2008年03月14日

中国サッカー界とどう付き合うのか?

 敵地バーレーン戦のメンバが発表になった。稲本のトライはなるほどだが、松井は呼ばず山岸が残りですか。闘莉王は負傷再発らしいが、それでも岩政、橋本が外れ、加地も負傷だけに、やや後方の薄さが気になる。個人的には、稲本はさておき、中田浩二だと思っていたのだが。あと玉田ねえ、大久保がいないから短いスペースから加速できるFWを呼びたかったのかな。小笠原や本山は、呼ばないと決めたのだろうか。などと、邪推ははずむが、まずは試合を待ちたい。

 で、今日はいささかタイミングを逸した話題。あの試合から、もう3週間が経った。長い事サッカーを見てきたが、あれほど堂々としたチームと、あれほど醜いチームが、相見えた試合は記憶にない。ともあれ、感動的な試合ではあったが、だからと言ってもうあのような試合はごめんこうむりたい。興奮も感動もしたが、我々の大事な選手を壊す訳にはいかないのだから。今日はその再発防止を検討してみた。

 まず、私は諦めた。以前より、「日本がワールドカップに優勝するためには、近隣国が強い必要がある、したがって東アジア、東南アジア諸国が強くなる事は、日本の強化に必要」と論じ続けてきた。その考えは変わっていないが、中国はダメだ。素材が悪過ぎる。毎回、毎回、でかくて強いだけの奴を集めて、日本にも韓国にもバカにされるだけの試合をしていて、悔しくないのだろうかと不思議に思っていた。ところが、ここ最近は悔しさを表すどころか、ただやみくもに人の足や腹を蹴る選手ばかりを招集しだした。あれで勝てる訳がないのは自明だ。強くなろうと言う志を持たぬのだから、タマがもう悪過ぎるのだ。この国だけは、共に強化を図るグループからは外して考えるしかないだろう。ベトナムやタイなど連携を図れるであろう友はいくらでもいるのだから。
 しかし、一方で現実もある。中国サッカー界と袂を分かつのは結構難しい。ワールドカップ予選、五輪予選、アジアカップ予選、ここ数年AFCはこれらの国際試合を計画的に行えるようになってきた。ところが、あまりに東西方向に長過ぎる地域ゆえに、様々な問題点が噴出している。中でも、昨年の五輪予選最終戦における最終戦同時開催不可能問題は、その典型。現実的に、この広大なアジアを1つのブロックとして戦う事に、相当な無理が噴出しているのだ。そう考えると、AFCの東西分離については、実際に行われるかはさておき、かなり現実的な検討が行われる可能性はある。しかも、豪州のAFC参画も事態を一層混迷させている。そう考えると、日本と韓国の両国は、(サッカーの質は格段に低く、今後の向上も全く期待できない)中国とある程度の連携を取る方がトクであろう。アジアの各地域連合と対等に議論すると言う名目を含め、常時韓中両国のサッカー協会と連携をとれるべく東アジア連盟が維持されるのは、重要にも思える。
 また、サッカーと言うくくりを外れても、日本と中国はお互い極東の大国として、今後も付き合っていく必要がある。日本から見れば、輸出国としても輸入国としても中国はあまりに重要な隣国だ。逆に中国から見れば、輸出入の相手国としての重要性はもちろんだが、今後産業の付加価値を高めていくためには、日本の様々な技術が不可欠なのは間違いない。両国とも相互依存からは脱却できないのだ。
 そして、日本の現在の経済力も、中国の潜在的成長性による将来の経済力も、FIFAから見てもあまりに魅力的な「市場」である(中東のキャッシュは、FIFAの偉い人のポケットマネーとしては重要かもしれないが、人口が少ない事もあり「商売」としての魅力は薄い。しかし、日本や中国の人口を含めてのキャッシュは格段な物量であり「商売」として非常に重要なのだ)。我々が「中国とは付き合いたくない」と言っても、胴元は「まあまあ、ここは穏便に」となだめてくるに決まっている。
 そうこう考えれば、現実的に中国サッカー界とはお付き合いをしていかなければならない。そうだとすれば、可能な限り先方を当方に都合のよいように制御する(しようとする)のが、大人の行動と言う事になるだろう。

 冷静に考えると、この国とサッカーをして困るのは、ひたすらラフな事のみなのだ。確かにバカな観衆のブーイングはうるさいが、しょせん情報操作された輩が訳わからず騒いでいるだけ。また、ブーイングをされる事自体、当方が強い事の証左なのだから、それをどうこう言っても仕方があるまい。そして、何より試合をすれば100%勝てる相手だ。そして、審判が正常であれば、当方の大事な選手が壊されるリスクも格段に下がるはず(それにしても安田が無事でよかった)。つまり、ラフプレイの根絶を考えさえすればよい。
 方策は明確。情宣である。ワールドカップ予選で中国と戦う事態になったら、先日の重慶の試合のVTRを用い「中国の試合は欧州から審判を呼ぼう!」とキャンペーンを行うのだ。ただし、これは試合前に行うのでは意味がない。事前に幾度も幾度も執拗に機会がある度に、FIFA関係者や海外のマスコミ人にも映像を見せていく必要がある。そして、これは日本単独での活動は意味がない。3次予選で中国と同じグループの豪州とも協調しておくとよい、もちろん韓国、イランとも4次予選でそれぞれが中国と同じグループになる可能性があるから、これまた協調は可能なはず(上記した東西分割議論の際も、豪州やイランとしっかりと連絡を取り合える関係になっておく事もまた重要だし)。
 先日の試合後に川淵会長の指示の下、現地で大仁副会長が正式な抗議をしたとの事。これが奏功したのか、少なくともその後の女子の中国戦に関しては、中国が見苦しい振る舞いをしてくる事はなかった。そのような意味では、「正式な抗議」は意味があったのかもしれない。だから、一歩踏み込んで、各国の重要人物に情宣活動を行うのは重要だと思うのだ。
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2008年02月23日

くそう

 冷静に考えれば、かほど実りのある強化の機会はそうはなかっただろう。
 シーズン早々にも関わらずタフな試合を要求される政治的事情、泣く子や地頭が懐かしくなるような理不尽の連続、相次ぐチームメートの離脱。それらを乗り越えて、百点満点とは言わぬまでも1勝1分けでしっかり戦ってきた上で、立ち塞がる宿敵。総得点数差により「勝たなければならない」拘束条件。そして、(自己責任ではあるが)序盤の痛恨の失点。
 何より山瀬の完璧な地位の確立(日本協会は、山瀬の充実の映像を、すぐさま中村俊輔と松井に送付せよ)。田代の発見。内田と安田の経験。
 岡田氏の痛恨の表情、終了後のインタビュー、「(インタビュアを睨みつけて)もういいですか。残念です。」と言う発言。

 韓国より下になる事が悔しいのだよ!

 川口よ。どんな、どうしようもないシュートでも防いでくれよ!
 内田よ。「だから中にしぼり過ぎてはいけない!」って言っただろう。
 今野よ。韓国にやられるようならば、欧州や南米の強豪にもまたやられるぞ。
 そして、この場面にやられた事によるあまりに重い痛恨。

 でも、それはそれ。

 橋本の使い方、憲剛の交代、播戸起用時間の短さ、疑問は多数あるよ。
 でも、岡田さんよ、俺はあんたと共に戦っていくよ。試合終盤の(いささか空回りではあったが)パワープレイを含めた猛攻。前線の選手を次々に切り出す選手起用。思い叶わず勝ち切れなかった時の悔しげな表情。
 97年から98年にかけてのあんたの七転八倒も素晴らしかった。でも、それより80年代のあんたのプレイ振りが忘れられないのだよ。日本代表と古河のために粉骨砕身したあんたの姿が。
 そして、この難しい状況で引き受けた2度目の代表監督。繰り返すが細かな疑問はある。しかし、ここまでの6試合を存分に理詰めに戦ってくれた事は高く評価するしかないわな。あんたは大した人だよな。そして、改めて振り返るとこの6試合は愉しかったなと。

 でも繰り返します。
 韓国より下になる事が悔しいのだよ!
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2008年02月21日

日本代表を応援する誇り

 これほどの代表選手達を保有できている事を改めて誇りに思える試合だった。
 確かに、中国は圧倒的な戦闘能力差がある非常に弱い敵ではあった。そもそも、これだけ戦闘能力差があるチーム同士が試合をするのがミスマッチなのかもしれない。

 しかし、2つの事態が試合をスコアだけはもつれさせる事になった。いずれも試合前にある程度の予想と言うか、覚悟はできていた事なのだが。
 1つ目。中国の全選手は「敵を蹴ってはいけない」と言うサッカーのルールを知らなかった。安田を壊したGKがイエローカードを食らって文句を言っていた事、さらにはあのGKは終盤啓太が中国の主将ともつれた時に冷静に仲裁に入っていた事、この2点から、あのGKはあの安田に対するプレイに悪意を持っていないし、罪の意識も感じていない事が理解できる。つまり、あのGKはルールを知らないのだ。その他の中国選手も、前半2回楢崎が蹴られた場面を皮切りに、スクリーンした日本選手を後方から蹴る、足の裏を見せてタックルする、肘打ちをする等、様々なプレイを見せてくれた。おそらく、彼らは悪意なくこれらの行為を行っているのだろう。そう言えば、こんな試合もあったなと。
 2002年の韓国代表チームの振る舞いは、これらに比較すれば随分と正常なものだ。当時の韓国選手達は審判団の判断基準を理解した上で、明らかに明確な意図を持ってラフなプレイを継続していたからだ。当時の韓国のプレイ振りは、イタリアやスペインを存分に悩ませていたが、それでもそれは(相当卑怯なやり方ではあったが)あくまでも意図のあるプレイだから、予測可能なもの。しかし、昨日の中国のそれは悪意がないのだから、日本選手の対応は極めて難しいものだった。6年前にマルディニ達が相手にしたのはまだ人間だったのに対して、昨日啓太達が相手したのは人間ではなかったのだ。
 2つ目。しかし、それでも審判がまともであれば、前半で中国は10人になっていただろうし、後半中国は試合成立不可能な人数に減っていただろう。ところが昨日の主審の判定基準は非常に明確ながら独特のものだったために、90分間試合が継続してしまった。
 通常の試合ならば数試合以上の出場停止になる反則にはイエローカード。通常の試合ならば退場になる反則だと日本のFK。通常の試合ならば警告となる反則だと中国または日本いずれかの反則(ほぼ半々の比率だっただろうか)。実に明確な判定基準ではないか。まあこのように独特の判定基準に審判には、たまには出会う事があるのだけれどもね。
 試合終了時、憲剛と握手をした際の主審の清々しい表情が、無能な人間に大役を負わせては行けない事を示していた。北朝鮮は審判の育成に苦労しているのではないか。特にカードの出し方を理解していないようだ。幸い日本にはカードを出す事を得意とする審判は多数いる。柏原丈二氏あたりを、長期間に渡り北朝鮮に審判技術指導で派遣するのはいかがだろうか。日朝両国のサッカー界いずれにもメリットになると思うのだが。

 それにしても日本選手の戦う姿勢と冷静さは素晴らしかった。80年代に友人が「クールに燃えろ!日本代表」と言う応援幕を出していたが、正にこの日の日本の全選手は、「クールに燃えて」いた。あの中国の異様な削りと、あの主審の独特の判定に対し、誰1人逃げもしなかったし、誰1人取り乱す事もなかった。中澤や遠藤や楢崎のように海千山千の経験を積んだ選手だけではない。むしろ、今回のチームは決して平均年齢こそ低くはないが、諸事情でアジアの真のタイトルマッチの経験は少ない選手が多かった。それにもかかわらず、全員が冷静に戦い抜いたのだ。いくら相手が弱いと言っても、上記した2つの外乱に耐えながら、ここまで知的に技巧差を発揮できる試合を演じてくれたのだ。これほどのまでの代表チームを保有できる事が本当に誇らしい。
 唯一の得点は完璧な崩しだった。中国の組み立てに憲剛と啓太がプレッシャをかける事でミスパスを誘因、右サイドで拾った安田が中央の山瀬につなぎ、山瀬が巧みなスクリーンプレイでキープし、後方に引いてきた田代が左に流れる遠藤へ展開、遠藤が一拍ためる間に駒野は左サイドに進出し田代と山瀬は前線に進出。遠藤の展開を受けた駒野が縦を突きセンタリング、田代が敵GK前でつぶれ、こぼれたボールを山瀬が押し込んだ。CBが駒野ばかり見て田代を見失ってしまうレベルの選手だったのは確かだが、実にきれいな得点だった。どうでもいいが、中国のサッカー人は、このような得点を自分たちが決める快感を味わいたいとは思わないのだろうか。

 この日の日本のチームとしての課題は先制後の前半、中国に合わせてやや蹴り合いめいた展開にしてしまった事か。内田や楢崎への狼藉を主審が見逃した事、中盤のバランスが悪く敵ボランチを自由にしてしまった事などが要因だった。しかし、ここでは憲剛に注文したい。確かに敵CBのラインは不適切だったが、無理に縦パスを狙い過ぎたのではないか。まだ試合は前半で中国選手には体力も残っていたし、1−0でリードしていた。無理に2点目を狙う事よりも、交通事故による失点すら防ぎ、敵を疲労させるのが前半の課題だったのではないのか。一方で完璧なボールキープと揺さぶりで敵DFをガタガタにし続けた後半の展開は上々だったが、目指しているのは格段に高いレベルである事を認識して欲しい。
 負傷した安田はどうやら無事らしい。やれやれである。彼のblogを読んだが本当に感動した。彼はあの場面、蹴られる前にシュートを外した事をしっかりと反省している。これは本物だ。絶対に積んで欲しくなかった経験を積み、いよいよこのタレントは本物になっていくであろう。
 内田は散々の前半だった。主審の独特の判定基準を理解できず、不当なチャージに倒されて再三敵に好機を作らせてしまった。しかし、後半には、主審の基準をよく理解し守備も格段に向上したし、幾度となく攻撃参加から好機を演出した。ただし、落ち着いた後半でも中にしぼり過ぎ、時々右サイドでフリーの選手を作ってしまった位置取りには課題ありか。既に安田には相当な差をつけられてしまっている事は忘れてはいけない。
 田代も高い評価を与えるべきだろう。決勝点への絡みで、山瀬のスクリーンプレイを判断よく感じ取り、自らが近寄った判断など絶妙だった。この得点場面の他にも、ワントップの難しいポジションで、前線でしっかりとしたキープし、得点への意欲を見せてくれた。終了間際の謎のオフサイドになった得点も絶妙。ロスタイムの決定機に枠に飛ばせなかった事を、しっかりと反省してくれれば、さらに向上が期待できる。
 羽生も、安田が壊された難しい状況での交代出場で堂々たるプレイを見せた。あの重苦しい場面で、しっかりと引き出すプレイを連続する事で、チームのリズムを作ると共に好機を演出した。先日、山瀬との並列を期待したのが、実に不幸な事態で実現した訳だが、苦境でも活躍できる重要な人材だ。
 橋本は久々の登場。頼りになるクローザ振りを見せてくれた。このようなJリーグで格段な実績を残している選手は、どんなぶっつけ本番でも国際試合で着実にはたらいてくれる。優秀なトップリーグを保有していると、このような事が強みになる。
 そして山瀬。とうとう来た。森島寛晃以降ようやく我々は1.5列目から格段の得点力を持つタレントを獲得できたのだ。森島は飛び込んでのダイレクトシュートに妙味があったのに対し、山瀬は一歩遅れた挙動からの正確なボール扱いが持ち味。森島が時に頑健な敵DFと共につぶれる事でスペースを作ったのに対し、山瀬は優雅な技巧で敵陣前にスペースを作る。その対比はさておき、我々は久々に頼りになるセカンドストライカを確保しつつある。
 これ以外の楢崎、中澤、今野、加持、駒野、啓太、遠藤については、この程度の相手に完勝した事を、改めて評価する事が失礼なのかもしれない。ただし、試合終了直後の中澤のガッツポーズは忘れ難い。あのガッツポーズこそ、他の全選手に「クールに燃える」事を認識させ続け、それに成功した男の成功の歓喜だったのだ。伝統は継続しているのだ。

 中国には13億人もの人々が住んでいる。これだけの人々が「優れたサッカーの代表チームを所有する喜び」を持つ事ができない事が、あまりに気の毒だ。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(20) | TrackBack(2) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月19日

安田理大の「またぎ」

 安田理大が、嬉しそうな表情でフィールドに入ったてから、まだ数分しか経っていなかった。安田が左サイドで「またぎ」を見せた時。何か言葉にならない「期待」を感じた。そして、その「期待」は見事に的中した。新進気鋭の若者が、堂々とした個人技でA代表マッチのデビューを飾るなど、そうは見る事のできない。あの伸び切りの姿勢からのセンタリングの軌跡を思い起こすだけで、この試合の映像を見た価値は十二分にあった。

 北朝鮮は先日敵地でヨルダンに勝っているのだから、そう弱いチームの訳がない。66年のワールドカップでの成果を含め、アジアでは屈指のサッカー強国の歴史を持つ。伝統的に縦に出て行く速さを持つ選手が多く、個々の選手の判断力も中々だ。問題は、国策のためだろうが、ワールドカップ予選やアジアカップなど重要なタイトルマッチを棄権する事が多く、選手がしっかりと試合経験を積めない事にある。しかし、ここ最近の傾向として、日本で生まれ育った選手がチームに独特のリズムを与え、変化をつける事がチーム強化につながっている感がある(80年代に北朝鮮代表で活躍していた在日選手が、外から見てもあまりプレイスタイルが他の選手とは違う印象を感じさせなかったが、最近の選手には「違い」を感じるのは何故なのだろうか)。
 そう考えれば、主軸の多くを欠くこの試合が、決して楽なものにならない事は容易に想像できた。テレビのアナウンサのヒステリックな連呼については諦めているが、各種の報道やBLOGでも試合前後に北朝鮮を完全に見下げた表現を見受けられるのはいかがなものだろうか。また「北朝鮮が中国より弱い」と言う表現もよくわからない。ワールドカップ本大会の歴史云々とまで言う気はないが、最近の実績だけを考慮しても、とても「中国>北朝鮮」と言う不等式は書けないと思うのだが。
 ともあれ、引き分けと言う結果は残念だったし、内容も不満が無いわけではなかった。しかし、川淵会長や一部のマスコミ関係者やブロガ達が、この試合に非難轟々なのは理解できない。上記の安田のまたぎも、逆サイドの内田の奮戦も、遠藤の技巧的なゲームメークも、存分に私には愉める試合だったのだが。

 立ち上がりに敢え無くCK崩れから鄭大世に中央突破され失点。
 まず、鄭の巧みな反転を許した水本は猛省を。確かに鄭はよい選手だし、この試合への意欲も十分。しかし、同じリーグ戦でクセもわかっている選手に、ああも易々と鄭にやられた水本は自覚が足りないとしか言いようがない。水本への期待は単に若手の有力なCB程度ではない。南アフリカで闘莉王と中澤のいずれかをベンチに追いやる事なのだ。あの1点を食らった場面で交代させるくらいの懲罰を与えてもよかった位だ(岩政も体調不良との情報も聞いたので、代わりがいないような気もするが)。以降も2度ほど、水本は鄭に入れ代わりを許し、中澤の助けを求めた場面があったのも気に入らない。
 一方の得点場面以降も、鄭はワントップでボールをよく収め見事な活躍、完璧に北朝鮮の中核として活躍した。フッキの復活で、フロンターレでは控えに回るのではないかと言われているが、関塚氏にも相当なアピールになったのではないか。鄭の調子が継続すれば、2010年北朝鮮の「44年振り」が現実的な目標となってくるだろう。唯一の不安は、昨シーズン天皇杯準決勝まで戦ったにも関わらず、2月中旬のこの時期にここまで体調がよくて大丈夫かと言う事くらいか。

 日本は序盤劣勢を余儀なくされた。
 要因はチームのバランスが悪かった事だろう。憲剛が発熱したと言う事で、中盤は啓太、遠藤、羽生、山岸、トップは田代と播戸。前の6人に技巧派が少な過ぎる事で、立ち上がりに北朝鮮が元気良くプレスをかけてきたのをかわし切れなかった事にあったと見た。山瀬の体調も今一歩だったようだが、せめて前田を開始から出していれば、問題は随分と解決したと思うのだが。こうなると、オシム氏以降1度も招集される機会がない小笠原が気になってきたりして。
 少々バランスが崩れたこの布陣で戦った事で、羽生と山岸の差が一層明らかになった。
 山岸はもう厳しいのではないか。よく動いて引き出そうとするのだが、受けようとする場所が敵陣近くではないのでクサビ的な効果は薄いし、オープンで受けても勝負をしようとしないし。確かに大久保や山瀬や羽生に無い体重と言う魅力のある選手なのだが、気が弱いのだろうか。いっそもう1枚下げて、人材難の左サイドバックに起用するのも一案か。案外大枚をはたいて山岸を購入したフロンターレの狙いはそこかと、好調の鄭大世を見ながら思ったりして。
 羽生は存在感をアピール。この選手は山岸と異なり、ボールを引き出してからシゴトをはっきりと狙ってくれるので機能する。もう少しシュートやラストパスを急がずに蹴るリズムを身につければ(これは20代後半に入ってからも可能なはず)非常に面白い存在になると思う。山瀬との並用なども面白いと思うのだが。

 とは言え、遠藤が冷静にボールを散らす事で、日本がペースを次第に確保する。遠藤は、憲剛がいない分、溜めも展開も一手に引き受ける事になり、古典的なゲームメーカとして活躍。何の脈絡もないが、74年のオヴェラーツを思い出した。啓太がボンホフ、羽生がへーネス。
 評価されるべきは内田。A代表4試合目でようやく地位を確保した感。守備面では、早い位置取りの修正を見せ、前進しても再三攻撃の起点となっていた。重要な事は、啓太、遠藤、羽生らが内田が右サイドでキープした際に、しばしば追い越しなり後方のフォローアップを、機能的に行なっていた事。これらの動きは、タイ戦までは思うように見られなかったのだが。内田は、ようやく海千山千のタレントの信頼を得たとも言える。
 一方逆サイドで加地が慣れぬ左サイドで苦戦を継続していた。前半の加地の苦闘を見て「幾ら何でもこれは無理だろう」と思っていたのだが、岡田氏はヒネリを加えてきた。安田を山岸に代え、MFで起用したきたのだ。以降の加地の活躍は面白かった。ドリブルで中に進出するのが好きな安田と巧くバランスを取り、時に左サイド、時にセンタバック、時に啓太をカバーするボランチ。昨年のナビスコ決勝で、西野氏が3DFの一角に加地を起用したのを、ちょっと思い出した。日本には珍しい脚力と身体の強さを前面に出せるこのタレントは、岡田氏の下相当多用な労働で貢献してくれそうな息吹を感じる事ができた。若い頃はその守備の拙さで我々を悩ませたタレントがこのように成熟してくるのは実に愉しい。一方で、加地のフラストレーションは相当だろうな。終盤まで難しい仕事をさせられ、ようやくライバルでもある駒野が起用され「得意の右サイドに行ける」と思ったら、駒野が右サイドに。案外今シーズンは、岡田氏と西野氏が、競って加地に色々な仕事を強要するシーズンになるのかもしれない。
 もっとも、岡田氏が安田を1枚前に起用したのは、単に負傷者続出だったためのようにも思えるが。

 トップで起用された3人。
 播戸はよかった。時に両翼に開き、好機を演出。内田を軸にした右サイドからのクロスにも巧く合わせ、再三好機を掴んだ。とにかくこの選手は、常に敵陣を狙い、工夫する姿勢が素晴らしい。素早いクロスが、田代には合わず、播戸に合いそうになるのは偶然には思えない。播戸としては、「敵DF陣が疲弊する終盤までフィールドにいられれば」と思った事だろうが。
 田代は微妙。後半半ばに前田が準備した時は、当然田代が代えられると思っていたのだが、岡田氏は田代をフィールドに残した。岡田氏がこの試合を「テスト」として捉えていたのがやくわかる采配振りだった。このあたりまでは、後方からのフィードを受ける際の打点の高さ、左右に流れた際のボールキープの2点は評価されたが、とにかくシュートまで行こうとしない姿勢が不満だった。しかし、終盤は田代は相当強引に好機を狙っていた。巻のポストプレイと矢野の前進能力を具備するとも見れるプレイ振りだった。韓国相手にどこまで持ちこたえられるか、シュートまで持っていけるか、見てみたい選手だ。
 前田の負傷は心配だが、とにかく治療を。この選手は少ない起用時間で着実に点を取っている。これは、山瀬と共に高く評価されるべき。共に技術が正確で、落ち着いて(急がずに)ボールをさばけると言う特長の賜物か。

 安田に戻ります。
 あの「またぎ」から、必ずしも足の速くない選手が突破して、身体をギリギリに捻った左足のセンタリング。「ある人」を思い出しませんでしたか。ただ、そうなるとトップに使わなければならないのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月08日

大久保への不満と期待

 タイ戦への不満第2段。今度は大久保。決勝点における反応の速さはさすがだったし、1点目の遠藤のFKは大久保へのファウルで獲得したものだった。結果を出したと言う意味では評価に値する活躍だった。しかし...この偉才に対する期待は大きいだけに、どうしても不満

 まずトップを務めた前半。ボスニアヘルツェゴビナ戦でも文句を言ったが、やはり敵陣から離れ過ぎるのが気になった。確かに山瀬は後方から敵陣前に進出するのが得意な選手だけに、大久保が後方に引いてスペースを作り、山瀬を進出させる事を意図しているのはよくわかった。それはよい狙いだ。しかし、だからと言って、あそこまで敵陣から離れる必要はないだろう。
 得点場面は一種の本能的な俊敏性の賜物。そして、その他の大久保の好プレイを振り返ってみる。上記の先制点のFK奪取は「中澤のボール奪取→内田のつなぎ」を受けた大久保が引っ掛けられたもの。また、その直前に山瀬?のパスを受け、アウトで高原に流し、決定機を演出。前半終了間際にペナルティエリア直前でクサビを受け振り向こうとしてFKを奪取。2−1になった直後のCK、大きくファーにふくらんで敵マークを振り切りフリーで強烈なヘディングシュート。これらに共通するのが、敵陣近くで、正確なボール扱いなり、抜群の加速力なりを発揮している事だ。そう、敵陣近くと言う事が重要、とにかくトップに起用された際は、大久保には敵陣近くでプレイして欲しい。
 誤解されては困るが、私は大久保に「動くな」と言っているのではない。「敵陣近くで動け」と言っているのだ。つまり、長い距離を走り回るのではなく、短い距離でよいからDF達よりも早い動き出しを、高頻度で繰り返して欲しい。それにより、可能な限り敵陣近くでたくさんボールに触り、敵に脅威を与える事ができるはず。特にタイ戦のように、敵が分厚く守ってきた時は、大久保が敵陣近くで持ち味を発揮すればする程、敵はファウルで止めざるを得なくなるし(現状の日本のセットプレイの鋭さは言うまでもない)、ゴール前での混戦となれば、あの決勝点のような俊敏性を活かすプレイの頻度も増やせるはず。

 一方で、後半からトップ下での起用となった。このポジションで常時敵陣近くに張り付くのは無理なのはわかる。しかし、後方に下がってからの大久保には別な不満が残った。それは、妙にパスを狙う頻度が多かった事だ。上記した持ち味を活かすためにも、大久保にはまず得点なり突破を狙ってほしいのだ。確かに交代出場した巻も播戸も得点への意欲に満ち溢れており、疲労したタイDF陣の隙を突いたよい位置取りから再三パスを要求していた。ボスニアヘルツェゴビナ戦で山瀬に通した鮮やかなスルーパスのイメージも自分の中で強かったのかもしれない。しかし、やはり自分の持ち味を強く意識すべきではないか。

 タイ戦でも今一歩の出来だった高原は、負傷による長期離脱の影響が大きく、本来の調子を取り戻すのには結構な時間がかかるかもしれない。この隙に、代表のエースを奪い取るくらいの勢いのプレイを、大久保には期待したいのだが。
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2008年02月07日

啓太の課題

 タイ戦の失点にこだわる。
 確かにタイのティラティープのシュートは実に見事だった(川口にも油断があったようだが)。こちらによると、あれは得意のプレイらしいので、「恐れ入りました」と言うしかない失点と言える。しかし、見事なシュートが飛んできた前提には、阿部と中澤が固めるDFライン中央のやや前に完全にスペース(最近の流行語ではバイタルエリア)を空けてしまった守備ラインのミスがあった。結果的にティラティープが、あのスペースでフリーになり、斜め後方にいたスティーからのパスを受けて、あのズド〜ンに至った訳だ。あのようなミスがあっても、通常はあれほど凄いシュートが飛んで来る事は滅多にない事も確かかもしれない。
 しかしもし、これがワールドカップ本大会のアルゼンチン戦だったらどうだ?「僅かに中盤の守備がずれ、スペースができたところをメッシは見逃してくれなかった」と言う記事と共に、4年間の積み上げが無に帰する訳だよ。言い換えれば、世界のトップレベルと戦う場合には、あのミスが命取りになるはずだ。そう考えれば、あれは絶対に見せてはいけない隙を、アジア3次予選段階でタイに厳しく指摘された失点とも言えるべきでなないか。

 では何がいけなかったのか。(この選手を責めたくはないのだが)啓太が不用意に前に出過ぎていたからだ(ただし、タイの攻撃陣が意図して啓太を引きずり出す動きをしたのかどうかは、よくわかなかった)。通常ならば、あそこのスペースが空いたならば、CBが押し上げたいところだったが、スティーが前を向いたのとほぼ同期して、タイのFWが斜めに走り出してきていたから、阿部も中澤もラインを上げる事ができなかった。そのような意味では、パスの受け手が2枚全く異なる動きをしてボールを引き出した、見事な攻撃とも言えるのだが。したがって、啓太が位置取りを誤った時点で勝負はついていたのだ。いわゆるゾーンディフェンスで中央を固める守備では、敵がボールを保持している時は、一番危ない自陣前中央を空けないと言う考え方が、やはり原則と言うものだろう。ほんの小さなミスではあったが、啓太にはこの失点を猛省して欲しい。
 啓太のレベルの選手になると、もうあれ以上レベルを上げるためには、このような些細な改善を積み上げていくしかないのだ。

 ちなみに、この失点に関して「ワンボランチのフォーメーションが問題」との分析を読んだが、それは違う。「ワンボランチだからやられた」ではなく、「ワンボランチの啓太の判断ミスがあったからやられた」のである。この試合全体に渡り、憲剛、遠藤、山瀬らは中盤で忠実な守備を見せ、極端な数的不利になる場面は作らせなかった。唯一選手全体の配置が狂ったこの失点場面にしても、憲剛も遠藤も守備に入っており、いわゆるワンボランチのフォーメーションを採った故の失点ではなかった。
 ただし、ワンボランチのフォーメーションは、そのボランチにかかる精神的な負担は相当なものとなる。そして、今の日本は俊輔を筆頭に、憲剛、遠藤、松井、山瀬のように、創造的な中盤の名手が多いから、必然的にワンボランチのフォーメーションを選択する機会は多くなるだろう。もちろん、闘莉王の復帰、水本の成長などの後方のタレントの充実により、阿部がもう1つ前でプレイする可能性もあるだろうが(稲本や中田が中盤に復帰する可能性もあるだろう)。ただ、その場合も彼らに期待される第一義のシゴトは展開になり、中盤のスペースを埋めてボール奪取を行うと言う一番苦しいシゴトは啓太の役目となる。そして、89分間完璧なボール処理を継続しても、この日のタイ戦のように一瞬のミスをするだけで、その責任を問われるのが、啓太なのだ。さらにその地味で目立たないシゴトの不備が目立てば、責任を問われるのみならず、控えに目をランランと輝かせた今野がいるのだから、本当に大変な事だ。
 一方で、鈴木啓太(加えて今野泰幸も)と言う、過酷な要求を突き付ける事ができる選手がいるのだから、我々も幸せである。
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2008年02月06日

悠然と初戦突破

 私の席はバックスタンドで屋根があったから、雪の影響は少なく、防寒さえしっかりすれば問題は少なかった。靴にホカロン、アルミ毛布で下半身ガード、毛糸のマフラー、熱燗、の組み合わせでほぼ完璧な対応ができた。もっとも、下半身にアルミ毛布を巻きつけながら、日の丸を振り、日本が好機を掴む度に立ち上がるのは、いささか難しかったが。
 しかし、ゴール裏(屋根がない)のサポータの方々、選手達、特に南国のタイから来た敵国の勇者達には、あまりに過酷な環境だった。2月に極東で南国の選手が公式戦を戦うのは、やはりいかがなものかと思うのだが。まあ、欧州ではこの環境で試合するのは普通だろうし、9月にアラビア半島でやるよりはましかもしれないな。仕方がないのだろうか。
 元々圧倒的な戦闘能力差があるところに加え、気候のハンディキャップ。信じ難い失点があってもなお、勝ち点を失う事は、まずないだろうと言う内容での快勝だった。

 タイは4−1−4−1のフォーメーション。9人のフィールドプレイヤで守備を固めてきた。センタバックは厳しく高原と大久保をマーク。好調山瀬がスタメンで来るのも予想していたのだろう、トップのいずれかが引いて、山瀬がすり抜けを狙う攻撃もよく読んでいた。憲剛のサイドチェンジで内田なり駒野がフリーでせり上がってきても、サイドMFがよく頑張り、容易に2対1を作らせない。よい守備だったと思う。
 しかし、あまりに攻撃力がなかった。中でも痛かったのが、トップのサラーユットと言う選手が、中澤を相手にボールキープはおろか、時間を稼ぐ事すらできなかった事(普通FWがCBに完敗した時は「突破はおろか、ボールキープすらできなかった」と言う表現になるのだが...)。日本はどのような状況でも2人DFが残っているから、これでは逆襲速攻すらできない。もちろん、日本のパスを中盤でカットして、比較的前掛りで攻めけける機会も若干あったが、日本の攻から守への切替が早い事もあり、サイドで数的優位を作れない。それでも、サイドで2対2くらいから前進できれば面白いが、寒さのせいか、日本の守備が俊敏なのか、東南アジアチーム独特のショートパスの突破が機能しない(タイは昨年のアジアカップで、豪州をその得意なショートパスで散々苦しめたのだが)。序盤に駒野のミスパスからの速攻で、せっかくサイドに拠点を作りながら、パスワークで突破が叶わず安易なアーリークロスを上げた場面には、失望じゃなかった安堵した。中澤が適切な位置取りをしている状況で、早いクロスを上げるのは日本にボールを提供するだけではないか。
 結果的にタイが日本陣に近づいたのは、同点弾の他は、後半立ち上がりのFK、75分過ぎに2回ほど駒野の背後を突破しかけた場面くらい(1回はCKを獲得した)。気候のハンディキャップは間違いないが、ここまで90分間を通じて圧倒できる試合も珍しい程、内容に差があった。

 かくして、日本の圧倒的な攻勢が継続した。組織的によく守っていたタイだが、憲剛と遠藤を軸にしたパスワークであれだけ振り回されれば、いつかは崩れる。
 日本の1点目は、ハーフウェイラインを10mちょっと入ったところで、中澤が素晴らしいスタンディングタックルでボールを奪い、そこから短いパスで日本がペナルティエリア近傍へ進出、最後は大久保?が倒されたFKから。「この距離ならば阿部が蹴っても面白いのでは」と思っていたら、遠藤が見事に決めた(それにしても、阿部の直接FKを見る事がめっきり少なくなって寂しい)。もっとも、友人と「いやあ、4年前を思い出すねえ」などとノンビリ語りながら、毛布を直していたら、敢え無く同点にされてしまったのだが。
 2点目は後半立ち上がりからの猛攻の賜物。憲剛がやや前掛りになり、無理をした攻撃を重ねた時間帯だった。右サイドフリーになった内田が強引に突破を狙うが、タイDFは何とかはね返す。拾ったボールを今度は左に展開、山瀬がこれまた強引なドリブルで左サイドをこじ開ける。タイDFは、山瀬を止めるのが精一杯。憲剛がプレッシャをかけ、やや偶然に憲剛に当たったボールがゴール前にこぼれたところを、大久保がいかにも彼らしい俊敏さで反応して流し込んだ。
 3点目は右サイドで巧くプレスをかけて中澤が巧みな?個人技で攻め上がったところを、タイのナロンチャイが慌ててファウルで止め、2度目の警告で退場。その直後の左からの攻め込みでFKを獲得。そのFKを中澤が完璧な高さで決めた。中澤のマークについていたタイのCBナタボーンは、この場面まで空中戦もよく頑張っていたのだが、相手が悪かった。何とか同点で終えたいタイはリードされた時間で退場者が出て、非常に苦しい状況で、次の対応も迷うところ。そのタイの迷いの最中に、最強兵器でしっかり点を取るのだから。
 4点目は、タイの集中が切れていたところもあるが、あの時間帯で巻が巻らしいシゴトをした事は高く評価されよう。
 1点目と3点目は、守備を固めたタイの僅かな隙をついてのセットプレイ。2点目は「点を取るための猛攻の時間帯」に、サイドの選手が無理を仕掛けた事。4点目はロスタイムの敵の集中切れ。仕掛けどころにチーム全体で集中して、しっかりと得点を上げた。このような公式戦は何よりも結果が重要であり、難しい初戦で勝ち点3を確保した事も評価されるべきだが、内容もよい試合だった。

 当然ながら、失点場面を含め課題も散見されたが、それは明日以降。
 オシム氏が作り上げた「格段の基盤」を受け継いだ岡田氏は、2つの準備試合とこのタイ戦で内容も結果も十分な成果を発揮してくれた。
posted by 武藤文雄 at 23:55| Comment(3) | TrackBack(3) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月05日

ワールドカップへの道

 ワールドカップ予選が始まる。
 私は人生でこれ以上の娯楽を知らない。昔はおおむね丸1年を用いて、予選を消化するのが常だった。前回大会より丸々2年(実質的には1年半か)を使い、じっくりとワールドカップ予選を堪能できる事になった。今回は日本が登場する段階のさらに前から、1次予選、2次予選が行なわれた事で、厳選された20チームが3次予選を戦うレギュレーションも興味深い。かつての予選のように、大量点を奪うような試合は、少なくなってしまったが、アジアのタフなライバル達と、本大会出場まで14試合の真剣勝負をじっくり愉しめる訳だ。

 そして、明日の初戦、埼玉スタジアムにタイを迎える。タイとの初戦と言えば、神戸ユニバースタジアムで行なわれた93年合衆国大会予選を誰しも思い出すだろう(日本ラウンド、UAEラウンドのダブルセントラルで、日本、UAE、タイ、バングラデシュ、スリランカの5国が2回戦総当り)。前年のアジア初制覇の後、何としてもワールドカップ初出場を獲得したい思いで臨んだあの重苦しい初戦。福田の絶妙なパスから、カズが美しい得点を決め1−0での勝利の歓喜は、今なお忘れる事ができない。
 もっとも、あの試合前後の思い出は他の事も多いな。早朝着の長距離バスで神戸について、夜キックオフの試合までやる事がなくて、友人と有馬温泉に行った事。さらに、あの予選で忘れられないのは、国立で行なわれたタイ−UAE戦。既に日本はタイに勝っていたから、ライバルUAEがタイに勝てないと、日本は相当有利になる。その事を「わかっていた」好事家が数百人国立のバックスタンドに集結。タイに熱狂的な応援を行なった。タイも我々の熱狂的な声援に応えて?後半終了間際まで実に見事な守備を見せてくれたのだが、あと5分のところでUAEが決勝点。我々の思惑は藻屑と消えてしまった。いや、あの試合は興奮したな。

 あれから15年の月日が流れた訳だ。
 あの15年前は、日本代表チームが「初めて国民的支持を集めて世界に挑戦した」年だった。そして、あのカズの美しい得点によるタイ戦の勝利から、その冒険は始まった。冒険の終結は、あまりに甘美な悲しいものだったが。
 そして、以降の15年間の日本サッカーの歩みを振り返ると、陳腐な言い方になるが感慨深い。毎年、様々な形態で欧州、南米の列強と親善試合を行ない互角の成績を収め、アジアで競合国に勝ち切れないと非難を轟々と浴びせる人もいる。15年前に、UAEやタイに勝つ事がいかに重要だったかと思うと、この時代の流れが何とも愉快ではないか。もっとも、93年より前(より正確にはオフト氏と柱谷哲二の仲間達が92年のダイナスティカップを制する前)などは、中東の強豪から勝ち点を奪う事が、奇跡に近いと思われた時代もあったのだが。

 過去を振り返っても、今回の予選ほど磐石の体制で迎える事ができた予選はないと思う。ただでさえ、アジア屈指の分厚い選手層、倒れる前のオシム氏が丹念に作り上げた基盤、受け継いだ岡田氏のしたたかな準備(岡田氏の「接近云々」と言うキャッチフレーズは、明らかにマスコミの注目を一点に向け、準備を円滑に進めようとする三味ではないかと思うのだが...以前も述べたようにショートパスによる局面打開は、日本代表が今より高いレベルに上がるために非常に重要だとは思うが、それが方法論であり、目的ではない事を、岡田氏は十分に認識しているはず)。大エースの中村俊輔を呼び戻さずとも、明日は確実に勝てるのではないかとの思いは強い。
 もっとも、私の楽観的な予想は外れる事になっているのだが。

 しかし過去も再三述べてきたが、試合が始まってしまってから私にできる事は、声を限りに応援する事だけ。厳しいタイトルマッチで、真摯に応援できる環境がある事が、何よりも嬉しい。
posted by 武藤文雄 at 23:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月31日

仕上がりが早過ぎるのが唯一の心配

 とにかくオシム爺さんが、あそこまで回復した事を喜びたい。あのオーロラビジョンに映った笑顔を見る事ができたので十分だ。試合前には「この寒い中、衆人の中に登場しTVカメラが向けられるのはいかがか」とも思っていたが、考えてみれば医師団が観戦を許可したのだろうから、素直に回復を喜ぶべきなのだろう。ご本人だって、この試合は現場で見たかったよな。あの笑顔を見る事ができたのだから、これ以上の贅沢を言う事が無いように己を律したい。

 チリ戦との大きな違いは2点。チリと異なりボスニアは組織的なプレスがやや弱かった事。そして、内田がこの日は勇気を見せて再三敵陣に進出した事だ。内田が前進する事ができたのは、経験の賜物なのか、敵のプレスが弱かったためなのかは、議論が別れるかもしれないけれど。とは言え、結果的にこの2点により、すっかり余裕を持った憲剛が面白いようにロングパスを繰り出し、日本ペースに。A代表2試合目でこれだけできれば、内田は評価すべきだろう。で、タイ戦は内田なのか、加地なのか、極めて興味深いな。しかしねえ、あの30分過ぎに憲剛のサイドチェンジからフリーで抜け出した場面ではシュートを打てよ。あの元日の一撃を君は忘れてしまったのか。
 巻は不運の負傷で早々に交替。しかし、この日の調子も悪くなかった。相変わらずゴリゴリと身体ごとのしかかる前線での頑張りは非常に有効。大久保の直前でボールキープしていたDFに対して、後方から素晴らしいウェーブの動きで大久保を追い越し、プレスをかけに行った場面は、正に面目躍如。この頑健なFWは、アジア中を悩ませ続けるに違いない。
 巻に代わって入った山瀬(おそらく岡田氏は、タイ戦のオプションとして後半アタマあたりから高原あたりに代えて山瀬を入れた布陣にする構想だったのではないか、それが巻の負傷で早まったのだと見た)。2得点1アシストと大活躍だった。チリ戦終盤に起用された際は、目立った引き出しを見せる事ができなかったが、この日は遠藤と憲剛が組み立て、高原がキープし大久保が突破する状況で、彼らのど真ん中から挙動を開始して最前線に進出するプレイを要求され、見事にその期待に応えた。惨敗に終わったアルゼンチンワールドユースで最も質の高いプレイを見せ、岡田氏率いるコンサドーレで活躍していた頃は、この日のような2列目からの前進が魅力的な選手だった。しかし、レッズ、マリノスと言ったトップクラブに移籍するやキックのタイミングや溜めが格段に成長、自らが展開する選手として機能していた。ために、「2列目からの前進」と言う若い頃からの特長が前面にあまり出てこなくなっていた。しかし、売り込み時代の恩師の下でプレイしたこの日は、かつての良さを、格段に向上した技巧と言う基盤の上に見せてくれた訳だ。2得点とも、周囲の演出により、全くフリーの状態で落ち着いて決めたもの。しかし、全くのフリーでボールを受ける位置取りの良さ、そしてその状態で冷静で正確にボールを敵陣に流し込む技巧の高さは大したものだ。大体、日本代表史上において、全くフリーのシュートを確実に決める事のできる選手は非常に少なかったではないか。期待は高まる。
 大久保は序盤はトップ下で、巻交替後はトップでそれぞれ能力を発揮した。2試合で無得点は不満だし、少し動き過ぎて敵陣から離れてしまうのも気になったが、とにかく後方から良好なフィードを受ければ、突破に入れるのは魅力的。この男が高原と2トップを組むのは、ジーコ就任直後2003年の灼熱のコンフェデレーションカップ以来か。随分時間がかかったが、そろそろ完成して欲しいものだ。
 久々の楢崎も上々のプレイ。と言う程活躍の機会はなかったのだが。とは言え、前半の阿部の信じがたい大チョンボ後の敵シュートを冷静に処理した場面は絶品。安定感も十分、岡田氏はタイ戦にどちらを選ぶのか。しかし、あの阿部にはビックリしたね。さすがの中澤も他の選手なら「万が一」を想定するかもしれないが、最も信頼するパートナの阿部があんなおバカをするとは思っていなかっただろうな。
 終盤起用された播戸。あの時間帯まで日本の猛攻で疲労困憊していたボスニアDF陣に襲いかかった。日本のMFがボールを持って前を向いた瞬間に敵DFラインぎりぎりでボールを要求するストライカ。2点目は播戸の狡猾な動きで敵CBが無力化、後方から進出した山瀬は大久保のスルーパスを楽々受ける事ができた。3点目は、羽生交替直後で敵DFの集中が切れかけたところで、今野の高精度クロスを敵CB2枚引き連れて競り勝ち、山瀬に落とす事に成功。正にスーパーサブの面目躍如。高原、大久保、山瀬と言った正当な攻撃タレントに対しながら、巻のプレッシャに辟易し、疲労を重ねた敵DF陣が、終盤起用された播戸に粉砕されるストーリが完成しつつある。
 1−0でリードした場面で当然のように起用された今野。守備を固めるオプション要員であるのに加え、DF各ポジションに負傷が出た場合の貴重なバックアップ(いや、水本も見たいのだけれどもね)。しかし、起用されるとこの男はバックアップにとどまらない。再三見事なインタセプトを見せ、強烈な押上げを見せる。幾度か好機の起点になり、とうとう3点目の起点にもなってしまった。たまにはスタメンで見たい。
 となると、初めて代表チームで腕章を巻いた啓太についても語らなければなるまい。この男には腕章がよく似合う。常に戦い続け、プレイでチームメートを鼓舞できる希有な人材。堂々たるキャプテン振りだった。しかし、私は敢えて啓太に腕章を任せる選択をした岡田氏に疑問を呈したい。啓太は腕章を巻いても巻かなくとも、常に最大限のプレイを見せる。それよりは、代表の腕章を巻く事で一層の自覚を持ちアジア最高峰の選手である事を証明して欲しい選手がこのチームには複数いる。そのようなタレントに腕章を託してもよいのではないか。繰り返すが、啓太は素晴らしいキャプテンである。しかし、啓太はキャプテンを務めなくても素晴らしいのだ。

 まあ上記したチョンボを除いて阿部は堅実に守備を固めていた。高原はまだ重そうだが、タイ戦には合わせて来るのだろう。駒野は相変わらず堅実にサイドを固め、崩し続けた。遠藤も少し重めだが、相変わらず汚い仕事もきれいな仕事も、しっかりこなす。憲剛はピークが早過ぎるのが心配になるが、あれだけの高精度なサイドチェンジやロングパスを通してくれるのだから、不満はない。中澤は、高原がまだ重いとよく見て取り、先代エースストライカの役割をしっかり果たしてくれた。
 文句を言う筋合いではない事はわかってはいるが、新監督でここまで短期的にチームが仕上っているのが、理屈抜きに何か心配になってしまうのが、唯一の心配か。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月27日

オシムチルドレンと内田 −チリ戦雑感−

 試合直前、何が盛り上がったと言えば、
「せばんごお〜、にぃじゅっご!うちだ〜〜、ぁあつと!」
とアナウンスがなされた瞬間だ。

 岡田氏は、やはり相当慎重なメンバ構成を選択した。加地の代わりに内田を起用した以外は、基本的にアジアカップのメンバではないか。
 新しい選手のトライは、固定メンバに少しずつ織り込んで行くのがセオリー。既存の選手達に内田を組み合わせたメンバ構成は、非常に理に叶ったものだった。まあ、「試す」と称して、全部のメンバを変える監督が、ちょっと前にもいたし、つい最近もいるけれど。
 そして、このテストは70分過ぎに、内田が加地に交代されるまで継続した。残念ながら、現時点では「不合格」と言う結論だったが。内田にとって、かほど強力なチームと戦ったのは初めてだったろう(ワールドユースはもちろんJのトップチームよりも、今日のチリは強かった)。また、正対した左ウィングの縦に出る速さは相当だった。しかし、新進気鋭のサイドバックがあそこまで押し込まれてしまい、ほとんど攻撃に参加しないのでは...一方で加地がピッチに入る時の堂々とした態度が面白かった。「こんな餓鬼と俺を比べるなよ」(と加地が思っていたように、私が思っただけですが)。
 この日の内田の出来は残念なものだった。おお、内田のポジションにおける日本サッカー史上最高の名手も、反対サイドのワールドカップ初出場に貢献した知性派も、考えてみれば内田の高校の先輩ではないか。厳しい評価はしたものの、不出来だったこの日の内田のデビュー戦は、あの2人の偉大なサイドバックの代表デビュー当時よりは、格段によいプレイだった事は間違いない(あの2人とも、若い頃はそんなものだったのだ)。厳しく成長を見守りたい。

 アジアカップの後、オシム爺さんは巻、山岸そして羽生に拘った采配はあまりしていなかった。それにも関わらず岡田氏が巻、山岸をスタメンに並べ、交代の一番手に羽生を使ってきたのは、まずは爺さんが期待していた(そして相当期間手塩にかけて育成してきた)この3人を改めて見極めたいとの思いがあったのだろう。
 巻はシーズン序盤の体調維持が難しい時期の試合にも関わらず、強引に身体を寄せていくプレイでよく戦った。立ち上がりの絶好機を敵の見事なスライディング(ファウルではないかとの報道が多いが、私は正当なボールへのタックルと見たが)に防がれたの惜しかった。あそこでの抜け出した時の丁寧なボールタッチは高く評価できる。定位置争いは厳しいが、強引に身体ごとボールを持ち出す強さは、チリDF陣にも十分に脅威となっていた。この手の「強い」FWは、多くの場合、経験を積み30歳近くになって花開く場合が多い。今後も相当期待できるのではないか。
 山岸は、やはり厳しい。この日の山岸は、運動量も豊富で開始早々からよくボールを引き出した。新たにチームメートとなった憲剛とは、お互い精度の高いコンビを形成しようとの意識も感じられた。しかし、どうしてこの男は敵ゴールライン間近で突破を狙わないのだろうか。瞬間的なスピードも、正確なボール扱いもあるはずなのに。(より後方のタレントに関わらず)加地や駒野が勝負どころで見せる強引な前進に対し、山岸の前を向いた場面での消極性へのフラストレーション。引き出せるだけに、突破しない事がもどかしい。
 一方、羽生は存在感を見せ付けた。前後して投入された大久保の派手な好機獲得(と直後の失敗)に隠れた感があったが、黒子を演じた羽生は評価されるべき活躍。羽生の上下左右動は、遠藤のヘロヘロ展開、憲剛のビシビシ展開それぞれとのマッチングがいい。憲剛のパスを受けた直後、大久保に通したスルーパスなど絶品だった。前に出て行くMFとして、水沼、北澤、反町、森島の系譜に連なることができるか。飛び出せる能力は現時点でも国内屈指だが、持ち出せる能力では羽生を凌駕する山瀬、(ずっと若い)梅崎、柏木と、ライバルは多いのだ。このあたりの比較論は別途やりたい。

 その他。
 川口の好守とおバカ、駒野の攻撃能力、中澤、阿部、啓太の安定感、憲剛と遠藤の妙技などは、まあ流行語?で言えば「仕様」か。高原はタイ戦には合わせて来るのだろうな(しかし、時に見せた正確なトラップと回転は評価しよう)。
 大久保は評価すべきだろう。確かに点を取れなかった事への不満も多い。ここで、「枠に飛ばせ」と激怒するか「打たなければ入らない」と期待するかは、さておき。
 残念だったのは山瀬。80分以降、チリが明らかに疲労したにも関わらず、もう1つ攻撃がピリッとしなかったのは、山瀬がしっかりとボールを受けて落ち着ける事ができなかったから。厳しい言い方になるが「やはり憲剛の方が」と言う出来だった。代表での成果はまだ「カメルーン戦終盤の出会い頭」しかない事を自覚して欲しい。

 テレビに常時映るバックスタンドだけが妙にガラガラ、他は満員のスタジアム。チリも強かったし(チリの若者達にとって、日本、韓国との敵地での連戦は素晴らしい経験になるだろう、とてもよいマッチメークだと思う)、日本も悪くなかった。足元から心底冷え込む辛い観戦だったが、内容がよかったので辛くない試合だった。ボスニアヘルツェゴビナ戦も期待しよう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする