対し、細貝の場合は、ザッケローニ氏と言い、アギーレ氏と言い、真っ当な監督である。しかも、両氏とも当たり前に準備試合で細貝を選考し、かつ細貝は良好なプレイを見せている。それでも、2大会とも細貝は選考外になってしまった。繰り返すが、日本代表史上でも屈指の不可思議かつ悲運と呼ぶべきだろう。
 実際、アジアカップ制覇に向けて、本当に細貝抜きで大丈夫なのだろうか。中盤は長谷部、今野、遠藤、柴崎、香川、清武。遠藤爺と柴崎は挙動開始点を後方に置くのは問題ないが、敵をつぶすのは本業ではない。とすれば、長谷部または今野が、負傷あるいは出場停止になった瞬間に、中盤選手選考の間口は非常に狭いものになってしまう。もちろん、森重と長友の中盤起用はあり得るのだろうが。
 さらに言えば、ここまでのアギーレ氏の采配を見てみると、中盤の選手の組み替えで戦い方を切替えようとしていた。先般のセレソン戦で、スタメンを田口、森岡、柴崎と言う冗談のような攻撃的布陣として、終盤には森重、細貝、田口と組み替えたのが典型的な事例である。ところが、中盤で守備にある程度以上の強さを発揮できそうなのは、長谷部と今野の2人だけ。
 細貝の不在に、不安は高まる一方である。

 さらに言えば、ここまで起用される度に、戦術的に非常に高度なプレイを見せていた田口も選考されなかった。私は長谷部、今野、細貝、遠藤、香川、柴崎の6人は決定だが、FWを1人減らして田口を起用するものと思い込んでいた。準備試合で、あそこまでややこしい仕事を要求され、それを的確にこなしていた以上、アギーレ氏にとって、田口は特別な存在と思い込んでしまったのだ。
 正確な技術、狡猾な位置取り、粘り強い守備、効果的な攻撃、これらのすべてを所有する田口泰士。今回の痛恨を、今後にどう活かしてくれるか。

 細貝と田口の不選考、清武と小林悠の選考。
 清武の実績と実力は疑いない。ただ、選ぶならば、もっと早く選考すべきだった。このあたりは、初戦に皆川や坂井を起用したアギーレ氏のミスとしか言いようがない。また、ここで清武を選んだ最大の理由は、不振が続く香川への刺激なのかもしれないが。
 さらに、最前線は岡崎、本田、武藤、トヨクバ、乾とタレントが揃っている中での、ストライカ小林悠選考。準備試合でも明確な活躍ができず、しかもリーグ終盤負傷に悩んだ小林悠。アギーレ氏が、細貝と田口を切っても、選考にこだわった事となる。これはとても愉しみ。アギーレ氏は何らかの意図を持って重要な場面で、この狡猾で知的なストライカを起用したいと思っているのだろう。

 いよいよアジアカップが近づいてきている。
 様々な思惑が錯綜するが、過去のアジアカップの愉しさを思い起こすと、ワクワクしてくる。うん、愉しみだ。
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2014年11月20日

遠藤爺不在でも

 正直言って、スタメンを知った時に「今野はどうなるのだ!」と憤りを感じました。今野は宮城県出身力士。残念ながら現時点ではベガルタとは縁がないが、宮城県のサッカー界で青春を送った身としては、やはり今野は特別な存在。「広義には俺の後輩」なのです。あくまでも「広義」にはですが(笑)。
 その今野が、後半から登場し、試合の流れを完全に変えて圧倒的攻勢の要因となったのみならず、得点を決めたのですから痛快な試合となりました。あのコロンビア戦の痛恨のPKの記憶を交えながら。

 日本は豪州に2対02対1で快勝。アジアカップに向けて、上々の試合となった。

 試合展開そのものは各方面で語られている通り。前半、ワンボランチの長谷部の左右を狙われ攻勢を許す。その左右のスペースは、本田と武藤が埋めなければならないが、完全に後手を踏んでしまった。武藤は若さを露呈し絞り過ぎる。本田はさすがに丹念に守るが、ボールを奪ってから無理につなごうとするので、再三ミスパスで豪州の好機を演出してしまった(後半の本田はすばらしかったが、前半の再三のミスパスに触れた報道がないのはどうした事か)。
 もう1つ、豪州のFWが引いて長谷部の左右を使っているのだから、CBが勇気を持って前に出てつぶせばちゃんと守れたはずだ。森重はさすがに対応していたが、麻也はこう言う前に出る守備は本当に苦手。いつもの事だが、腰が引けてしまっていた。麻也とこうやって悩みを共有し戦い続けるのは、それはそれで快感なのですがね。
 それでも決定機をほとんどつかませなかったのは上々だった。長谷部と4人のDFが粘り強く修正を繰り返した賜物だった。ただ、唯一許した決定機場面の酒井高徳の修正遅れはいただけなかったが。終盤、ケーヒルにやられた場面を含め、格守備選手に修正事項は多い。アジアカップ制覇のために、これらの修正はしっかりと行っていきたいものだ。

 アギーレ氏が遠藤を引かせて2ボランチに修正した以降は完全な日本ペース。
 そして、後半遠藤に代えて今野を起用したところで、豪州は抵抗の手段を失ってしまった。ここまでアギーレ氏は、1人ボランチの4-3-3(全くの余談:私の世代には4-1-4-1の方がなじむ、私の若い頃の4-3-3の両ウィングの守備責務は極めて小さいものだったから)を原則とし、中盤の「3」の登場人物を変える事で変化をつけようとしていた。しかし、この試合では戦っている11人は変えずに配置を変えて改善を実施、成果を出した。アギーレ氏が柔軟な間口を持っている人である事が確認された。
 さらに、後半の立ち上がりに、遠藤に代えて今野を起用し、そのまま2ボランチ。まあ4-1-4-1だろうが、4-2-3-1だろうが、試合中の流れで選手達がベンチで絶叫する監督と連携して自在に修正してくれれば問題はない。この日は、悪いなりに帳尻を何とか合わせ、配置修正で立て直し、とどめに選手交代で圧倒したのだから、満足すべきなのろう。

 そして、この日最も重要だったのは、上記した段取りの中で、遠藤爺不在の環境において、岡崎と本田と香川が、それぞれの職務を全うした事にある。
 遠藤爺に代えて今野を入れれば、中盤のプレスがより厳しくなるが、後方から出るパスの精度とタイミングの質が落ちるのは当然の事。その状況で、香川は中盤の将軍として前後左右自由に展開を重ねた。そして、香川の演出の下、岡崎は得点を、本田は突破とラストパスを、それぞれ狙い続けた。ホンジュラス戦での彼らの連係がより磨かれた訳だ。繰り返すが、遠藤爺抜きで。うん、すばらしい。

 岡崎、本田、香川。本来であれば5か月前のブラジルで燦然と輝くべきであったこの3人が、豪州で格段に光り輝く。それを、じっくりと堪能できるアジアカップ。うん、よい感じだ。そして、期待が高まれば高まるほど、ブラジルでの記憶が悔しくなる。それがまた愉しい。続きを読む
posted by 武藤文雄 at 01:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月16日

香川と本田の役割分担

 この0対6と言うスコアは大事件なはずだ。
 想像してみてください。日本代表が中南米でも欧州でもアフリカでもよいけれど、やや若手主体で遠征。欧州の2番手国あるいは中南米やアフリカのトップ国に、0対6で敗れたとしたら。どんな思いをするでしょうか。そして、どんな騒ぎになると思いますか。昨年、セルビアやベラルーシに敗れただけでも「この世の終わり」と唱えた方もいたが、それどころではないでしょうな(その割に本大会でコロンビアに1対4で完敗すると、「日本は元々弱かった」、「負けて当然」と、同じ人が唱えているように聞こえるのは、気のせいでしょうかね)。
 まあ、さておき。この試合は、ホンジュラスにとっては悲惨な試合となってしまった。日本国内の国際試合ではたまにこのような試合がある。2008年のエジプト戦とか、2009年のチリ戦とか、同じくベルギー戦とか。こういう試合は、敵方の悲嘆度合を想像すると愉しいのだな。ただ、6点差となると珍しい。と、言うより、日本代表が6点差以上つけるような試合は、アジアの公式戦で所謂弱小国と戦うケースくらいかもしれない。そうこう考えると、伝説のメキシコ五輪予選のフィリピン戦の映像が残っていない事を残念に思ったりして(そうは言っても、あの予選の日韓戦の映像も残っていないのですけれどもね)。
 6点差と言いうのは、それほどの大事件だと言う事です。

 で、日本代表について。 
 たとえホンジュラスが若手切替中だとか時差ボケだとか遠征疲労がたまっていたとか多数問題を抱えていたにしても、このクラスの相手に6対0で快勝した事そのものは素晴らしい。凄い大事件だと思う。いや、めでたい。つまらんと言えばつまらなかったけれど。
 と素晴らしかった訳だが、試合の評価そのものは、アジアカップへの準備の有効性から検討すべきだろう。もちろん、その視点からも結構な試合だった。

 この快勝で最も重要なのは、香川を中盤の組立に、本田を前線で突破と得点に、それぞれ役割を明確化しようとするアギーレ氏の構想が奏功した事にある。香川と本田をどのように並立させるべきかと言う問題は結構悩ましい問題だ。さらに、岡崎と言う、動く事で妙味を発揮する決定的ストライカがいるから、話が一層ややこしくなる。
 ザッケローニ氏は、前田をワントップに配し、その後方に右から岡崎、本田、香川と並べる事で見事な攻撃ラインを構成するのに成功した。前田が後方に下がる事で、岡崎の進出スペースを作り、そこに本田のキープ力と、香川の細工がはまり、遠藤の自在な展開を加え変化豊かな攻撃を作る事ができたのだ。ところが、後から登場した柿谷、大迫、そして大久保をどのように組み合わせるかで破綻。ブラジルでは、本田も香川も組立を忘れ、必死に得点を狙ってしまい、攻撃陣がバラバラになってしまった。
 このホンジュラス戦でアギーレ氏は、ジャマイカ戦同様、香川左サイド攻撃MF、本田右ウィング、岡崎CFと言う配置を行った。遠藤や内田の強力な右サイドと合わせ、このやり方が相当機能した。香川の格段の技巧による組立と、本田の強さによる突破がバランスよく機能したのだ。岡崎は得点こそなかったが、先制点は岡崎の鮮やかなニアへの飛び込みからだったし、乾の4点目は敵DFすべてが岡崎に引きつけられたが故のものだった。私は、ベネズエラ戦後に、岡崎を筆頭に多数の好ストライカがいるにもかかわらず、本田を前線に起用しようとするアギーレ氏に疑問を呈した訳だが、また私の先見性のなさが示されたと言う事か。
 内田、岡崎、本田、香川の4人は「欧州チャンピオンズリーグ上位進出は少々厳しいが」と言うクラブの中心選手、と言うよりは大黒柱。日本代表も、当然彼らを軸に戦う事となる。彼ら4人の適正配置を見出した事で、アジアカップの基本準備は整ったと言えるだろう。余談ながら、「大迫と柿谷に対して、ケルンとバーゼルで地位を完全に確立し本当の意味でのストライカに成長する時間を稼ぐ事ができた」とも言えるかもしれない。

 ただ、ブラジル大会出場選手のみの構成で、アジアカップを連覇できるかとなると、常識的には相当難しいはず。この手のタイトルマッチの勝利のためには「新しい戦力」が不可欠なのだ。これは4年後のロシア大会への準備とは別に、アジア大会制覇のためにも、チームの多様性なり、戦闘能力の積み上げなり、と言う視点から非常に重要な事となる。
 ところが、前半で3対0と大差がついてしまい、後半から登場した控え選手には少々気の毒な展開となってしまった。ホンジュラスは劣勢を挽回しようと無理攻めを狙い、一層守備網が混乱してしまっていた。そのため、攻撃陣は歯ごたえのない守備陣と対する事になってしまったからだ。とは言え、試合前に述べたように、アギーレ氏のチームにおける「新しい戦力」に、塩谷、太田、田口、柴崎、武藤の5人に加え、(決して若手ではないが)新たに豊田と乾が加わったのは結構な事だ。
 交代出場選手の中で、田口は敵が混乱している状況を冷静に判断し、よくボールを散らしよいプレイを見せてくれた。田口の台頭は、アジアカップに向けて非常に重要だ。おそらく中盤のスタメンは、細貝(長谷部)、遠藤(柴崎)、香川の組み合わせとなると思う。田口が使えれば、試合終盤リードしてクローズする際に、これを細貝、長谷部、田口と言う編成にするなどのオプションが飛躍的に広がるはずだ。
 さらにロシアに向けても、香川や柴崎を(知的で献身的でそれぞれタイプが異なる)細貝、田口、そして山口蛍が支える中盤は、相変わらず日本のストロングポイントとして機能して行きそうな目途が立ちつつあるのも嬉しい。もちろん、ここに大島や遠藤航や南野が絡んでくるのは当然の期待として。

 最終ラインについて。
 左バックは、アジアカップに関しては、長友の体調がどうなるかで対応が変わる。酒井高徳は相変わらず守備は微妙だが、よく押上げて、遠藤のあの美しい3点目の起点にもなっていた。豪州戦では太田が起用されるのではないかと思われるが、どちらをアギーレ氏が評価するか。もっとも、長友の体調が戻りスタメンを奪回した場合も、サイドバックの控えとして太田と(左右できる)高徳と2枚左をこなせる選手を置いておければ、長友を中盤に押し出すと言うオプションを作れるメリットもある。酒井宏樹はウルグアイ戦の大ミス以降呼ばれなくなってしまったが、元々内田と言う圧倒的存在とポジションがかぶるだけに、少々厳しくなってきたか。
 センタバックについては、元々タレントが不足している事もあり、森重、麻也が中心になるのだろうか。アジアにはドロクバはいないし(あ、ケーヒルはまだいるか)。塩谷はここまでの起用でよくやっているし、昌子はJでかなりのレベルのプレイを見せているだけに、豪州戦で試してほしいところだ。ここのポジションは、20代半ばから格段に向上する中澤のような事例もあり、よい選手に淡々と実力を上げて行ってもらうしかない。ロシアに向けては、五輪代表には好素材が多いようでもあるし、アジアカップ後も愉しみなポジションだ。
 ゴールキーパはよくわからない。先ほど述べたように、アギーレ氏はウルグアイ戦で大ミスをした酒井宏樹があれ以降呼んでいない。一方で、ベネズエラ戦で信じ難いミスをした川島には、今なお定位置を継続して提供している。川島は、自チームでも控えに回る事が多いと聞くが、ここは足技もよく安定感のある西川だと思うのだが(まあ、西川も信じがたい粗相を、先日のベガルタ戦で演じてくれた。しかし一方であれは、「あの西川が!」との表現で語られる事件だった。それに対して、川島のミスの頻度は相当多いように感じているのは私だけだろうか)。
 

 まあ、などと楽観論を語るのは愉しい。アジアカップも決勝だけ予約すれば十分な気がしてきたので、友人達とシドニー旅行を検討し始めたところだ。
 と、ここまで書いてきて、ふと気が付いた。アギーレさんは、今野をどこに使うのだろうか。まさか豪州戦でセンタバックに...?!
posted by 武藤文雄 at 17:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする