2013年08月02日

素晴らしい試合だった

 先日の日韓戦。双方の特長がぶつかり合う、とてもおもしろい試合だった。
 終わってみれば、柿谷と言う我々にとって、大事な大事なタレントの2得点で勝利。しかも、勝負を決めたのはアディショナルタイム。結果的には最高だった。もちろん、内容にはもちろん不満もあったし、本当に難しい試合だった。
 そして、その歓喜は、幼少時から心底わかり切っている「韓国に勝つのは本当にシンドイ」と言う実績により、一層際立つものとなる。

 先方からすれば、本当に忌々しい試合だったと思う。少々単調なきらいはあったし、押し込んでいた割には決定機は少なかった。とは言え、日本独特のパスワークを粉砕し、多くの時間帯で攻勢をとっていたのだから。あのような負け方は、あれはあれで、サッカーの魅力である。
 韓国サポータにちょっと羨望したりして。

 そして、お互いが、あの素晴らしい試合を堪能できた。これぞ、最高の娯楽である。両軍の選手たちに、最大限の謝辞を捧げたい。

 真のサッカー狂ならば、それで十分のはずだ。「妙な輩がスタンドで何をどうした」など、どうだってよい事だ。とにかく、素晴らしい試合だった。おもしろかった。私はそれをしばらく反芻し続けたい。
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2013年07月29日

センタバックは見つかっていないけれど

 先週末に帰国していたのですが、長い出張の後はどうにも忙しくって、とても作文する余裕がありませんでした。まあ、いつも思うのですが、この年齢で本業が忙しいのはありがたい事です。ようやくこの週末は、落ち着いて生活をしています。少年団に顔を出して子供達をからかい、家の所用を片付け。女子代表の苦杯に切歯扼腕し。

 さて東アジアカップ。最終戦の日韓戦を何とも痛快な勝利での優勝。しかも、潜在能力日本最高と期待されている柿谷の狡猾な2得点での勝利。いや、気持ちよかった。
 今思えば、初戦の中国戦、バカ失点を連発し引き分けに持ち込まれていなければ、豪州戦で(これまた、バカ失点で追いつかれた直後に大迫がキッチリ決めて)勝利した時点で優勝が決まっていた。つまり、あの情けない中国戦終盤のおかげで、この気持ちよい韓国戦の勝利を堪能できた訳だ。いや、サッカーの何とも言えないおもしろさと言うものか。

 ザッケローニ氏は、中国戦とまったく同じスターティングラインナップを選択した。ザッケローニ氏にとっては、この11人が今回の選考メンバの第1セレクションと言う事だったのか。その割には、常にメンバに選考してきた高橋がいないとか、相変わらず本音が読みづらい監督だな。
 ただ、ザッケローニ氏に心底感心したのは、後半半ば過ぎの山田の起用。既に槙野の負傷をで1枚交代カードを切っており、さらに無理攻めで押し込んでくる韓国に苦闘していた時間帯。常識的に考えれば、強さがある豊田、キープ力がある大迫、技巧的なドリブルの使いどころをよく理解している齋藤、高さも守備力もある高橋。ある程度の実績をがあり、計算できるこう言ったタレントのいずれかを起用するのが、常識と言うものだろう。そこで、今大会もう1つ実績を残せていない山田を起用して、チャンスを与えた事に感心したのだ。
 しかも、ここまでの時間帯で、審判との相性が最悪で反則ばかり取られていた高萩を残したのも、チャンス提供と言う意味で、ザッケローニ氏の執念を感じた。もちろん、勝負と言う視点からは不思議だったけれども。
 それでも、ザッケローニ氏は結果を残した。就任以来、どんな苦しい状況に追い込まれても、闘莉王を起用しない事と合わせ、このオッサンの胆力はすごいなと、改めて感じ入った。

 元々、今の代表チームは攻撃ラインのタレントは豊富。しかし、Jのトップスタア達が、当然のように今大会実績を残した。今大会における、柿谷、豊田、大迫、齋藤の4人の実績は文句のつけようのないものだし、原口も工藤も相応のプレイをみせてくれた。けれども、今までのザッケローニ氏の采配を見る限り、岡崎、香川、本田、憲剛、清武、前田の6人は、既にほぼブラジル行きのチケットを確保した感がある。あふれでる創造的で点をとる事とができるタレントたち。いや、結構な事だ。
 後方の選手では、山口螢と徳永がよかった。螢は戦う姿勢はもちろんだが、豊富な運動量に支えられたしつこい守備と丁寧なフィードが上々。今大会、あまり出場機会がなかった高橋にとって代わる可能性がある。韓国戦、徳永起用後はすっかり守備が落ち着いた。選手層の厚いサイドバックだけに、定着と言うと厳しいかもしれないが、伊野波のバックアップ枠を争う事になるのだろうか。

 まあ、勝ってめでたいし、よいタレントが多数登場したからよかったけれども、1番の問題のセンタバックについては、ほとんど進捗はなかった。
 栗原は、敵の攻撃をはね返す分には見事な能力を発揮したが、中国戦の再三のミス、韓国戦で1人後方に残ってしまいラインを崩した事など、相変わらず疑問が残るプレイ振り。中盤守備が機能している時には機能するが、押し込まれた時間帯のプレイは感心しない。
 森重の評価がむつかしい。ペアを組んだ栗原がラインを勝手に下げるものだから散々苦労していたし、後方で必死に蹴らずにつなごうとしてミスも目立ったのは確か。しかし、冷静なカバーリングと競り合いでの堅実さは悪くなかった。ザッケローニ氏の評価はいかがなものだったのか。個人的には、やはり闘莉王じゃないのかなと思うのだけれども、我々にとって森重の成熟はとても重要な事はまちがいない。

 ともあれ、今日は祝杯に酔いましょう。
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2013年06月25日

かなりの間違いと幸運に恵まれたら

 「来年のブラジル本大会、日本の目標は」と、問われたならば、「前回大会を上回るベスト8」と答える人が多いのではなかろうか。少なくとも私はそう思っている。
 もちろん、本田圭佑や長友佑都が「優勝を狙う」と高い目標を発言しチームメートや自らを奮い立たせるのは、大いに結構な事だ。例えば、2002年は地元開催の有利さに加え、高温多湿の東アジアの気候などが加わり、トルコとセネガルに連勝すればベスト4と言う好機に恵まれた。しかし、監督が1次リーグを突破した事に安堵してしまい、今一歩の結果に終わった事は記憶に新しい(とは言っても、当時の1次リーグ突破は見事な成果ではあったけれども)。実際、準々決勝までたどり着くためには、「かなりの間違いと幸運に恵まれたら優勝も可能」くらいの戦闘能力の保持は必要だろうし。
 そして、今回のコンフェデレーションカップで、日本は「かなりの間違いと幸運に恵まれたら優勝も可能になり得る」戦闘能力である事を示してくれた。結果は残念だったが、この時点での仕上がりと考えれば、まあ上々だったと言えるだろう。

 ブラジル戦は前後半の立ち上がりに鮮やかな攻撃を食らい2点差にされてしまった。さらに遠藤、本田の中心選手が疲労で交代を余儀なくされる。それでも、長谷部を中心に粘り強く戦う事に成功。最後の麻也のおバカがなければ、それなりに評価できる試合をやりかけた。大体、過去のブラジルとのA代表戦で、ここまで粘り強く戦えた事はない。先日も述べたが、2005年の引き分け時はもっと多数の決定機を提供していたのだし。まあ、3点目ですべてが台無しになったのは間違いないけれど。
 イタリア戦は悔しかった。スタメンから起用された前田が安定したプレイを披露、後方から巧みにさばく遠藤と共に、岡崎、香川、本田の3人がが光り輝いた。あえなく2対3に逆転されたにもかかわらず、遠藤を軸に落ち着いてボールを回し同点として、さらに決勝点を期待させる決定機を相当数作った。最後の酒井宏樹のミスは痛かったが、それ以上に悩ましいのは2対0から、短い時間でひっくり返された事(この大会で一番残念だったのはここだな)。今の代表選手達は相当な経験を積んでいると思っていたのだが、あのように駆け引き的に情けない試合運びをされたのはとても残念だった。
 メキシコ戦は30分までは完璧だった。30分過ぎに遠藤のミスからショートカウンタでピンチを招いたところで、メキシコペースになり、それを挽回できずに、後半序盤にしのぎ切れずに先制を許す。この時間帯、メキシコの時間帯、無理に攻めかけず、まずは守備を固めてほしいところだったのだが。しかし、考えてみれば既に次のラウンドに進む可能性がなくなったオープンな試合、そこまで望むべきなのかどうか。2点差となった終盤、憲剛を投入し再度ペースを取り戻したのは明るい話題。ただ、3戦続けて麻也におバカを見せられるとは。

 総じて考えると、フィールドプレイヤは、センタバックを除くと、そこそこに選手層も厚くなってきた。
 もちろん、遠藤のバックアップは不安だが、遠藤の代わりそのものを望むのは贅沢と言うもの。ドーハでのイラク戦、憲剛のボランチテストをすべきとは思ったけれども。
 唯一の悩みのセンタバックだが、頼りになる事極まりないベテランが2人が国内に控えている。もちろん、麻也も疲れているのだろう。まずは、ゆっくりと休んで格段なセンタバックになってもらおう。

 以前より「几帳面さの徹底を」と講釈を垂れてきたが、それとは別に守備面で気になる事(愉しみな事)が1つ。
 メキシコ戦や豪州戦で、ザッケローニ氏は最終ラインをいじって、攻撃を立て直そうとした。試合の最中に守備固めではなく、後方の選手を入れ替えるのは、イタリアサッカーの典型的なやり方。ところが、その直後に日本は失点している。偶然とも言えるが、この方式が日本サッカーに定着すれば、格段に日本サッカーの厚みは増すはず。イタリアの名将を招聘したのだ。何とか身につけたいものだ。

 攻撃面で今一番気になる事は、選手一人一人の特長をお互いに活かそうと言う意思疎通が、あまり感じられない事。例えば岡崎に合わせるクロスなんか、もっと工夫できそうなのだが(もっとわかりやすいのは、ハーフナーを投入しても、駒野を除くと彼を活かすようなクロスを蹴らない事か)。ザッケローニ氏が、敢えてそう言う事を狙わずにこれから仕上げようとしているのか、最後まで選手に任せようと考えているのかは、わからないけれど。

 いずれにしても、ここまで期待あふれる代表チームを所有できるのはこの上なく愉しい事だ。来年どのタイミングで休暇を取るべきか、どこまで長谷部とその仲間達を信じるか、サポーターの真価が問われる1年となる。
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2013年06月21日

岡崎と香川と本田への要求

 悔しいよ。とにかく悔しいよ。
 私は完全に間違えていた。世界中に遠藤を見せびらかす事はできたけれども、何も嬉しくなんかないわ。冷静に考えてみれば、私の日本代表選手達が、この位やれるのは当たり前なのだ。ブラジル人の絶賛など、一切不要。こんな悔しくて悔しくて悔しくて仕方がない快感など、クソ食らえだ。

 もちろん、来年の本番を考えれば、悪くなかったよ。
 ブラジル戦と異なり、「どうしようもない失点」ではなく、「几帳面さの欠如がいかに高くつくか」を体感できた。この2試合、まだまだ修正しなければならない守備面で、全く異なる失敗経験を積めたのだ。
 これで世界中の国々が、相当な警戒をするのも大きなプラスだ。元々、我々はノーマークがゆえのメリットを享受はできないレベルには到達済みだったのだから。
 そして、結果こそ出なかったものの、選手たちも一定以上の自信を持てたはずだ。4年前のチームは、的確に準備は進んでいたが、よい準備試合が少なかった事もあり、選手たちが「やれる」と言う自信をつかみ切れず本大会に突入、初戦のカメルーン戦終盤に少し腰が引けた対応をしてしまい、必要以上の苦戦をしてしまった。

 ふん、それがどうしたと言うのだ。
 点をたくさん取った方が勝つのだ。相手を0点に押えたならば1点取ればよい。相手に4点取られたならば、5点取ればよいのだ。

 だからこそ、私は岡崎慎司と香川真司と本田圭佑に言いたい。
 君たちのうち、1人でよかった。あと1点取りさえすれば、引き分ける事ができたのだ。いや、もう2点取ってくれれば勝てたのだ。
 あと、1年の間に、今日の悔しさを忘れずに研鑽を積んで欲しい。そして、3人が3人とも今日のような試合で「あと1点、もう2点」を取れるようになってくれれば。

 俺たちは世界一になれる。


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2013年06月20日

イタリア戦前夜2013


 敵地でブラジルに完敗しただけで「この世の終わり」と語る人は、4年前に敵地でオランダに完敗し、その1年後に何が起こったかくらいは、思い出すとよいのではないか。
 私だって悔しくて仕方がない。しかしながら(執拗に繰り返すが)、私が悔しくてのは3失点目につきる。もちろん、とてもではないが完璧な試合とは言い難い。しかし、あれで0-2で終えていれば、悪いなりに相応にまとめた試合だった。

 まあ、それはそれ。
 ブラジルの次にイタリアにお相手いただけるのだから、まずは出世を喜ぶのが健全と言うものだろう。
 イタリアとのA代表戦と言えば2001年秋。すっかり代表戦の舞台として定着した埼玉スタジアムのお披露目だった。柳沢の格段の早い動き出しに、ピタリと合わせる稲本。美しい得点だった。そして、先日のブラジリアでの試合のような、根付きの悪い芝。

 先日もブラジル戦後に講釈を垂れたが、いかに几帳面に戦えるかどうかを問いたい。
 好調時のイタリアの几帳面な守備修正は、やはり世界随一だろう。今回のチームは少し色が異なっているようにも思えるが、1年前の欧州選手権準決勝のドイツ戦の鮮やかな守備振りには、恐れいった。
 だからこそ、長谷部や岡崎や今野や内田が、日本風の几帳面さを前面に出し、アズーリの几帳面さ以上のものを発揮してくれる事を期待したいのだ。そして、彼らの献身より、本田と香川と長友が存分にその個人能力を発揮する事を。
 もちろん、ブラジル戦で酷評した麻也にも注目したい。プレミアリーグは、選手の平均能力は世界最高峰かもしれない。けれども、ユナイテッド、シティ、チェルシー、アーセナルなどの超トップクラスを除くと、基本的には敵の攻撃を跳ね返す守備が求められる。そして、その能力を評価され、シーズンを通じてほぼフル出場した実績はすばらしい。ただ、来年のワールドカップで勝ち抜くためには、それでは足りないのだ。先日も述べたように、麻也に全軍の総指揮をとってもらわなければならないのだ。
 川島に問いたいのは「誇り」だ。ここ最近、豪州戦のあり得ないミスに代表されるように、今一歩のプレイ内容。しかし、この日の相手はブッツォン、いわゆる世界最高峰のゴールキーパの1人。この最高レベルのGKとの対決を機会に、苦しい状況で日本を支えるプレイを取り戻して欲しい。
 そして何より遠藤に問いたい。私は見せびらかしたいのだよ。あなたを。世界中の人々に、我々はここまで知的で上手でいやらしい世界最高の指揮官を所有する事を。そして、そのためには、あなたには「ピルロより上手」と言うところを見せていただきたいのだが。

 などと考えていると、無性に愉しい。
 私の代表チームには、世界中のライバル達から、格段に嫌われ、恐れられている存在になって欲しい。先日のブラジル戦の惨敗、もうそれはそれ。重要な事は、イタリアに対しありとあらゆ抵抗を行い、最後には相手が嫌気を出すような試合をする事。
 うん、期待したい。
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2013年06月16日

とにかく、もっと几帳面に

 何が悔しいかと言えば、最後の3点目だ。残り2試合、メキシコとイタリア、相当難しい事は確かだが、そこそこの勝ち点を取る事ができる可能性はある。だからこそ、この試合で得失点差マイナス2に止められるかどうかは、非常に大きかった。早々に2点差にされ、遠藤や本田が疲労で動けなくなり、交代を余儀なくされる非常に難しい試合だった。それでも、いずれの選手も頭を働かせて、位置取りの修正を継続し、粘り強く戦ってきたのに(ザッケローニ氏も交替で、粘り強く戦うメッセージを伝えたのだが)。
 あの場面、香川のボールの取られ方のまずさが、ブラジルの速攻の起点となった。けれども、香川のボールロストは、試合終盤に何とか1点差にしようと無理を仕掛けた結果によるものだったし、ブラジルにボールを運ばれたところで、日本の2人のCBもしっかりと自陣側に残っていた。だからこそ、あそこまで簡単に裏を取られた麻也は残念だった。
 麻也は昨年のブラジル戦でも、終盤大差になった時間帯、やや集中を欠いたプレイを見せている。麻也には他にも多々要求があるのだが(それは後述する)、まずはこの3点目を猛省して欲しい。

 とは言え、3点目を除けば、そう悪い試合ではなかった。
 前後半序盤にやられた失点については後述するが、ボールを奪われた直後の切り替えも早かったし、逆襲速攻を食らうような奪われ方にも相応の注意があった。全くミスがなかったとは言わないが、0-2で終わっていれば、特に守備面については一定の評価ができる試合だった。昨年の10月の試合よりも格段によかったのは言うまでもない。よく取り沙汰される2005年のコンフェデで引き分けた試合にしても、もっと多数の決定機を与えていた。このブラジリアでの対決は、過去のブラジル戦を振り返っても、日本が最も機能した試合と言ってもよかったのだが。あの3点目がなければ。
 もちろん、失点場面以外も修正が必要な場面はいくつもあった。前半、フッキに香川が出遅れた場面(左サイドを完全にえぐられた)、前半終了間際の内田(フレッジのシュートを川島が好捕)と清武(長谷部がネイマールをファウルで止める)のミスパス、後半開始早々、右サイドから長谷部が強引に仕掛けながら何もできず最後DFに囲まれてボールを奪われた場面(結果的に速攻は許さなかったが、非常に危ない取られ方だった)等々。
 まずは、このようなミスをなくしていく必要がある。そして、そのような几帳面な守備が、ワールドカップでの好成績の大前提となるのだ。

 では、前後半序盤の失点をどう防ぐか。「キックオフ直後や終盤の時間帯の失点に気をつける」と言う格言?は、いわゆるサッカーのセオリーの一つ。しかし、この日の2失点は、キックオフ直後云々とは関係なく、ブラジルの圧倒的個人能力にやられたものだった。
 基本的には、あのような見事な得点に対しては、当方の守備者が先方を上回る守備を見せるか、当方の攻撃選手が敵ゴールに同じような個人能力で破るかしか、対抗策はない。
 例えば1点目。もちろん、マルセロがクロスを上げる前に止めたい。そのためには、1個ずつのプレイの機敏に修正するためには、よほどの集中が必要だ。また、クロスが上がってからだが、これはもうセンタバックの修正能力を高めるしかない。あの場面は、フレッジの落としも見事だったが、ネイマールの入り込みをいかに読んで押さえるかが、鍵となる。
 2点目だが、あのように高速グラウンダでサイドに振られては、さすがに長友でも、クロスを止めるのは難しい。とすれば、振られたところで、微妙にラインを上げ下げし、その上で敵を厳しくマークしなければならない。
 要は、麻也に、チアゴ・シウバのプレイを求めたいのだ。いや、かつての井原や中澤のプレイを求めたいのだ。敵の攻撃をよく見張り、都度自分の位置取りを修正し、チームメートには修正を指示し、一番危ないところを押さえる。麻也には、早くこのような域に達して欲しいのだ。3点目のような無様なミスのあたりで、ウロウロされては困るのだ。
 このような超強豪との戦いは、やはりありがたい。守備面の修正課題の多くが明確になったのだから。

 さて、攻撃。
 岡崎と本田を変則2トップにして、香川をちょっと後方に下げて遠藤との距離を小さくして2人の技巧で中盤を抜け出すやり方は、相応にうまくいった。また、後半前田を起用して、中盤に香川と本田を並べたのも、悪くなかった。
 しかし、ブラジルの両サイドを突くまでは行くのだが、そこからが足りなかった。たとえば、上記の方策で、中盤から抜け出し、サイドに清武や本田や長友が抜け出しても、サポートが遅く孤立してしまっていた。何とか、ここで数的優位を作りたかったのだが。
 例えば内田だ。この日、内田はよくネイマールを止めていたが、ネイマールを見張るためだろう、さすがに押し上げ(右サイドの攻撃フォロー)は遅れていた。ネイマールが交代したら、再三前に出てくるようになったのが、おもしろかったが。しかし、ブラジルに勝つためには、これではダメなのだ。内田は、ネイマールをちゃんと止めながら、隙を見てちゃんと前に出てきてサイドで数的優位を作らなければ、いかんのだ。例えば、この日。2点目を失った直後の清武のクロスが惜しくも岡崎が決め損ねた場面、この場面では内田が外に走り抜けたからこそ、清武いは狙いすましたクロスを蹴る事ができたのだ。
 この相手に勝つためには、そうやって攻め切る必要があるのだ。

 まあ、いつも言う事だけど、近づけば近づく程はっきりと差が見えてくるものだ。繰り返すが、1点目も2点目も隙を突かれた訳でも何でもなく、相手が凄かった。だからこそ、もっともっと几帳面に守り、敵の隙を見極めて人数をかけて攻める必要がある。
 いいじゃないか、それをキッチリと認識できたのだから。
posted by 武藤文雄 at 22:03| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月15日

コンフェデレーションカップ2013に向けて

 さて、コンフェデレーションカップ。それにしても、よい抽選だ。ブラジル、イタリア、メキシコ。無条件にワクワクしてくるではないか。さすがにワールドカップ本大会の1次リーグがこの組み合わせになる事はないだろうが、スペイン、ウルグアイ、ナイジェリア、そして日本と言ったグループになる可能性はそれなりにあるんだな。そして、1年後そのようなグループでも、相当な確率で勝ち抜く事ができる戦闘能力を持つ事。それが、俺たちの目標なのだ。

 まずイラク戦について。苦労したけれど、遠藤と岡崎の勝負強さを再確認した試合と言えばよいのか。

 イラクの選手の個人能力は相当高い。アジアで我々と真っ当に互角の中盤戦を戦う事とができるのは、この国と好調時のウズベキスタンくらいだろう。ただし、長期に渡るH&Aで行われるワールドカップ予選は、国情からホームゲームが開催できないためか、どうにも勝ち切れない。2007年のアジアカップ優勝や、2004年のアテネ五輪ベスト4など、短期集中決戦では相当な好成績を残しているのだが(ちなみにアテネ五輪予選もSARS問題で、短期間で行われた)。そのイラクが勝つしか本大会出場の可能性はなくなる状況に追い込まれている。しかも、この試合は体調を整えやすい週1回ペース、「強いイラク」が来ると考えるのが妥当と言うものだろう。
 一方、当方は1週間前に本大会出場を決め、翌週にはコンフェデを控える。一部に、「イラク戦にはB代表を派遣し、A代表選手はコンフェデに準備するためにブラジルに直行すべき」と言う意見があった。この意見は傾聴に値するものではある。しかし、前節に出場権が確定していなければ、A代表選手がイラクに向かう必要があったのだから、航空機の予約や、B代表選手の待機などを考えると、現実的ではなかった。もっとも、ヨルダン戦で出場権を獲得していた場合どうだったかと言う議論はあるかもしれないが。そして、ザッケローニ氏はスタメンの半分にレギュラを、残り半分に控え選手を起用した。これは、非常に真っ当な策、控え選手もレギュラと一緒にプレイさせなければ、連携強化、能力の見極めなどにはつながらないのだから。

 当然イラクは攻撃的な姿勢で臨んでくる。灼熱の気候(どうやら現地情報によると、風による砂嵐もひどかったらしいが)で、必ずしも体調のよくない日本は押し込まれる場面も多かった。また、日本のコーナキックの際に、長友しか残っていない(長身の酒井宏樹もヘッドを狙いに行くので、普段の内田のように後方に引いてない)ところを複数回狙われたりもした。もっとも、それを1人で守り切る長友の脚力を活かした守備は見ものだったけれど。香川と清武のいかにもこの2人らしいワンツーでの突破、清武の狙い澄ましたクロスにハーフナーが合わせる場面など好機も多かったが決め切れず前半終了。
 後半に入り、両軍とも運動量が落ち、試合は停滞気味となる。それでもイラクは必死に局面を打開しようとするが、日本は落ち着いた守備でしのぐ。さすがにマフムードが相手では、今野も伊野波も劣勢になる場面もあったが、それでも相互が冷静にカバー(この難しい環境で、2人がマフムードを何とか止め切った事は、ブラジル大会に向けてはとても重要だと思う)。守備能力が高い細貝が(時々ミスもあったけれど)中盤の要所を押さえる。そして終盤、ベテランの憲剛、前田を投入し、逆襲を狙う布陣として、香川の個人技と岡崎の俊敏さを活かそうとする。そして、狙い通り岡崎の突破と遠藤の押し上げから決勝点を決めた。
 必ずしも完調とは言えない状況で、焦る敵に粘り強く対処し、最後にエースストライカが決めた勝利。中々勝ち切れない試合が続いていたから、ブラジル戦前の勝利は非常に大きい。

 さてコンフェデである。来年のワールドカップ本大会に向けて、どこまで上積みができるか。まずは、3年前の南アフリカとの比較を考えたい。

 攻撃については、タレントの質の向上は明らか。岡田監督は、南アフリカに向け、大胆に次々と若手を抜擢、本田、岡崎、長友のように間に合った選手、香川、内田のように間に合わなかった選手など色々あったが、とにかく皆あまりに若かった。それらのタレントが全盛期を迎え、いずれも欧州のトッププロで活躍している。
 けれども、ここまでの試合を見る限り、彼ら相互の連携にはまだまだ改善の余地がある。例を挙げてみよう。本田が香川とのパス交換に拘泥し過ぎて攻めが単調になったり、長友がせっかく突破しながら強引に中央に入り過ぎて逆襲を許したり、一番得点が期待できる岡崎に合わせる意識が低い事などだ。長身のハーフナーを起用しても彼を活かすクロスボールがあまり入らないのも同じだ。南アフリカ大会では、選手個々の迫力は随分と差があったが、右サイドに人数をかけて崩すやり方は、人が代わっても(中村俊輔がいてもいなくても)機能していた。カメルーン戦の先制点はその典型だった。
 ただ、ザッケローニ氏は、敢えて今までは連携の精緻化は目指していなかったようにも思える。各種のインタビューで、そのような言及がほとんど見受けられないからだ。そして、このコンフェデからは、それらの組み合わせの妙が見え始めるのではないかと期待しているのだが。

 続いて守備。今のチームの守備は、南アフリカ大会の日本の堅牢な組織守備の段階には達していない。もちろん、ザッケローニ氏は、それも織り込み済みだとは思う。ただ、南アフリカのチームの組織守備は、大会1年前の予選のホーム豪州戦や、準備試合の南アフリカ戦で、既に確立されつつあった。過去、ザッケローニ氏のチームは、これらの試合のように水際立った守備は見せていない。まあ、まだ1年あるしな。ただ、先日の豪州戦の後半の守備は中々よかった。川島のドヒャーは別にして。要は、ボールを奪われてからの切り替えの早さなのだ。
 ちょっと気になるのは(まあ、大丈夫だと思っているけれど)、ザッケローニ氏がイタリア人だと言う事。イタリアのトップ選手ならば、ボールを奪われた直後に食い付くように、敵のボールを奪いに行く。ちょっと悔しいけれど、我らのトップ選手のボールへの執着は、イタリア人に比べるとちょっと及ばない。岡田氏は、そこの執着を相当厳しく指導していただろうし、実際チームはそのようなプレイをしていた。ザッケローニ氏は、選手たちがその執着を見せるのを「当然の事」と考えていないだろうか。もっと、厳しく要求すべきなのではないか。繰り返すが、先日の豪州戦の後半の修正を見る限り大丈夫だとは思うのだけど。
 まあ、闘莉王問題を含め、そのような守備の構築を見ていくのは、サッカーの最上級の愉しさの1つなんだよね。

 いつも言っているけれど、夢の世界だ。
 我々の英雄たちは、ドイツやイタリアやイングランドやロシアのトップチームで中核として活躍している。ずっと日本でプレイしている遠藤は、世界中のサッカー人から尊敬されている。他国のわかっている人々は、我々を強豪とまでは言わないかもしれないが、厄介なチームと認識している。
 とうとう、ここまで来たのだ。だから、結果も欲しい。
posted by 武藤文雄 at 22:42| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月13日

複雑で不安定な想い

 おかげさまで本業が充実しており、作文をさぼっているうちに、イラク戦まで終わってしまいました。ともあれ、豪州戦の観戦記をアップいたします。何とか、コンフェデ前にイラク戦を含めた来年への展望をまとめたいと思っています。思ってはいるのですが…忙しいのですよ。うん。

 本田圭佑のPKが決まり、ワールドカップ出場が確定した瞬間。過去40年の自分のサッカー人生でも、最も複雑で不安定な想いを感じていた。
でも、それは一瞬だった。ベンチから中村憲剛を先頭に控え選手達が全力疾走で本田に向かうのを見て、安堵が交じった歓喜が飛び出してきた。

 複雑で不安定な想い。

 アジアでのワールドカップ最終予選が、2グループに分かれたH&Aの総当たり戦で行われ、上位2国が抜けるスタイルになったのはつい最近の事。そして、過去2回の予選では、トップシードの強豪同士の試合が総当たり戦の最終戦に組まれていた。結果として、前回の敵地豪州戦にせよ、前々回のホームイラン戦にせよ、お互い出場権を確保済みでの対戦となった。ために、せっかくの強豪とのホームゲームが、およそ緊張感のない試合となってしまった。けれども、今回は違った。お互い出場権は未確保での直接対決となったのだ。それも相当因縁のある宿敵豪州との決戦である。とても愉しみな試合となった。
 ただし、先方と当方の状況は随分と異なっていた。先方は青息吐息で大混戦に巻き込まれており、当方は余裕綽々で世界でも最速の出場権確保を目指している。現実的に、この豪州戦はもちろん残るイラク戦に敗れる事があっても出場権獲得は濃厚。確かに愉しみではあるが、微妙な想いで迎える試合となった。いや、豪州の状況が羨ましい…とは言わんけれどね。

 よい試合だった。
 日本は前半から、復帰した本田圭佑の力強いボールキープで前線に起点を作り、香川の個人技と遠藤の押し上げで好機を作る。いつもの事だが、日本選手の瞬間加速は、豪州選手を苦しめる。
 若返りが進まず、おなじみのメンバの豪州だが、堅牢な守備はさすがの一言。日本の攻撃の第一波を、ニールの読みで防ぎ、第二波に対しては、全員の素早い戻りで対応。前線の数を減らし、中盤を5人にして後方に分厚くブロックを組む。
 前半の豪州の攻撃は、失点を最小限にする事を前提として割り切ったものだった。ケーヒルをワントップにして、長いボールを合わせる。ケーヒルは不正確だが長い距離飛ぶヘディングで、日本の守備をずらそうとする。幾度も煮え湯を飲まされたこの名手は、後方から飛び出すのが本来のプレイスタイルだが、上記のように分厚く守るためには、ケーヒルには最前線しかポジションは残っていない。ケーヒルは奮闘したが、吉田麻也と今野は厳しいマークで自由にさせなかった。
 また、日本の浅いラインに合わせてケーヒルが下がり、2列目の選手が飛び出して、そこにスルーパスを合わせる狙いはいやらしかった。クルースに抜け出された(川島が見事な飛び出しで防いだ、もっともそのこぼれ球をケーヒルに拾われた場面は、クルースのシュート以上に危なかったが)のがその典型だった。
 上記を含め、幾度か危ない場面はあったものの、試合は日本ペース、香川や遠藤が決定機を決め切れず前半を終えた。それにしても、香川のシュートを片手一本で止めたシュバルツアはすごかった。本当に忌々しい最高のゴールキーパだ。

 後半に入り、日本はまず守備を修正した。浅いラインは同じだが、最終ラインに常時3人が残り、交通事故のリスクを減らす。またボールを奪われた直後のプレスも、前半と比べて一層早くなった。この修正で、豪州のカウンタをほぼ無力化する事に成功した日本は、ジワジワと攻め続ける。しかし、崩し切れない。
 崩し切れなかったのには2つの要因があったと見る。
 1つは、本田が香川を使った突破に拘泥し過ぎた事。遠藤あたりからの好展開と自らのキープ力の強さにより、いわゆるバイタル近傍で再三前を向く事に成功。そこから本田は常に香川に突破させる事を狙う。それを受ける香川の個人技の切れもまたすばらしい。ほんの僅かなスペースを見つけ、幾度も豪州守備陣の裏を突きかける。ところが、いつもいつも、この攻撃を狙うものだから、さすがに相手も慣れてくる。たまにでよいから、右サイドの岡崎を使ったり、本田自らが中央突破を狙うだけでも、随分と効果的だったと思うのだが。
 2つ目は、ニールのすばらしい読み。本田がパスのタイミングをずらしたり、香川が突破前のフェイントを再三切り替えるのだが、都度しっかりと位置取りを修正し、我慢を重ね、最後の最後で大柄な身体を張って一番危ないところを押さえる。そうやって苦心しながら、自軍がボールを奪うと、体力を振り絞って前進しラインを上げる。本当にほれぼれするような鮮やかな守備振りだった。
 全くの余談、我々はニールと同い年の中澤佑二を所有する。この中澤がこの試合に登場しない事そのもの。分厚い選手層への喜び、そしてほんの少しの寂しさ。

 そうは言っても、「あれだけ押し込めばいつか崩れる」と言う雰囲気が漂いながら0対0が続く中、オジェク氏とザッケローニ氏が動き出す。
 まずオジェク氏。中盤のホルマンに代えトップにビドシッチを起用した。押し込まれながらも、何とか守れている以上、中盤を含めた後方は交代しづらい。ならば、前線を増やしプレスを強化すると共に、日本の守備を押し下げて、明らかな疲労が見え始めた後方の選手を休ませる時間を確保しようとしたのだろう。もちろん、一発狙いもあっただろうが。
 一方、ザッケローニ氏は、CFの前田に代えてCBの栗原を投入。長友を左サイドの中盤に上げると言う、2年半前のアジアカップ決勝と似た采配を行った。最初はびっくりしたが、落ち着いて考えるととても納得できる采配。勝ち点1確保を最低線にするならば、日本は豪州同様に後方の選手を交代はやりにくい。では、前田か岡崎に代えて、憲剛や清武やハーフナーを入れるかと言うと、守備力が落ちる。と考えれば、この交代は「守備力を落とさず、ニール達がいやがる」と言う意味では、非常におもしろいものだった。実際、この交代直後に、挙動開始が少し前に上がった長友が見事な突破で好機をつかんだし。

 ところが。

 押し込んでいるにもかかわらず、僅かな隙を突いた敵の鮮やかな攻撃にやられて敗れる試合は幾度も幾度も経験している。けれども、押し込んでおり、僅かな隙も見せていないにもかかわらず、ゴールキーパのあり得ないミスから失点すると言う試合は極めて珍しい。と、言うか全く記憶にない。
 この日、川島はいつものように見事なプレイを見せていた。上記したクルースの抜け出しを防いだ場面はその典型。そして、過去も川島は幾度も日本の危機を救ってくれた。
 だからこそ、川島の名誉のためにも強調しておきたい。
 あの失点はあり得ない川島のミスである。
 オアーに対し、内田はしっかりと正対していた。だから、質の高いクロスが来るリスクは全くなかった。だから、ややファーサイドに位置取りしてジャンプすればそれでよかった。それなのに、あんなにニアサイドに立ってしまっていては。
 何と言う不条理、This is football! を超越した世界。しかし、冒頭で「愉しみではあるが、微妙な想い」と述べたように、ここまでの不条理を味わえたにもかかわらず、絶望ではない現況。いったい、「俺はどうすればよいのだ」と、精神は混乱した。

 いや、やる事は決まっている。応援するのだ。

 しかし、日本は攻めあぐむ。ザッケローニ氏の采配もよくなかった。内田に代えてハーフナー、岡崎に代えて清武を、時間差で投入するがほとんど機能しない。もうあの時間帯なのだから、スクランブル。交代は同時に行うべきだったろう。
 それでも本田はさすがだった。強引に持ちこんでシュートを狙ったのだ。これをもっと早い時間帯から、やって欲しかったのだが、まあいいや。そして獲得したコーナキック。ショートコーナを受けた本田、そして…

 混乱した精神、眼前に英雄として君臨する若き英雄。熱狂とか興奮とか感動とかとは、全く異なる、複雑で不安定な想いに浸っていた。こんな想いは齢52歳で初めての事だった。
 しかし、それはほんの一瞬だった。憲剛の全力疾走を見た時、すべては爆発した。

 ワールドカップだ!

 競技場を出ると、奇特な友人が冷たい生ビールを準備してくれていた。最高の乾杯。豪州サポータを含めた歓喜の輪。
 また新しい体験をする事ができた。やはり、サッカーは最高だ。長谷部とニールの仲間達に多謝。そして、乾杯。
posted by 武藤文雄 at 12:11| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月04日

ホーム豪州戦2013前夜

 我々は「圧倒的に強い」と言う地位に慣れていないのだ。
 川島と長谷部の直接失点に結びついたミス。
 開始早々の川島のパンチミス。とても残念なものだった。ブレ球のいやらしいシュートだったのは間違いないが、助走段階からそのようなシュートが飛んで来るのは明らかだった。とすれば、不用意に左右に動いてはいけないのに、慌ててステップを切ったために、逆をとられる形になったのだから、言い訳の余地はない。
 長谷部の自殺点。これまた考えられないミス。左サイドからクロスが上がる状況、マーク相手と自陣方向に走り込んだ訳ではない。それなのに、なぜ身体を完全に自陣に向けて入って行ったのだろうか。身体を左サイドに向けながら入れば、突然にボールが流れて来てもクリアできたはずだ。身体の向きと相互の距離感の細かな修正を、丁寧に繰り返すのが日本サッカーの妙味。それを肝心の場面で、代表の主将がやれなかったのは、あまりに残念だった。
 格段の集中力、豊富な経験、抜群の戦う力。川島と長谷部はサッカーの全てを持っている。しかし、どうしてこんな凡庸なプレイを見せてしまったのか。
 南アフリカの好チームを引き継いだザッケローニ氏。アルゼンチンに勝利し、アジアカップを堂々と制し、韓国に完勝、ワールドカップ最終予選もすばらしい出足と、ここまで順調にチームを立ち上げて来た。気がついてみると、我々は圧倒的な立場にいる。だからこそ、選手達はその地位を守り、かつ高めると言う難しい立場を要求されている。
 先日のヨルダン戦にせよ、このブルガリア戦にせよ、そこのバランス確保に苦闘しているように見えるのだ。いずれの試合も大事に行こうとし過ぎて、肝心の場面であり得ないようなミスをしてしまっている。強豪になるための壁なのだ。だからこそ、この壁に当たったタイミングで、宿敵豪州をホームに迎える事ができる幸運を噛み締めたい。何も遠慮はいらない難敵だ。大事に戦うのは当然だが、それ以上に格段の戦う気持ちが必要な相手だ。
 この豪州戦は、後日「日本代表が完全に化けた試合」と記憶される事になるのだ。

 悔しいブルガリア戦だが、よい予兆もあった。特に、終盤冷静に攻撃を継続できた事はよかった。結果は出なかったけれど。
 たとえばヨルダン戦の終盤は、ヨルダンの疲労は明らかなのに、何かしら集中に欠ける戦い方で、よい攻撃が継続しなかった。確かに遠藤がPKを外したあたりから「たまに負けるのも強いチームの責務」と言う雰囲気が漂ってしまっていた。
 しかしこのブルガリア戦は、遠藤と憲剛を軸に終盤まで、丁寧な攻撃を継続する事ができた。2点差だったために、ブルガリアの守備陣が冷静さを最後まで保ったために崩し切れなかった。けれども、1点差のプレッシャがあたならば、同点に追いつけた可能性は低くなかった。岡崎なり本田がいて、勝負どころで無理な勝負を仕掛ければ、この丁寧な攻撃はもっと効果的だったろう。あの終盤の冷静な攻撃は、よい意味での経験の賜物なのだ。
 いや、何の事はない、ヨルダン戦の終盤(たとえば遠藤がPK失敗した直後)に、憲剛を使えばよかったのだ。将来のためのやせ我慢を否定はしないけれど。

 3-4-3と言うやり方は、香川を活かすと言う意味ではおもしろい。最前線の両翼に張る形となった香川と乾は、日本がボールを奪われても(前線でのチェックを仕掛けるのは義務で当然だが)、敵の中盤選手が前線に張り出すのを最後尾まで追う頻度は少なくなる。そうなれば、香川は常に敵ゴールに近いところからプレイを開始できるから、純粋に敵への脅威となり得る。それに加えて、経験豊富な今野と駒野が形成する左サイドは絶妙。知的でタフなサイドができる選手を2枚縦並びさせられるのも、このやり方の妙味だと再認識した。
 しかし、吉田麻也は酷かった。不思議に中央に絞り過ぎ、内田の後方をスカスカにするのだから。内田がイライラを隠しきれない仕草で、吉田に対し「いいから、お前は右後方に入れ!」と幾度も指示するのには笑えた。笑ってよいのかはさておき。ザッケローニ氏も腹を立てたのだろう。前半で麻也も内田も交代させてしまった。
 内田は心臓に毛がはえているのは周知の事実だ。そして、この豪州戦、麻也が平然としたプレイをしてくれれば、彼もまた度胸満点の事が証明される。2人とも欧州のトップチームで、当たり前のように中核を
担っている。たった1試合の不首尾など、気にもしないだろう。そして、前半で交代させられた屈辱を、豪州相手に晴らしてくれればそれでよいのだ。

 豪州にとって悩ましい試合だ。
 何のかの言って、日本を除く4カ国の中では、豪州が一番有利だろう。現状は勝ち点6、もし日本に負けたとしても、ホームでヨルダン、イラクに連勝すれば、ほぼ2位になる権利を獲得できるからだ。けれども、日本から引き分けの勝ち点1を獲得できれば、豪州はさらに格段に有利な地位を確保できる。たとえば、2位争いが豪州とヨルダンとの一騎打ちになった場合、ホームとは言え、ヨルダン(現勝ち点7)に引き分けに持ち込まれるリスクは低くない。その場合、日本に負けていると、豪州はヨルダンに追いつく事ができない。だから、豪州にとって、この日本戦は「勝てば嬉しいが、引き分けでも上々」と言う試合なのだ。また詳細は省くが、もし日本に2点差以上で負けたりすると、状況によってはオマーンやイラクの後塵を拝する可能性もあるのだし。
 そう考えたときに、豪州は強引に攻めかけて来るだろうか。もし、前線に人数を賭けて多数の選手を前線に繰り出せば、得点の可能性も増えるが、失点の可能性はより高まる。また、先に失点し、無理をしたばかりに、2点差以上で負ける可能性も低くない。つまり、豪州は守備的に「引き分けでOK」と言う試合を狙って来るのではないかと思うのだが。

 ブルガリアは強かったし、当方の体調も豪州戦に向けて今一歩のようだった。これはあくまでのも準備試合だし、負けた事は仕方がない。よくなかった事も多々あったが、よかった事も少なくなかった。
 とは言え、「負け」と言う結果を前にすると、何とも勢いが出ない事おびただしい。もっとも、過去40年を思い起こすと、勢いがでない期間の方がずっと長かったのは言うまでもないのだが。ワールドカップ予選で、イタリアと互角近くに戦い、チェコとデンマークを圧している国をホームに迎え、苦闘しただけに過ぎない。ただし、我々の目標であるワールドカップ上位進出のためには、このレベルの相手にしっかり勝つ事が必須なのだけれども。3年前の南アフリカでそれに成功したように。
 だからこそ、豪州にはしっかりと勝利して、気持よく出場を決めなければならないのだ。
posted by 武藤文雄 at 02:30| Comment(62) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月28日

すばらしい試合だった

 悔しい。

 日本の戦い方は、実に理に叶っていた。
 予想通り、引き気味に戦ってくるヨルダンに対し、前線から組織的なプレスをかけ、中盤でボールを奪う。そこから、香川と清武の個人技、岡崎の突破、前田のキープで、鋭い速攻を仕掛ける。グラウンドは相当悪かったようだが、これは日本に幸いした。ヨルダンは、単純に蹴っては崩せない事がわかっているので、短くつなごうとする事が多く、結果僅かなコントロールミスが目立ち、中盤で日本に簡単にボールを奪われる場面が目立った。
 日本は守備も堅実だった。最終ラインの4人とドイスボランチは常に最低4人は残り、最前線の前田を含め帰陣も早く、隙を作らない。ヨルダンも定石通り、後方を厚くしているので、最終ラインで常に数的優位を確保できていた。
 無失点で終わればワールドカップ出場。このように堅実で慎重な戦いを続ければ、戦闘能力差を活かして90分間で1つか2つゴールも奪えるだろう。目標に向けて、最も適切な戦いぶりを選択したように思えた。実際、開始早々に清武が左サイドを完全に突破し、決定機を演出。以降も、日本は相当回数の好機、決定機を掴む事に成功していた。

 ところが、15分過ぎにヨルダンに決定機を提供してしまう。中盤でドリブルで進出してくる敵MFに対し、長谷部が簡単に抜かれ、バイタルに持ち込まれる。それでも、十分に守備ラインに人数が揃っているにもかかわらず、内田が簡単に縦突破を許し、角度のない所からシュートを許すが、川島が好セーブで事なきを得る。慎重に戦おうとし過ぎて、そして不用意なファウルを取られる事を怖れて、結果的に非常に淡白な対応になってしまったのだ。主審はイラン人との事だが、非常に公平に笛を吹いてくれていた。もっともっと厳しい当たりを見せても、何も問題なかったのだ。
 攻撃も慎重過ぎるのが気になった。4分過ぎあたりか、香川とのワンツーで左サイドから抜け出した清武、GKと1対1になりながら、シュートを選択せずにプルバックを選択、香川のシュートは敵DFにブロックされてしまった。売り出し中の若手攻撃選手が、あそこで得点を狙わずしてどうすると言うのだ。
 そして、以降も煮え切らない展開が続く。前田も岡崎も香川も好調、清武と酒井高徳は、執拗に手変え品変え左サイドから突破を図ったが、肝心の得点への意識がどうにも希薄に思えたのだ。持ち出す選手が強引にシュートを狙いに行くとか、少々不正確でも低いクロスを(一番得点が期待できる)岡崎に強引に合わせるとか、少し無理をする方がよいと思ったのだが。先制を許したCKも、吉田、内田、長谷部の3人が、敵FW2人に対しているにもかかわらず、思い切りよい当たりができずに許したものだった。丁寧に戦おうとするのはよいのだが、攻守ともに慎重になり過ぎていたのだ。

 後半立ち上がり、失望は継続する。失点した事で積極性が出る事を期待したのだが、相変わらず前田も香川もシュートが遅い。そして、そうこうしているうちに、あの何とも味わい深い2点目の失点場面を迎えた訳だ。今思えば、この時間帯の戦い方をあやまった事が、勝敗の分岐点になったのかなと。
 さすがに2点差となり、各選手ともスイッチが入った。しかし、攻め切れず。遠藤のPK失敗と言う、非常に珍しい事件もあり、追撃は1点に終わり、ワールドカップ出場はお預けになってしまった。 

 もちろん、文句を言えばいくらでも言える。中でも、若手の清武、酒井高徳をスタメンで起用し、結果的に憲剛、駒野と言う経験豊富な2人をほとんど使わなかったのは、終わって見るととても残念だ。特に、終盤まで清武を引っ張った意味はよくわからなかった。けれども、ザッケローニ氏のこの采配、先を考えると全否定もできない。4年前に、岡田氏は、まだまだひよっ子だった本田、香川、岡崎、内田、長友らを次々に起用し、その結果、今一歩の試合を見せられた事は少なくなかった。しかし、その抜擢が今日を作った。同じ事だ。清武や酒井を、今試さないで、いつ試すのだと。しかも、2人ともブンデスリーガで定位置を確保しているのだし。

 バランスと言うものは難しいものだとも改めて感じる試合だった。積極性に欠けた事が敗因だったとは思うが、一方で難しい敵地の試合を慎重に戦い、1点か2点とって丁寧に勝ちに行くのはセオリーと言えばセオリー。冒頭にも述べたが、日本の戦い方は間違っていなかったのだ。ただしそこで、遠藤のPK失敗と、麻也のあり得ない対応と2つ滅多にない珍事が起こってしまったのだ。長い日本サッカーの歴史においても、遠藤以上に修羅場をくぐってきた選手はいない。麻也にしても、日頃はプレミアリーグでワールドクラスの選手と丁々発止を演じているのだ。2つとも、手痛いミスだったが、やはり仕方がないとしか言いようがないではないか。
 改めてサッカーの奥深さを学べる、すばらしい試合だったのだ。

 悔しい。
 先日、南京に行った。来週、ソウルに行く。友人からヨルダン行きを誘われた際に、私は全く迷わず断った。私は間違えていた。こんな悔しい快感を、味わえたのだ。現地に行くべきだった。そう言う意味でも、二重に悔しい。
posted by 武藤文雄 at 01:27| Comment(7) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする