2009年12月25日

倉又寿雄対森山佳郎

 このままでよいのかどうなのか、幾多の議論はあるものの、明後日はクラブユースの最高峰を決める決勝戦が行われる。育成年代で相応の成果を挙げているFC東京対サンフレッチェ、非常に興味深い戦いとなる事だろう。両軍の若者の奮闘を期待したい。
 で、今日のお題は、その本質とは全く関係なく、双方の監督が「典型的なファイタータイプ」のサイドバックだった事について。

 倉又寿雄が所属していた日本鋼管(NKK)は、70年代までは、JSLにおいては必ずしも強豪とは言えなかった。しかし、81ー82年シーズンには大ベテランの藤島信雄を軸に、冷静に中盤後方を固める田中孝司や巨漢CF松浦敏夫らを擁し、天皇杯を制覇したあたりから、次第にJSLでも上位を伺う存在となる。倉又は当時から「闘えるサイドバック」として、チームの中軸を担っていた。そして、80年代半ばから、強烈な左足シュートを持つ藤代信世、中盤で才気あふれる組み立てができる及川浩二などの前線のタレントが登場、後方は代表でも活躍したGK松井清隆、CB中本邦治と言った超一級品の守備者がそろい、JSLでも上位に進出するようになった。その頃には倉又は、主将としてチームを引き締める存在となっていた。
 必ずしも体躯に恵まれなかったものの、典型的なファイタータイプのサイドバックだった倉又だが、一方で非常に知的な守備を見せ、チームに貢献。日本のトップレベルのチームで最初に3DFの守備ラインを作り上げたのは当時のNKKだったが、その守備ライン構築に倉又の献身的で巧みな位置取りは、非常に重要な存在として機能した。私は倉又のファイトあふれる、そして知的なプレイを見るのが大好きだった。
 所属していたNKKが本格的なサッカー強化を取りやめた直後から、倉又氏はFC東京のコーチングスタッフに加わり、多くの経歴を大熊、原と言ったコーチの補佐に費やして来た。一時トップチームが苦戦した際にトップの監督を務めた事もあるが、その後は若年層の指導に専念。典型的な「育てる指導者」として経歴を積んで来たプロ中のプロである。

 森山佳郎はJ黎明期のサンフレッチェのサイドバック。ファルカン氏時代には代表のレギュラにも抜擢された。筑波大時代は井原正巳や中山雅史の同級生。井原が「森山は成績で大学に入って来たから...代表で一緒にやれるとは...本当に嬉しい...」と語った存在だった。サンフレッチェに加入した以降の森山はいわゆる「吠える」プレイヤ。好プレイを見せた試合後のインタビューでの「吠え方」は愉しかったな。
 当時の監督バクスター氏が、「森山が代表に呼ばれた」と聞いて、「森保の間違いだろう」と言い返したのは秘密だ(おお、森保ジュニアが森山配下で闘うのだな)。もちろん、森保一、風間八宏、高木琢也、盧廷潤、ハーシェクらがすばらしかった当時のサンフレッチェの想い出と共にだが。
 森山のプレイで何が見ていて気持ちよかったかと言うと、一歩目の前進意欲。「ボールが奪える」と決心した際の猟犬のような飛び出しの良さが絶品だった。その飛び出しが外れる事が滅多になかったのが、魅力だった。
 バクスター氏がチームを離れた以降は出場機会が減り、いくつかのクラブを転々として引退。そこで、将来の指導者としてあの今西和男氏に誘われサンフレッチェに復帰し、以降若年層の指導に携わって来た。サンフレッチェユースでの実績は今さら繰り返す必要もなかろう。

 執拗にこの2人を並列して論じたかった事を理解いただけただろうか。この2人は知的だったのだ。ファイターだったのだ。そのような共通の印象を持たせてくれた、「見て愉しい」サイドバックが指導者となった。そして、多くの実績を重ねて来た。
 愉しみな対決である。もちろん、勝負は明後日では決まらない。15年後くらいに、この2人のすばらしいサイドバックの指導者としての成果の勝負を語る事を愉しみにしたい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月07日

「個」と言う単語の使い方

 昨年末に10大ニュースをまとめた。複数の友人から、そのうちの
3.ワールドユース出場失敗
 大変残念。しかし、ここまでの連続出場そのものが見事だったのであり、負けた事は仕方がない。ワールドカップ予選に負けた訳でもないのだし。重要な事はいかに反省し次に備えるかであろう。
 心配なのは、日本協会の強化筋から「強烈な反省」が聞こえてこない事。たまたま昨日の読売新聞に布氏の発言が掲載されていた(高校サッカー展望を兼ねて)が、相変わらず「日本は個が弱い」と言う抽象的内容。だいたい、A代表を見ていても、他のアジア諸国に中澤、遠藤、中村俊輔より「個」が優れた選手には、ほとんどお目にかかれないのだが、具体的に「日本選手の何が『個』で劣っているのか」語ってくれないものか。
について、「『個』の議論について、もう少し詳しく語れ」と突っ込まれた。今日はそのあたりの講釈を。
 以降は布氏に対するイヤミの羅列になる。ただし誤解されては困るが、私は布氏を尊敬しているし、過去の業績は素晴らしいものがあると評価しているし、今後も氏は日本サッカー強化に相当な貢献をしてくれると予想し期待している。ただ、新聞の小さなインタビューだが、日本の若年層指導のトップの発言が、「個」と言う単語を不適切に用い誤解を招きかねない事への危惧からのイヤミと理解していただきたい。
 まず布氏が語った原本は、こちら。さらに「個」を語ったところをそっくりと引用させていただく。
 ――11月のU―19(19歳以下)アジア選手権で、日本はU―20W杯の出場権を8大会ぶりに逃した
 これまでもギリギリの戦いだったが、敗退で日本全体が抱える課題が明らかになった。組織力を長所としてきたが、北朝鮮、韓国、中国などは同等の組織力がある。中堅も確実にレベルアップした。もう組織力は日本の強みではない。
 これからは「個」を伸ばさないと対抗できない。ボールを持った「オン」の動き、「オフ」の両方が必要。「利き足は上手でも、逆の足は駄目」「攻撃は好きでも守備はできない」など片面だけでは通用しない。
 ――「個」を伸ばすために必要な試みとは
 小学生年代からの積み上げだ。小学生で身のこなしと技術、中学年代でボールを使いながらの持久力。高校年代では技術のスピードや質を磨く。特にスピードの爆発力を高めることが大切だ。地域を巻き込んで中学年代から一貫指導することもテーマになる。

 「『個』が劣る」事について、上記の布氏の発言を素直に理解するのは難しい。文章をそのまま読むと
(1)日本は元々北朝鮮、中国、韓国より元々「個」が劣っていた。
(2)しかし、「組織力」でそれをカバーしていた。
(3)上記3国は、「組織力」が向上し日本に追いついたから、日本は負けた
と言わんばかりの論理攻勢である。
 大体韓国と言う日本、豪州、サウジ、イランらと並ぶアジア最強国と、中国、北朝鮮を同列に議論している乱暴さが無茶苦茶だ。両国とも、アジアのトップとはとてもではないが言えない国だ。韓国人の方がこれを読んだら「失礼な」と激怒するか、「しめしめ日本の若年層指導者はサッカーを理解していないな」と思う事だろう。
 実際、中国、北朝鮮と比べ、選手の「個人能力」で劣った試合など、少なくとも私はいずれの年齢層でもここ15年間見た事がない。もちろん、両国の選手が(特に若年層の大会で)肉体能力面で日本の選手よりも優れていた事はある(それでも、判断力や技巧では常に当方が圧倒していた)。さらに、大人になり当方の選手がフィジカルでも負けなくなると、両国を圧倒するのが常だった(ただし最近北朝鮮は、在日挑戦人選手を含め判断のよいタレントが結構出てきており苦戦をする事例はあるが)。
 さらに言えば今回敗北したユースチームは、ワールドジュニアユースに出場した年代であり、当時の予選、本戦での奮闘振りを見る限り、その時点で格段に「個人能力」が劣っていたとは思えない。
 あくまでも想像だが、布氏は、「個」と言う単語を「肉体能力(フィジカル面)」と「欠点の無さ」と言う意味で使っているのではないか。これならば、氏の話は非常に論理的に理解できる。つまり「アジアの若年層の大会で、従来フィジカル面で劣勢だったが、組織力で他国を圧する事ができた。他国がその面で追いついてきたから負けた。」「その対策のためには、できるだけ多くの選手を一環指導で育成し、早い段階で肉体的にも他国に負けず、欠点の少ない選手を育成すべき。」と言いたいのではないか。これならば、理屈が通った分析になる(それが的を射ているかどうかにも異論はあるが、それは今日の本題ではない)。ね、そうですよね、布さん、某国のように、「でかくて足が速くて、ボールではなくて相手を蹴る選手」を理想にしている訳ではないですよね。

 しかし、一般の日本人にとって「個」とはそのような意味で使われる単語だろうか。私にはそうは思えない。一般的にはサッカー選手としての「個人能力」、具体的には技巧や判断力などを含めた総合能力(もちろん「肉体能力」も「欠点の無さ」も含まれるだろうが)を指すのではないか。さらには、他の選手より秀でた特長と言う意味が加わるだろうか。たとえば、「マンチェスター・ユナイテッドの選手とガンバの選手では『個』に差があった」ならばしっくりくるけれども。影響力の大きい人だけに、言葉の選択には慎重になって欲しい。
 いや、サッカーで薀蓄を垂れる私のような野次馬も、言葉の選択には神経を使うべきだな、自戒として。

 もっとも、布氏は「個」と言う単語を特殊に用いているだけでまだ罪は少ないように思う。氏の上司は別な大会の総括で、おそらく私と同じ意味で「個」と言う単語を用いていた。このような分析にもなっていない言い訳は見苦しいだけだが。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(8) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月15日

クラブユースと高等学校

(追記 2009年1月19日)
 多数のコメントありがとうございます。
 コメント欄でmasuda氏が指摘されたように、私に事実誤認がありました。プリンスリーグ、高円宮杯では高等学校の生徒でなくても出場できますね。
 反論を読ませていただいても、私の意見は変わりません。詳細については別に述べようと思いますので、しばしお待ち下さい。

>>>>>>>>>>>>>

 高校選手権が行われる季節になると、毎年クラブチーム(特にJクラブユース)と高等学校の強化面での比較が議論される事になる。どちらが強い、どちらが強化に適切か、過去に比べてレベルが低い、将来性を考えると云々等々。まあ、若年層の大会と言うものは「その時点での完成」とは異なった函数で評価されるべき部分もあるから、色々な議論が可能。これらの議論は、直接強化を担当されている日本協会関係者にはとても重要だろうし、我々野次馬にも格好の酒の肴。肴をしゃぶりながら、大迫や中西のこれからを愉しみに思うのは悪くない。
 考えてみれば、3年前にも2年前にも似たような講釈を垂れたのだが、今年風の武藤版肴のしゃぶり方を。

 ここ数年のJクラブユースが絡む大会、高円宮杯、Jユースカップなど、の充実振りは大したものだと思う。大会への注目も高まっているし、権威も上がってきた。ただし、これら一連の大会でJクラブユースが活躍すればするほど、疑問も覚えてくるのだ。「これじゃあ、高等学校の大会と同じじゃないか」と。何故ならば、両者とも、学齢で高校3年生までの選手同士が試合をしているからだ。
 もちろん、Jクラブユースには高等学校にないメリットがある。それは飛び級だ。最近ではガンバの宇佐美が話題になっているが、過去も山口、稲本、市川、阿部ら多くの選手が高校在籍時にJデビューしているし、森本に至っては中学生時点でデビューしている。これは学校チームでは不可能な事で、鹿児島育英館中学校の選手は鹿児島城西高校の公式戦に出られないし、流経大柏高校の選手は流通経済大学の公式戦には出られない。これはJクラブユースの大きなメリットだ。そして、この「飛び級」を含め日本のトップクラブ、日本いや世界のトップを目指そうとする優秀な素材がこちらを選択する大きな理由の1つになっているのだろう。
 しかし、サッカー的に見れば、飛び級以外には学齢の上限が同じなので、高等学校のチームとJクラブユースと決定的に違いはない。Jクラブユース選手にしても、残念ながら「飛び級」の機会に恵まれる選手は限られており、多くの選手は同年代との試合に終始するのだし。

 と考えれば、「高等学校だけの大会」、「クラブだけの大会」が分離されている事そのものがもったいないではないか。高校選手権のように、これだけ盛大に行われる(投資もされている)壮大なトーナメント戦にクラブチームが参加できないのは、やはりサッカー的見地からは見世物としても強化の件からも面白くない。比較的近い次期にクラブチーム独自の大会が行われている訳だが、(あくまでもサッカー的な見地からは)「一緒にやればいいじゃないか」と言いたくなる。「双方が戦う大会はプリンスリーグや高円宮がある」ではなく「双方が戦う大会はプリンスリーグや高円宮しかない」と考えるのが、サッカー的発想と言うものだ。
 もし、「分離した大会があった方がいい」と「サッカーの都合」での反論があれば聞かせて欲しい。誤解されては困るが「高等学校の方が強化、育成の方が適切」とか「色々な強化手段があるべき」が反論にならないのは言うまでもない。多様な強化ルートがある方がよいに決まっているが、切磋琢磨の機会は統合されるべきと言っているのだ。高等学校、Jクラブユース、さらには一般のクラブまでが混在した大会は、テレビ局が相互対立を煽るにも格好ではないか。
 たとえば、J1がいる都道府県から複数チーム出られる事にでもして64チーム出場。ついでにグループリーグ方式にして、優勝まで最高8試合消化と言う大会にしても、冬休み直後から始めれば何とかなりそうではないか。

 と考えていたら、もっと違う事を考え付いたのでそれは後日。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(22) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月12日

大迫勇也への期待

 実は新年早々、本業都合で隣のサッカー弱小国に滞在しており、この週末に帰国した次第。結果的に高校選手権は、序盤の幾試合をと今日の決勝をTV観戦したのみとなった。
 で、決勝戦。大迫勇也は、なるほど中々のストライカ振り。先制点、ペナルティエリアの中であれだけの敵DFに囲まれて、細かく修正を繰り返してシュートに持ち込んでしまった。何と言うボディバランスだろうか。2点目では、大迫がボールを持つだけで、位置取りのバランスのよい広島皆実の守備がズレてしまった。ここまでの試合の得点振りを含め、とにかくペナルティエリア近くで前を向くだけで、大変な脅威となる。これは「逸材」と呼んで間違いないだろう
 しかし言い換えれば、守る方としては「大迫がペナルティエリア近くで前を向く」状況を作らなければよい事になる。皆実は3点目で突き放した以降、見事な組織守備でこれに成功した。これ以降、大迫が低いボールをしっかり収める事ができた場面は、左サイドからドリブルシュートを狙いGKに候補された1回だけだった。終盤、うまくつなげなくなった鹿児島城西の後方の選手達は、皆実の注文にはまりロングボールを蹴り続け、大迫に的確なボールを提供できずタイムアップを迎えた。
 皆実の試合は、1回戦の帝京戦を見た。(少々厳し過ぎる判定に思えたが)前半にDF崎原が退場になりながらも、整然とした組織守備とカウンタアタックを見せPK戦で振り切った試合だ。その後も、僅か1失点で決勝まで進出した皆実だが、いかにも高校選手権で上位に残るチームらしい組織守備がいいチームだった。他のチームがやろうとしてできなかった「大迫によい体勢で持たせない」事に、ほとんど成功したのだから、日本一の資格は十分と言えるだろう。
 一方で、ここまで猛威を振るい、見事なボディバランスを見せた大迫への期待は大きい。現状のレベルではボディバランスの良さで持ち出せてしまうが、より厳しいJの守備者を相手にした際に、自分の得意なシュートポイントにボールを止める事ができるかどうかが鍵になると思う。愉しみな逸材だ。

 サポティスタ経由で発見したのだが、高校選手権の得点王があまり大成していないと言う論評がある。平成になって以降20年間の大会の得点王をリストにしてくれたものだ。これは中々面白い視点だと思う。過去を振り返り個人的にも、西田、吉原、北嶋、林、大久保、そして平山には、結構な期待をした事を思い出した。いや、昨年の大前も忘れ難いタレントだ。彼らの「的中率」が高いのか、低いのかは何とも言い難い。大久保まで行けば、多くの方が合格点をつけるだろうが(この男には別な意味での不満山積なのだが、とにかくドイツで頑張れ、期待してるぞ)、吉原や林の実績をどう評価するかは微妙なところかもしれない。
 ただ、代表に完全に定着するレベルの選手は、せいぜい1学年で数人と言う事を考えると、こんなものではないかと言う気もしてくる。だいたいトーナメントの全国選手権で得点王になるためには、本人の実力と運に加え、チームメートにも、(監督を含めた指導陣にも)恵まれる必要もある。ただでさえ、代表に定着するストライカが少ないのが悩みの我が国にあって、1年間に数人の「本当の逸材」が、前線のポジションの選手で、トーナメント方式の大会の得点王まで取ってしまう確率は低くてもおかしくはなかろう。このようなトーナメントの連戦では、必ずしも「抜群の素質の選手」を抱えているチームが勝ち抜くとは限らないのだし。
 ただし、将来大成し代表に定着したようなストライカは、得点王に至らずとも高校時代から高名だった事例は多いのも確か。釜本、松永、永井、碓井、水沼、武田、中山、柳沢あたりは、高校選手権でも「スーパー」だった。また、奥寺、柱谷兄、福田、高木、西澤、高原、玉田、田中達也のようにそれなりにユース時代に知られながらも選手権運に恵まれなかったタレント、一方で松浦、原、鈴木、久保、巻のようにユース時点ではほとんど目立たなかったタレントもいる。言い換えれば、この時点では「何もわからない」のだ(戸塚、カズ、寿人のように「選手権とは別ルート」を歩んだタレントもいる、これらの「別ルート」のタレント数が多いか少ないかは別な議論として)。
 とは言え、上記の高校選手権で「スーパー」だったタレント達を見れば、私はやはり大迫には期待したくなる。優秀なストライカの素材ならば、高校選手権でボカスカ点を取って悪い事はないのだ。

 むしろ、「大迫大丈夫か」議論は、
(1)テレビ局をはじめとするマスコミがキンキンと過剰に大騒ぎする事
(2)誰もが「これはイケル!」と期待した平山の伸び悩み
(3)クラブユースなどとの比較から、高校選手権そのもの地盤低下
などが錯綜しているのかもしれない。それぞれは、個別に議論すべき事だと思うので、別途機会を見て。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(5) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月27日

不愉快の弁を繰り返す

 さすがにいくら激怒していても、酒を飲んで、寝て、シゴトをして、寒い中閑散とした競技場で意味不明の試合(よい試合だったけれど)を観れば、少しは落ち着こうと言うもの。改めて、あの思い出しくもない無様な試合を反芻してみたい(何か矛盾している日本語だな)。

 試合直後に激怒したが、直接的な敗因は川口と阿部のミスである。どのような選手にもミスはある。ジョホールバルでは井原のトラップミスから同点に追いつかれた。試合の重要さでは、格段にジョホールバルの方が上だった。しかし、昨日の川口と阿部には腹が立つが、当時井原には腹が立たなかった。否定しないが、私は井原が大好きだった。けれど、川口も阿部も十分好きな選手のはずだ、井原ほどじゃあないけれど。そうなると、この温度差は好みの深さの違いだろうか。
 ただし、ちょっと違う印象もあるのだ。過去、幾度川口のおバカに悩まされた事か。上記のジョホールバル、2失点とも川口の責任は小さくなかった。ドイツ予選の埼玉北朝鮮戦の失点も川口の「決めつけ」による失点だった。そして、ドイツでの豪州戦...しかし、それらの川口おバカは「何か許せる」思いがあった。しかし、昨日のおバカを許せない自分がいるのだ。
 おそらく、昨日のチーム全体のぬるい雰囲気がどうにも嫌なのだからだと思う。
 
 と言う事で間接的敗因に移ろう。

 序盤はむしろ日本ペース。啓太や憲剛が中盤で再三インタセプトに成功し、速攻を仕掛ける。また、阿部と今野の出足もよく、敵攻撃陣にシゴトをさせない。サイドで再三数的優位を作り、駒野と安田の両翼からよい攻め込みを見せる。バーレーンの中央が強いため、簡単には崩せないが、悪くない立ち上がりだった。
 ところが前半半ばくらいか。A・フバイルの執拗なキープに今野が我慢できずファウルで止めた場面があった。A・フバイルは典型的な天才肌のストライカで、「ここまで粘ってくるとは」と驚いた場面だった。一方で今野は我々が誇る知的労働者。敵の天才に、当方の知的労働者が根負けするのは、非常にイヤな予感がした。
 そして、そのFKあたりからバーレーンペースに移る。全員が執拗なフォアチェック。思わず日本は余裕のない縦パスで逃げる。溜めも仕掛けもないロングボールばかりでは、いくら巻でも勝てない。簡単に跳ね返され、2トップにつながれ、またファウルで止める。と、悪循環が継続した。
 ここでの問題はやはり憲剛である。押し込まれてバタバタしている時こそ、中盤の将軍はチームを落ち着けなければならない。しかし、遠藤と言うパートナ不在(たしかにJ開幕後の調子は最悪と言っても過言ではない程だったので、思い切って外したのだろう)、部下の知的労働者達は余裕なし、と言う状況では憲剛も落ち着かないプレイを重ねるばかりだった。
 だからと言って、各選手がああも注文相撲にはまって蹴りあいをするのはいかがなものか。遠藤がいないと、自律判断で展開できる選手はいないのかと言う酷い惨状だった。
 また(ミラン・マチャラ氏の指示だと思うが)、DFなり後方の選手が強引にドリブルで前進しミドルシュートを狙ってくるのは、嫌らしかった。たしかに、日本のDFは瞬発力の差を恐れるあまり、ディレイし過ぎて敵に切れ込まれる傾向がある。言い換えれば、全員のフォアチェックと後方の選手のドリブルシュート、この2つのみがマチャラ氏が仕掛けた策だったのだ。
 もっとも、前半に敵の体力に任せたプレスに苦戦するのは、アジアのチームに対してはよくある話。後半になるとすっかり敵が消耗し、日本ペースでの試合となるのは、過去いくらでも経験している。思わしくなかった前半を0−0で終えたのは、ある意味では日本の計算通りとも言えなくもなかった。

 しかし、後半立ち上がりにバーレーンの猛攻を食らう。相当無理な走りをしているバーレーンが、この時間帯仕掛けてくるは明確なのだが、その注文相撲に安易にはまるのが相当不愉快だった。たまらず、岡田氏は遠藤を起用。そのあたりから、バーレーン選手の疲労も顕著になり、以降は敵に好機を与える機会はほとんどなくなった。
 予想通り後半半ば以降は、バーレーン選手の疲労は顕著に。敵に次々と足がつる選手が出始め、いよいよ日本ペースになる展開になった。しかし、敵の攻撃が完全に停滞してしまったこの時間帯、日本もそれに合わせたかのように、停滞してしまった。後半半ばまでの展開も残念だったが、この時間帯の仕掛けの停滞には本当に失望した。
 そして、運命の失点場面へ。取られた時間帯が最悪だった。もっと早い時間帯だったら、まだ逆襲の時間が残されていたのだが。

 前半にズルズルと敵ペースに持ち込まれたのは、選手全体の能力不足と言う事だろうか。不振の遠藤不在が、それを際立たせてしまった。
 そして遠藤投入以降の、敵疲労状況にも関わらずのグダグダ。上記したこの日の間接的敗因。これは前半の不出来とは質が違う。想像だが、バーレーンの選手達の疲労が顕著になり、悩んでいたフォアチェックがなくなってきた時に、「よし、これで勝てる」と安易に思ってしまったのではないか。そして、「戦う気持ち」もそのままどこかに忘れてしまったようだった。

 結論から言えば、岡田氏のチーム全体のコントロールが、巧くいかなかったと言う試合だった。もしかしたら、あの無様な失点をした瞬間に、岡田氏を含めた選手達は目を覚ましたのかもしれない。6月の4連戦は厳しい日程にはなるが、それはいずれの国も同じ事。重要な事は今回の反省を活かした次への準備だろう。そう思わなければやりきれないと言う事もあるが、「おお、ようやくワールドカップ予選だ」と高揚する気持ちもある事も確か。 
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(20) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月15日

藤枝東は局地戦でのボールキープを狙えなかったか

 昨日のエントリ
藤枝東の各選手は「蹴り合い」だけは避けようとして、技術でこのプレスをかわし、局面の打開を図ろうとした。ところが、結果的にはこのこだわりが災いした。流通経済大柏の「囲い込み」の餌食となり、再三自陣近くでボールを奪われ速攻を許す事になったからだ。
と述べたところ、かの党首殿より早速
流経のプレスに対抗して裏へ蹴るというのは当然の発想です。でも広島ユースは高円宮杯決勝でそれをやって完敗しました。藤枝東も総体でこれを試して流経に負けたそうです。(中略)藤枝東に厳しいようですが、あれは「こだわり」でなく唯一の選択だったのだろうと思います。
と鋭い指摘をいただいた。
 全くその通りで、「蹴り合い」をしても勝てる可能性は極めて低かったろう。いや、ただでさえ低かった勝つ確率は、より低いものになっていたようにも思える。もちろん、ここまで大差はつかなかった可能性はあるかもしれないけれど。理由は明白で、流通経済大柏の4DFと比較して藤枝東攻撃陣の脚力が優れているとは言えないから、「蹴り合い」に持ち込んでしまうと、得点の確率は一層下がっただろうから。たとえば、藤枝東高時代の中山雅史とか山田暢久とか「強さ」も武器にした攻撃タレントがいれば状況は違っただろうが。
 そう考えれば、「蹴り合い」を避けて、リスクを負いながら長所の技巧を活かそうとする勝負に出て、その賭けに敗れたとも言えるだろう。

 では藤枝東はどうすればよかったのか。
 もう1つ別な手段はあったと思うのだ。それは、ボール扱いの良さを守備に活かし、局所戦に持ち込み、流通経済大柏の時間を少しでも短くする事だ。藤枝東は、流通経済大柏の厳しいプレスと強い守備にも関わらず、マイボールになる度に毎回敵陣まで攻め切ろうとした。そして、そのために数的優位を確保するために、速くボールを回すなり、ドリブルを仕掛けるなりして、中盤を抜け出そうとした。流通経済大柏のプレスが厳しかったため、最終的に中盤で1対2あるいは1対3に孤立する事が多くなってしまったが。
 そうではなくて、マイボールになった時に、速く攻める事を放棄して、複数の選手でボールを回し、取られない事に集中する手段があったのではないか。つまりボールを奪ったら、自陣でよいからタッチライン沿いに展開し、そこで3、4人が比較的近い距離に集まり、技巧を活かしてドリブルとパスを併用して、とにかくボールをキープし続けるのだ。当然、流通経済大柏は厳しいプレスで追い掛け回してくるだろうが、1対2や1対3でキープするのは苦しくても、3対3や4対4ならば、あれだけ技術のある選手達だ、キープはできるはずだ。このような数的優位を確保するためには、長い距離の全力疾走は必要ない。集中力を持ち、早い動き出しで短い距離を走ればよい。これならば、肉体能力の差もそうは出ないはずだ。そして我慢を重ねながら、流通経済大柏の守備ラインがずれたら敵陣の裏を狙うも良し、逆サイドのバランスが崩れているならば逆サイドを狙うもよし、河井ならばそのような局面を変えるプレイも可能だったのではないか。
 どうせ我慢する展開になるのだ、自分でボールを保持する事に我慢する事で活路を見出せなかっただろうか。
 現実にこのようなプレイを見せてくれたのが、トヨタカップ2003年のボカだった。くしくも、相手は昨年12月と同じミラン。しかし、先月と異なり、03年はボカは、ひたすら守備的にボールをしっかりと回すサッカーでミラン相手に堂々とした勝負を演じ、最後はPK戦で打ち破った。

 準決勝から決勝まで1週間の時間があった。1週間を通して、守備的なボール回しの準備を行なえば、藤枝東は相当な抵抗ができたのではないかと思う。
 そしてこのやり方は、日本代表が欧州や南米の列強と抵抗する際にも、有力な手段だと思うのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(9) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月14日

流通経済大柏の完勝

 高校選手権決勝、新興の強力チーム流通経済大柏と名門中の名門藤枝東の対決となった。試合前は、高円宮杯を制した制した流通経済大柏がやや優勢なのかなとは思っていたが、藤枝東の準決勝や準々決勝の得点の技巧と着想も中々レベルが高く、拮抗した好ゲームを期待していた。生観戦を計画していたが諸事情で断念、自宅でテレビ観戦となったのだが、どうやら満員札止めだったらしいので、結果的には正しかったのか。
 で、試合内容。流通経済大柏が予想を飛び越えて強く、正に完勝。藤枝東は何もできなかった。準決勝、準々決勝を見る限り、藤枝東も相当強力なチームに思えたのだが、ここまで流通経済大柏が強いとは正直言ってビックリ。

 開始早々から流通経済大柏の強烈なプレスに藤枝東は中盤を全く抜け出せない。最前線からのチェイシングが厳しく、藤枝東の前線へのフィードが精度を欠くため、流通経済大柏の守備網が藤枝東FW陣を圧倒する。そのため藤枝東の中盤は前を向いてプレイができない。
 唯一エースの河井はよくない体勢でボールを受けても、見事な技巧で前を向くが、すぐに2〜3人くらいに絡まれてしまう。それでも河井は鮮やかなフェイントで抜け出しかける事もあったが、そうなると流通経済大柏は迷わずファウルで止める。押し込まれている影響で河井がボールを受ける場所はハーフウェイライン近傍なので、藤枝東はFKを獲得してもあまり有効ではない。
 それでも藤枝東の各選手は「蹴り合い」だけは避けようとして、技術でこのプレスをかわし、局面の打開を図ろうとした。ところが、結果的にはこのこだわりが災いした。流通経済大柏の「囲い込み」の餌食となり、再三自陣近くでボールを奪われ速攻を許す事になったからだ。

 開始早々の先制点は、大前が前向きにペナルティエリア内でボールを受けたところで勝負あり(巧く右サイドを崩して大前にパスを出した主将の名雪だと思ったが、技巧も判断も非常に優れた選手だな)。大前は実に見事なボール扱いで藤枝東DF3人を引き寄せてから、後方に目がついているかのようなマイナスのグラウンダのラストパス。全くフリーで走り込んできた村瀬が冷静にコースを狙って決めた。以降も流通経済大柏のペースで試合は続くが、藤枝東も粘り前半は1−0で終わる。押されていた藤枝東が1点差でハーフタイムを迎える事ができたので、流通経済大柏も攻め疲れがでてくるであろう後半はかなり面白い展開になるのではないかと期待した。
 そして後半開始早々、河井が右サイドから仕掛け、好クロスに藤枝東FWが合わせようとする好機を掴む。期待通り、前半我慢した藤枝東ペースになるのではないかと期待は高まった。しかし、これが、この日藤枝東の最初にして最大の好機になるとは。
 この直後、左サイドをえぐった流通経済大柏の低いクロスを、負傷上がりと言う上條(とても負傷上がりには見えない程よいプレイだった)が持ちこたえ、走り込む大前に正確に流し、大前がアウトサイドで狙いすましたシュート。藤枝東1年生GK木村が見事な反応で防いだが、そのこぼれ球を名雪が拾いセンタリング、逆サイドで待ち構えた大前がダイレクトでニアサイドを抜く一撃を決めた。これで事実上、勝負はお終い。それにしても、大前のゴール前の技術の精度には本当に感心させられる。よくもまあ、あのクロスから正確に低くコースを狙った強いシュートが打てるものだ。
 このあたりからは、流通経済大柏の一方的展開となる。あれだけ押されてしのぎ続けた藤枝東だったのだが、2点差となり精神的にも相当つらくなってしまったのも大きかったろう。原則、速攻を仕掛ける流通経済大柏だが、攻め切れないと判断すると、再三左サイドで数人でボールキープして遅攻を仕掛ける。このボールキープが巧みで、藤枝東はどうしてもボールを奪えない。出足や裏を付く速さのみならず、ボールキープでも藤枝東は劣勢になるとは思いもしなかっただろう。3点めは左サイドバックのえぐりから、上條のつぶれ、フリーの大前、と完璧な崩し。4点目は大前のCKから逆サイドに待機していた交替直後の田口がフリーで決めた。さすがに終盤、流通経済大柏のフォアチェックは緩んできたが、最終ラインの強さは変わらず、藤枝東は好機らしい好機すら掴めなかった。

 エースの大前が終始敵陣近くでよい体勢でボールをもらい続けた流通経済大柏と、エースの河井が敵陣より遥か離れた場所で奮闘を続ける事を余儀なくされた藤枝東。準決勝から1週間日が空いたためか、流通経済大柏各選手の体調が非常によく、あれだけ厳しいプレスを90分近くかけ続ける事ができた事が大きかったのかもしれないが、ここまで大きな差は全く予想していなかった。多くの名選手を育成してきた本田裕一郎氏の経歴での集大成とも言うべき試合だったのではないか。そして、あの藤色のユニフォームのチームがここまで何もできないと言う事に、何とも言えない感慨を持つ試合でもあった。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(3) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月06日

高校選手権準決勝

 ベスト4は流通経大柏、津工業、高川学園、藤枝東。中々バランスの取れた4強と言えるだろう。高円宮杯を制覇した流通経大柏は、タレント豊富なJクラブユースと互角以上の戦闘能力を持つ首都圏の強豪。津工業は古くからのサッカーどころ三重県の代表、名門四日市中央工を下しての出場だが基本的な戦闘能力が高いのだろう。高川学園は、学校の経営問題から名前が変わったが、高松大樹、中山元気、中原貴之らの大型ストライカを輩出し続け、安定した強さを持つ地方の私立高校。そして、松永行、菊川凱夫、山口芳忠、桑原隆、松永章、碓井博行、中村一義最近では中山隊長、山田暢久、長谷部誠らを育んだ名門中の名門の藤枝東。全国にサッカーが普及し、Jクラブに高素材が流出しているため、上位進出チームが予想しづらい高校選手権だが、何となくもっともらしいベスト4が並ぶのが面白い。

 流通経大柏対津工業。流通経大柏は今大会の映像は初見だが、さすがに優勝候補らしく、ここに来て調子を上げてきたのか。エースの大前が爆発すると共に、見事な守備の固さを見せた。敵のクロスに対するDFの堅実な対応、球際に対する強さが素晴らしい。津工業はスキルフルな選手を抱えているが、ここまでの連勝で精神的にも肉体的にも一杯だった感じもあり、単発な攻撃に終始、終盤大差がついてからは守備の粘りもなくなってしまった。
 高円宮杯の時も思ったが、大前のような瞬間的に高速になれて、かつ技巧に優れたストライカは将来が多いに愉しみ。個人的に気に入ったのは4点目(大前自身としては3点目)、ペナルティエリアに敵GKが飛び出した所のこぼれ球を拾って無人の敵陣に蹴り込んだ一発。無人のゴールを狙うと判断した瞬間のトラップが正に完璧だった。このトラップが正確だったからこそ、落ち着いて敵DFをかわす事が可能になり、そのままボールを蹴りこむ事ができた。
 
 一方の高川学園対藤枝東。これは熱戦となった。
 開始早々の藤枝東のビューティフルゴールには恐れ入った。サイドからグラウンダの低い横パスと軽妙なボールタッチの組み合わせで、高川守備陣に僅かなギャップを作り、エースの河井がそのギャップから強烈に決めた。これは凄い得点だ。最後に河井がシュートを狙うまでは、各選手が瞬間瞬間で敵の逆を付く事を狙って高川守備陣を揺さぶる事を狙っていた。逆に言えば、最終的にどのような崩しをするかは最後に河井がヒラめく時点で初めて明らかになった訳だ。これは防げない。絶好調のアルゼンチン代表チームのような得点だった。そう言えば、準々決勝の三鷹戦の先制点も、浮き球をつないでズドンと言うアルゼンチンばりの得点だったな。このような技巧と発想の得点は、私のような年代の人間にとっては正に70年代に憧れた「藤枝東のサッカー」。美しい。
 高川学園も精力的に両翼から攻め込む。しかし、藤枝東の守備ラインが実に粘り強い。最終ラインの個々の強さと、中盤選手の知的な位置取り。これは80年代から90年代に精強を誇った堀池、服部、田中誠に代表される静岡らしい知的な守備を思い出した。高川はスピードのある技巧派を多数抱えていたが、上記したようなかつての大型ストライカがおらず、どうしても崩しきれなかった。むしろ、両翼に拘らず片方のサイドに選手を集めて拠点を作るような「奇策」を弄してもよかったのではなかろうか。
 それにしても藤枝東の決勝進出は、73−74年シーズン(高校選手権がまだ大阪で行なわれていた)、あの中村一義が、山野兄弟(山野孝義氏は現NHK解説者)の北陽高に敗れた時以来だな。

 かくして興味深い決勝戦となった。
 Jクラブユースを連覇して高円宮杯を獲得した流通経大柏。高速ストライカの大前を軸にした速い攻撃と、強い守備。一方の古典的名門の藤枝東は、河井を中心に技巧的で発想に優れた攻撃と、知的な守備。いかにも、関東の洗練されたサッカーと、静岡の技巧を活かすサッカーの対決となった。両軍のベテラン監督は1週間の準備期間をどう活かそうとするか。大前と河井と言う小柄ながら、抜群の素質を持つタレントは、どのようなヒラメキを見せてくれるか。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月03日

宮城県工高の奮闘

 仙台に帰省中。

 高校サッカー選手権のテレビ中継は地元チームの中継。今年の宮城県代表は宮城県立工業高校。地元では県工と言われている。赤と白の横縞のストッキングが、30年前の私の高校時代から変わっていなかったのが嬉しい。テレビ桟敷で大騒ぎしていたら、娘が「お父さん、この高校と試合した事はあるの?」と聞いてきた。「もちろんある。負けたり、引き分けたり、負けたり、勝ったりしていた。」と答えた。大体こんな星勘定だったな。県工の私の1年下には、後に住友金属(アントラーズの前身)で高速ウィンガとして長く活躍する茂木一浩がいて、随分痛い目に会わされたものだった。ちなみに茂木は、80年代半ばJSL1部と2部を上下する住金のエースとして素晴らしい活躍をしてくれた。同年齢の鈴木淳(当時仙台向山高校、現アルビレックス監督)とは高校時代からライバルとしてそれなりに話題になっていたな。

 で、県工の初戦の相手は鹿児島実業。何が腹が立ったと言えば、アナウンサが最初から「鹿実が勝つ」と言う前提で放送をしている事だった。しかも解説者は鹿実OBの前園真聖氏。上位進出する鹿実の初戦突破を観察すると言う番組編成が自明ではないか。
 しかし、流れてくるテレビ映像は、テレビ局の思惑とは全く異なるものだった。立ち上がり、様子見で試合に入った鹿実に対し、県工は最前線からプレスをかけ攻撃を仕掛ける。このプレスが相当厳しいのだが、主審の判定基準が激しいチャージを許容するものだったため、ほとんど反則が取られないのが県工に幸いした。そして、前の方の各選手が自らフィニッシュを決めようとする意欲にあふれていた。昨日の天皇杯決勝にたとえて言えば、皆が内田的な意欲を見せていたのだ。それでも鹿実は押されているとなると、7,8人で守備ブロックを固め、しっかりと守ってくる。このあたりは、豊富な試合経験の賜物だろう。「よくない時間帯は耐えるべし」と言う教えがしっかりと、各選手に身についているのだ。それでも、前進意欲がとぎれない県工は、前半半ばにCKから見事に先制点を決める。
 この時点では解説の前園氏も冷静だった。「いやあ、宮城工業高のプレスは素晴らしいですね。鹿実は受身に回ってはいけません。」と余裕の目線を継続。しかし、アナウンサの「なんと、なんと、宮城県工業が先制しました!」はいくら何でも失礼だろうが。
 後半の立上りこそ押し込まれたが、粘り強い守備で対応。この時間帯は危なかったが、鹿実が県工の逆襲を警戒したのか、比較的深めに守備ラインを築いていたため、第2波、3波の攻撃がやや薄かったのも幸いした。後半半ばに逆襲から見事な個人技で2−0に突き放すロビングシュート。上記したように鹿実の守備は人数が揃っていたのだが、技巧あふれるドリブルと前半から見せてくれたフィニッシュへの意欲が奏効した。この時点で前園氏もさすが絶句。こうなると鹿実の攻撃は焦り気味になり、県工は分厚いカバーリングで冷静にいなす。さらにロスタイムには自陣FKから、時間稼ぎの交代で起用した選手がファーストタッチで得点を決め3−0としてしまった。何とも見事な勝利だった。
 県工が鹿実をよく研究し激しいプレスと前線の個人能力で対抗した事、鹿実が「確実に初戦突破」を考えやや守備的に戦い過ぎたのが裏目に出た事の2点が勝敗を分けたのだと見た。

 これは上位進出か、と盛り上がったのだが、次の試合の都立三鷹戦で敢え無く敗退。鹿実戦と異なり、前半何か集中を欠いた入りをしてしまい、いきなり2失点。そのままズルズルと押し切れず敗れてしまった。この試合の解説も前園氏だったのが、「昨日の良さが出ていない」と不満そうだった。確かに鹿実戦に焦点を合わせ過ぎ、目標を達成してしまって、集中を欠いたのかもしれない。また、2点差と言う事を考え過ぎて攻め急いだのも敗因に思えた。
 このあたりが、高校選手権の面白さでもあり、難しさでもあるのだろう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月08日

体育の日のテレビ桟敷

 高円宮の決勝を観に行く計画もあったのだが、諸事情で叶わず、1日自宅に滞在。結果的に朝から様々な競技の映像を愉しむ1日になってしまった。

 まず大リーグのヤンキース−インディアンス。
 既に2敗してもう後がないヤンキースが、序盤0−3とリードを許す大苦戦。このまま松井のシーズンもオシマイかと思っていたら、そう単純ではなかった。
 松井は、まず3回に内野安打で出塁しチャンスを作って、そのままホームを踏む。続く5回もレフト前安打で出塁し、後続が続いてまた得点。引き続き、3ランホームランが出て逆転。さらに6回には1死2、3塁で敬遠され、続くバッタの右前安打を右翼手がタイムリエラーで1塁から長躯ホームイン。3得点を挙げ、勝利に貢献した。膝の負傷は相当悪いらしくDHでの起用だったが、貢献度は相当高かった。
 大リーグの試合を丁寧に観るのは珍しいのだが、6回松井が敬遠される直前の場面は無死1、2塁で代打が起用され見え見えのバントを行なうのは興味深かった。やはり大リーグでも、バントすべき場面は同じなのだなと。終盤5点差のヤンキースが継投をどうすべきかも、明日以降の試合を見据えなければならないので、また複雑。「大リーグは日本と異なり細かい野球をしない」と言うのは間違いなのを再確認できた。

 続いて高円宮杯決勝。
 序盤から流通経済大柏が運動量で圧倒する。トップの小柄な大前の素早い動き出しに呼応して3人から4人が同サイドに一斉に飛び出す動きが面白い。サッカーのセオリーは、ピッチ全体を広く使い敵DFを分散させる事だが、流通経済大柏のやり方は全く逆。狭いエリアに3、4人が飛び出し、その範囲で数的優位を作り、強く精度の高いパスをトップに当てて崩しを狙う。サンフレッチェの守備は4DFのラインディフェンスだが、68mのピッチの左右全面を4人で真面目にカバーしようとするので、局所的に必ず数的不利ができる。このような局所サッカーを狙う場合、運動量やパスの精度が狂うとどうしようもなくなるものだが、流通経済大柏はこのやり方70分過ぎまで押し切ってしまった。
 サンフレッチェは2つの対処法があったと思う。流通経済大柏のサイドバックの押し上げは、ちゃんとMF陣が見張る事ができていたので、両サイドバックはタッチライン沿いに拘泥せず、中央に絞りこんでしまってよかったのではないか。そうすれば、あれだけ数的優位を作られる事はなかったと思う。あるいは、流通経済大柏のハイペースが90分間続くとは考えづらいので、3DFか何かに切替えスイーパを置いた布陣で我慢をするとか。
 しかし、サンフレッチェは奇策で対応する事なく、通常のラインディフェンスで我慢を継続した。流通経済大柏が攻め疲れするまで0点で押えられればよかったが、あれだけ攻められればいつかミスが出る。失点場面は明らかにGK原のミス。(流通経済大柏から見て)左サイドを大前がえぐり低いセンタリング、詰めてくるFWはいなかったので、DF篠原に任せればよかったのだが、無理に取りに行ってしまった。篠原は篠原で原の無謀な飛び出しを無視して、さっさとタッチにクリアすればよかったのだが、原の声が耳に入ったのだろう遠慮?してボールに触れなかった。結果的に2人ともボールに触れず(触らず)ボールは中央に流れ、全くフリーの小島が流し込んだ。
 さすがにその後は流通経済大柏も運動量が落ちてきたが、逆にサンフレッチェは守り疲れが出てしまったのか、攻め手がないまま時間がどんどん経過してしまう。それならば、パワープレイに出るとか、中盤の選手を代えて運動量を増やすとかすればよいのだが、そのままのメンバで戦いを継続。終盤、立て続けに3人交代を使ったが、流通経済大柏の守備を脅かす事はほとんどなくタイムアップ。
 戦闘能力差から、試合前優位が伝えられたサンフレッチェだが、守備も攻撃も何か杓子定規に終始し、結果的に何もできずに90分を終えてしまった感が強かった。言い換えれば、大ベテランの本田監督と、まだ若い森山監督の差が出た試合と言えるのかもしれない。
 また大前は素晴らしい選手だと思ったが、年齢別の代表には選ばれないのだろうか。少なくとも、これだけのタレントをJリーグが必要としない程、日本サッカー界は選手層が厚いとは思えないのだが。

 そして、夕刻にはラグビーワールドカップ、イングランド−豪州戦。
 9年前にブラジル−ノルウェー戦を愉しんだマルセイユのヴェロドロームスタジアム。
 まあ両軍のラックでのボールキープの巧い事。日本のラグビーと、これらのトップレベルの差は、フィジカルよりもラックで体勢が崩れた際のボールキープ能力(つまりボール扱いの巧さ)にあると、あらためて確信した。
 豪州の方が、ボールを持った時に変化をつける事のできる選手や、突破に工夫できる選手が多かったように思える。しかし、イングランドは豪州ラックがボールキープしている時、とにかくラフプレイやオフサイドを起こさぬように、ひたすら我慢し続けた。結果的に微妙な判定のペナルティの獲得に成功し、豪州を振り切ってしまった。
 トップレベルのラグビーを見る度に、しっかりしたボールキープ、我慢を重ねる守備、貴重なセットプレイを得点につなげる、とサッカーとの類似性を感じる事ができるものだ。

 と、テレビ桟敷でサッカーを含めた各種競技を堪能できた体育の日であった。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする