2013年12月03日

いや、えがった

 まるっきり2週間遅れですが、現地参戦した敵地ベルギー戦について。

 第4審判がアディショナルタイムを「4分」と出した時、嬉しかった。いや、もっとこの試合を観ていたかった。終わって欲しくなかった。本当に幸せな試合だった。

 まずは味わい深い失点から始まった。麻也が置いていかれ、川島が軽率に飛び出し、高徳がまったく集中していなかった。これだけ無様な失点を、じっくりとゴール裏から堪能できたのだから、これだけでも現地に行った甲斐があろうと言うもの。しかもこの失点は、それぞれの失敗が異なる階層で議論されるべきものだったのだから。
 麻也は実力。麻也がこのような状況で高速FWに置いていかれるのは見慣れた光景。しかし、いい加減もっと意識したプレイはできないものだろうか。足が遅い事はセンタバックとしては致命傷ではない事は、井原正巳や中澤佑二のような偉大な先輩達が証明している。それなのに、いつもいつも、同じ過ちを繰り返す選手を見るのはもどかしい。まあ、井原や中澤と比較する事そのものが気の毒なのはわかるけれども。それにしても、何回失敗経験を積めばよいのだろうか。ともあれ、後日ワールドカップ予選、スウェーデン対ポルトガルの映像を堪能したが、クリスチャン・ロナウドと対する麻也を想像するのは恐ろしい。週末は抽選会か。
 川島は焦り。ゴール裏2階席は、この失点を俯瞰するのに最高だった。川島がダッシュで飛び出した瞬間、間に合わない事がよくわかったからだ。思わず頭を抱える事になったけれど。ただ、間に合わないないと自覚した川島が、「私はプレイに関与していません」とオフサイドポジションにいるラグビー選手ばりのアピールで、両手を上げたのには笑ったが。この落ち着きのないプレイは、オランダ戦で西川が堅実なプレイを見せた事に対する焦りから来るものだったのではないか。元々、川島はビックリするようなセービングをするが、呆れるようなミスのリスクもある選手。安定性とロングフィードを武器とする西川とは好対照。適切な競争が行なわれる事を期待したい。
 と言う事で、酒井高徳である。酒井は試合に集中できていなかったのだから、論評以前。後方から入ってくるミララスにまったく気がつかなかった訳だが、ミスにしても、もっとやりようがあるだろうと言う無様さだった。ゴール裏2階席は、ボーッとした高徳がミララスに置いていかれるのを味わうのに最高の席だった。うん、現地参戦は応えられない。川島のミスも同情の余地はないものだが、高徳のミスは即交代させられても仕方がないレベル。高徳はその後奮起し上々のプレイを見せてくれたけれどねえ。現実的に長友がいるのだから、堅実な駒野や徳永を選考すべきではないのかな。

 そして、この大間抜け以降に、状況が一転するのだから、堪えられない。
 失点直後は、さすがに出足がにぶり、押し込まれる時間帯が継続した。
 しかし、螢の粘り強いボール奪取と、長谷部の豊富な運動量が奏功し、次第に日本のキープ時間が増えてくる。そして、幾度かの揺さぶりの後、後方に下がった清武の適切なスペースメークに呼応して、酒井宏樹が鮮やかなクロス。これを適切な動き出しを見せた柿谷が決めてくれた。だいぶ古いが、酒井宏樹のクロスは80年代前半に西ドイツで活躍したマンフレッド・カルツを彷彿させた。ちなみに、五輪代表で全く連係を取る事ができなかった清武と酒井宏樹が、見事な連係を見せてくれたのも嬉しかった。そして、そのクロスが飛ぶ空間僅かな敵DFの狭間に、トップスピードでパオロ・ロッシ、じゃなかった柿谷が飛び込んだ。酒井宏樹のクロスの直前にちょっと溜めて、ピュピュ〜〜ンと。天才と呼ぶのは簡単なのだけれど、なぜこの天才が「あのスペース」に飛び込む判断ができるのか?今後、この天才を解題し続ける事ができるのが、何とも嬉しい。

 ハーフタイム、こんなすばらしい得点を見る事ができる幸せを噛み締めた。そして気がついた。スターティングメンバの半分以上がロンドン世代である事、遠藤爺も岡崎も長友もいないのに、このような鮮やかな得点を見る事ができた事。

 後半、遠藤爺と岡崎が投入される。そりゃ、格段にチームが強化されるのは当然の事。
 後半の2得点をどう表現したらよいのだろうか。
 左サイドで香川と酒井高徳が連係、そこにヨタヨタと遠藤爺が近づき、「どっこらしょ」とグラウンダーのクロスを流し込み、本田がフリーで待ち構える。
 右サイドを岡崎の切れ味で切り裂き、ボールを受けた長谷部がシュートを打ち切れず、ちょっと溜めてジェニオに(いや、現地ではすっかり本田と勘違いしていたのだが)。チップで浮かしたボールが、トップスピードで全くのフリーの岡崎にピタリと。

 何かもう、すべてがどうでもよくなるのですよね。この3得点を、直接見る事ができたのですから。

 確かに課題は解決していない。
 あり得ないおバカな先制失点。せっかく2点差なのに、簡単にCKから失点する悪癖。終盤の森重の考えられないミスパス。
 しかし、この試合はコンフェデ杯イタリア戦とは決定的に違った。サッカーと言う競技のルールは単純だ。敵よりもたくさん点をとった方が勝つのだ。この日、日本はベルギーよりたくさん点をとって90分間を終える事ができたのだ。これは、とてもとても重要だ。我々はベルギーに勝ったのだ。
 解決していない課題が多いが、サッカーで何が一番難しいかと言えば、創造的な攻撃で敵守備ラインを崩し、ゴールネットを揺らす事。そして今、我々は世界のどこが来ても、それを可能とする選手群を所有している。得点力?岡崎、大迫、柿谷、これだけ強力なストライカを並べる事ができる国が、他に世界にいくつあると言うのだろうか(いや、工藤も寿人も大久保も前田もいますけれど)。既に我々は、一番厄介な課題をほぼ解決できているのだ。

 最後、ザッケローニ氏がこれをうまくまとめ上げてくれる事だろう。氏は、アジアカップで一回それを見せてくれた。あの短い準備期間で。残り半年、氏には十二分な時間だろう。ここまで魅力的なサッカーを演出してくれているのだ。私は全幅の信頼と共に、氏とブラジル大会を戦うつもりだ。

 もちろん、このようなサッカーを見ると常に恐怖も感じるのは否定しない。このサッカー、この試合が、日本サッカーのピークなのではないか。これ以上の美しいサッカーを見る事は、もう一生ないのではないかと。もしかしたら、そうかもしれない。でも、それならそれで、仕方がないとも思っている。これだけのサッカーを見せてもらったら、後はそう贅沢を言ってはバチが当たるとも思っているし。
posted by 武藤文雄 at 01:29| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月17日

後半の守備は何分可能なのか

 不思議な事に、比較的最近まで、オランダ代表とは戦う機会がなかった。最初の対戦は、4年前の準備試合、終盤ガタガタにされたあの試合だ。それ以前は若年層の大会。北京五輪の敗退が決まってからの3試合目の本田のおバカ、あるいはクインシーにチンチンにされた2005年ワールドユースくらい(おお、この時も本田がいたな、そう考えると、この男のわずか5年での出世はすばらしいな)。ところが4年前のガタガタの後、南アフリカ本大会の1次ラウンドでスナイデルにやられ、この試合で4年間で3試合目、最近は随分と頻繁にお相手いただいている事になる。

 悪くない試合だった。
 特に後半の守備はすばらしかった。前線からの的確なチェーシングと、螢のボール奪取と遠藤爺の老獪な読みで、中盤でオランダが停滞。そうなると、麻也も今野も鋭い出足で飛び出す事ができるので、浅いラインで戦う事ができる。オランダは幾度か苦し紛れのロングボールで日本のDFラインを下げようとするが、長友と内田のスピードは抜群なので精度の低いボールは怖くない。
 山口螢のボール奪取はすばらしかった。自軍ペナルティエリアの僅か外でミスパスをしたり、奪ってから軽率に取られたり、開始早々の決定機をふかしたり、不満は多い(いや、それはそれで愉しいのだけれども)。しかし、あれだけ中盤で止めてくれるのだから。我々は、渡辺正、藤島信雄、宮内聡、明神智和の系譜を次ぐ、「何があっても最後まで戦い抜いてくれる中盤戦士」を、久々に獲得しようとしているのかもしれない。しかも、この諸先輩と異なり、螢は(少々常識的だが)40mクラスのパスを操れる。

 2点を奪い、さらに幾度も決定機を掴む事ができた(それでも決め切れないイライラも何とも味わい深かったけれども)。しかし、中心選手の多くの体調がよければ、いや本田と岡崎の体調がよければ、これくらいできるのは前からわかっていた事だ。しかも、ホームグラウンドではない中立地、とても褒められたものでない芝、2点差にされる苦境、その状況で後半あれだけ見事な守備を起点に、この相手に猛攻を仕掛けられた事は素直に喜びたい。
 大迫ももちろんよかったが、終盤にこの大迫に代えて柿谷を起用できる贅沢。こら柿谷、あれは決めるのだ、必ず!
 そして、遠藤の後方支援を受け、本田を使いつつ、本田に使われつつ、香川が見せてくれた魔術の数々。こら香川、あれは決めるのだ、必ず!

 もし、この守備が来年6月のブラジルで、4試合継続できれば、ベスト8はかなり現実的な目標となってくる。4試合継続できればだが。
 忘れていけないのは、この良好な守備は後半の45分しか見られなかった事だ。前半は大迫と本田のチェーシングが空回りし、かなりの時間帯オランダの中盤、それもよりによってファン・デル・ファールトをフリーにしてしまったし、速攻を許してしまった(まあ、あの2点目はすごかったな)。さらに後半よかったと言っても、遠藤爺と香川は後半だけの出場、後半半ばに長友と内田はお役御免、さらに最前線で半端なくがんばった大迫も終盤柿谷に交代している。つまり、すばらしかった後半45分は、あくまでも「条件付きすばらしかった」なのだ。
 繰り返そう。この後半45分の守備を、360分(+延長の30分か)見せることができるのか。あと7ヶ月か。

 と、ニヤニヤしながら文句を言うのは実に愉しい。
 こう言う試合を見せられると、来年ブラジルに向けた休暇をどう取ればよいか、本当に悩むではないか。

 と言う事で現場視察が必要と判断しました。これからベルギーに向けて出発します。では、行ってきます。
posted by 武藤文雄 at 01:05| Comment(9) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月29日

「メキシコの青い空」と「ドーハの悲劇」

 あの1985年10月26日(メキシコの青い空)から28年、ちょうど7ワールドカップが経った事になる。そして、1993年10月28日(ドーハの悲劇)から20年、ちょうど5ワールドカップ。
 正直言って、それぞれが、あっと言う間だった。今53歳の私が、もしあと7ワールドカップ生きる事ができれば81歳、5ワールドカップで73歳か。そう考えると、自分の残りの人生もそうは長くないものだとも考えてしまう。
 生まれて始めて満員の国立競技場を体験し分厚い壁にぶち当たった事は、自分の人生でも非常に重要な節目だった。そして、冗談のようなアディショナルタイムの失点を体験し「負ける快感」を完全に取得した事は、自分の人生を確信させるものだった。
 7ワールドカップ前、国民的悲劇からはほど遠かったが、それでもあそこまで行って完敗したからこそ、幾多の敗戦報道に浸る事はできた。そして、5ワールドカップ前、日本中の人々が、近親者を失った訳でもないのに、格段の絶望感を味わっていた。サッカーのすばらしさを体感できた。
 そして、この2つの悲劇から、我々は幾多を学んだ。7ワールドカップ前の悔しい初戦、あの木村和司の直接FK弾道の美しさ。あれを見て、日本中のサッカー少年たちは、止まったボールを悪魔に変換する芸術に取り組んだ。だからこそ、あのデンマーク戦で、本田と遠藤は、あそこまで鮮やかな直接FKを決める事ができたのだ。

 思えば、以降を振り返ると、ここまで鮮やかな「敗戦」は中々味わう事ができなかった。そして、ようやく3/4ワールドカップ前の南アフリカのパラグアイ戦で、同等の衝撃を味わう事ができた。世界最強国にならない限り、いつかは負ける。ワールドカップは、負けるための大会なのだ。だからこそ、重要な事は「いかに負けるか」なのだ。7ワールドカップ前の加藤久と宮内聡、そして森孝慈氏。5ワールドカップ前の井原正巳とカズ、そしてハンス・オフト氏。何より3/4ワールドカップ前の中澤祐二と遠藤保仁、そして岡田武史氏。
 だからこそ、ザッケローニ氏に改めて問いたい。あなたは、本田圭佑、長友佑都、香川真司、そして岡崎慎司。彼らにいかに美しい負け戦を演じさせるのか。彼らにいかに美しい絶望感を味合わせてくれるのか。
 その負け戦と絶望感が、1日でも先送りされる事を、切に祈りながら。
posted by 武藤文雄 at 01:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月17日

暗き試合も、いとをかし

 残念な試合だった。

 何か最初から雰囲気が暗い。セルビア戦でもっとやれるつもりだったのが、鼻っ柱を折られた事が相当ショックだったのかもしれない。開始早々香川が切り返しから放ったミドルシュートは、香川らしからず明らかに力が入り過ぎていた。柿谷が抜け出してGKにブロックされたシュート、チーム全体の重苦しい雰囲気に足を引っ張られ、柿谷独特の冷静さが見られなかった。失点は、左右からクロスを連発されズルズルと後退してしまいミドルシュートを食らったものだが、チーム全体が弱気になっている典型的場面だった。
 ベラルーシは前線から組織的なプレスをかけてきたため、攻めあぐむのは仕方がない。だったら丁寧にボールを回して、いかに敵に隙を作るかを考えなければならないのに、遠藤爺以外のほとんどの選手が無理に攻めかけようとしていた。さらに、強引に中盤でボールを奪おうとするが、必ずしも体調のよくない選手が多いから、結果的に体格のよい敵の出足に負けて後手を踏んでいた。よほど選手たちには焦りがあったのだろう。一方で、こう言う試合を見せられると、ザッケローニ氏が遠藤爺を外したがらないのも、何となく理解できてくる。

 しかも、セルビア戦でもそうだったが、岡崎、本田、香川の3枚看板の体調が悪いのは、見ていて明らか。この3人が冴えなければ、苦戦は免れない。それでも、岡崎は悪いなりに、動き出しを工夫し、幾度も好機を導いていた。本田も悪いなりに、最前線で身体を張って、相応に敵に脅威を与えていた。けれども、香川は完全に調子を崩していて、独特の鋭い加減速がまったく見られない。香川も必死に動いてボールを引き出そうとするのだが、切れが悪くベラルーシ守備陣に手玉に取られてしまった。こんなひどい香川は南アフリカ大会前に遡らなければならないかもしれない程だった。
 後半、森重を投入し、評判悪い3ー4ー3に切り替え。両サイドDFの今野、森重が、持ち上げれるし、パスもよかったので、珍しく3ー4ー3が結構機能しかけた。さらに、中盤に起用された螢が、運動量と厳しい当たりに加え、事前の適切なルックアップも冴え、よいプレイを見せる。ところが、ボールが香川に渡る度に、攻撃が停滞してしまう。ここで、香川を交代すれば、状況は好転した可能性が高かったのだが。セルビア戦でペースを引き戻すのに貢献した清武、交代出場で機能する事に定評ある齋藤、いずれでもよかった。いや、幾度か述べたが、交代で機能するか確認をしておきたい乾の起用も一案だった。
 好意的に解釈すれば、来年6月の好成績の確率を高めるために、自クラブで出場機会をなくしている香川(と麻也)の出場機会確保を、この2試合の勝利より優先したと言う事なのかもしれないな。

 腹は立ったが、よい準備試合だった事は間違いない。
 我々は、日本代表に、常に目が覚めるような勝利を求めている。それが、1つリズムを崩すと、欧州予選で苦杯を喫し、新たなチーム作りを始めている国に連敗すると言う事実を見せつけられた。来年6月に向けて、これはこれでよい経験ではないか。
 4年前は本大会出場権獲得後、直前の韓国、イングランド、コートジボワールの3連戦前は、敵地でのオランダ、南アフリカとの2試合しか、真っ当な準備試合が組めなかった。今回はコンフェデ杯を含め、ウルグアイ戦を含め今回の2試合。そして、来月、オランダと(たぶん)ベルギーと、欧州でやれる。出場権獲得後、年内に8試合だ。たとえ、内容や結果がどうでも、準備と言う視点からは、本当にありがたい事だ。
 また、螢と森重が短い時間ながら、すばらしいプレイを見せてくれたと言う収穫もあった。セルビア戦で、最後のアチャーを除くと細貝も上々だった。この3人の充実は、最大の課題である守備の強化に直接つながる。3人は、自クラブでも中心選手。日々のプレイがブラジルにつながる。
 もっとも、酒井高徳が冴えなかったのは、香川の不振以上に心配だ。香川は相当の経験も積んでいるし、このままの冷遇が続いても実績があるから、獲得する大クラブもいくらでもあり、来年6月には上がってくるはずだ。しかし、高徳がこのパフォーマンスを続けると、貴重な両サイドバックをこなせるタレントが戦力外になってしまう。奮起を期待したい。まあ、使われて不振が発覚するのがよいのか、使われぬまま機能するのかしないのかわからん方がよいのか、と言う議論があるけれど。

 もちろん、ザッケローニ氏の采配に疑問は多い。
 チームが重苦しい時は、リフレッシュの意味を含め、新たな選手を起用するのは一手段だが、まあ強情なオッサンですなあ。実際、過去の代表監督を思い起こしても、フィリップを除いては、皆基本的には固定メンバを好んでいた。ジーコや岡田氏のみではないよ、オシム爺さんのアジアカップの焦燥感など、中々だったではないか。
 ただ、この2試合で乾の交代起用の効果は見ておくべきだったとは思う。乾は自クラブでは、攻撃の要と言う位置づけだから、代表でないと特殊なトライは難しいのだが。
 また、終盤にハーフナーを起用した理由もよくわからない。あの屈強な守備ラインに対し、ハーフナーの空中戦で活路が見出せると考えたのだろうか。終盤、麻也も前線に上がり、ハーフナーと2スピアヘッドを組んだが、今野らが上げたファーサイドへのクロスを、ベラルーシ守備陣は苦労する事なくはね返していた。
 コーチングスタッフが、ザッケローニ氏が連れて来たイタリア人が多く、チーム全体がネガティブになった際の切り替えが円滑でないのかもしれない。3年前に吠えた提案はどうだろう。

 代表チームの監督が皆から文句を言われるのは、一種の責務なのだ。セルジオ越後さんを筆頭に、サッカーライター達が4年前に岡田氏に投げかけた誹謗中傷を、同じようにザッケローニ氏に投げかけている。まあ、恒例行事だな。
 そう言う訳で、この2連敗についても、そうは心配はしてない。ちょっと気になるのはザッケローニ氏の表情が暗い事。岡田氏は、悲観論を騒ぎ立てる報道陣をアタマからバカにしているのが見え見えで、安心感があった。実はザッケローニ氏は、岡田氏以上に老獪で、わざと深刻な表情をしているだけだったらば、心配いらないのだが。
posted by 武藤文雄 at 00:37| Comment(10) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月12日

良好な強化試合は続く

 何よりもまず、敵地で強い相手とこうやって準備試合ができるのはすばらしい。難しい試合となったセルビア戦を観て、「このような試合の継続こそ最も有効な強化方策なのだ」と、改めて確信した。

 前後半3場面ずつ、合計6種類の展開に切り替わる試合だった。
 まず最初はスタンコビッチの引退試合の時間帯。すっかり重くなったスタンコビッチがボランチにいるものだから、何かお互いプレスを掛けるのを遠慮したかのような内容。
 続いて激しいプレスの掛け合いから押し込まれる時間帯。敵地で厳しいプレスをかけられ、序盤に劣勢になるのは、ちょっと仕方がないところもある。ただ、香川のあり得ないようなミスから決定機を掴まれたのは問題だった。
 前半30分過ぎ、セルビアのプレスが緩んだところで、互角の展開に。本田、長谷部との連係からの香川の決定機もあったが、逆に前進できるようになったがために速攻に脅かされる場面も。
 後半立ち上がり、今度は日本ペースに。岡崎がポジションを柿谷に近づけた事で、前線に起点を作りやすくなり、好機を再三掴めるようになってくる。
 ところが、逆襲を止め損ねたセットプレイから失点。その後もセルビアの出足を止め切れず、押し込まれる時間帯が継続。セルビアが同時に3人選手交代し、先制して勢いが戻ったのに対し、しばらく完全に後手を踏んでしまった。
 そして、細貝、清武を起用し、中盤を再活性化して再度押し込んだ終盤。分厚いセルビア守備陣を思うように突破できず苦闘。そして、細貝のミスから…
 期待通り、セルビアはよいチームだった。伝統的なスクリーンプレイの巧さ。NHKの解説小島氏はセルビアの「身体の強さ」と評していた。しかし、私は、あのキープの巧さは、身体の入れ方、つまり技術の高さによるものと見た。そして、後述する守備の強さ。一方で日本はボールを素早く動かす巧さで対応。双方の忠実で組織的なプレス、噛み合ったおもしろい試合だった。

 最終的に得点できなかった攻撃。
 確かにセルビアの最終ラインは強力だった(選手の所属クラブを考えれば当たり前だが)。個々の単純な強さ、読みのよさ、反転のスピード。さらに、相互の連係。プレスをかいくぐって、本田や長谷部がラストパスを狙い、岡崎や柿谷がシャープに突破しても、ギリギリで身体を当てて防がれてしまう。
 とは言え、攻撃に収穫は少なくなかった。後半立ち上がりに、岡崎が挙動開始点をやや中に絞り、柿谷との距離を狭める事で、強力CBをかなり揺さぶる事ができた。ここ最近本田が香川にこだわり過ぎ、攻撃が左サイドに偏っていたが、左右バランスのとれた展開が見られたのも悪くなかった(これは香川の体調が悪く、引き出しの動きが少なかったためかもしれないが)。後半、長谷部と清武を投入し、バランスを取り戻す事ができたのも上々だった。
 ただ、この守備ラインを崩し切るためにどうすべきだったのか。最大の疑問は明らかに調子が悪い香川を引っ張った事だ。ザッケローニ氏は最近試合出場の機会を失っている香川を長時間起用する事で、調子を戻させたかったのかもしれない。しかし、これは長期的視野からはあまり有効には思えない。このままユナイテッドで冷遇が続いたとしても、いずれ監督が更迭されるか、年末に別なトップクラブに移籍するだけの事。無理に長時間引っ張る必要があっただろうか。むしろ、後半立ち上がりの日本ペースの時間帯、あるいは清武を起用してペースを取り戻した直後に、乾(あるいは齋藤)を起用すべきだった。特に残念なのは乾の起用が遅かった事。昨日も講釈を垂れたが、乾は交代出場で機能した事例は少ない。このような展開こそ、乾のテストに最適だったのだが。
 また、香川の不振は、本田にも悪影響を与えた。1つは、香川の運動量が少なく、結果的に本田がかなり前方で遠藤や長谷部のパスを「待つ」時間帯が多くなってしまった事。もう1つは、香川の引き出しが少なく、結果的に本田の選択が柿谷に限定されて、攻撃が中央に限定されてしまった事。どうせ、香川に出さないならば、せめて自らもっと強引にシュートを狙ってくれるならばよかったのだが。贅沢な要望だとはわかっているが、パートナの香川が悪いならばそれなりに攻撃の組み立てを工夫して欲しかったのだが。

 先般のガーナ戦などで修正された組織守備は悪くなかった。だからこそ、守備面では新たな問題が見えてきた。
 1点目の失点場面。先日のガーナ戦もそうなのだが、ちょっと偶然が重なってギャップが生まれた場面への対応。ああ言うのを防ぐためには、瞬時の判断力に優れ、柔軟に身体の動きを変更できるセンタバックが必要。往時の井原や中澤は、ああ言った場面を見事に止めていた。そして、そうやって不慮の失点を防げるかどうかで、勝負が分かれる。ワールドカップで上位進出しようとするからには、守備ラインにもスタアが必要なのだ。ただ、これは素材的なものだから、かなり深刻な問題かもしれない。
 上記したセルビア選手のスクリーンプレイの巧さのため、プレス合戦でボールを確保し切れず、中盤を抜け出すのに散々苦戦した日本。序盤敵が元気な時間帯こそ、中盤に守備能力が高い選手を使うべきではないか。中盤の混戦の狭いところで、うまく身体を当てながら巧みな駆け引きにより、ボールを奪う確率が高い選手。つまり、細貝あるいは螢を先発で起用し、前線に飛び出し攻撃に厚みを作れる長谷部は終盤投入する方がよいように思えてきた。この方が、遠藤爺の負担も減ると思うのだが。

 悔しいが、よい強化試合だった。噂通りベルギーとの敵地戦も組む事ができれば、年内にあと3試合このような試合をやれる事になる。結局、こう言う試合を積み上げる事が、チーム強化につながる。守備面での課題は山積だが、準備状況は非常によい。来年に向けての期待は高まるばかりだ。

 余談。
 デヤン•スタンコビッチの存在を初めて知ったのは、98年フランス大会直前のユーゴスラビア戦だった。ピクシーを筆頭に、ユーゴビッチ、ミハイロビッチ(今回の監督さん)、ミヤトビッチら、ベテランの多いチームの中で、唯一の20代前半の選手として機能していた。何より、フランス大会直後のセリエAの一場面(この文章の下の方です)が忘れ難い。
 中々よい感じの引退試合だった。チームメート長友とのご挨拶、素敵な奥様と人相の悪いご子息達の対称も含めて。
posted by 武藤文雄 at 22:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月11日

セルビア戦2013を前に

 昨晩、「セルビア戦前夜」を講釈する計画だったのだが、割り込みが入ったので。

 基本的に、4ー2ー3ー1のフォーメーションを好むザッケローニ氏。いわゆる攻撃的MF、最前線で試合に出るのは4人。さらに氏は律儀に、リザーブを同じポジションで並べる事を好む。したがって、ブラジルの最終23人枠でいわゆる攻撃的選手は8人しか選考されない事が予想される。さらに言うと、ザッケローニ氏は3ー4ー3のフォーメーションをオプションに加えたがっている。また、勝負どころで、遠藤あるいは長友を一列前に上げる采配も再三見受けられる。そうこう考えると、前線の選手枠が広がる事は考えづらい。いや、7人枠に狭められる可能性すらある。
 つい数ヶ月前、その8人枠について既に6人が確定かと、私は考えていた。岡崎、香川、本田、前田、清武、そして憲剛の6人。ところが、先日の東アジア選手権で、多くの国内選手達が台頭し、状況が混迷してきた(「もっと早くから、そう言った選手を試せばよかったのではないか」と言う突っ込みは、この際やめておこう)。そして、先日来のザッケローニ氏采配を見ると、ワントップの最有力候補は柿谷と考えている模様。そうこう考えてみると、岡崎、香川、本田の3枚はいくら何でも当確、そして清武、柿谷の2人が非常に有力、と言ったところか。
 そして、今回の欧州遠征、この「当確」、「非常に有力」の5人の他に選ばれたのが、ハーフナー、乾、そして齋藤学の3人。
 ハーフナーと乾は、ここ3試合が国内の試合だっただけに、欧州での今回の試合に選考されるのは、予想の範囲内。2人とも、相応に自クラブで試合出場しており、昨年から着実にステップアップにしてきている。ザッケローニ氏の信頼も厚く、常時代表にも招集されてきた。しかし、ここに来て、国内でプレイする強力なライバル達との、メンバ入りの厳しい競争を戦い抜かなければ、ブラジルへの道は開かれない状況となっている。
 ハーフナーは、幸運にもその戦いを単純に戦う事ができる。この長身ストライカはポストプレイに課題があるので、役割はわかりやすい。とにかく点を取る事なのだ。したがって、代表に呼ばれた試合でも、自クラブの試合でも、その長所のヘディングシュートの(もちろん、足でもよいです)技量をひたすら磨く事が、「ブラジルへの道」につながる。
 ところが、乾は非常に難しいタスクをこなさなければならない。乾がスタメンを獲得するためには、6月までに「当確」、「非常に有力」の5人のいずれかを凌駕するプレイを見せる必要がある。それが叶わなかったら、乾に要求されるのは控え選手として、攻撃のリズムを変えたり、落ち着いたキープで守備を安定させたりする仕事となる。過去、乾は後者のプレイを必ずしも得意として来なかった。
 一方齋藤は、先日のガーナ戦、試合終了間際の僅かな時間で、すばらしいプレイを見せてくれた。精力的なチェーシングで守備を補強すると共に、得意の独特のリズムのドリブルで突破も狙う。突破時も軽率な取られ方をしないようなスクリーンプレイも巧みだった。
 攻撃的MFとしての総合力は、乾は齋藤を上回るかもしれない。けれども、交代での使い勝手のよさについては、齋藤は乾より優れている可能性が高い。23人へのサバイバルは、とても高級な競争となる。

 課題、課題と言われ続けてきた守備。さすがに先日のグアテマラ戦、ガーナ戦では、チーム全体の守備意識も高く、まあまあの組織守備を見せてくれた。いくら何でも、ウルグアイ戦のような、愉しい守備を再見する事はないだろう(ないよね、うん、ないよね)。
 まず、そこが落ち着くと、次にようやく最終ラインの安定と言う話に進む事ができる。欧州中堅国との2連戦は、この確認の適切な試金石になる事だろう。そして、重要なのはセンタバックの几帳面さに尽きる。とにかく、ここ最近の麻也のおバカは尋常ではない。位置取りのミス、動き出しの遅さ、身体の向きの不適切、明らかな集中切れ。自クラブでも、定位置を失ってしまっていると言うが、どれだけ状態がよくなっているか。最近定着しつつある森重にしても、几帳面さと言う視点では不安が残る。Jでも、時々決定的集中切れを起こしてきた前科があるのだし。
 いや、過去を嘆いても始まらないな。この2人が、この難しい敵地戦で、几帳面さを90分間継続してくれる事をとにかく望みたい。まして、報道通りザッケローニ氏が、本当に3ー4ー3を志向するならば、この2人は常時出場となる。闘莉王だって、昔のおバカ振りはひどかった。しかし、中澤の薫陶を受け「場」を経験する事で、90分間几帳面に戦い続ける事ができるセンタバックに成長してくれた。
 見事な強化試合が続く。10月、11月と欧州で4試合やれると言うのだから。麻也も森重も「場」を活かし化けて欲しい。まずは、ピクシーの母国との戦いから。
posted by 武藤文雄 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月16日

無防備、しかし幾度も「崩しかける」

 2対4で完敗したウルグアイ戦は、強力な敵が本腰で戦ってくれた事もあり、攻守それぞれの課題が明確になり、来年のブラジル大会に向けて格好の強化試合となった。

 フォルランとスアレスの2トップに対し、あそこまで無防備に戦う代表チームは世界でも珍しいだろう。一方、ルガーノとゴディンが中央を固める守備ラインを、あれだけ何回も崩しかける事ができる代表チームも、これまた世界にそうは存在しないはずだ。
 そして、ワールドカップで上位進出を目指すために、この「 無防備さ」を改善し、「幾度も崩しかける」を「崩す」まで進歩させる事が課題なのが明確になった。いつも語っている事だが、世界のトップレベルに近づけば近づくほど、課題が具体的に見えてくるものだ。

 失点場面は、個人的なミスを直接突かれたもの。
 1点目は、麻也が完全にスアレスに置いて行かれたところで勝負あり。麻也は、この場面の前にも同様にスアレスに置き去りにされ裏を突かれている(川島が好ブロックで防ぐ)。相手が相手ではあるが、前半のこの時間までに2回置いてきぼりにされるのは論外。各種のインタビューによると、吉田本人はオフサイドトラップのかけ損ねと判断しているようだが、スアレスとフォルランを相手にしていて、今野とアイコンタクトも無しにラインを上げたのだとしたら、すごい度胸としか言いようがない。それにしても、フォルランの落ち着いたシュートは惚れ惚れとさせられたな。スライディングした酒井にも、相手はフォルランだと考えて、もう少し工夫して欲しかったのだけれども。
 2点目は、今野(だと思った)がスアレス(に見えた)との駆け引きにやられて提供した直接FKから。「失点直後なのだから、落ち着いてボールを回せばよいのに」と言うのも、ここ最近定着した愚痴だな。ただ、川島が1回逆に動いてしまったのは、どうした事だろうか。敵にうまくボールを隠されたのかのかもしれないが、ブラインドの時にGKが動いてはいけないのはセオリー。これも信じ難いミスだった。とは言え、フォルランの弾道の美しい事。
 3点目の酒井高徳にはガッカリ。右サイド後方からマキシミリアーノ・ペレイラがオーバラップして来ているにもかかわらず、中央の絞りから外へ開くのが遅れた。サイドバックとしては考えられない失態だった。M・ペレイラは全くのフリーでグラウンダのクロス、麻也がクリアし切れず、全くのフリーのスアレスに。かろうじて反応した麻也には厳しい言い方になるが、外からのセンタリングは外に蹴り出すのがセオリー、何とか外向きにクリアして欲しかったのだが。それにしても、スアレスの落ち着きはらったサイドネットシュートは、さすがとしか言いようがなかった。岡崎、頼むよ。
 4点目の香川は、あり得ない凡庸なプレイ。ウルグアイが日本の右サイドの崩しに入った時に、最終的に得点を決めたゴンサレスは既にペナルティエリアに進出しており、香川はマークできる位置取りにいた。にも、かかわらず、完全にボールウォッチャになってしまい、マークを怠った。自らの得点で2点差として、「あるいは」感が漂った場面での、この失態。トッププロにあるまじきプレイだった。

 確かに強力そのものの逆襲速攻だった。だから、失点する事はあるだろう。けれども、上記のように失点場面は、個人個人のミス、それも意識不足と言うか注意力散漫によるものだった。
 これは、チームとしての守備意識が低過ぎるためとしか、言いようがない。例えば直接失点には絡まなかったが、前半内田や酒井がミスパスを連発した(特に酒井が2本のミスパスはプロフェッショナルとしてはあり得ない酷いものだった)。これらは、いずれも敵に囲まれたり、ようやくボールを奪った直後に回りのサポートが不十分な時に、無理によい攻撃につなごうとしたためだった。同様に、香川や長谷部は攻め切れない時に、再三無理な横ばいのドリブルからボールを奪われ、逆襲の起点とされた。これらの例で示すように、少なくともこの試合では「攻める事を考え過ぎて、ピンチを招く場面」が多過ぎた。世界最高峰の逆襲速攻を相手にしていると言う自覚に欠けていたのではないか。
 先日のブラジル戦や、メキシコ戦の前半は、そのような守備意識が垣間見られた。また豪州戦の後半も慎重に守備を固めていた。しかし、この日は全くダメだった。特に麻也と酒井の軽率さはどう言う事なのだろうか(内田はミスパス連発の後、しっかりと修正してきたのはさすがと言うべきか、褒められた試合をではなかったが)。精神論は語りたくないのだが、麻也と酒井の 2人は、何か地位に安穏としているのではないかとの悪印象すらあった。冗談抜きに、次回招集ではこの2人は外して、闘莉王と徳永を呼ぶべきではないだろうか。ザッケローニ氏は、その位に、厳しい姿勢を見せるべきだと思う。
 日本代表選手に駆け上がるまでに、すべての選手は物凄いサッカー経験を積んでいるはずだ。そして、子供の頃から、慎重に戦う事の重要性は体得しているはずだ。それなのに、攻撃的姿勢を望む代表監督にある程度の地位を約束された程度で、このような甘いプレイを見せる(麻也の場合は、見せ続けるだな)とは。
 それにしても、記者会見で、吉田の交代について問われ、「伊野波を見たかったら」と答えるザッケローニ氏。すごいな。

 キックオフ直後、ウルグアイの攻勢をしのいだ日本。後方からのフィードを柿谷が軽妙なタッチで左サイドの香川に流し、香川が狙い澄ましたクロス、岡崎が飛び込む好機をつかんだ。柿谷のファーストタッチ、攻撃の幅が大いに広がる期待に、ワクワク感は高まった。新しい選手の活躍となると、少々点数が甘くなってしまうのは否めないのだけれどもね。
 そして、日本の攻撃は幾度となくウルグアイゴールを脅かした。ただ、ルガーノとゴディンのセンタバックを破るのは容易ではないんだよね、これが。結局奪い取った2点はいわゆるゴラッソ。1点目、揺さぶりを繰り返し、遠藤と本田の好技の連続、そして岡崎が本質的な地域に進出し、敵GKとDFと一緒につぶれ、香川が落ち着いて流し込んだ。2点目は、本田の(フォルランにに負けない)美しい弾道。ただ、FKを奪取した場面も、揺さぶりを繰り返したよい攻撃だった。言い方を変えると、ここまで創意工夫と得意技を組み合わせないと、ルガーノは破る事ができない訳だ。その頻度をどうやって増やすか?

 ルガーノ達は明らかに日本をじっくりと研究していた。
 香川が左サイドでボールを受けた場合、最も脅威になるのは縦への抜け出し、そこからの技巧的なシュートなりラストパス。一方、内側に持ち出させると、中央のカバーリングが厚ければ、人海戦術で守る事ができる。M・ペレイラは常に縦を切り、香川を内側に進出させる事に成功した。そして、中央にはルガーノとゴディンがいた。
 本田は若い頃から、ボールを受ける際の身体の向きに課題がある。敵ゴールに向かった方向ではなく、自分がスクリーンしやすい方向にボールを受けてしまうのだ。結果、前線でボールを受けても、すぐに直線的に敵ゴールに進めない。ウルグアイはそれを理解して、ガルガノもロデイロも本田に対し、外へ外へと追い出すマークをする。結果、本田の展開が一歩遅れ、よい位置取りをしている岡崎、香川、柿谷にすぐにパスが出せなかった。
 タバレス氏は、岡崎に対してはノーマークだったのだろう。岡崎は下手かもしれないが、90分間集中して丁寧にプレイし、瞬間加速と得点感覚は世界トップレベルなのですよ。まあ、いつかバレる事だ。ブンデスリーガで得点王を争うかもしれないのだし。

 ワールドカップの2次トーナメントで、いくつか勝とうとすると言う事はそう言う事なのだ。先方は、岡崎も香川も本田も柿谷も前田も憲剛も清武も豊田もハーフナーも乾も工藤も大迫も齋藤も、皆調べ尽くしてくる。
 それでも2点とった事は評価すべきだろう。
 しかし、ルガーノからもっともっと点を取るためにはどうしたらよいのか。陳腐な言い方になるが、連係と相互理解に尽きるのだ。
 サイドバックがクロスを上げる時、岡崎はどこにいて、どこに飛び込んでくるのか、前田は、ハーフナーは、豊田は、本田は。そこの相互理解をもっともっとレベルアップしなければ。
 ボランチがクサビを入れる時、本田はどこにいて、どこで受けようとしていて、どこを向いているか。これが他の選手の場合はどうなるのか。そこの相互理解をもっともっとレベルアップしなければ。

 そうこう考えると、本当に愉しい試合だった。
 課題は無数にあったけれど、先方はこれからも厳しい予選を勝ち抜くために「今」最強である必要がある。一方当方は「来年の6月」に最強になればよいのだ。
 少々センタバックが苦しいのは否定しないが、いざとなったら頼りになるベテランがいる。そして、細貝はブンデスリーガでベストイレブン。螢は、たった20分足らずのプレイだったが、生まれて初めて戦うワールドクラスの難敵に対し、格段の適応をしてくれた。サイドバックも徳永含め人材は豊富、攻撃ラインは上記の通り「誰を落とすか」を悩む状況。

 大変残念ではあるが、アクセス面ではまた世界最低のスタジアムだったかもしれない。でも、ピッチ上では来年のブラジルに向けて、幾多の希望を抱く事ができた。
 幸せな夜だった。
posted by 武藤文雄 at 23:11| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月14日

利府ウルグアイ戦前夜

 「もうお前の前口上は聞き飽きた」とおっしゃる方も多かろう。でも、私は実家で一杯やりながら感慨にふけっているのだ。我が故郷の宮城県で、日本代表の試合が行われる事すら、若い頃は想像だにできなかった。
 だいたい、公式戦が可能なスタンドがついた芝生の競技場が県内に作られたのは、私が大学生になってからだった。それまでは、天皇杯の県大会決勝も、インカレの出場を決める試合も、高校選手権の決勝戦も土のグラウンドで行われていたのだ(なお、芝生のグラウンドに関しては宮城県が圧倒的に遅れていたのであって、他県ではそのような事例は少なかったはずなので、誤解なきよう)。
 もちろん、日本代表がワールドカップの常連となるとか、 ワールドカップ優勝経験国のトップスタアが日本と真剣に試合するために来日するとか、日本代表の中心選手の多くが欧州のトップクラブで活躍しているとか、でも日本代表の誰よりも大切な大黒柱はずっと国内リーグでプレイしてきたが世界のどこにでも自慢できる選手だとか、そんな事も、想像だにしなかったよ。
 確かに2002年までに、我々はすべてを手に入れた。以前から幾度となく自慢してきたが、故郷でワールドカップを終える事ができた2002年大会は、私のためのワールドカップだったのだし。
 でも、そのような経験をいくら積んでも、我が故郷にルガーノやフォルランが滞在し爪を研いでおり、それを遠藤や岡崎が(仙台出身の)今野と共に迎え討つと考えるだけでワクワクしてくるのだよ。

 さて、今回ザッケローニ氏が選んだメンバが、また一層ワクワク感をプラスしてくれている。中核と言える選手は、前田を除いて全員招集。それに先日の東アジア選手権で活躍した、代表経験こそ浅いがJでは格段の実績を持つ選手が、多数呼ばれている。

 最大の注目は、森重だろう。元々、このチームはかなり選手層が厚い。しかし、センタバックだけは、人材不足気味。基本的に定位置をつかんでいるのは、麻也と今野。ところが、先日のコンフェデで、麻也がおバカを連発してしまった。加えて、元々今野は高さに課題がある選手。さらに控えも栗原(強さは中々だが、ラインを深く下げてしまったり、フィードが雑だったり、横へ揺さぶられると敵へのマークがおかしくなるなどの弱点が多い)、伊野波(カバーリングも単純な守備の間合いもよいが、高さには課題がある)と万全とは言い難い。と言っても、彼らよりも能力の高いセンタバックが、そうたくさんいるかと言うと悩ましいところだった。
 その視点から考えると、森重は時に集中を欠きつまらないファウルをする傾向はあるが、欠点の少ないセンタバックだ。センタバックと言うポジションは、この欠点の少なさが重要。どんなに長所が優れていても、短所が致命的だとそこから失点するリスクが高くなってしまうから。実際、森重は東アジア選手権では、パートナの栗原がラインを下げてしまうのに苦しみながらも、粘り強く堅実なカバーリングを見せてくれた。
 森重がこのチームに定着し、麻也や今野を脅かす存在になってくれれば嬉しいところだ。果たしてザッケローニ氏は森重に出場機会を提供するのだろうか。闘莉王の招集ありやなしやと言う酒の肴は継続するけれども、非常に興味深いところだ。

 「出場機会を提供するかどうか」と述べたが、ザッケローニ氏の特徴の1つに、新しい選手を呼んでも、あまり試合には起用しない傾向が挙げられる。そう考えると、最前線だけは前田もハーフナーも呼んでいないから、柿谷、豊田、工藤のいずれかは、スタメン起用が予想される。
 点を取る事ができる攻撃タレントが次々と登場している現状は、めでたい事この上ない。しかし、同時には11人しか試合に出る事はできない。所謂攻撃タレントの枠はスタメンで4人、ワールドカップメンバ23人に枠を広げてもせいぜい8人に過ぎない(遠藤や長友を前に出したり3ー4ー3を好むザッケローニ氏の志向を考えると、前線枠を増やすとは考えづらい)。
 現実的に、岡崎、香川、本田の3人が攻撃の軸なので、その他のタレントはこの3人を活かす事ができるかどうかが、重要な選考基準となる可能性が高い。そう考えると(たとえスタメン入りせずとも)今回選考されていない憲剛と前田が23人枠に入る可能性は相当高いと思われる。また、ブンデスリーガでチームの攻撃を1人で支えるかのようなプレイを見せている清武は、中盤で色々な使い方ができるタレントで、ザッケローニ氏のお気に入りだ。
 すると、残り僅か2枠を、柿谷らはハーフナー、乾らと争う事になる。もちろん、上記した選手が確定とは断定できないが、攻撃ラインの選手のポジション争いの厳しさが、わかろうと言うものだ。「点を取る選手に事欠かない」時代が来るなんて、考えた事すらなかった。いや、めでたい。まずは、このウルグアイ戦、最前線のスタメンを務めるのは誰になるのだろうか。
 もっとも、ザッケローニ氏の事だ。岡崎、香川、本田、清武がスタメンに並んだりして。

 ボランチに、高橋の他に、東アジアで見事なボール奪取を見せた山口螢、東アジアで苦闘しながらも柿谷に鮮やかな縦パスを通した青山が選考され、ボランチが5枚選ばれているのも興味深い。一方で、今回選考から外れた細貝が、移籍したヘルタベルリンで早速スタメンを確保するのみならず、ブンデスリーガのベストイレブンに選考されたと言う。
 いつも語っているが、遠藤の後継者など登場する訳はないのだから、中堅や若手がドンドンと成長してきてくれれば、ここはここで問題ない。もしかしたら、高橋のセンタバック起用があるのではないか等も考えつつ、螢の起用の有無を考えるのも、また愉しい。

 最終ラインを除いては、コンフェデの内容は悪いものではなかった。結果は残念だったけれども。そして、東アジアを通じて、より多くのタレントが登場し、チームは一層強化された感が強い。
 わが故郷の、世界最低のスタジアム。難敵中の難敵、ウルグアイに対し、日本代表が史上最高のパフォーマンスを見せる可能性は十分にある。
posted by 武藤文雄 at 11:07| Comment(7) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月02日

素晴らしい試合だった

 先日の日韓戦。双方の特長がぶつかり合う、とてもおもしろい試合だった。
 終わってみれば、柿谷と言う我々にとって、大事な大事なタレントの2得点で勝利。しかも、勝負を決めたのはアディショナルタイム。結果的には最高だった。もちろん、内容にはもちろん不満もあったし、本当に難しい試合だった。
 そして、その歓喜は、幼少時から心底わかり切っている「韓国に勝つのは本当にシンドイ」と言う実績により、一層際立つものとなる。

 先方からすれば、本当に忌々しい試合だったと思う。少々単調なきらいはあったし、押し込んでいた割には決定機は少なかった。とは言え、日本独特のパスワークを粉砕し、多くの時間帯で攻勢をとっていたのだから。あのような負け方は、あれはあれで、サッカーの魅力である。
 韓国サポータにちょっと羨望したりして。

 そして、お互いが、あの素晴らしい試合を堪能できた。これぞ、最高の娯楽である。両軍の選手たちに、最大限の謝辞を捧げたい。

 真のサッカー狂ならば、それで十分のはずだ。「妙な輩がスタンドで何をどうした」など、どうだってよい事だ。とにかく、素晴らしい試合だった。おもしろかった。私はそれをしばらく反芻し続けたい。
posted by 武藤文雄 at 00:46| Comment(24) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月29日

センタバックは見つかっていないけれど

 先週末に帰国していたのですが、長い出張の後はどうにも忙しくって、とても作文する余裕がありませんでした。まあ、いつも思うのですが、この年齢で本業が忙しいのはありがたい事です。ようやくこの週末は、落ち着いて生活をしています。少年団に顔を出して子供達をからかい、家の所用を片付け。女子代表の苦杯に切歯扼腕し。

 さて東アジアカップ。最終戦の日韓戦を何とも痛快な勝利での優勝。しかも、潜在能力日本最高と期待されている柿谷の狡猾な2得点での勝利。いや、気持ちよかった。
 今思えば、初戦の中国戦、バカ失点を連発し引き分けに持ち込まれていなければ、豪州戦で(これまた、バカ失点で追いつかれた直後に大迫がキッチリ決めて)勝利した時点で優勝が決まっていた。つまり、あの情けない中国戦終盤のおかげで、この気持ちよい韓国戦の勝利を堪能できた訳だ。いや、サッカーの何とも言えないおもしろさと言うものか。

 ザッケローニ氏は、中国戦とまったく同じスターティングラインナップを選択した。ザッケローニ氏にとっては、この11人が今回の選考メンバの第1セレクションと言う事だったのか。その割には、常にメンバに選考してきた高橋がいないとか、相変わらず本音が読みづらい監督だな。
 ただ、ザッケローニ氏に心底感心したのは、後半半ば過ぎの山田の起用。既に槙野の負傷をで1枚交代カードを切っており、さらに無理攻めで押し込んでくる韓国に苦闘していた時間帯。常識的に考えれば、強さがある豊田、キープ力がある大迫、技巧的なドリブルの使いどころをよく理解している齋藤、高さも守備力もある高橋。ある程度の実績をがあり、計算できるこう言ったタレントのいずれかを起用するのが、常識と言うものだろう。そこで、今大会もう1つ実績を残せていない山田を起用して、チャンスを与えた事に感心したのだ。
 しかも、ここまでの時間帯で、審判との相性が最悪で反則ばかり取られていた高萩を残したのも、チャンス提供と言う意味で、ザッケローニ氏の執念を感じた。もちろん、勝負と言う視点からは不思議だったけれども。
 それでも、ザッケローニ氏は結果を残した。就任以来、どんな苦しい状況に追い込まれても、闘莉王を起用しない事と合わせ、このオッサンの胆力はすごいなと、改めて感じ入った。

 元々、今の代表チームは攻撃ラインのタレントは豊富。しかし、Jのトップスタア達が、当然のように今大会実績を残した。今大会における、柿谷、豊田、大迫、齋藤の4人の実績は文句のつけようのないものだし、原口も工藤も相応のプレイをみせてくれた。けれども、今までのザッケローニ氏の采配を見る限り、岡崎、香川、本田、憲剛、清武、前田の6人は、既にほぼブラジル行きのチケットを確保した感がある。あふれでる創造的で点をとる事とができるタレントたち。いや、結構な事だ。
 後方の選手では、山口螢と徳永がよかった。螢は戦う姿勢はもちろんだが、豊富な運動量に支えられたしつこい守備と丁寧なフィードが上々。今大会、あまり出場機会がなかった高橋にとって代わる可能性がある。韓国戦、徳永起用後はすっかり守備が落ち着いた。選手層の厚いサイドバックだけに、定着と言うと厳しいかもしれないが、伊野波のバックアップ枠を争う事になるのだろうか。

 まあ、勝ってめでたいし、よいタレントが多数登場したからよかったけれども、1番の問題のセンタバックについては、ほとんど進捗はなかった。
 栗原は、敵の攻撃をはね返す分には見事な能力を発揮したが、中国戦の再三のミス、韓国戦で1人後方に残ってしまいラインを崩した事など、相変わらず疑問が残るプレイ振り。中盤守備が機能している時には機能するが、押し込まれた時間帯のプレイは感心しない。
 森重の評価がむつかしい。ペアを組んだ栗原がラインを勝手に下げるものだから散々苦労していたし、後方で必死に蹴らずにつなごうとしてミスも目立ったのは確か。しかし、冷静なカバーリングと競り合いでの堅実さは悪くなかった。ザッケローニ氏の評価はいかがなものだったのか。個人的には、やはり闘莉王じゃないのかなと思うのだけれども、我々にとって森重の成熟はとても重要な事はまちがいない。

 ともあれ、今日は祝杯に酔いましょう。
posted by 武藤文雄 at 00:41| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする