2006年11月13日

これで優勝までしてしまっては贅沢か

 悔しいけれど、まあ仕方がないのだろうな。準々決勝では後半終了間際に美しい得点で突き放して、ワールドユース出場権獲得。準決勝では、幾多の戦術ミスはさておき、人数が1人少ない中で、ほとんどサンドバック状態になりながら守り抜き、宿敵とのPK戦を勝ち抜き。と、ここまで美しいドラマを描いてきて、これでアジアチャンピオンになっては、何か申し訳ない。と言うより、勝とうが負けようが、これだけ厳しい試合を経験できたのだし、「復讐心」と言う得難い経験を積む事ができたのだから、よいアジアユースだったのではないか。繰り返すが、ワールドユース出場権と、ライバル韓国への勝利を刻む事ができたのだから。

 さらに言えば、このチームは北朝鮮とやるのは3回目。選手達は3回目で負けた事をよほど悔しがっているようだが(とてもよい事だ)、醒めた視点から言えば、このチームの第一目標「ワールドユース出場」のためには、この決勝戦よりも、熊本の1次予選、先日の1次リーグ初戦の方が、よほど重要だった。重要だった試合は、キッチリと勝ったのだから、何ら問題はなかったのだ。



 でも悔しいね。



 一方で、北朝鮮のガンバリにもビックリ。考えてみれば、上記のように要となる試合でことごとく日本に負けながら、よくもまあゾンビのように生き返ってきたものだ。前半、ガツガツ来て日本が苦しむのはある程度予測していたが、120分間ガンバリきったのには驚いた。後半、ようやく日本が落ち着いてボールをキープできるようになり、柏木と梅崎を軸に幾度となく好機を掴むが、守り切られてしまった。さらに前線の選手の脚力が落ちず120分間走り切り、幾度となくカウンタから好機を掴んのだから恐れ入る。40年前ミドルスプラでアズーリがやられた時も、このような脚力にやられたのだろうか。

 以前より語ってきたが、東アジアで日本と韓国が突出している事は、日本にとっては決して望ましい事ではない。したがって、北朝鮮が強いチームを作ってきた事は歓迎すべき事態であろう。少なくとも、優秀な選手を並べながらも志の低いサッカーしかできないサウジアラビアや、敵の足を蹴ってはいけないと言うルールが定着していない中国よりは、格段に魅力的なサッカーだった。もちろん、脚力に頼るサッカーには限界もあろうが、1人1人の選手の技術もそれなりに高いものがあったので、将来テンポを落とせる選手が登場する可能性もあるだろう。また、安英学、李漢宰、梁勇基(あるいは彼らに続くタレント)と言った日本育ちの選手が、有効なアクセントになるかもしれない。



 監督の吉田氏だが、中々の現実主義者のようだ。「大人の」采配で、「選手に経験を積ませ」ながら「負けない事を狙った」ように思えた。

 ハーフナーと伊藤と言う今大会出場機会は少なかったが「素質」に期待できそうな選手を起用した事だ。考えてみれば、今大会の6試合中、初戦北朝鮮、タジキスタン、サウジアラビア、韓国の4試合は「必勝」体制で臨み、イラン戦と決勝は「経験」も考えたように思えた。もちろん、フレッシュな選手を起用したと考える事もできるが、森島がそれほど消耗していたようには見えなかったし、青木は過去2試合フル出場していた訳でもない。むしろ、定石としては、アトム、森重に代えて香川や柳沢を入れて、柏木の守備負担を減らすべきだったのではないか。

 また3人目の交代を我慢したのは、「勝つ事」よりも「負けない事」を狙い、終盤の負傷に備えたのだろう。GK林に対する信頼感から、PK戦に持ち込まれても勝つ可能性が高いと考えたのかもしれない。ある意味でこの策は的中し、終盤も終盤で森重の足がつった時に、柳沢を投入する事で、守備のやらずもがなの崩壊を防ぐ事ができた。けれども、戦闘能力の優位さを考えたら、3枚目を積極的に使い「勝ち」を狙って欲しかったのだが。

 しかし、吉田氏は現実的な選択肢を選んだと言う事だろう。誰よりも吉田氏も決勝で勝てなかった悔しさを感じているだろうが、彼のより本質的な仕事は、優秀な素材を成長させる事とワールドユースでの好成績なのだから、そのような選択も正しい。是非、吉田氏には、小野の時よりもよい成績を収めてもらいたい。



 それにしても柏木の成長には恐れ入った。あの同点弾の場面、柏木が加速して敵DFに向かっていった瞬間に、思わずTV桟敷で「勝負しろ、お前なら2人くらい抜けるだろう!」と叫んだら、その通りになり、坊主の尊敬を獲得する事ができた(笑)。独特のリズムのドリブル、振りの速いスルーパス、精度のあるヒールパス。今大会梅崎も決して悪くなかったのだが、少なくとも今大会は柏木の大会だったな。すっかり風格がついた柏木が、サンフレッチェに帰り、寿人にビシビシとラストパスを通すのを愉しみにしよう。おー、そうだ、反町さん。来週の国立には、柏木を呼びましょうよ。



 ここまで、複数回に渡りアジアユースについて講釈を垂れてきた。しかし、ある意味で最も重要な話題2点に、にまだ到達できていない。7回連続出場そのものが大変な偉業である点、そして内田の召集問題(柳川の帰国問題を含む)である。この2点については、相互の関連を含め、後日述べたいと思う。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(8) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月09日

これで2勝2敗

 アジアユースで韓国とPK戦をするのは4回目のはず。

 1回目は71年東京大会。永井、奥寺、碓井らの時代で準決勝だった。私はまだ小学生でTVのスポーツニュースで「日本が負けた」と言う事実しか認識できなかった。そもそも、「PK戦」と言うものを、あれで初めて見たような気がする。後日、記録を読むと「金鎭国が蹴る振りをして蹴らないと言う悪辣なフェイントをして、GK瀬田が興奮してしまった」との事。これはこれで歴史的な名場面なのだ。

 2回目は77年大会準々決勝。金田、木村和司、山本昌邦らがいた時。この時はPK戦で韓国を振り切っている。もし、次の準決勝で地元イランに勝っていれば(後半終了間際に決勝点を入れられて1−2で負けたはず)、日本は第1回ワールドユースに出場できていたのだが、おそらく当時の松本育夫監督を含めて、日本協会の関係者は誰もそんな事に気がついていなかったのかもしれない。

 そして3回目は前々回の大熊氏が平山にロングボールを合わせた大会だ。

 これで2勝2敗。林も福元も梅崎も青木も柏木も、そんな事は知った事じゃないだろう。しかし、歴史は継続する。林は瀬田の無念を晴らしてくれた。どうでもよいが、青木の技巧、切れ味、得点力は永井にちょっと似ている。おー、古河じゃなかったジェフの選手ではないか。



 とは言え、戦い方は褒められたものではなかった。

 開始早々に失点したため、前半からややハイペースで飛ばし過ぎたのは仕方がない。堤が負傷だったのかどうかは知らないが、後半早々に後方の選手を代えた事で、後の交代が苦しくなったのも不運だった(もっとも交代した香川を基点に同点弾が決まったのだから、この交代そのものは成功だったと言えるか)。

 しかし、後半半ばからあそこまでベタ引きは拙いだろう。案の定、完全に押し込まれてしまった。通常であれば、中盤の選手を代えてペースを取り戻すべきだが、吉田氏は延長まで考えたのか動かない。だったら、梅崎や青木がもう少し運動量を増やして敵DFを下げなければならないのに、完全に引いてしまいさらに押し込まれる。槙野が退場になったのは妥当な判定だったが、あのような状況を作られてしまったのも、チーム全体の戦い方が稚拙だったからだ。

 さらに10人になってから、完全に引きこもるのはいかがなものか。せめて、若森島と青木は距離を近くにおいて、絶えずウラを狙えば、あそこまで押し込まれる事はなかったはずだ。



 まあ、そんな事はどうでもいいのだな。



 韓国の心理を考えてみよう。開始早々にウマウマと先制しシメシメ。さらに前半幾度となく訪れた決定的ピンチをとにかくしのぎ、精神的に優位な状況で後半を迎える。と、思ったら完全に崩されて同点に追いつかれる。しかし、前半のオーバペースがたたって日本が動けなくなり、押し込んでおいて退場者が出て相手は10人に。延長戦徹底的に押しまくる。ところが、数少ない逆襲速攻から決定機を作られ1度しのいだと思ったら、さらに詰められ信じ難い状況でリードを許す。それでも、幸運なゴール前のFKから同点に追いつき、圧倒的に押しながらもう1点が取れず、とうとうPK戦に持ち込まれる。PK戦でも「もうダメだ」と思わせておいて、日本のミスもあり、追いつきようやく優位に立ったと思ったら、最後の失敗で万事休す。

 ここまで「ヤッタ!」と思ったにも関わらず、「ズド〜〜〜ン」と突き落とされる事を繰り返し、最後奈落の底に落ち込んだのだから、もう救いようがないはず。

 しかも、しかもですよ。傷心の彼らは帰国すら許されない。3位決定戦に出なくてはいけないのだ。さらに、さらにですよ、決勝戦の組み合わせはあろう事か、日本対北朝鮮。彼らは、その試合の前座を務めなければならないのだ。へ!へ!へ!



 まあ、そんな事はどうでもいいのだな。



 今回のユースは欠点もあるが、それを補って余りある魅力のあるチームだ。ここまで来たのだ。あと1つ、あと1つ、とにかく北朝鮮を三たび打ち破り、念願のアジアユース制覇と行こうではないか。ワールドユースで、小野たちよりよい成績を収めるのは、その後の事だ。



 技術面で1つだけ。

 若森島の同点弾は本当に嬉しかった。前半、若森島は足でシュートする絶好機を2回逃してしまった。いずれの場面も、左方向に斜行しながら、利き足の右で打とうとして、よいシュートが蹴り切れなかった。ところが、この同点弾は右でのキックフェイントで抜け出し、左足で決めた。素晴らしい。前半の失敗を、見事に修正したとしか思えないではないか。この男はアタマがいいよ。

 いいかい、若森島君。君が所属するチームには、3,40年前に、右足で物凄いシュートをいつも打てて、敵が右を抑えにくると逆をついて左でしっかりと決めて、もちろん空中戦も完璧だった、凄いオッサンがいたのだよ。君が目指すのはそのレベルなのだよ。
posted by 武藤文雄 at 23:51| Comment(13) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月08日

祝、ワールドユース出場

 諸事多忙で、少々遅くなったが、ワールドユース出場を決めたサウジ戦について。ちょっとないほど、劇的な勝利だった。よかった、よかった。



 醒めた態度で言えば、サウジが素晴らしい健闘を見せてくれたおかげで、我らが若者たちが素晴らしい経験を積めたと言う事かもしれない。

 サウジとして重要だったのは、梅崎、柏木、さらに後方から進出する内田の3人を中盤で厳しくマークし、フリーにしない事。若森島がヘッドで落とすところをよくカバーする事。さらにできれば、前線からプレスを厳しくかけて、日本に中盤を省略させてロングボールを蹴らせる事。これによって、日本の攻撃力を落とし、少ない点数差の勝負に持ち込めば勝負になる、と言うのがゲームプランだったと思う。

 ところが、内田を止め損ねたセットプレイから、開始早々に失点してしまう。長身選手に気を取られ、ニアに入り込む河原を止め切れなかった。この痛い失点により、勢いに乗った日本の猛攻に、サウジはひたすら耐える。素晴らしかったのは守備の集中、再三内田に左サイドを破られながらも、中央で我慢を重ね、身体を投げ出す事で、とにかく点差を広げない事に成功。積極的に押し込んでくる柏木の裏を突き、日本のCBがアプローチする直前に高精度のミドルシュートで、たびたび日本GK林を脅かすなど、速攻も奏効。早々の失点は痛かったが、順調な前半と言えた。

 そして後半。日本の強力CBコンビと、ボランチの中間の間隙を突き、幾度か好機を掴む。2本バーに当たるシュートのいずれかは決めておきたいところだった。案の定、日本がFWに青木を投入し、再度活性化し再び押し込まれる。追加点は時間の問題と言う雰囲気になるも、粘りに粘る。幾度となく両翼で内田なり梅崎がフリーになっても、中央で諦めずに競りかけて日本にシュートの隙を与えない。こぼれ球を拾われ、連続攻撃をかけられても、あきらめずに身体を張り、とにかくフリーでのシュートを許さない。

 もっとも、GKがペナルティエリア外で青木を倒した場面は感心しないが。あれは退場にされても文句を言えないプレイ。あそこで抜かれても失点するとは限らないのに、あれだけ見え見えの反則をしてはいけない。

 そうこうしているうちに、FKからやや幸運なPKを得て同点に追いついた。ここから押し切りたいところだったが、日本が非常に冷静だったため、逆に押し込まれる。終了間際の失点は、あれだけ拾われれば、いつかは崩れると言う典型的な失点。押し込まれ続けたために、守備ライン全員が完全にゴールに引き付けられてしまった。あれだけよく守ってきたのだ、あの失点は攻められない。

 日本と比べて試合感覚が短いと言うハンディキャップを抱えていた事を含め、サウジの健闘は実に見事なものと評価されてよいだろう。

 ただし、サウジのやり方に疑問も多い。この日の試合内容は、そのまま両国のA代表同士がやっても似た展開になるような試合だった。そして、サウジはこのような受動的な試合ばかり狙っていると、日本が本当に能動的な攻撃ラインを完成させた時(たとえば00年のアジアカップの1次リーグのように)、勝つのは非常に難しくなってくると思う。もっとも、日本の運動量が落ちると00年のアジアカップ決勝のように、それなりに好機も掴めるのだから、このサッカーがやめられないのだろう。だが、もう少し志を高く持ち、能動的なサッカーに取り組むべきだと思うのだが。頑健な選手、好技の選手、高速な選手、多士済々いるのだし。

 逆にどうしても受動的なサッカーに専念したいのならば、パラグアイやエールのように、開き直った守備固めと言う手もあるのだろうが、そのためには今よりも2,3段は、フィジカルを鍛え抜く必要がある。そうしないと、1つ間違うと、02年のワールドカップのようにドイツに粉々に粉砕される事になる。



 まあ、いいか、他人事だ。

 日本は本当によくやった。難しい試合に適宜リスクを負いながら、丁寧に戦い抜いた。失点そのものはやや不運なPK。公平な笛を吹いていたこの日の主審があの煮詰まった場面で迷わず笛を吹いた事、敵が倒れた時に若森島が不自然に両手を広げた事などから推定するに、やはりPKの判定は正しかったように思えるのだが。若森島には格好の経験となった事だろう。あと、問題にするとしたら、時々(特に後半の序盤に顕著だった)4DFとボランチの距離が空いてしまい、複数回決定機を許した事。一方で、そのような戦術ミスが散見されながら、個人能力で何とか止めてしまうのがこのチームの魅力。経験を積めばその手のミスは減ってくるだろうから、頭を抱えるほどではないかもしれない。

 そして、90分間、重いグラウンドを考慮しながら、常に変化を意識した攻撃をやり抜いた。決勝点にしても、完全にボールを回して押し込んだ上で、山本のシュート、柏木のラストパス、いずれもジャストミートはしなかった感があるが、能動的にボールを扱ったところで、青木が余裕を持って振りぬくスペースができた。あれだけ押し込めば、いつか崩れる。

 贅沢を言えば、若森島が空中戦を制せるものだから、つい高いボールが多くなってしまった事と、両翼を崩した後のクロスへの飛び込み(逆に言えば合わせ)に工夫が足りなかった事が、不満なくらいか。しかし、こう言った愚痴は、経験を積めば改善されるはずなのだ。

 まあ、あのまま逃げ切るよりは、格段によい経験ができたと考え、サウジに感謝するのが前向きな考えと言うものかもしれないしな。



 このチームは、各選手がのびのびと現状の個人能力を押し出しているのがいい。時折見せてしまうミスは、若さ、経験不足からくるもので、近い将来なくなって行く事だろう。ワールドユース行きを決めた今としては、準決勝への集中は決して簡単ではないだろうが、次は何せ韓国なのだ。ここにだけは、負けてはいけない。頑張って欲しい。
posted by 武藤文雄 at 23:03| Comment(3) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

ユース代表、まずは順調

 どうやら日本のグループは「死のグループ」と言われていたらしいが、さっさと2連勝し事実上の勝ち抜きを決め、3戦目のイラン戦はメンバを落として敗れたものの1位抜け、上々の滑り出しと言えよう。



 現実的に、今回のチームは過去のユース代表と比較しても、バランスが取れており相当強いと思う。

 まず守備ラインが強い。GK林はカタール国際あたりで格段に自信をつけたのだろうか、大柄で安定感がある。

 福元、槙野のCBコンビは過去の日本ユース代表では最強と言ってもよいのではないか。強さ、高さ、カバーリングがここまでのレベルで揃ったコンビが同年代で登場した事を素直に喜びたい(肝心なのは、この2人が順調に成長してくれるかなのだが、これは今後の課題として)。もっとも、バックアップの柳川のイラン戦のできは大変残念、あそこまで1対1でやられてはいけない。序盤の敵スローインからの攻撃で対応を誤ったショックを1試合引きずってしまったのだろうか。捲土重来を期待したい。

 堤は本来は左バックではないようが、堅実な守備振りはアタマのよさを感じさせる。起用な守備者として将来面白い存在になるのではないか。柳澤はイラン戦今一歩だったが、こちらも本来のポジションではない事が響いたのだろうか。内田は実績からすれば、もっとやってくれると思っていたのだが、これはサウジ戦以降の大爆発を期待しようか。

 青山隼も森重も合格点、落ち着いてよくボールを刈り取っている。チーム全体のバランサとしては、青山隼に一日の長があるだろうか。とは言え、森重のシュートは凄かったね、一方、青山はイラン戦前半フリーのヘディングは決めなくては。

 柏木と梅崎は完全に格の違いを感じる。まあ、毎週Jの手練手管あふれる守備者と丁々発止を演じているのだから、アジアの同年代相手では物足りないのかもしれない。田中アトムと山本の個人能力も全く問題ない。バランスを考えると、柏木、梅崎のドリブルを活かせるアトムをスタメンで使い、終盤どうしても点を取りたいときに梅崎を前に上げて山本を入れるのも手もあるか。

 FWは1次リーグでベストメンバを決め切れなかったきらいがある。若森島は敵DFにとって相当な外乱になっている。この男のよさは、後方からのフィードに対して、ガツッと敵DFに身体を当てられる事。ちょっと往時の高木を思い出す。ライバルのマイクだが、この選手はヘディングは強いが、敵DFに身体を当てに行くのではなく走りこんで驚異的な高さを活かすタイプ。また足の長さを活かした独特のドリブルにも味がある。だから、マイクには縦にボールを入れるのを受けるのではなくて、斜めのボールを入れる方が有効。したがって、予選を確実に勝ち抜くと言う見地からは、いざと言う時に最終ラインが縦に逃げる事がしやすい若森島の方が有用か。

 もう1枚のFWをどうするか。河原と青木、いずれもよい選手だ。河原はあの北朝鮮戦の強シュートと最後のアシストは見事の一言。一方、青木は逆襲速攻から持ち出した時の判断が素晴らしい。いざとなったら、敵DFに正対して抜き去る事ができる技巧を持ちながら、その技巧を周囲との連携に使うところが絶品だ。したがって、守備を固めたい時にも使い勝手がよいし、無理攻めの時にも使えそう。また期待された伊藤は、タジク戦を見る限り今一歩の出来だったが、ベンゲル氏が惚れ込んだと言う一発があるとすれば、終盤要員が適切か。そうこう考えると、森島と河原の先発で行くのが妥当だろうか。



 こう考えてくると、センタバックと攻撃的MFと言う、ある意味で一番派手なポジションに質の高い選手がいるところが、このチームの強みなのではないか。最初の2試合を見た時は、あまりに整然と強過ぎるので、(本来ユースレベルで重視されるべき)個人能力よりも、コンビネーションを重視し過ぎた強化に傾いていないだろうかと少し心配した。しかし、イラン戦でメンバを落としたら、思うようにチームが機能しなくなったのには、逆の意味で安心した。あの強さは日本選手の「個の強さ」によるものだったとわかったからだ。そして、北朝鮮に不覚を取ったとは言えイランである。福元に加え、柏木、梅崎と大駒を外してしまっては、負けもやむなしか。



 ワールドユースの出場権4カ国を16チームで争うレギュレーションでは、次の準々決勝の重要性が他の試合よりも格段に高い。全ては次の試合で決まる。対戦相手が、伝統的に日本同様にしっかりとしたビルドアップするイラクではなく、日本を相手にすると個人能力のよさが消えてしまうサウジになったのは幸いな事に思える。全力を尽くしサウジを殲滅する事を。
posted by 武藤文雄 at 23:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月26日

19年の月日  五輪代表中国戦(下)

 今日は10月26日。我々にとっては特別な日だ。あまりに「メキシコの青い空」「ボールが曲がる、ボールが落ちる」が印象的過ぎるが、その2年後の「アイヤ〜〜〜」も忘れ難い屈辱的なものだった。昨日はあれから18年と364日が経った日だった。この19年間で、日中の関係がここまで変わるとは。この日ベンチに座っていた、19年前の主将の賈秀全氏はどのような思いで、自国の若者のプレイを見ていたのだろうか。



 昨日本田を絶賛したが、他の選手も2トップを除いては皆よかった(2トップについては後で述べる)。

 中でも青山直。中国のFWを終始子ども扱い。前も後ろも強い。フィードも常識的だが上々。再三ラフプレイを仕掛けてきた中国の9番に対し、終始冷静に対応したのもよかった(あの9番は退場になってもおかしくない)。同世代のライバル水本にA代表での出場は先を越されたが、そろそろこの男にも機会を与えて欲しい。。

 そして西川の安定度。劣勢の中国としては、たとえ可能性が少なくても、無理な攻撃をしかけて偶然や幸運を期待したいところ。けれども、西川の存在は、その手の偶然や幸運を断ち切ってしまった。伊野波の頑張り、成長を否定するものではないが、このチームの主将は西川が一番ふさわしいと思うのだが。

 少し気になったのは、梶山。あのタイミングでゴール前に入ってヘディングを決めた事は高く評価できるし、攻守に渡りよくボールを触っていた。しかし肝心要のパスの精度の面で大きな不満が残る。微妙なところでミスパスが多いのだ。梶山の本質は正確なパスワークのはず。後述するが、この五輪代表のMFのポジション争いは極めて過酷だ。その中で台頭するには、まずは得意技を光らせる事ではないか。



 チーム全体に最大の不満は、敵が弱かった事で終盤明らかに力を抜いていた事。特に3DFが中国の2トップをほぼ完璧に止められるため、「この程度のチェックで大丈夫だろう」と言う意識が見え見え。確かにそれでも、止まってしまったのだが。やはりしっかりとボールキープして、交通事故のリスクを僅少にする努力を怠らないで欲しかった。でも、「西川がいるのだから事故もないでしょう」と言い返されそうな気もするが。



 それにしても、今回の五輪代表の質は高い。中盤を例にとってみれば、この日ベンチに座っていたのは、谷口、枝村、水野、上田。いっそ、中盤を総とっかえした方が強いかもしれないとまで思わせる選手層の厚さ。おっと、家長もいたな。さらには梅崎も控えている。反町氏は、これらの豪華メンバを、どのように選抜していくのか。少なくとも、この日については、メンバを固定して終盤まで引っ張りすぎた感があったが、おそらく試合前からそのつもりだったのだろう。ただし、五輪に向けての準備は、時間があるように見えてあまり時間はない。Jリーグの日程次第では、思うような集中強化する事は難しいはずだ。そのような状況で、いかにチームをまとめていくのか。昨日も少々触れたが、これだけ豊富なおもちゃ箱を持つ事は、反町氏にとっては全く初めての経験のはず。氏がいかにチームをまとめようとするのか、愉しみながら見守りたい。

 余談ながら、反町氏は試合後の記者会見で交代が遅かった理由を延々と述べている。残念ながら理屈になっていない。嘘をつくならつくで、もう少しもっともらしい嘘をついて欲しい気もするが、まだ爺さんの域にはほど遠いという事で。(笑)。



 興味深かったのが、2トップ。

 守備ラインと中盤は、Jでの実績がある選手がズラリと並んでいるが、現時点では前線はやや層が薄い。明確な実績を残しているのはカレンくらいか。そのためだろうか、反町氏は「素材型」の選手を試してきた。

 苔口の潜在能力が高い事は誰しもが認めるだろうが、この選手はセレッソでも以前のユース代表でも中々機能せずにきた。どうも、俊足を活かそうとして、サイドMFに起用で使われる事が多かったが、このポジションには、ゲームの組み立てや、周囲と連携しての守備など、難しい仕事も多い。むしろ、爆発的な脚力を活かすためには、最前線に使う方が向いていそうだ。ただし、この場合問題になるのは、ボールを受ける工夫。反町氏もかなり細かな指示をしていたようだが、残念ながらまだ機能しているとはいい難い。やはり、単独チームで機能していない好素材を、代表チームで化けさせようとするのは無理があるのだろうか。

 という事で平山。以前より述べているように、私は平山には大変な期待をしている。この日もストライカとしての片鱗を見せてくれた、あくまでも片鱗に過ぎなかったが。とにかくこの男は体調を整える事につきる(小嶺先生のところで鍛え直せば問題は一気に解決するように思えるが、今はシーズン中だしな)。その上で、とにかく往時のシュート力を取り戻し、一層磨きをかけて欲しい。この日のスタンドは、平山がボールに触ろうとしてもたつく度に、失笑、野次が錯綜し何とも微妙な雰囲気になっていた。その方向性はさておき、皆が平山の事を愛しているのだろう。本人もそれがわかっているから、ディエゴばりの珍得点を決めた後、サポータに投げキスで返礼をしたのだろう。このオーロラビジョンに大写しになった投げキスを見て、技術面のみならず性格面も、この男がストライカの素質にあふれている事がよくわかった。よけた手に当たった得点直後に、あそこまで切り替えられるのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:20| Comment(10) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月25日

冴え渡る本田圭佑 五輪代表中国戦(上)

 結果的に2万人を越えた観衆が入ったのだから、「昨日の講釈は何だったのか」と言う気にもなるが、(まあ相当量のタダ券が出回ったとの噂もあるが)文句を言う筋合いではあるまい。まあ、あのくらいの入りの国立だと、殺伐とした野次も結構通り、なかなかよい雰囲気での試合となった。



 それにしても中国は弱い。

 とにかくあのラフプレイを何とかしなければ。日本が速攻を仕掛けてタッチライン沿いに展開して、受け手が抜け出そうとすると、何も考えずに後ろから足をなぎ払う。日本が遅攻から精緻なパスで抜け出そうとするとラフタックルで止めてくる。複数の選手が退場になってもおかしくない酷いタックルだった。また今の日本は、連携もこれからだし、セットプレイの仕掛けもないから、被害が広がらないが、この段階の日本に対してあのような守備しかできないようではお先真っ暗ではないか。大体、後半平山がシミュレーションを取られた場面にせよ、青山敏が倒された場面にせよ、PKを取られてもおかしくなかった。とにかく我慢して守ると言う当たり前の習慣をつけなければ。

 攻撃にしても、課題は山積。変化をつけるパスワークができる選手もいないのは仕方がないが、速攻時に後方から追い越してくる選手もいないので、攻めに変化をつける事ができない。結果的に速攻は、トップにぶつけてくる戦法しかなくなるが、青山直晃が待ち構えている状況では、突破できる可能性はほとんどなかった。遅攻の時は、技巧を発揮できる選手もいるし、追い越しを仕掛ける事ができるのだから、素早い判断が利かないと言う問題だろう。速攻が決まらないならセットプレイと言う事になるのだが、ほとんどのCK、FKが、二アサイドに引いてきた平山にカットされていた。このような工夫の不足が痛い。

 すぐにラフプレイに頼る事、とっさの判断が利かない事、工夫した攻撃ができない事、いずれにしても、サッカーにおける最も重要な要素である知性に欠けるとしか言いようがない。不思議なのは、毎回毎回日本に完敗し続けているにもかかわらず、次回も同じように、でかくてアタマの悪い選手を並べてきて完敗し続ける事。少しは悔しいと思わないのだろうか。中国サッカー界全体がそうなのか、代表選考方法が悪いのかは定かではないが。このままでは永久に日韓の壁は破れないだろう



 さて日本。

 まずは本田につきるであろう。フリーでボールを受けたときの、射程の広さと長いボールの精度。敵のプレッシャ下でも、距離が近い味方に強いパスを出す事を起点にした軽妙な崩し。オープンスペースに出た時に悠然と繰り出されるカーブのかかったクロス。ループありヘッドあり強いのありのシュート力。ルーズボールの競り合いもほとんど勝つ身体の利きのよさ。労をいとわない上下動。

 この日のベストプレイヤである事はもちろん、事実上A代表入り、札幌サウジ戦の左サイドはもう決定と言ってよいのではないかと思える出来だった。

 ただ、それはそれとして、あれだけ攻撃力のある選手だ。もう少し前とか真ん中で使ってみたい気もする。また、五輪代表と言う見地では、近いポジションに家長がいる(シーズン後半に入り序盤の勢いがなくなってきた感があり、ガンバでも出場時間が減ってきており、この日もベンチから外れていたのだが)。どのように使い分けるかは、反町氏の手腕だな。



 昨日、この五輪代表チームのはじめての国内有料試合と言う観点で、8年前のアルゼンチン戦を回顧した。8年前は中村のループが長く記憶に残る試合となったが、昨日は本田の圧倒的な存在感が長く記憶に残る試合となる事だろう。
posted by 武藤文雄 at 23:52| Comment(6) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月24日

五輪代表の観客動員

 明日の中国戦のチケット販売が不振らしい。報道によると、前売り券が6000枚程度しか、売れていないらしい。シドニー、アテネの準備試合は常に万単位の観客を集めていた事を考えると、これは深刻な事だ。酒精メーカと連携して国内で仰々しい国際試合を行う事に対する批判は大きいが、一方でそれによる入場料収入さらにはスポンサの協力活動は、ここ15年来右肩上がりの日本サッカー界を経済的に支えてきた。それが思うに任せなくなるとすれば、少なくとも経済的側面(言い換えると身も蓋もないが、金儲けの見地)から考えると、これは大変な事態である。一体何が起こったのだろうか。



 明日の相手は中国で、国内で行われる国際試合の最大のリスクである「相手が全く本気でない」と言う事はない。ライバルと言うには中国が弱すぎるが、それでも、それなりに面白い試合は期待できるだろう。さらに、東京には在住の中国人も多数いるので、そちらの観客動員が期待できるはず。

 また今回の五輪代表チームは、2年後に向けた立上期にも関わらず、既にJリーグで活躍している選手がズラリと並び、相当強力になる事が期待されている。しかも、各ポジションに満遍なくタレントが揃っているのも今回のチームの特色。さらにそのチームを率いるのは、アルビレックスで中々の実績を上げた若き理論派反町氏。しかも、反町氏はA代表のコーチも務め、オシム氏との連携も十分に取られている。間違いなく愉しみなチームだ。

 少なくとも、過去のシドニー、アテネの準備試合に比べて、見世物的な期待感が劣るとは思えない。



 ワールドカップ直後の年の五輪代表と言う事を考えると、類似的な試合としては8年前、98年11月のアルゼンチン戦が思い出される。この試合は、トルシェ氏の来日2試合目(初戦はA代表のエジプト戦)だったが、ごく短時間の準備にも関わらず、宮本、戸田、古賀のフラット3が機能し、石井、稲本のドイスボランチ、そして何より攻撃的MFで小野と中村が初競演した試合だった。稲本のクサビを福田が落とし、中村の芸術的なループがネットを揺らした場面は、今も目に浮かぶ。しかし、この美しい思い出はあくまでも結果系の話。この試合は4万人くらい入った記憶があるが、トルシェ氏がどのような監督かどうかは、当時とはしては白紙段階。当時の若き五輪代表への「漠然とした期待」により、大観衆が集まった訳だ。一方で、今回の五輪代表チームは、多くの人に当時のような「漠然とした期待」が集められていないと言う事になる。

 その後、トルシェ氏時代も山本氏時代も、上記のように五輪代表の準備試合は常に万単位の観衆を集めていた。さらに言えば、この2人の監督はいずれも、有料国際試合として万単位の観衆を集めながら、「ラボ」とか「競争」と称して、肝心要の試合終盤に「勝つ」よりも「試す」事を優先していた。そのため、数千円の入場料を払ったにも関わらず、「見世物」としてはあまり面白い試合にはならない事が非常に多かった(これは非常に難しい問題で、準備試合の第一の目的は「試す」事にあるのは間違いないので、全否定はできないのだが)。もっとも、この2人の監督の手腕の差は、本大会で「ちゃんとチームをまとめて勝った」のと「全くチームをまとめられず無様に負けた」と言う大きな差がある事は、明記しておかなければフェアではないな。何が言いたいかと言うと、「試す」を重視したあまり面白いとは言えない試合でも、継続して万単位の観衆が常時入っていた事だ。

 このように整理してみると「アテネ五輪以降のあるタイミングで、五輪代表に対する『漠然とした期待』が全く小さくなってしまった」と考えざるを得ないではないか。



 元々、各方面で「ドイツワールドカップに向けて、広告代理店は完全に浮動層のファンをメインターゲットにマーケティングを実施、それに日本協会(と言うか川淵会長)も乗ってしまい、結果として適切な強化ができずドイツでは完敗、さらにドイツでの日本の不甲斐なさに浮動層もサッカーからサヨナラ」と言う懸念が語られていたが、それが現実化してしまったのだろうか。もし、そうだとしたら危機的状況である。

 「代表人気にあぐらをかいて適切な営業活動をしなかったから」と言う批判も多く見受けられるが、上記のトルシェ氏時代や山本氏時代だって、適切な営業活動が行われていたとは思えない。とすれば「10年以上継続していた代表バブルがはじけた」と言う事なのか。これまた、そうだとしたら危機的状況である。

 一方で、「欧州や南米では、U23代表への注目度は低いからこんなもの」と言う意見もあろうが、そうだとすればアテネ前の大観衆はどこに行ってしまったのか。彼らが皆Jリーグサポータに転身してくれたのならば結構なのだが。そして、もし日本も欧州南米同様、若年層代表チームの一般人気がなくなりつつあるのだろしたら、単純な金儲けの面からやはり大事件。ビジネスと言うものは、1度失ったセグメントを再び活性化させるのは非常に難しい。そうだとしたら正に危機的状況である。



 今から、明日の中国戦が大観衆になる事は不可能だろう。しかし、純粋にビジネスの見地から言えば、日本協会は「今回の失敗」を真摯に反省し、この観客激減の原因を突き止め、11月に予定されている韓国戦までに具体的な対策を打たなければならない。



 ともあれ、現場をあずかる反町氏はアルビレックス監督時代は、「選手は足りないが、サポータは十分」と言う、ある意味で幸せな環境で成果を上げてきた。しかし、今度の五輪代表は全く逆になるのだろうか。



 明日の試合に関して。先日のアウェイゲームを見てもわかるが、中国は相変わらず強くて巧い選手を幾人か抱えているようだったが、相変わらずいずれの選手も頭は悪そうだった。あの青山敏弘が壊された場面などは、悪しき中国代表の伝統そのもの。たぶん、今回のチームもダメだろう。

 さらに日本は、前回のアウェイゲームではベストとは言えない布陣だったが、今回は現状のベストに近いメンバを使える(もっとも、水本は離脱したし、ユース勢が使えないと言う事情はあるのだが)。とすれば、「2年後に北京で金色のメダルを獲得するためのスタート」と明確な目標を持って、完璧な大差の勝利を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:46| Comment(18) | TrackBack(2) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月19日

U17を称えて

 U17アジア選手権決勝、内容、結果共に、期待以上の素晴らしい試合をたっぷりと堪能させてもらった。見事なチームを作り上げた城福氏、苦しい状況を耐えて技術で4点を奪い取った真に将来が愉しみな選手達に多謝。



 驚いたのは、両国選手の上半身の差。北朝鮮の選手の多くは胸板の分厚いしっかりした上半身をしていた。一方、日本選手は皆胸板は貧弱。水沼、岡崎、甲斐のように肩幅のある体型の選手も、上半身の鍛錬はこれからと言う印象だったし、柿谷や河野などの細身の選手たちに至っては、「ベンチプレスって何だろう」と言う胸の薄さである。日本サッカー界のトップレベルの選手の肉体的な鍛錬については、非常に科学的な研究の下に行われているはずだがから、今上半身が貧弱なのは何ら問題はないはず。

 昔からこの大会は出場選手の年齢疑惑がいつも話題になっていたが、ここ最近は科学的な検証方法が導入され、そのような問題は解決されたと聞いている。とすれば、北朝鮮は早期からこの大会に照準を合わせて鍛えいるが、日本は選手の完成を先に見ていると言う解釈をするべきなのだろう。



 前半いきなり2失点。日本の右サイドからやや不正確ながら思い切りのよいクロスが入り、逆サイドに敵選手が長躯してきて、そこから崩されたもの。1点目はシュートの思い切りのよさ、2点目は守備者の人数は足りていたが視野の切り替えに手間取るうちに、敵FWに非常によい間合いでボールを持たれてしまった事による。逆転勝ちした今となっては、特に2点目の失敗経験は最高のものになったと、ノンビリ語れるのは嬉しい。昨年の埼玉北朝鮮戦での失点もそうだが、サイドから早めの崩しを狙われ、逆サイドに忠実に選手が走りこんでくるのは、両国のサッカースタイルから来るこの対戦での失点パタンと言えるのかもしれない。

 同点後の日本の猛攻をしのいだ北朝鮮が、延長に入って仕掛けてきたのも興奮させられた。日本の攻め疲れを意図的についたものではないかもしれないが、肉体的にも精神的にもよく鍛えられているのだろう。

 私の持論だが、東アジアで日韓両国のサッカーレベルが卓越している事は、日本が世界に伍して戦おうと言う観点から見れば、良い事ではない。近隣で切磋琢磨できる国が多い方が、長い目で見れば日本にとってもプラスになるはず。と言って、中国のラフファイト放置を見ていると、この国がサッカーで今以上の存在感を示すとは考えづらい。とすれば、現状で日韓両国に対抗しうるのは北朝鮮と言う事になる。そう考えると、やや技術よりも肉体強化に走り過ぎているきらいは感じるものの、今回のように北朝鮮がよいチームを作ってくるのは、日本サッカーにとっては大変結構な事だと思う。



 で、ようやく柿谷について語ります。

 前半はいわゆるトップ下から、分厚い敵守備陣の隙をつこうとするが崩しきれず。

 後半は引き気味の左ウィングにポジションを移す。そこから、まずあのどうしようもないシュートを決めて1点差。シリア戦を見そびれていた事もあり、柿谷の得点をちゃんと見たのははイラン戦の(アルゼンチンばりの)ドリブルシュート以来。この2得点を見ると、細身ながら技巧で点を取るタイプなのかなと思った。

 そうこう思っていたら、あのスルーパスだ。ピューっと2人の選手が走り込む状態で、自分は静止して遠くの選手側を見ながら近い方の選手にキュっとスルーパス。パスが出た瞬間「決まった」と思いましたよね。単なる点取屋に留まらない素材な事がわかった。

 サイドから時にスローテンポに時に高速に、シュートもパスも狙う攻撃創造主。思い出したのは、スロベニアの至宝、ザホビッチ。いや、昔VTRで見たユース時代のクライフも斜めに切れ込むドリブルで挙動を開始していたな。いかん、いかん、優秀な若者が出てくると、すぐ調子に乗っちゃうのは気をつけなきゃ。それにしても、後から後から才能ある若者が出てくるものだ。

 嬉しいのは、柿谷はチームに帰れば、「すり抜け」の天才である森島と、「展開」の天才である名波と言う、考え得る最高レベルの師匠と共に鍛錬できる事。幾多の名場面で我々を愉しませてくれてきたこの2人の偉才の現役生活期間は残り少ないものになりつつある。この2人が全ての経験を柿谷に伝授してくれる事を。
posted by 武藤文雄 at 23:58| Comment(5) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月11日

両国の若者に賛辞を

 平山について書くつもりだったが、あの若者達のPK合戦とそれに至る死闘を見てしまったら、もうこちらを語るしかない。



 ネット中継を後半半ばから見始めた。1−0で日本がリードしている。日本の先制点は後からVTRで見たのだが、柿谷が後方からの浮いたスルーパスを受けて抜け出しての得点。トップスピードで抜け出しながら、腹や腿でボールを押し出しながら、GKの手前で低く強いシュートを打つのはお見事。アルゼンチンのトップクラスの選手ばりの技術だった。

 私が見始めた時間帯は、もう日本は守備を固めているかの試合振り。イランは技巧的な選手を揃えているが、日本の素早いカバーリングに苦しみ、長いボールと強引な競りかけで崩しを狙う。対して日本の若者達も決然とひるまずに身体を張る。

 守り切るかなと思われた後半38分ごろ、イランが日本の右サイドにロングボールにイランのFWが飛び込む(以降の左右は全て日本から見て)。日本の右DFがややボール処理を誤りFWに抜け出されるも、カバーに入ったCBが適切にカバーし身体をしっかりと入れる。と思ったら、イランFWが見事な粘り腰を見せ、強引に左足を前に出し浮いたボールを中に折り返す。そのボールが偶然にも日本DFの間隙を突き、飛び込んできたイラン選手にピタリと合い、強烈に決められてしまった。DFの数も十分足りていたのだが、これはあの折り返しをした選手を誉めるしかないな。一方、身体を巧く入れた日本のCBには、最高の失敗経験となった。カバーリングに入ったところまでは完璧だったが、国際試合の難しさを体験できたと言う事だ。

 同点にされて日本が攻め始める。面白いのは、このチームの若者達は勝負ところで、ドリブルで仕掛ける事。山田、斎藤、比嘉と言った若者が長い距離のドリブルで攻め込む(比嘉って、あのセイハン比嘉とは血縁関係は無いのだろうか)。対してイランはファウルを交えて必死に守る。延長戦でイランの2番は警告2発で退場になるが、いずれも日本の長いドリブルに対応できず見え見えのファウルで止めたもの。2回退場になってもおかしくないプレイだった。ただし、イランの最後の粘りは実に見事で、幾度かの好機を日本のシュートギリギリでブロックする。

 一方で前掛りの日本に対して、イランの逆襲は鋭い。再三日本CBの裏を狙った攻撃をGK広長が再三の飛び出しで防ぐ。また、イランの早めのシュートは、各DFがしっかりとブロックしよく防ぐ。

 日本がドリブルを狙い、イランがスルーパスを狙うのは、何か大人の代表チームと逆にも思えるが、少なくとも日本サイドに立てば、若者が個人能力を大一番で発揮しようとするのだから、文句を言う筋合いではないな。贅沢を言えば、いつも無理に狙わずに、たまにはゆっくり回せばよいと思うが、それはもっと年長になってからトライしてもいいのだろうから、これでいいのだと思う。気持のよいチームだ。

 延長終盤には、イランGKが負傷で長々と寝込むなど、あの9年前のアベドザデを思い出すべきなのか、本当に怪我だったのか(その割にはPK戦でのセービングは凄かったが)と言う場面もあり、PK戦へ。



 もうあのPK戦(12人が蹴った、あれ13人だったっけ?)はどう表現したらよいのか。これを決められたらオシマイと言う場面を3回(たぶん3回だけど4回あったかな)止めた広長。童顔ながらも、実に精悍な表情の若者だ。120分間の試合中も見事なプレイを見せてくれたが、あれだけ苦しい場面を耐え切った精神力、将来が実に愉しみだ。一方のイランGK(ナウシと言う選手なのかな)、上記の負傷?にも関わらず、キック前に一歩前に飛び出し抜群の読みと反応を見せて日本を苦しめた。これはよいキーパだ、今後も我々の前に立ち塞がる事を期待したい。日本の2本目と5本目を止めたにも関わらずやり直しとなったのは気の毒だったが、明らかにキック前にゴールラインを飛び出していたので仕方が無いか(PK戦前に主審は両GKにゴールライン上に立つように注意していただけに、この判定はやむを得ないだろう、むしろ2回のやり直しの後もこのGKはゴールラインから飛び出してセービングしていた。さすがに、主審もこれ以上のやり直しはさせられなかった、自分のスタイルで戦い切ったと言う事か)。

 そして水沼。主将を務めているのね。2世選手にプレッシャをかけるのは本意ではないが、このレベルまで来たのだから、少しは言及させてくれ。この日も、父と同じ右サイド引き気味のポジションから、組立、シュートに奮戦。延長前半の惜しいシュートのトラップからの動きなど、非常に実戦的な選手。やさ男の風貌だった親父殿に比べ、精悍な顔つきだが、心臓の強さは引き継いでいるようだ。PK戦では、1人目に登場し、陽動動作をする敵GKに対し落ち着き払って鋭い一撃を決め、逆にGKを威嚇した。さらに11人目に再登場(敵に退場者がいたので、日本も1人キッカーを外したもの、このルールは知っていたが運用されたのは初めて見た)し、今度は動くGKをバカにするように真ん中に決めた。



 若年層の国際大会の目的は、前途有為な若者に適切な経験を積ませる事にある。

 これだけの試合を120分間(と言っても最初の60分間は見ていないのだが)してくれると、もうそれだけでその目的が達せられた事になる。ところが、その後のPK戦で彼らは一層の経験を積めた。さらに日本の若者たちは世界大会の経験も積めるが、この試合を見させていただくと「もう世界大会なんてどうでもよい」と言う気持になってくる(いや、そんな事はないのだけれど、彼らは「世界」に行くために頑張ったのだから)。

 とにかく、理屈ではなく、これだけの試合を見せてくれた両国の若者達を称えたい。ありがとう。
posted by 武藤文雄 at 23:52| Comment(9) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月02日

若者たちへの失望

 結構凹んでいる。カタールユース大会、ネット中継を愉しんでいたのだが、日本の内容の悪さにガッカリしているのだ。PK勝ちとは言え、韓国に勝ったのだから、何を文句を言っているのだ、と言われるかもしれないが、延長戦での数的優位であのグダグダはないだろうと言いたいのだ。



 序盤から韓国が押し気味に進めるが、福元、槙野のセンタバックが相変わらず安定しており、堅実に守る。後半半ばから韓国に攻め疲れが見え始め、日本のカウンタが決まり始める。この流れは、どのようなランクの日韓戦でもしばしば見られる事で、日本から見れば、順調な流れとも言えた。さらに嬉しい事にじれ始めた韓国FWが、日本GK林に対して危険なキッキングで一発退場。この退場劇で、完全に日本ペースとなる。そして巧みな逆襲速攻から裏を取った内田に、韓国の主将が完全なラフタックル。これまた、一発レッドを出すしかない反則。後半終了間際とは言え、11対9と日本は完全に優位に立った。

 この時点で残り5分、サポータとしては一気に押し込んで勝負を決めて欲しい気持ちもあったが、まあ相手は2人少ない。丹念にボールを回して疲れさせて、延長で確実に仕留める選択肢もあるかなとも思われた。



 延長に入り、9人の韓国は当然全員が後方に引きこもる。しかし、この人数差があれば、日本は圧倒的に優位なはず。丹念に、かつ素早くボールをつなぎ、敵の疲労を誘いながら、点を取ればよい。しかし、そのつなぎが雑でトロいのだ。このように敵が引きこもった時は、サイドに人数をかけてえぐるか、ミドルシュートで中央の敵を引き出すかなどが基本戦術になるはず。しかし、ボール回しが遅く活動量も少ないため、サイドでボールを受ける人数が足りず、ミドルシュートを打つスペースすら作れない。さらには、パススピードの遅さから再三インタセプトされ逆襲速攻を許す始末。

 結果的に好機をほとんど掴む事なく、延長の30分が経過した。記憶する限りでは、敵GKが伸び切りのセービングで防いだシュートは2本程度だったと思う。11対9でこれでは...



 2人少ない敵に引かれて崩し切れないなら、何かアイデアを出して欲しかった。(あまり好きな攻撃ではないが)パワープレイを狙うなり、強引なドリブル突破を狙うなり、後方の選手がドンと飛び込むなり、方法はいくらでもあるではないか。

 さらに、攻めのアイデアが出てこないのは、各自の能力の問題(もし本当にそうならば、それはそれで大変なのだが)とも考えられるし、疲労の影響もあるかもしれない。しかし、何か気迫が伝わってこなかった事が一層残念だった。あの北朝鮮戦の素晴らしかった気迫はどこへ行ってしまったのだろうか。

 それとも、吉田監督の指示の問題だったのだろうか(ベンチに「戦う」と言う事については、日本最高峰だった森保氏がいたのだけれども)。いや、あそこまで試合が煮詰まれば、最後は選手のはずだよ。



 まあ、いいでしょう。あくまでも若者に経験を積ませるユースのタイトルマッチの、それまた準備のためのローカルな大会。思うに任せぬのがサッカーの常、皆若いのだから。これもまた経験として、切磋琢磨してもらいたい。

 考えてみれば、韓国に勝って文句を言うのだから、凄い時代になったと言うべきなのかもしれないけれど。
posted by 武藤文雄 at 12:40| Comment(12) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする