2014年06月08日

憲剛と寿人のために

 ザンビア戦、3対3になる同点弾を食らった直後、何とも言えない「ああ、またか」的な重苦しい雰囲気が漂った。
 そこからのキックオフ。遠藤爺と交代した青山の「一発やってやろう」と言う表情は、中々のものだった。そして、キックオフ直後の、青山得意の鋭く深い縦パス、大久保の完璧なトラップからの一撃。凄い得点だった。もうあれを見てしまうと「守備がどうのこうの」と言った議論は飛び去ってしまったのは、1つ前のエントリで講釈を垂れた通り(まあ、ひどい守備だったけれどもねえ)。

 ともあれ。

 あの青山の高精度縦パスにせよ、大久保の超弩級弾にせよ、それぞれJで見慣れた光景ではあった。青山の速射砲の受け手は佐藤寿人、大久保へのセンチメータパスの出し手は中村憲剛と言う違いはあるものの。そして、(前回も述べたが)あのような攻撃を防ぐ手段はカンナヴァーロしかないのだ。
 青山、大久保が共にプレイするのは、今回の代表チームが初めてのはず。この短い準備期間で、2人がこれだけ鮮やかな連係を作りこむ事ができた事は素晴らしい事だ。そして、青山は寿人、大久保は憲剛と言う、それぞれブラジルに行く23人と遜色ない(いや実績や個人能力からすれば勝っている)最高のチームメートを所有している事が、この短期の連係構築成功につながった事は間違いない。
 憲剛と寿人はブラジルには行かない。しかし、憲剛と寿人がいなければ、この得点はなかった。憲剛と寿人がいなければ、ここまで強力なチームを作る事はできなかった。

 これが日本代表チームだ。

 代表チームと言うものは、「最高最強の23人」が選考されるものではない。
 強化の総責任者(今回は原博実氏)が選考した、現場の総責任者である監督(今回はザッケローニ氏)が、「目標に実現に最適なチームを構成できると判断した23人」が選考されるものなのだ。そして、ザッケローニ氏は、この日の4点目でその眼力の鋭さを改めて証明してくれた事になる。
 その格段の眼力を誇るザッケローニ氏が、「この組み合わせが最もよい結果を生む確率が高い」と熟慮した決定したのが、ブラジルに到着した23人だ。だからこそ、すべての選手が、それを誇りに戦ってくれれば。

 例えば、ワントップの位置を大久保と争う柿谷曜一郎と大迫勇也。柿谷と大迫のの個人能力の高さは言うまでもない。それぞれの特長を最大限に発揮すれば、世界中どんなセンタバックをも破り得点できる能力を所有している。しかし、ここ一連の準備試合のこの2人のプレイを見る限り、決して悪いプレイとは言わないが、周囲の本田や香川に妙な遠慮が見受けられる。
 改めて、この2人に期待したいのだ。ザッケローニ氏に選考されたと言う誇りと自信を胸に、己の能力を最大限に発揮して欲しい。もちろん、それは単に得点を狙うと言う事にとどまらず、味方への献身だったり、敵を惑わす空動きだったり、様々な切り口がある。ただ、柿谷にしても大迫にしても、単に本田と香川と大久保に合わせるのではなく、彼らに己のプレイに合させるようなアプローチをもっとしてくれれば。
 香川と大久保が精妙なパス回しで柿谷を抜け出させてもよい。柿谷と香川があり得ないような技巧で敵を打ち破り本田に強烈な一撃を打たせてもよい。大迫と本田が2人で敵DF4人を引き連れてつぶれ岡崎をフリーにしてもよい。岡崎と大久保の瞬発力で敵DFを振り切り最後に大迫が強烈な一撃をネットに突き刺してもよい。
 柿谷と大迫が、もっともっとザッケローニ氏が期待するようなよい意味での自己主張をすれば、ただでさえ強力な攻撃を、もっともっと豪華絢爛なものにする事ができるはずだ。

 中村憲剛も佐藤寿人もそれを願っている。
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2014年06月07日

素敵なおもちゃ箱

 ひどい試合だった。 

 この日、日本が繰り返した失点は、既視感の連続。
 敵の攻め込みをはね返し損ね、押し込まれた形でボールを回され、DF、MFのほとんどが中央に集まってしまい、逆のサイドを使われ、そのクロスを押し込まれた1点目。ファウルを怖れて敵のボール保持者への対応が遅れ、簡単にサイドに展開され、ライン際の選手をフリーにしてしまう。幾度、このような失点を見せられた事か。ああも遅攻からのサイドチェンジに簡単にやられ続けると、「サンフレッチェに練習試合をしてもらって対策を練りなさい!」と怒鳴りつけたくなるではないか。サンフレッチェの両翼に開くパスワークを止めるために、Jの各チームが青山や森崎和に厳しいプレスをかける工夫を、少しくらい学んで欲しい。うん、先日の我がベガルタのように。
 2点目も、おなじみの光景だった。押し込まれて、ボール保持者への対応が遅れて、深く攻め込まれてCKを与え、そこから失点。セットプレイからの失点が多いから、無理なボール奪取を怖れ、そのためゴールライン近くまでの攻め込みを許し、結局CKを提供する悪循環。セットプレイからの失点は、防ぎようないところもあるが、ゴール前のゴチャゴチャでの粘り強い守備対応をやり損ねるのを修正できずに、とうとう本大会を迎える事になった。
 前線でボールを奪われ、あるいは集中守備をかわされ、速攻を許す。何とか人数が足りているのだが、寄せやタックルが甘く失点を許した3点目。これまた、何度も繰り返された失点パタンだった。前線のせまいところで人を集中させるのは、日本の攻撃のストロングポイントの1つだから、このような速攻を許すのは表裏一体。しかし、そこからの切り替えが遅れるのみならず、当たる事を躊躇し、突破やシュートを許す頻度が多いのは、何とかならないものか。

 こう言った守備の課題は、ずっとわかっていた事だ。そして、それが修正されていない。おそらく、本大会でも同じ光景を幾度か目にする事だろう。
 何故ならば、このような守備の課題を解決する手段は、一種の天性の守備感覚(言わば危機管理能力)で敵を止める選手の存在しかないからだ。過去を思い出してほしい。井原や中澤がいた時は、最後の最後、理屈抜きに一番危ない所を予期してつぶしに言ってくれたではないか。これはもう素質の問題だ。
 そして、今そのようなセンタバックを我々は所有していない。森重や今野よりも危機管理能力に優れるセンタバックは、どこを探してもいない。せいぜい、思い当たるのは中澤と闘莉王くらいだろう。そして、この2人が中4日の試合を5試合以上戦い抜く事は相当難しい。ここはむしろ「過去、井原や中澤のようなセンタバックを所有できた事が幸せだった」と考えるべきなのだろう。あのクラスのセンタバックをコンスタントに供給可能な国は、ワールドカップ優勝経験のあるほんの限られた国しか過ぎない。そう考えれば、これは今の我々の限界なのだ。

 しかし、改善の余地はいくらでもある。
 各選手の体調はまだまだベストにほど遠かったからだ。だから、出足の一歩目が遅れ、普通なら確保できるボールが競り合いになる。競り合いになっても、身体の利きが悪いので、瞬発力が高くプレイイングディスタンスが大きいザンビア選手に当たられて、粘り切れずキープできない。それがわかっているから、腰が引けた当たりになってしまう。だから、各選手の体調がベストになれば、状況は飛躍的に改善されるはずだ。各選手が、勝負どころでしっかりボールを奪いに行く勇気を持ち、実際に厳しく当たってくれれば。相応に強力な守備網を構築できるはずだ。
 もう1つ。この日失点の最終場面に絡んだのは内田と蛍。これは偶然ではない。この2人はセンタバックではないが、今の代表チームで、上記の危機管理能力を最も所有している選手だ。だから、一番危ない場面に絡む事となる。内田が絡む失点が多いのは、内田が振り切られずに、敵の攻撃の一番危ないところを予測してそこに位置取りするからだ。ただ、体勢の悪さと体幹の弱さでやられてしまう。体調が整っていれば、あそこで粘り強く止め切ってくれるはずだ。3点目の山口も(その直前に同様にミドルシュートを許した場面も)身体の利きが悪く、寄せきれなかった。これも体調がよければ、詰め切れたはずだ。そして、蛍自身、ブラックアフリカの大人のチームとの対戦経験は、昨年のガーナ戦くらいのものではないか。そのような意味では今日の失敗経験は、コートジボワール戦に向け、恰好のものとなったはずだ。

 などと、「ああでもない、こうでもない」と、思うに任せない現実を憂慮するのは、とても愉しい事だ。

 しかし、今私はそのような愉しみを、格段に超えた愉しみを保有している。
 この私の豪華絢爛な攻撃陣は、どんな相手をも崩し切り、どんな相手からも大量点を奪う事ができる。分厚い守備で中南米予選を戦い抜いたコスタリカ相手でも、組織的な攻守を展開した(しかもよく日本を研究していた)ザンビア相手でも、終盤に至り自在にボールを回せるようになり、守備網を完全に粉砕する事に成功した。我々の攻撃を止める唯一の手段は、守備ラインにカンナヴァーロを装備する事くらいだろう。
 このような美しい代表チームを世界中の人々に見せびらかす事ができるのだ。これ以上の喜びがあろうか。

 確かに守備は甘い、本大会で、その甘さに涙する事もあるかもしれない。しかし、それがどうしたと言うのだ。82年のセレソンだってそうだった。そして、あの「組織化された混乱」による攻撃は、32年の月日が経った今なお、我々に甘美な記憶を提供してくれているではないか。
 我々は世界中の人々に美を提供できるチームを所有するに至ったのだ。

 齢53歳で、とうとう、こんな素敵なおもちゃ箱を入手できました。ありがとう、ザッケローニ。ありがとう、原博実
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2014年03月05日

ニュージーランド戦前夜2014

 明日はニュージーランド戦。ベガルタサポータとしては、マグリンティの代表でのプレイ振りが最大の注目となるが、ここは代表サポータとして講釈を垂れる事とする。

 昨年、日本代表は、本大会出場確定後、コンフェデ、地元でのウルグアイ戦、欧州での強豪国戦と、豪華絢爛かつ効果抜群の準備試合をたっぷりと行う事ができた。ところが、本大会のある今年は打って変わって、確定しているのは地元でのニュージーランド戦とキプロス戦のみ。現実的にはブラジル入りしてから、強豪国と複数試合を組むのだろうが、随分と地味な準備状況となっている。
 遠路はるばるの国を迎えるよりは確実にベストメンバで来日してくれる国を選考した、やや戦闘能力は劣るが仮想ギリシャとしての準備ができる、ほぼ固まった来ているチーム作りの最終確認には(少々失礼な言い方になるが)やや戦闘能力の落ちる国との試合が適切、など熟考熟慮の末のマッチメークなのだろう。そうに決まっている。うん、そうだよね。もっともニュージーランドは南アフリカ大会唯一負けなかった国なのだから、失礼な事を言ってはバチが当たるな。遥か去る事30年前のロサンゼルス五輪予選ではホーム&アウェイで2敗したっけな。

 さて、昨日はストライカを捨て得る権利について散々思考実験を愉しんだ訳だが、今日は悲観的見地となりがちのポジション、センタバックについて講釈を垂れようと思う。
 多くの方が同意されると思うが、今のチームで不安が最もあるのはセンタバックだろう。それ以外のポジションは、いずれも選手層も分厚く、南アフリカ大会のメンバを凌駕している感がある。けれども、現時点と言う事になるが、センタバックだけは4年前の方が安心感があった。
 吉田麻也は、再三代表チームであり得ない軽率なミスから失点に貢献してきている。今野は最も安定感があるが、常に高さに不安を抱える(そう言う意味で、長身選手を軸とするニュージーランド、キプロスと言う相手と試合を組むのが大事だったのかしら)。森重はとてもよい選手だが代表でも自クラブでも時々決定的ミスをする。伊野波は昨シーズンのジュビロでのプレイは必ずしも格段のものではなかった。
 思い起こせば、4年前。中澤と闘莉王の2人は完全確定していたが、中々バックアップが定まらなかった。バックアップが定まらない事で岡田氏をさんざん批判した向きが多かったが、今回はレギュラさえ怪しいがそのような批判が起こらないのも、中々興味深い。
 個人的には闘莉王の呼び戻しに期待していたが、ここまで招集しないと言う事は、やはりザッケローニ氏の構想外と言う事なのだろうか。

 そうなると、やはり期待は麻也と言う事になる。
 今シーズンはサウサンプトンでも中々起用される事がなく心配されたが、ここに来て定位置を獲得しつつあると言う。上記したように、時々おバカはするが、単純な高さ、大柄な割には横への動きもそう悪くない事、フィードの精度など、潜在能力は非常に高いものがある。おバカも問題だが、もう1つの不安は、危機察知能力。例えばガーナ戦、セルビア戦など、敵攻撃が精度を欠き混戦模様になった時に、なすすべもなくそのまま失点するケースがままある。往時の井原や中澤がいた時代は、そのような混戦状態になっても、最後には一番危ないところを彼らが押さえる事で失点を回避していた。しかし、現時点での麻也はそのような危機察知能力をまだ持っていないようだ。余談ながら、今の日本守備陣で「その感覚」を一番持っているのは内田だと思う。混戦状態から敵が決定機をつかみかける場面で内田がアプローチするのを幾度も観た事がある。ただし、内田は体幹の強さに欠ける。代表チームで、最後内田が身体を張りながら止め切れないための失点を幾度観てきた事か。
 地位が人を作る。闘莉王も昔はひどかった。しかし、南アフリカ予選の敵地カタール戦、中澤が欠場した試合で守備をまとめる役割を負った事で、大化けした。そう考えると、麻也もそろそろ大化けしてよい頃だ、期待したい。

 昨秋から何回「国立最後の」試合が行われてきた事か。そして、明日はいよいよ日本代表の国立競技場最後の試合となる。実際、私にとっても最後の国立競技場詣でになるような気がする。
 思い起こせば、1976年高校1年生の時だった。ペレが在籍していたニューヨークコスモス対日本選抜(監督は当時の代表監督二宮氏が務めたが、日程の都合で代表ではなく選抜チームが戦った)を観戦するために上京したのが、最初の国立体験だった。奥寺と碓井の得点に興奮したのは、つい昨日のようにすら思える。あれから38年が経過したのか。
 天気予報は雨だと言う。氷雨に打たれながら、38年間を反芻するのも悪くないかもしれないな。
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2014年03月04日

ストライカを捨てる贅沢

 明後日はニュージーランド戦。

 「パオロ・ロッシ以来の技巧とタイミングで得点を多産し得る」柿谷の離脱は残念だが、1860ミュンヘンで好調に得点を重ねている「釜本以来の万能型ストライカ候補」大迫、Jのピッチで「日本サッカー初の肉体的強さで他を圧倒する」豊田に期待できるのだから、ありがたい事だ。

 正直言って、ブラジル大会での結果はさておき、「どのストライカを捨てるべきか?」と言う身分になれた事だけで満足している自分がいる。
 経験豊富な前田もいる。色々な使い方が可能な工藤もいる。存在感が格段な川又もいる。もちろん、南アフリカで捨て石となる厄介な仕事を貫徹し一方で過去の経歴で最高の得点力を見せてくれた大久保もいる。
そして、とにかく寿人。
 さらに言えば、彼らよりも格段の実績を持つ岡崎。

 点を取る事に悩まないのは、サポータとして格段に贅沢な事なのは言うまでもない。しかし繰り返すが、現実はもっと良好だ。捨てる選択肢を悩むのだから。

 あ、無事チケットも当選しました。日本が決勝まで残っても大丈夫です。
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2013年12月10日

上々の抽選

 抽選終了から丸2日経ち、冷静さを取り戻すと、コスタリカが無性に羨ましくなってきた。ねえ。

 ともあれ、上々の抽選だった。
 簡単な話だ。他のアジア、北中米各国と、日本を置き換えてみればよい。「このグループより楽かな?」と思えるのは、E組(スイス、エクアドル、フランス)、H組(ベルギー、アルジェリア、ロシア…何かちょっと酸っぱい記憶が、これで隣国が負けたら…)くらいか。
 F組(アルゼンチン、ボスニアヘルツェゴビナ、ナイジェリア)とA組(ブラジル、クロアチア、カメルーン)は、C組と比較して、欧州国は同等、アフリカ国はやや楽、と言う印象だが、南米の2巨人とは引き分けに持ち込むのは相当厳しい。いくらなんでも、コロンビアの方が、この2巨人よりは勝ち点をとれる可能性は高いと言うもの。この2グループのように、「1強」がいると、残り3国で「1枠」を争う必要があり、相当シンドイ事になる。それに比べると、我がC組は4国で2枠を争うことできる。2/4,50%の方が、1/3,33.3%よりも格段に確率が高いのは言うまでもない。
 そして残り3組。それぞれ、冗談のようなグループだ。B組(スペイン、オランダ、チリ)、D組(ウルグアイ、イングランド、イタリア)、G組(ドイツ、ポルトガル、ガーナ)。冒頭に「コスタリカが羨ましい」と講釈を垂れたが、より丁寧に組み合わせを見てみると、D組のコスタリカの方が、B組の豪州やG組の合衆国よりはましに思えてくる。まあ、いいや。我々はC組なのだから。

 さらに言うと、C組を勝ち抜いたとしての1/16ファイナル。D組のウルグアイ、イングランド、イタリア、そしてコスタリカのいずれかが来る(北中米トップで抜けたコスタリカが来る可能性も、相応にあると見ているのだが)。もちろん、彼らは激烈グループを抜け出すのに全精力を使い切っているはず。これは、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、スペインが来るよりずっとよい。つまり、D組抜けのいずれの強豪国がきても、超最強国は来ないのだ。もちろん、1/16ファイナルで、イタリアに楽に勝てるとは思っていない。でも、ブラジルやドイツよりは、やりようがあるはずだ。つまり、ベスト8までの道は開かれたのだ。

 ちょっと悔しいけれど、我々にとって重要な事は、まずは1次ラウンドを着実に抜け出す事、そして1/16ファイナルを勝ち抜く事だ。7試合を粘り強く戦い抜き、最高の成績を収める事は、我々にとって「夢」なのだが、残念ながら、それは現実的な目標ではない。まずは、4試合ををしっかりと勝ち抜く事が肝要だ。
 そう考えると、上々の組み合わせではないか。唯一贅沢を言えば、アフリカポッドからは、もう少し楽そうな相手を引きたかったくらいか。
 そして、ワールドカップを勝ち抜くと言う経験については、我々は同組の3国を上回る。コロンビアが前回ベスト16に入ったのは、90年大会。あの1/16ファイナル、その試合、彼らしいは名GKイギータの考えられないミスから、カメルーンの老ミラにしてやられ敗戦した。コロンビアについては、あれ以降の1次リーグ抜け狙いとなる。もう23年前なのだ。そして、コートジボワールとギリシャの、経験不足は言うに及ばない。彼らはワールドカップで1次ラウンドを抜け出した経験すらないのだ。我々は過去3大会で、2回グループリーグを抜けるのに成功している。この差は大きい。
 過度に楽観する事も、過度に悲観する事もなく、同グループの3国を軽んじる事もなく、尊重し過ぎる事もなく。そうすれば、存分に結果はついてくるのではないか。2次ラウンド進出以降も。
 丁寧な準備でベストの試合を演じてくれる事を期待したい。
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2013年12月03日

いや、えがった

 まるっきり2週間遅れですが、現地参戦した敵地ベルギー戦について。

 第4審判がアディショナルタイムを「4分」と出した時、嬉しかった。いや、もっとこの試合を観ていたかった。終わって欲しくなかった。本当に幸せな試合だった。

 まずは味わい深い失点から始まった。麻也が置いていかれ、川島が軽率に飛び出し、高徳がまったく集中していなかった。これだけ無様な失点を、じっくりとゴール裏から堪能できたのだから、これだけでも現地に行った甲斐があろうと言うもの。しかもこの失点は、それぞれの失敗が異なる階層で議論されるべきものだったのだから。
 麻也は実力。麻也がこのような状況で高速FWに置いていかれるのは見慣れた光景。しかし、いい加減もっと意識したプレイはできないものだろうか。足が遅い事はセンタバックとしては致命傷ではない事は、井原正巳や中澤佑二のような偉大な先輩達が証明している。それなのに、いつもいつも、同じ過ちを繰り返す選手を見るのはもどかしい。まあ、井原や中澤と比較する事そのものが気の毒なのはわかるけれども。それにしても、何回失敗経験を積めばよいのだろうか。ともあれ、後日ワールドカップ予選、スウェーデン対ポルトガルの映像を堪能したが、クリスチャン・ロナウドと対する麻也を想像するのは恐ろしい。週末は抽選会か。
 川島は焦り。ゴール裏2階席は、この失点を俯瞰するのに最高だった。川島がダッシュで飛び出した瞬間、間に合わない事がよくわかったからだ。思わず頭を抱える事になったけれど。ただ、間に合わないないと自覚した川島が、「私はプレイに関与していません」とオフサイドポジションにいるラグビー選手ばりのアピールで、両手を上げたのには笑ったが。この落ち着きのないプレイは、オランダ戦で西川が堅実なプレイを見せた事に対する焦りから来るものだったのではないか。元々、川島はビックリするようなセービングをするが、呆れるようなミスのリスクもある選手。安定性とロングフィードを武器とする西川とは好対照。適切な競争が行なわれる事を期待したい。
 と言う事で、酒井高徳である。酒井は試合に集中できていなかったのだから、論評以前。後方から入ってくるミララスにまったく気がつかなかった訳だが、ミスにしても、もっとやりようがあるだろうと言う無様さだった。ゴール裏2階席は、ボーッとした高徳がミララスに置いていかれるのを味わうのに最高の席だった。うん、現地参戦は応えられない。川島のミスも同情の余地はないものだが、高徳のミスは即交代させられても仕方がないレベル。高徳はその後奮起し上々のプレイを見せてくれたけれどねえ。現実的に長友がいるのだから、堅実な駒野や徳永を選考すべきではないのかな。

 そして、この大間抜け以降に、状況が一転するのだから、堪えられない。
 失点直後は、さすがに出足がにぶり、押し込まれる時間帯が継続した。
 しかし、螢の粘り強いボール奪取と、長谷部の豊富な運動量が奏功し、次第に日本のキープ時間が増えてくる。そして、幾度かの揺さぶりの後、後方に下がった清武の適切なスペースメークに呼応して、酒井宏樹が鮮やかなクロス。これを適切な動き出しを見せた柿谷が決めてくれた。だいぶ古いが、酒井宏樹のクロスは80年代前半に西ドイツで活躍したマンフレッド・カルツを彷彿させた。ちなみに、五輪代表で全く連係を取る事ができなかった清武と酒井宏樹が、見事な連係を見せてくれたのも嬉しかった。そして、そのクロスが飛ぶ空間僅かな敵DFの狭間に、トップスピードでパオロ・ロッシ、じゃなかった柿谷が飛び込んだ。酒井宏樹のクロスの直前にちょっと溜めて、ピュピュ〜〜ンと。天才と呼ぶのは簡単なのだけれど、なぜこの天才が「あのスペース」に飛び込む判断ができるのか?今後、この天才を解題し続ける事ができるのが、何とも嬉しい。

 ハーフタイム、こんなすばらしい得点を見る事ができる幸せを噛み締めた。そして気がついた。スターティングメンバの半分以上がロンドン世代である事、遠藤爺も岡崎も長友もいないのに、このような鮮やかな得点を見る事ができた事。

 後半、遠藤爺と岡崎が投入される。そりゃ、格段にチームが強化されるのは当然の事。
 後半の2得点をどう表現したらよいのだろうか。
 左サイドで香川と酒井高徳が連係、そこにヨタヨタと遠藤爺が近づき、「どっこらしょ」とグラウンダーのクロスを流し込み、本田がフリーで待ち構える。
 右サイドを岡崎の切れ味で切り裂き、ボールを受けた長谷部がシュートを打ち切れず、ちょっと溜めてジェニオに(いや、現地ではすっかり本田と勘違いしていたのだが)。チップで浮かしたボールが、トップスピードで全くのフリーの岡崎にピタリと。

 何かもう、すべてがどうでもよくなるのですよね。この3得点を、直接見る事ができたのですから。

 確かに課題は解決していない。
 あり得ないおバカな先制失点。せっかく2点差なのに、簡単にCKから失点する悪癖。終盤の森重の考えられないミスパス。
 しかし、この試合はコンフェデ杯イタリア戦とは決定的に違った。サッカーと言う競技のルールは単純だ。敵よりもたくさん点をとった方が勝つのだ。この日、日本はベルギーよりたくさん点をとって90分間を終える事ができたのだ。これは、とてもとても重要だ。我々はベルギーに勝ったのだ。
 解決していない課題が多いが、サッカーで何が一番難しいかと言えば、創造的な攻撃で敵守備ラインを崩し、ゴールネットを揺らす事。そして今、我々は世界のどこが来ても、それを可能とする選手群を所有している。得点力?岡崎、大迫、柿谷、これだけ強力なストライカを並べる事ができる国が、他に世界にいくつあると言うのだろうか(いや、工藤も寿人も大久保も前田もいますけれど)。既に我々は、一番厄介な課題をほぼ解決できているのだ。

 最後、ザッケローニ氏がこれをうまくまとめ上げてくれる事だろう。氏は、アジアカップで一回それを見せてくれた。あの短い準備期間で。残り半年、氏には十二分な時間だろう。ここまで魅力的なサッカーを演出してくれているのだ。私は全幅の信頼と共に、氏とブラジル大会を戦うつもりだ。

 もちろん、このようなサッカーを見ると常に恐怖も感じるのは否定しない。このサッカー、この試合が、日本サッカーのピークなのではないか。これ以上の美しいサッカーを見る事は、もう一生ないのではないかと。もしかしたら、そうかもしれない。でも、それならそれで、仕方がないとも思っている。これだけのサッカーを見せてもらったら、後はそう贅沢を言ってはバチが当たるとも思っているし。
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2013年11月17日

後半の守備は何分可能なのか

 不思議な事に、比較的最近まで、オランダ代表とは戦う機会がなかった。最初の対戦は、4年前の準備試合、終盤ガタガタにされたあの試合だ。それ以前は若年層の大会。北京五輪の敗退が決まってからの3試合目の本田のおバカ、あるいはクインシーにチンチンにされた2005年ワールドユースくらい(おお、この時も本田がいたな、そう考えると、この男のわずか5年での出世はすばらしいな)。ところが4年前のガタガタの後、南アフリカ本大会の1次ラウンドでスナイデルにやられ、この試合で4年間で3試合目、最近は随分と頻繁にお相手いただいている事になる。

 悪くない試合だった。
 特に後半の守備はすばらしかった。前線からの的確なチェーシングと、螢のボール奪取と遠藤爺の老獪な読みで、中盤でオランダが停滞。そうなると、麻也も今野も鋭い出足で飛び出す事ができるので、浅いラインで戦う事ができる。オランダは幾度か苦し紛れのロングボールで日本のDFラインを下げようとするが、長友と内田のスピードは抜群なので精度の低いボールは怖くない。
 山口螢のボール奪取はすばらしかった。自軍ペナルティエリアの僅か外でミスパスをしたり、奪ってから軽率に取られたり、開始早々の決定機をふかしたり、不満は多い(いや、それはそれで愉しいのだけれども)。しかし、あれだけ中盤で止めてくれるのだから。我々は、渡辺正、藤島信雄、宮内聡、明神智和の系譜を次ぐ、「何があっても最後まで戦い抜いてくれる中盤戦士」を、久々に獲得しようとしているのかもしれない。しかも、この諸先輩と異なり、螢は(少々常識的だが)40mクラスのパスを操れる。

 2点を奪い、さらに幾度も決定機を掴む事ができた(それでも決め切れないイライラも何とも味わい深かったけれども)。しかし、中心選手の多くの体調がよければ、いや本田と岡崎の体調がよければ、これくらいできるのは前からわかっていた事だ。しかも、ホームグラウンドではない中立地、とても褒められたものでない芝、2点差にされる苦境、その状況で後半あれだけ見事な守備を起点に、この相手に猛攻を仕掛けられた事は素直に喜びたい。
 大迫ももちろんよかったが、終盤にこの大迫に代えて柿谷を起用できる贅沢。こら柿谷、あれは決めるのだ、必ず!
 そして、遠藤の後方支援を受け、本田を使いつつ、本田に使われつつ、香川が見せてくれた魔術の数々。こら香川、あれは決めるのだ、必ず!

 もし、この守備が来年6月のブラジルで、4試合継続できれば、ベスト8はかなり現実的な目標となってくる。4試合継続できればだが。
 忘れていけないのは、この良好な守備は後半の45分しか見られなかった事だ。前半は大迫と本田のチェーシングが空回りし、かなりの時間帯オランダの中盤、それもよりによってファン・デル・ファールトをフリーにしてしまったし、速攻を許してしまった(まあ、あの2点目はすごかったな)。さらに後半よかったと言っても、遠藤爺と香川は後半だけの出場、後半半ばに長友と内田はお役御免、さらに最前線で半端なくがんばった大迫も終盤柿谷に交代している。つまり、すばらしかった後半45分は、あくまでも「条件付きすばらしかった」なのだ。
 繰り返そう。この後半45分の守備を、360分(+延長の30分か)見せることができるのか。あと7ヶ月か。

 と、ニヤニヤしながら文句を言うのは実に愉しい。
 こう言う試合を見せられると、来年ブラジルに向けた休暇をどう取ればよいか、本当に悩むではないか。

 と言う事で現場視察が必要と判断しました。これからベルギーに向けて出発します。では、行ってきます。
posted by 武藤文雄 at 01:05| Comment(9) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月29日

「メキシコの青い空」と「ドーハの悲劇」

 あの1985年10月26日(メキシコの青い空)から28年、ちょうど7ワールドカップが経った事になる。そして、1993年10月28日(ドーハの悲劇)から20年、ちょうど5ワールドカップ。
 正直言って、それぞれが、あっと言う間だった。今53歳の私が、もしあと7ワールドカップ生きる事ができれば81歳、5ワールドカップで73歳か。そう考えると、自分の残りの人生もそうは長くないものだとも考えてしまう。
 生まれて始めて満員の国立競技場を体験し分厚い壁にぶち当たった事は、自分の人生でも非常に重要な節目だった。そして、冗談のようなアディショナルタイムの失点を体験し「負ける快感」を完全に取得した事は、自分の人生を確信させるものだった。
 7ワールドカップ前、国民的悲劇からはほど遠かったが、それでもあそこまで行って完敗したからこそ、幾多の敗戦報道に浸る事はできた。そして、5ワールドカップ前、日本中の人々が、近親者を失った訳でもないのに、格段の絶望感を味わっていた。サッカーのすばらしさを体感できた。
 そして、この2つの悲劇から、我々は幾多を学んだ。7ワールドカップ前の悔しい初戦、あの木村和司の直接FK弾道の美しさ。あれを見て、日本中のサッカー少年たちは、止まったボールを悪魔に変換する芸術に取り組んだ。だからこそ、あのデンマーク戦で、本田と遠藤は、あそこまで鮮やかな直接FKを決める事ができたのだ。

 思えば、以降を振り返ると、ここまで鮮やかな「敗戦」は中々味わう事ができなかった。そして、ようやく3/4ワールドカップ前の南アフリカのパラグアイ戦で、同等の衝撃を味わう事ができた。世界最強国にならない限り、いつかは負ける。ワールドカップは、負けるための大会なのだ。だからこそ、重要な事は「いかに負けるか」なのだ。7ワールドカップ前の加藤久と宮内聡、そして森孝慈氏。5ワールドカップ前の井原正巳とカズ、そしてハンス・オフト氏。何より3/4ワールドカップ前の中澤祐二と遠藤保仁、そして岡田武史氏。
 だからこそ、ザッケローニ氏に改めて問いたい。あなたは、本田圭佑、長友佑都、香川真司、そして岡崎慎司。彼らにいかに美しい負け戦を演じさせるのか。彼らにいかに美しい絶望感を味合わせてくれるのか。
 その負け戦と絶望感が、1日でも先送りされる事を、切に祈りながら。
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2013年10月17日

暗き試合も、いとをかし

 残念な試合だった。

 何か最初から雰囲気が暗い。セルビア戦でもっとやれるつもりだったのが、鼻っ柱を折られた事が相当ショックだったのかもしれない。開始早々香川が切り返しから放ったミドルシュートは、香川らしからず明らかに力が入り過ぎていた。柿谷が抜け出してGKにブロックされたシュート、チーム全体の重苦しい雰囲気に足を引っ張られ、柿谷独特の冷静さが見られなかった。失点は、左右からクロスを連発されズルズルと後退してしまいミドルシュートを食らったものだが、チーム全体が弱気になっている典型的場面だった。
 ベラルーシは前線から組織的なプレスをかけてきたため、攻めあぐむのは仕方がない。だったら丁寧にボールを回して、いかに敵に隙を作るかを考えなければならないのに、遠藤爺以外のほとんどの選手が無理に攻めかけようとしていた。さらに、強引に中盤でボールを奪おうとするが、必ずしも体調のよくない選手が多いから、結果的に体格のよい敵の出足に負けて後手を踏んでいた。よほど選手たちには焦りがあったのだろう。一方で、こう言う試合を見せられると、ザッケローニ氏が遠藤爺を外したがらないのも、何となく理解できてくる。

 しかも、セルビア戦でもそうだったが、岡崎、本田、香川の3枚看板の体調が悪いのは、見ていて明らか。この3人が冴えなければ、苦戦は免れない。それでも、岡崎は悪いなりに、動き出しを工夫し、幾度も好機を導いていた。本田も悪いなりに、最前線で身体を張って、相応に敵に脅威を与えていた。けれども、香川は完全に調子を崩していて、独特の鋭い加減速がまったく見られない。香川も必死に動いてボールを引き出そうとするのだが、切れが悪くベラルーシ守備陣に手玉に取られてしまった。こんなひどい香川は南アフリカ大会前に遡らなければならないかもしれない程だった。
 後半、森重を投入し、評判悪い3ー4ー3に切り替え。両サイドDFの今野、森重が、持ち上げれるし、パスもよかったので、珍しく3ー4ー3が結構機能しかけた。さらに、中盤に起用された螢が、運動量と厳しい当たりに加え、事前の適切なルックアップも冴え、よいプレイを見せる。ところが、ボールが香川に渡る度に、攻撃が停滞してしまう。ここで、香川を交代すれば、状況は好転した可能性が高かったのだが。セルビア戦でペースを引き戻すのに貢献した清武、交代出場で機能する事に定評ある齋藤、いずれでもよかった。いや、幾度か述べたが、交代で機能するか確認をしておきたい乾の起用も一案だった。
 好意的に解釈すれば、来年6月の好成績の確率を高めるために、自クラブで出場機会をなくしている香川(と麻也)の出場機会確保を、この2試合の勝利より優先したと言う事なのかもしれないな。

 腹は立ったが、よい準備試合だった事は間違いない。
 我々は、日本代表に、常に目が覚めるような勝利を求めている。それが、1つリズムを崩すと、欧州予選で苦杯を喫し、新たなチーム作りを始めている国に連敗すると言う事実を見せつけられた。来年6月に向けて、これはこれでよい経験ではないか。
 4年前は本大会出場権獲得後、直前の韓国、イングランド、コートジボワールの3連戦前は、敵地でのオランダ、南アフリカとの2試合しか、真っ当な準備試合が組めなかった。今回はコンフェデ杯を含め、ウルグアイ戦を含め今回の2試合。そして、来月、オランダと(たぶん)ベルギーと、欧州でやれる。出場権獲得後、年内に8試合だ。たとえ、内容や結果がどうでも、準備と言う視点からは、本当にありがたい事だ。
 また、螢と森重が短い時間ながら、すばらしいプレイを見せてくれたと言う収穫もあった。セルビア戦で、最後のアチャーを除くと細貝も上々だった。この3人の充実は、最大の課題である守備の強化に直接つながる。3人は、自クラブでも中心選手。日々のプレイがブラジルにつながる。
 もっとも、酒井高徳が冴えなかったのは、香川の不振以上に心配だ。香川は相当の経験も積んでいるし、このままの冷遇が続いても実績があるから、獲得する大クラブもいくらでもあり、来年6月には上がってくるはずだ。しかし、高徳がこのパフォーマンスを続けると、貴重な両サイドバックをこなせるタレントが戦力外になってしまう。奮起を期待したい。まあ、使われて不振が発覚するのがよいのか、使われぬまま機能するのかしないのかわからん方がよいのか、と言う議論があるけれど。

 もちろん、ザッケローニ氏の采配に疑問は多い。
 チームが重苦しい時は、リフレッシュの意味を含め、新たな選手を起用するのは一手段だが、まあ強情なオッサンですなあ。実際、過去の代表監督を思い起こしても、フィリップを除いては、皆基本的には固定メンバを好んでいた。ジーコや岡田氏のみではないよ、オシム爺さんのアジアカップの焦燥感など、中々だったではないか。
 ただ、この2試合で乾の交代起用の効果は見ておくべきだったとは思う。乾は自クラブでは、攻撃の要と言う位置づけだから、代表でないと特殊なトライは難しいのだが。
 また、終盤にハーフナーを起用した理由もよくわからない。あの屈強な守備ラインに対し、ハーフナーの空中戦で活路が見出せると考えたのだろうか。終盤、麻也も前線に上がり、ハーフナーと2スピアヘッドを組んだが、今野らが上げたファーサイドへのクロスを、ベラルーシ守備陣は苦労する事なくはね返していた。
 コーチングスタッフが、ザッケローニ氏が連れて来たイタリア人が多く、チーム全体がネガティブになった際の切り替えが円滑でないのかもしれない。3年前に吠えた提案はどうだろう。

 代表チームの監督が皆から文句を言われるのは、一種の責務なのだ。セルジオ越後さんを筆頭に、サッカーライター達が4年前に岡田氏に投げかけた誹謗中傷を、同じようにザッケローニ氏に投げかけている。まあ、恒例行事だな。
 そう言う訳で、この2連敗についても、そうは心配はしてない。ちょっと気になるのはザッケローニ氏の表情が暗い事。岡田氏は、悲観論を騒ぎ立てる報道陣をアタマからバカにしているのが見え見えで、安心感があった。実はザッケローニ氏は、岡田氏以上に老獪で、わざと深刻な表情をしているだけだったらば、心配いらないのだが。
posted by 武藤文雄 at 00:37| Comment(10) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月12日

良好な強化試合は続く

 何よりもまず、敵地で強い相手とこうやって準備試合ができるのはすばらしい。難しい試合となったセルビア戦を観て、「このような試合の継続こそ最も有効な強化方策なのだ」と、改めて確信した。

 前後半3場面ずつ、合計6種類の展開に切り替わる試合だった。
 まず最初はスタンコビッチの引退試合の時間帯。すっかり重くなったスタンコビッチがボランチにいるものだから、何かお互いプレスを掛けるのを遠慮したかのような内容。
 続いて激しいプレスの掛け合いから押し込まれる時間帯。敵地で厳しいプレスをかけられ、序盤に劣勢になるのは、ちょっと仕方がないところもある。ただ、香川のあり得ないようなミスから決定機を掴まれたのは問題だった。
 前半30分過ぎ、セルビアのプレスが緩んだところで、互角の展開に。本田、長谷部との連係からの香川の決定機もあったが、逆に前進できるようになったがために速攻に脅かされる場面も。
 後半立ち上がり、今度は日本ペースに。岡崎がポジションを柿谷に近づけた事で、前線に起点を作りやすくなり、好機を再三掴めるようになってくる。
 ところが、逆襲を止め損ねたセットプレイから失点。その後もセルビアの出足を止め切れず、押し込まれる時間帯が継続。セルビアが同時に3人選手交代し、先制して勢いが戻ったのに対し、しばらく完全に後手を踏んでしまった。
 そして、細貝、清武を起用し、中盤を再活性化して再度押し込んだ終盤。分厚いセルビア守備陣を思うように突破できず苦闘。そして、細貝のミスから…
 期待通り、セルビアはよいチームだった。伝統的なスクリーンプレイの巧さ。NHKの解説小島氏はセルビアの「身体の強さ」と評していた。しかし、私は、あのキープの巧さは、身体の入れ方、つまり技術の高さによるものと見た。そして、後述する守備の強さ。一方で日本はボールを素早く動かす巧さで対応。双方の忠実で組織的なプレス、噛み合ったおもしろい試合だった。

 最終的に得点できなかった攻撃。
 確かにセルビアの最終ラインは強力だった(選手の所属クラブを考えれば当たり前だが)。個々の単純な強さ、読みのよさ、反転のスピード。さらに、相互の連係。プレスをかいくぐって、本田や長谷部がラストパスを狙い、岡崎や柿谷がシャープに突破しても、ギリギリで身体を当てて防がれてしまう。
 とは言え、攻撃に収穫は少なくなかった。後半立ち上がりに、岡崎が挙動開始点をやや中に絞り、柿谷との距離を狭める事で、強力CBをかなり揺さぶる事ができた。ここ最近本田が香川にこだわり過ぎ、攻撃が左サイドに偏っていたが、左右バランスのとれた展開が見られたのも悪くなかった(これは香川の体調が悪く、引き出しの動きが少なかったためかもしれないが)。後半、長谷部と清武を投入し、バランスを取り戻す事ができたのも上々だった。
 ただ、この守備ラインを崩し切るためにどうすべきだったのか。最大の疑問は明らかに調子が悪い香川を引っ張った事だ。ザッケローニ氏は最近試合出場の機会を失っている香川を長時間起用する事で、調子を戻させたかったのかもしれない。しかし、これは長期的視野からはあまり有効には思えない。このままユナイテッドで冷遇が続いたとしても、いずれ監督が更迭されるか、年末に別なトップクラブに移籍するだけの事。無理に長時間引っ張る必要があっただろうか。むしろ、後半立ち上がりの日本ペースの時間帯、あるいは清武を起用してペースを取り戻した直後に、乾(あるいは齋藤)を起用すべきだった。特に残念なのは乾の起用が遅かった事。昨日も講釈を垂れたが、乾は交代出場で機能した事例は少ない。このような展開こそ、乾のテストに最適だったのだが。
 また、香川の不振は、本田にも悪影響を与えた。1つは、香川の運動量が少なく、結果的に本田がかなり前方で遠藤や長谷部のパスを「待つ」時間帯が多くなってしまった事。もう1つは、香川の引き出しが少なく、結果的に本田の選択が柿谷に限定されて、攻撃が中央に限定されてしまった事。どうせ、香川に出さないならば、せめて自らもっと強引にシュートを狙ってくれるならばよかったのだが。贅沢な要望だとはわかっているが、パートナの香川が悪いならばそれなりに攻撃の組み立てを工夫して欲しかったのだが。

 先般のガーナ戦などで修正された組織守備は悪くなかった。だからこそ、守備面では新たな問題が見えてきた。
 1点目の失点場面。先日のガーナ戦もそうなのだが、ちょっと偶然が重なってギャップが生まれた場面への対応。ああ言うのを防ぐためには、瞬時の判断力に優れ、柔軟に身体の動きを変更できるセンタバックが必要。往時の井原や中澤は、ああ言った場面を見事に止めていた。そして、そうやって不慮の失点を防げるかどうかで、勝負が分かれる。ワールドカップで上位進出しようとするからには、守備ラインにもスタアが必要なのだ。ただ、これは素材的なものだから、かなり深刻な問題かもしれない。
 上記したセルビア選手のスクリーンプレイの巧さのため、プレス合戦でボールを確保し切れず、中盤を抜け出すのに散々苦戦した日本。序盤敵が元気な時間帯こそ、中盤に守備能力が高い選手を使うべきではないか。中盤の混戦の狭いところで、うまく身体を当てながら巧みな駆け引きにより、ボールを奪う確率が高い選手。つまり、細貝あるいは螢を先発で起用し、前線に飛び出し攻撃に厚みを作れる長谷部は終盤投入する方がよいように思えてきた。この方が、遠藤爺の負担も減ると思うのだが。

 悔しいが、よい強化試合だった。噂通りベルギーとの敵地戦も組む事ができれば、年内にあと3試合このような試合をやれる事になる。結局、こう言う試合を積み上げる事が、チーム強化につながる。守備面での課題は山積だが、準備状況は非常によい。来年に向けての期待は高まるばかりだ。

 余談。
 デヤン•スタンコビッチの存在を初めて知ったのは、98年フランス大会直前のユーゴスラビア戦だった。ピクシーを筆頭に、ユーゴビッチ、ミハイロビッチ(今回の監督さん)、ミヤトビッチら、ベテランの多いチームの中で、唯一の20代前半の選手として機能していた。何より、フランス大会直後のセリエAの一場面(この文章の下の方です)が忘れ難い。
 中々よい感じの引退試合だった。チームメート長友とのご挨拶、素敵な奥様と人相の悪いご子息達の対称も含めて。
posted by 武藤文雄 at 22:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする