2006年01月14日

高校選手権に関する議論その1

 先日の高校選手権決勝についてのエントリのコメント欄で、様々な方が高校サッカーのあるべき姿について論じて下さっている。私も議論に交ぜてもらうのが一番よいのはわかっているが、どうにも皆様の議論のテンポが速すぎ、どうにも不義理をする事になってしまい、申し訳ない事この上ない。と言う事で、自分なりの意見を述べてみようと思う。



 今回の高校選手権をめぐっては大きく分けて2つの議論があったように思える。1つ目はJのユースクラブと高校チームとの競合関係。もう1つは、拙BLOGのコメント欄でも議論が沸騰した、高校チームごとのスタイルの相違である。

 ともあれ、今日は前者について講釈を垂れる事にする。



ここ数年の高校選手権の度に、有力選手の多くがJユースクラブに所属するようになり、高校サッカーのレベルが下がったと言及されてきた。現実的にトップレベルの高校サッカーの監督から、そのような発言がされた事もある。先日北朝鮮を破ったユース代表メンバのほとんどがJのユースクラブ出身者だった事もある。さらに、高円宮杯の決勝戦が2年続いてJクラブのユース同士の決勝戦となった事もある。それらによって、今シーズンに関しては一層その傾向は顕著だとも言われた。さらに大会中、(高校選手権を盛り上げようとするあまり)日本テレビが「ユース代表はJユースの選手が多いが、A代表は高校サッカー出身の選手が多い」と、絵に描いたような統計処理判断の誤りをヒステリックに連呼したのも、かえって高校サッカー衰退かと思わせた。

 これは中長期的な傾向として避けられないものではないかと思う。Jリーグ各クラブのブランドイメージは圧倒的なものがある。その地域の優秀な小中学生は放っておいても入団を希望するだろうし、他地域の子どもを勧誘する際にも有利だろう。まして、ある程度以上の天分に恵まれたと、本人も両親も周囲も思っている場合では、「プロ選手になるためには、名門高校よりもJクラブの若年層組織に加入すべし」と考える方が自然だし。もっとも、Jユースチームの選択眼の怪しさにも留意の必要はある、小学6年生の中村俊輔をマリノスがクビにしたのは有名な話だし、本田圭祐(現グランパス)の潜在力を見極められなかったガンバと言う話もある(一方でガンバは幾多の名手を自前のユースクラブから育成しているから、一層このエピソードは面白いのだ)。



 この流れに高校チームが対抗するために取っている手段が、中学からの一貫教育のようだ。人材確保が難しくなった分、自前での育成を検討しようと言う事だろう(下世話な言い方をすれば有力選手の囲い込み狙いとも言うけれども)。これは強豪私立高校の中学部強化のみならず、名門公立高校も近隣地域のジュニアのクラブの育成を進めようとしているようだ。

 もっとも、これは決して新しい考え方ではない。大都市圏以外の地方では、高校サッカーの充実は、その地域の少年サッカーの充実と強い相関があるのは当然の事だったのだから。清水FCから育った名選手を吸い上げて80年代の高校サッカーをリードした清水商、清水東、東海大一と言った名門高校。現在の愛媛FCの前身とも言うべき南宇和高校も地域の少年育成により、幾多の名手を生んだ。今大会を制覇した野洲高校とセゾンFCとの連携も、同様のものと考えてよいだろう。

 このような強化プログラムを充実させた場合、Jクラブに対する強力高校チームの強みもいくつかある。まず何より、サッカー以外にちゃんと学校教育をする事ができる事。これは結構重要事項だと思う。もし選手が本当のトッププロを目指そうと言うならば、最終的な働き先は海外となる訳で、その場合間違いなく重要になるのは語学力。そのような教育までパッケージ化して提供可能なのは、学校であるがゆえとなる。一方でもしその選手が、プロになれる程成長できなかった場合、その選手が高校でしっかりとした基礎教養を身につけていれば、それはそれで先々の人生プランに間違いなくプラスになる。

 さらに名門高校チームが優位に立てるのは、「育成の実績」。Jユースクラブは歴史が浅いために、小嶺、松澤、大滝、井田、古沼と言った「実績のある名指導者」を持たない。もちろん、ガンバの上野山、サンフレッチェの森山など、目を見張る実績を挙げている優秀な指導者も多いのだが、まだ歴史が浅い(有力なJクラブが高校サッカーの名伯楽をリクルートするのは近い将来大いに予想される事だが)。



 と、考えてきた場合、Jクラブと高校サッカーそれぞれの多様性がある事が、改めて認識される。このような多様性を維持しつつ、日本中で前途有為な若者たちが切磋琢磨する機会が得られ続ける事を切に望むものである。
posted by 武藤文雄 at 23:27| Comment(10) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月10日

敵陣を破るための目的指向

 高校選手権については、年末に行われた序盤戦をダイジェスト形式で見た他は、帰国後に決勝戦の映像を見ただけ。とてもではないが、総論は語れない。したがって、ごく狭い各論を語りたい。



 野洲の決勝点。素晴らしい得点だった。

 (野洲から見て、以下方向は全て野洲から見て)右サイドからの鹿実のクロスを野洲のDF田中がインタセプトする所から攻撃が始まる。この時点で、押し込まれていた野洲は3DFと5MFが守備に入っていた。田中はドリブルが左に前進し、サポートに入ったMFを壁に使いフリーになる。この壁パスで守備に回っていたMF乾が長躯して前進する時間が稼げた。そして、再三話題になる見事な低く高精度なサイドチェンジが、長躯した乾に正確に通る。この時点で、野洲と鹿実は3対3。鹿実としては苦しいが人数は足りていた。

 右サイドでボールを受けた乾は、迷わず中に切り込み敵DFを中央に寄せ、これまた話題になっているヒールパス。このドリブルとヒールでボールの角度が変わった事で、鹿実DFは皆中央に集められ、さらに全員がボールを見るために右サイドを向く事になり、トップ2人を見失う。ヒールキックは正確にフォローしてきた平原に渡り、さらに外に走りこんだ中川へ正確なスルーパス(中川か平原のいずれかが、最初に田中に壁パスを出したのだと思う)。鹿実DFが中央に固まったため全くのフリーとなった中川は落ち着いてセンタリング。鹿実DFが皆右サイドを向いたため、トップの瀧川と青木はゴール前で全くのフリーとなっていた。

 あれだけのサイドチェンジと、好ドリブルからのヒール。これだけ技術的にも高度で、周囲がよく見えていて、発想も豊かなプレイが2本続けば、さすがの堅い鹿実守備陣も崩れる。いや、逆に言うと、このような大試合の終盤で、点を取るためには、このような素晴らしいプレイが必要なのだ。



 野洲の山本監督、あるいは野洲に優秀な選手を供給した地域の指導者たちは、その目的のために、自由奔放なサッカーを可能とする指導を継続したのだろう。今大会話題を呼んだ野洲のサッカーは、正に敵陣を破るための目的指向の賜物だったのではないか。

 

 ところで、非常に気になる報道が目立った事にも触れておきたい。鹿実、国見の過去の実績、あるいは指導方針を、(野洲と比較して)「フィジカル重視」と雑な言葉でまとめ、極端に否定的な表現をする報道が見受けられたのだ。この両チームが、過去素晴らしい選手を多数輩出してきた実績を知っての事だろうか。野洲の方針(これに類似した方針で実績を挙げてきた高校チームも、静岡学園を筆頭に多数あるのは言うまでもないが)と実績は、大いに評価されるべきだろうが、異なるアプローチを取るチームを否定するのは、全く別な話である。
posted by 武藤文雄 at 23:45| Comment(31) | TrackBack(2) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月27日

アジアのイタリア

 北朝鮮の若者がここまで質の高いサッカーをできるのは、近い将来の我々にとって極めて明るい話題と言えよう。小柄ながら安定した技術、献身的な活動量、伝統の裏を突く意欲、いいチームだった。でかくて強いばかりの選手がラフプレイを繰り返す次期五輪開催国よりも、格段に将来が期待できそうだ。この大会は東アジアの伝統国がトップレベルに復帰するキッカケとなるのではないか。

 試合終了後の選手たちの喜び振り。大体、1次予選から我らの若者たちが、あれだけ歓喜するだけの厳しい試合を闘えたのだけでも、結構な事だ。

 どうでもいいが、中年男がインタネット配信をパソコンで観ながら絶叫するのは、あまり格好のいいものではないな。ともあれ、数cm角の画像を2時間堪能させていただいた次第。さすがにあれだけ画面が小さいと、各選手の視線の向きが追えないのが、ちょっと辛い。

 ともあれ、福元である。読みの良さと身体の入れ方の巧さは絶品。幾度かピンチを迎えたようにも見えたが、ペナルティエリア外からの精度の悪いロングシュートを除いては、事実上ピンチは無し。Jリーガとして、他の選手との格の違いを見せ付けた。その存在感を含め、ちょっと井原を思い出したりして。贅沢を言えば、もう少し中盤の組み立てに参加して欲しかったのだが。このような伸び盛りの選手は、北京は当然として、ドイツを意識して欲しいくらいだ。

 攻撃ラインの選手がいささかバタバタしていたのは気になった。ハーフナー息子と若森島は頑健派の道を歩むのだろうが、その他の攻撃ラインの選手はこれからファンタジスタを目指すのだろう。まあ、連中が化けるのはこれから。小野はさておき、中田も中村も、そしてもちろん小笠原も松井も、この段階ではワンノブゼムだったのだから。皆、これからが勝負なのだ。

 吉田靖監督は私と同い年。三菱で知的な攻撃選手として活躍した名手。ただ、私としては、早稲田大時代に右ウィングとしてプレイし、逆サイドから現フロンターレ監督の関塚が飛び込んできたコンビネーションの記憶が強いな。既にJで実績を上げている同年代のコーチが多い中、(一時にはレッズのコーチとしても活躍した記憶があるが)日本協会ご用達コーチとして今後いかに実績を作り上げていくか。



 言ってみれば、イタリアが難しいタイトルマッチで、ハンガリーとかポーランドとか、かつて栄光を掴んだ事のある強国に苦戦しながらも、絶対負けないようなやり方で、確実に勝ったと言う試合だな。まあ、いいでしょ。
posted by 武藤文雄 at 23:52| Comment(2) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月25日

3人の若手ストライカ

 諸事多忙を理由に更新をサボっているうちに、世の中は進んでしまい、昨日はJ1第20節。しかし、どうしても19節について書きたかった事があるので、いささか気の抜けた炭酸飲料のような講釈を。

 

 やはり平山相太には何かがある。 

 平山がシュータとして抜群の才を持つ事は過去も再三述べてきた。平山は敵陣の近くで使えばよいのだ。

 しかし、彼のヘディングの巧さのみを切り出し単なるポストプレイヤとして機能する事のみを期待する監督が、平山の特長を無視した起用法をするのに散々心を痛めてきた(そう言った監督が若年層年代と言え、代表チームを率いているのだから悩み深かったのだが)。

 平山が大学を去り、オランダに向った経緯を邪推する気は無い。しかし、新たなクラブでシュータとしての抜群の潜在力を見せ始めたのは事実。大いに期待したい。ちなみに、ヘラクレスの監督ボス氏(実に知的な選手だったな)が、入団決定時に平山の足のシュートの巧さを指摘したらしい。わかる人にはわかるのだな。



 そしてカレン・ロバートの爆発。

 ワールドユースでの、この選手の献身振りは本当に素晴らしかった。特に1次リーグ最終戦、リードされた日本が終了間際に無理攻めをしかけ、逆に逆襲速攻を許した際に、長躯して自陣に戻り敵の強シュートをヘディングでクリアした場面は感動した。

 そのカレンだが、ここまでもJリーグでよく点を取っていたが、先週末にマリノスを撃沈させた2発の見事なこと。考えてみれば、カレンの所属するクラブには、得点能力とチームへの献身と言う意味ではこれ以上無い偉大な先達がいる。カレンには、この先達が元気なうちに、盗めるもの吸収できるもの全てを学んで欲しい。さらに、この先達が今のカレンの年齢の頃と比較すれば、格段に今のカレンの方が能力が高いだけに、期待は高まろうと言うもの。先達が30歳前後で身につけた位置取りの抜群の巧さをカレンはいつまでに身に付けてくれるのだろうか。



 さらに前田俊介の勝負強さ。

 この選手の技巧とそれを活かしたシュートの巧さは、既に疑いのないもの。そして何より素晴らしいのは、その巧さがしばしば試合終了間際の一番苦しい時間帯に発揮される事。

 そして、嬉しいのはそのシュートの1つ1つに、明らかな意図がある事だ。つまり、前田の場合、ボールを受け(ドリブルシュートの場合はボールを持ち出し)シュートに至る流れを見ていると、前田がどのようなプレイを狙っていたかが理解しやすい。それだけ、考えたプレイをしていると言う事だ。だから、試合終了直前と言う難しい時間帯でも、考えているだけに冷静にプレイする事ができて、よく点が取れると言う事ではないか。例えば、先般のアントラーズ戦の決勝ゴールだが、直前に大岩が退場になり敵が9人にない、サンフレッチェが相当有利になっている事を冷静に把握していた雰囲気だった。

 ワールドユースの豪州戦の同点ゴールなど、「あれはオフサイドだった」と発言できるあたりにも、この選手の冷静さが感じ取れる。

 

 これだけ優秀な若手ストライカが3人もいる。今更、この3人をもっと有効活用していれば、オランダでもっとよい成績が...と言った野暮はもう言うまい。それよりも、彼らのうち1人でよいから、ここから2,3段階くらい大化けし、ドイツ行きのメンバに入ってくれれば、これほど結構な事はないのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月22日

平山の特長

 直情的に語らせていただく。

 やはり監督の責任としか言いようがない。

 大熊氏は、FC東京をJ1に定着させ、(そのチーム作りや采配に多大な疑問はあったものの)前回のワールドユースでベスト8進出を果たした、評価すべき実績を上げた監督だ。しかし、今回のワールドユースのチーム作りでは、致命的な過ちを犯してしまった。

 ただし、私が大熊氏を批判するのは、水野に代えて兵藤を起用したとか、事前にマスコミに120分勝負と宣言した事で終了間際選手たちが集中を欠いたのではないかとか、等の戦術的な理由からではない。

 水野の交代だが、兵藤も活動量豊富な悪くない選手だ(今大会の出来は今一歩だったが)。また守備面で水野が時々1対1に負けていたのも確か。私自身は水野の交代は絶対すべきではなかったと確信しているが、延長を見据えて守備のよい選手を起用すると言う考え方もあるのかもしれない。また、終盤の兵藤の精度を欠いた(しかしミスと言うほどではない)バックパスを敗因とまで言うのは論理の飛躍だろう(失点はその後のスローインからなのだし)。

 粘り強く戦い抜いてきたチームに、あの時間帯であんなに集中が切れたプレイが出てしまうとは皮肉な事だ。出来の悪い試合を辛抱強く拾い続けてきたチームが、久々に出来の良い試合をして、肝心要の時間帯のまとめでウッカリしたと言う事か。本当にサッカーと言うものは難しいスポーツだ。



 私が不満なのは、チーム作りのベースとなった平山の起用法だ。誤解されては困るが、私は平山を中核にしたチーム作りを否定はしない。どのようなチームでも中心的な選手の個人能力を存分に発揮できるようにチーム作りは行われるべきだと思う。そして、平山ほどの逸材であれば、ユース代表チームを彼を中核として作っていく事自体は適切な選択の1つだと思う。

 私が気に入らないのは、大熊氏が平山を「ポストプレイヤ」として評価してチーム作りをした事だ(アテネ五輪代表監督の山本氏も同じ間違いを犯した)。私は平山を「ストライカ」として評価してチーム作りをすべきだったと思っている。

 平山の「ポストプレイ」を軸にチームを作ろうとするから、あそこまで不正確なロングボールが増えてしまったのだ。さらに、あれだけ頻繁に長いボールを使えば、敵DFだって予想して待っている。そうなれば、どんなにヘディングの強い選手でも、空中戦に勝つのは簡単ではない。さらに、せっかく競り勝っても適切な位置の味方のサポートがなければ、ボールはキープできずルーズボールになってしまう。さらに悪い事に、味方のサポートが薄い場合、そのサポートに来た選手からのパスを受けなければならないから、平山は敵陣から離れたところにウロウロする事になる。すると、平山は自分が最も仕事をすべき場所である敵陣から、遠いところでのプレイを継続する事になる。以前から述べている事だが、平山がタッチ沿いに開いても、中盤でボールを受けても、敵は怖くない。敵は自陣近傍の平山が怖いのだ。前回のワールドユースで活躍した平山は、この2年間山本氏と大熊氏の指示の下、敵陣から離れた場所でウロウロする事を続け、結果として思うように成長できなかったのではないかとすら思える。



 平山を軸にチームを作るのであれば、いかに「平山に点を取らせるか」と言う考え方で目的志向のチーム作りが可能になったはず。例えば、両翼を深くえぐって精度の高いボールを入れるためには、誰と誰を組み合わせるのがよいのか。敵が両翼攻撃を恐れて守備を固めた場合、平山をおとりにしたクロスを入れるためには、どのようなセカンドストライカやパッサーが適切か。そのような選手同士の組み合わせを作り上げて、チーム作りをして欲しかった。

 ちなみに「いかに平山に点を取らせるか」を具現化して見せたのが水野である。オランダ戦のFKは、平山の高さを気にしている敵DFに対し、平山を横に走らせてフリーにさせ点を取らせた。豪州戦、強引に左サイドをえぐり、ゴールラインと平行に高くて速いボールを蹴り、平山に合わせようとした(合せ損ねた平山の「申し訳ない」と言う表情)。モロッコ戦、右サイドで高いボールを蹴る振りをして小さなスイングで低いセンタリングを入れ、平山に足で狙わせた(反転した平山の左足シュートが枠を外れた際に、ロングショットで水野が本当に悔しそうな素振りをしたのが写ったのが印象的)。

 水野はベナン戦後のインタビューで「平山が点を取らないのが問題点」と語ったと言うが、評価すべきはその強心臓ではなく、勝利のための明確な目的意識であろう。

 ここまで見事なコンビネーションが、(おそらく2人の自覚と反復練習のみで)できていたのだから、続いて、平山のウラから飛び出す前田俊介と、水野に前を向いてボールを持たせるカレンの献身と梶山の正確な展開と...かように次々に発展させた組み合わせを考えていれば、同じメンバだとしても、一層素敵なチームになったのではないかと思えてならない。



 大熊氏はスタートのところで間違えていたとしか思えないのだ。平山は大熊氏に難しい仕事を要求され、肝心のゴール前で力を発揮できずに終えたように思えてならないのだ。ワールドユースベスト16止まり云々よりも、選手の素質を有効活用できなかった責任は重い。平山の復調を節に祈りたい。

 北京五輪に向けたチーム作りが近々始まるのだろう。私はその監督としては、ここまで述べた理由で、大熊氏は不適だと思う(そもそも五輪代表を、あまり長期的に作り上げる事も最近問題視しているのだが、それは別な機会に)。



 まだ若く情熱的な大熊氏が、野に下った上での復讐戦に期待したい。
posted by 武藤文雄 at 19:46| Comment(17) | TrackBack(5) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月19日

最高の結果

 ワールドユースの最大の目的は、前途有為な若者達に経験を積ませる事にある。過去も幾度か述べたが、経験と言うものには様々な種類があるが、失敗経験は最も有効な経験となる。しかし、残念ながらサッカーにおける多くの場合、失敗経験は「敗退」につながり、その失敗経験以降に経験を積上げられないと言う問題点がある。

 今回のワールドユースでは、1次リーグの3試合全てで「失敗」としか言いようのない試合を行いながら、堂々と2次トーナメント進出を決めたのだから、これほど結構な事はない。誤解されては困るが、これは皮肉ではない。試合内容はよくなかったし、試合運びも稚拙だった。けれども、我々の若者たちは、苦しみながらも丁寧に戦い、勝ち点を積上げ、最低限の目標を達成したのだ。悪いならば悪いなりに結果を出すのが強いチームなのだから。



 ベナン戦、勝ちたい試合で敵に退場者が出たのにも関わらず、同点以降チーム全体で「勝ちに行く姿勢」が見えないのが不満だった。先日も触れたが、水野をスタメンに使わない事は、単に敵を楽にする行為に過ぎない。大熊氏は、2年前も坂田をスタメンから外し、自ら苦戦を招いた。本人は策を弄しているつもりなのだろうが、敵の立場で1度考えてみたらよいと思うのだが...

 そして迎えた豪州戦。非常に勝ち点計算が難しい試合となった。このような試合は、まずは守りを固めて失点ゼロで時計を進めるのが肝要。そして、日本はその通り試合を進めた。北斗や増嶋が非常に悪いボールの取られ方をした直後の決定的ピンチはあったけれど、西川が見事な守備で封殺。後半、水野が投入され妙技を見せる事で豪州の守備ラインを下げる事にも成功。このまま別会場でオランダがベナンに勝てば、0−0で2次トーナメント進出確定と思わせる展開となった。しかも、梶山と水野の巧技から幾度と好機を掴む。終盤、豪州が無理に前に出てきたところをつけば、勝利も十分に望める流れとなった。

 しかし、あのFK。ここまで攻守で日本を救ってきた西川が...2次トーナメント進出を決めた今となっては、この西川の痛恨のミスも彼にとって素晴らしい失敗経験となった。必ずや、西川はこのミスを素晴らしい糧としてくれるに違いない。

 ここからの日本の猛攻も見事だった。梶山と水野が中盤をコントロール、このチームの悪癖である、平山狙いの単調な攻撃ではなく、丁寧にサイドを使った攻めを継続する。前田や水野が再三サイドを崩し、好クロスを上げるも平山が決めきれない。豪州の守備網も必死に我らが誇る長身ストライカをマークしているのだ。まさに手に汗握る攻防。

 森本を投入するも、もう1つゴール前の人数が足りず攻め切れない。豪州は日本エンドのタッチ沿いでボールをキープし時計を進めようとする。そうはさせじと、日本も身体を張る。平山が止められている以上、このチームで最も得点能力が高いと思われる前田をゴール前に進出させたいところだが、前田は家長の交替で左サイドに起用されており、飛び込めない。

 日本のCKからの豪州の見事な逆襲、小林が必死に時間を稼ぎ、敵のシュートを最前線から戻ったカレンがクリアした場面は感動的だった。

 それでも、梶山と水野は我慢に我慢を重ね、丁寧な攻撃を継続。そして、梶山の見事な技巧、そしてついにゴール前に進出した前田俊介!!!!!

 その後の豪州の猛攻。逆襲から平山がフリーになりながら、シュートが枠に行かなかった場面には失望。ここまで、空中戦で決められなかったのは、豪州守備陣の必死の防御があったためだが、この場面は90分間で初めてシュータ平山がフリーになれた場面だったのだ。あそこで、決めずには平山の存在意義はない。自らが目指せるレベルが、格段に高いものである事を改めて自覚し、2次トーナメントでの大爆発を期待したい。

 そして、日本は守り切った。幸運もあった事は否定しない。しかし、日本が努力を重ね、戦い抜いたからこそ、勝ち取った2次トーナメント進出なのだ。



 豪州戦は精神的にも非常に重要な試合。何故ならばこの両国の若者達は、今後ワールドカップ予選、アジアカップで、直接戦う事になるからだ。試合終了後、倒れ込んで涙にくれた豪州の選手達に、相当なトラウマを植え付ける事ができたのは大成功だ。



 今大会、アジア勢はなかなか好調のようだ。中国とシリアも2次トーナメント進出を決めたらしい。アジアのレベルアップは、アジアチャンピオンから世界制覇を目指す日本にとっても喜ばしい。あれ、もう1国、アジアから出場国があったような気がしたが、勘違いかな。
posted by 武藤文雄 at 21:26| Comment(7) | TrackBack(3) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月12日

オレンジの若者に感嘆

 私が記憶する限りにおいて、全ての年齢層においても、日本とオランダの代表チームが公式戦を戦うのは、これが初めてではなかろうか。クライフ世代の私である、まずは我が青い軍団が、あのオレンジ色と戦うだけで嬉しくなってしまった。

 最近のオランダと言えば強力な両ウィングを前線に押し立てての4−3−3。その対策として、大熊氏は4DFを採用、両サイドバックには既にJリーグの自クラブで中心選手とも言うべき能力を発揮している中村北斗と水本を起用した。しかし、オランダの左ウィングクインシーは、まあ何と言うか、もうどうしようもない化け物だった。あそこまで中村北斗がやられてしまうとは。

 試合は開始早々からこの左ウィング対策のために、守備陣が引きずられ、思うようにボールを保持できずに圧倒された。ただし、オランダMFはパス回しが巧い選手は揃っていたが、緩急をつけてくるタレントがいなかったのが救い。早々に2点差とされた以降は、曲りなりにもスピードに対応できるようになり、何とかそのままで試合を進めるのに成功。

 後半はオランダもオーバペースが祟ったのだろうか、日本もそれなりにキープできるようになる。そして、水野のFKから平山が見事なヘディングシュートで同点に。このヘディングは平山の得意な形で、高さで散々敵DFを悩ましておいて、たまに低めのボールに対して走りこんで敵DFを振り切る形。

 終盤、平山の空中戦から、何回か決定機を掴むも決めきれず、追いつく事はできなかった。まあ、あれだけ猛攻を許しては、負けもいたしかなないだろう。贅沢を言えば、オランダのプレッシャが一段落した後半こそ、水野、本田、家永、あるいは梶山や船谷などの「技巧派」を複数起用し、日本らしい変化のある攻めを見たかったが(言い換えれば、彼らの技巧がオランダの守備陣に通用するか見たかったが)、あれだけ前半押し込まれての対応を余儀なくされたのだから、いたしかたあるまい。耐えに耐えて勝負に持ち込んだ事を高く評価すべき試合だった。

 ワールドユースの最大目的は、将来のワールドカップに向けた経験。そのような観点からすれば、最高の試合だった。1次リーグ残り2試合で、この失敗経験を取り返して、経験蓄積が継続する事に期待したい。



 色々と考えさせられる試合だったが、やはりクインシーに対する驚きにつきるか。。

 クインシーのような選手は、「育てる」のは難しく「育つ」ものだと思うが、日本はどうすれば、そのような「育つ」環境を作れるのか(福島に優秀な中学生を集めるのが有効で無い事は確かだと思うけれど)。

 クインシーのプレイそのものを思い起こすのも愉しい。彼のドリブルは、ボール扱いの正確さ(特に足の裏を使ってのタメから、足の他の部分への切替の巧い事)、腕を含めた身体、特に上半身の使い方、加速の速さ等、様々な要因が重なり合ってのもの。今大会、より厳しい戦いになった時に(その戦いの相手が再度日本だと、なお嬉しいのだが)、そのドリブルはどのように猛威を振るうのか。

 さらに彼が今後どのような選手に育っていくのか(もし、クインシーが順調に育った場合、代表チームには同じポジションに、それほど年齢の違わない凄いライバルがいるのだし)も、興味深い。この手の爆発的ドリブラがどう完成していくのだろう。

 さらに日本の同世代の選手達との比較も愉しい。例えば、加速してからの足の速さは苔口だって相当だし、瞬間のスピードは前田俊介もなかなか、森本のドリブルからシュートへの円滑さは見事なものがある。せっかく、厳しいタイトルマッチを戦ったのだから、日本の若者達にはこの素晴らしい刺激を活かして一層の成長を期待したい。



 それにしても、大人の代表チーム同士が試合してもこのような展開になるのではないかと思わせる試合だったな。何となく来年の今頃、お手合わせする機会があるのではないかと。
posted by 武藤文雄 at 18:56| Comment(9) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月08日

遂行されそうな愚行

 以前も厳しく批判したが、どうやら日本協会は冗談ではなく、過去30年間で最悪の愚行を実施しようとしているようだ。この施策がいかに拙いものかは、以前のエントリで書いたので、ここでは少しシミュレーションをしてみる事にする。

 この愚策が具体化し始める。そのうちU−1Xの代表に、そのチーム?から選手が選ばれる。他チームから「その選考が疑問だ」とクレームがついたら、日本協会はどう釈明するのか。現実的に、各年齢層の代表に選ばれる事は、その選手の市場価値を上げるのみならず、所属クラブの市場価値も高める。つまり誰が選ばれるかについては、選手もクラブもカネがかかっている問題なのだ。しかし、従来誰も文句を言わなかった(言わなかったのではないな、表ざたにあまりならなかっただけだな)のは、選考する日本協会が一応「客観的」な立場にあったからだ。しかし、その日本協会が自ら「単独クラブ」に出資していては、客観性もへったくれもあったものではないではないか。この愚策実施以降は「表ざたにならない」訳がない、どこかで誰かがプッツンくれば、もうマスコミが大騒ぎするのは間違いないではないか。

 元々、代表選手の選考基準と言うものは、極めて主観的なものである。よほど優れた人材ならばどの監督でも選ぶだろうが、当落線上の選手どう選考するかは監督の好み(好みと言う表現が悪ければ、識見と言う言葉を使ってもいいが)と言う事になる。また若年層の場合は、将来の伸び代をどう読むかと言う、これまた非常に定量化しづらい基準も入ってくる。
 この問題は、各県の国体代表選手を選考する際には、常に問題になる事であり、ここ何年も各県協会が非常に神経を使って運営してきた事だ。つまり、日本協会だって、若年層の選抜がいかに神経を使うものか、理解しているはずなのだが。

 誤解されては困るが、私はこう言った代表、選抜選考が、「公平」、「客観的」に従来行われてきた、今後行われて欲しい、などと、単純なキレイ事を言う気はない。上記したように、「公平」、「客観的」に行われる事自体が、非常に難しい話なのだし。

 しかし、誰もが「公平でない」、「客観的でない」と言う仕組みになるのは、拙いと言っているのだ。
 加えて、以前のエントリでも述べたように、この愚策で本当によい選手の育成が成功するとも思っていないのも確かだが。

 スポーツ新聞ならさておき、サッカー商業誌は、何故この愚策の実施を批判しないのだろうか。
 頼むよ、エル・ゴラッソ!
posted by 武藤文雄 at 23:41| Comment(3) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月07日

オランダとの対戦

 ワールドユースの組み分けが発表された。日本は地元オランダと共に豪州、ベナンと同じグループとなった。16/24が2次トーナメント進出と言う94年ワールドカップまでのレギュレーションだから、まずは1勝以上するのが最低条件、試合経験と言う意味でも、この組み合わせは悪くないと思う。



 豪州のユースと言うと、4年前のアルゼンチン大会で完敗した記憶が何ともいやらしい。A代表(01年コンフェデの雨中の死闘は記憶に新しい)含め、世界サッカー界での存在を上げていこうと言うライバル国。この国に勝てるかどうかは、どの年代別チームでも、完成度を測定する1つのバロメータとも言えると思うだけに、対戦が愉しみ。

 ベナンという国はほとんど知らない。確か98年だか02年だかのワールドカップ開催国の1次募集?に立候補したのではないかと記憶している。その時調べたからだと思うのだが、ナイジェリアの隣と言う事くらいの認識があるくらい。おそらくブラックアフリカ独特の個人運動能力の高さが特長か。とすらば、若い選手にとっては、格好の経験となるだろう。

 そして、地元オランダ。考えてみると、オランダサッカー界と日本は色々なつながりがある。代表チーム含めて幾多のクラブで指揮を執り業績を上げたオフト氏から我々は幾多の事を学んだ。単独チームの外国人監督としてはおそらく日本初だったバルコム氏(JSL2部時代の読売)もオランダ人。欧州のゴールキーパの凄みをまざまざと見せてくれたディド・ハーフナも、オランダ出身(彼の息子が日の丸を付ける可能性があると聞くだけで嬉しくなる)。さらに、望月達也(前ベルマーレ監督)、小倉、小野、藤田、戸田ら、オランダリーグでプレイした日本人も多数。

 ところが、その割にこの国との対戦は、今までA代表ではなかった。今回、ユースとは言え、あのオレンジ色のユニフォームと対戦できる事はそれだけで愉しみ。欧州ではユースの試合は着目されづらいというが、地元大会の開幕戦だけに、それなりに観客も入り、日本選手は敵地で難敵と戦う経験も積めるかもしれない。



 いずれの敵も、大柄な選手が多い国。アジアユースでは、飽きる事無く平山の頭をめがけてフィードし続けた選手たちも、違うやり方を試みるはず。質の高いサッカーで上位進出する事を期待しよう。
posted by 武藤文雄 at 23:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月10日

松澤先生の涙

 2チームのプレイ振りの対比が面白かった。

 

 市立船橋の各選手の能力は「対敵動作の速さ」に現れる。攻めに転じた市船の各選手のボールキープとつなぎは、絶えず敵DFとの相対位置関係を最適に修正する速さが見事。また守備ラインの各選手も、ボールを持つ敵と自分とカバーする味方について同様の配慮が働いている。いわゆる「ボディシェープ」(数年前に日本協会が普及させようとした言葉、どこまで定着しているのか)が常時最適化されているのだ。

 そして、周囲の相対関係を適切に理解している故だろう、状況変化が起こった直後の修正の速い事。鹿実の2度の決定機を防いだ場面の見事さ。

 この市船の各選手の能力は、布先生時代からの伝統だが、石渡先生に替わってからその良さは益々洗練されているように思える。石渡先生の方が年長と言う事を含め、私はこの2人の凄さを感じずにはいられない。自分の転身にあたって見事な後継者を見出した眼力、それを受け従来に勝るとも劣らない成果を上げる指導力。

 もっとも、これだけやれる選手が多いのだから、時間帯によってはより攻撃的に戦ってもよいではないかと思うのだが、「まず守る」と言う考えから入っているのだろう。伝統的に各選手に「イタリアの血」が流れているのか(笑)。

 今日の試合を見ていて、日本サッカーにおける市船の重要性を再認識した。あれだけ「対敵動作の速さ」が高い守備ラインを破るべく、鹿実、国見、静学、サンフレッチェ、ガンバ、ジュビロらが(いや、他の全てのチームが)努力している事だけで、日本サッカーのレベルは上昇しているように思える。



 一方の鹿児島実業。こちらの各選手の能力は「自分の得意に持ち込む速さ」。素早い出足でボールを奪うや、周囲が一気に押し上げて展開、受けた選手は自分のよい体勢に持ち込んでの前進を狙う。守備でも敵の攻撃を読んでおいて、自分の得意な体勢で当たりボールを奪うなりはね返す。

 後半半ば以降、この「速さ」で完全に市船を押し込む事に成功した。しかし「速さ」のみが前面に出てしまい、「溜め」が無くなったのが、市船に守りきられた要因に思える。

 ただし、このチームは過去再三「溜められる」選手を生んでいる。前園、遠藤、松井...こう考えると、卒業後に化けるべく選手を育成している感もあるのが、松澤先生の凄みに思えてくる。GKからFWまで満遍なく各ポジションに日本のトッププレイヤを輩出してきたこの偉大な指導者の。



 実は、この日大活躍したGK片渕選手のお父上と、先日一杯やる機会があった。したがって、この数日間は、苦しい場面で堅実なセービングを見せる(顔がお父上そっくりの)片渕を応援していたのだ。素晴らしいGKではないか。

 そして、この日も何度と無く好セーブ。最後のPK戦に至り、私の興奮も最高潮に達した。そして、片渕の見事な反応もあり、鹿実がリードし、最後の1人が決めれば「鹿実初めての単独優勝」と言う場面。

 TVが映し出した松澤先生の表情。「何としても勝ちたい、そしてあと1人で勝てる」と言う期待を噛み締めた素晴らしい表情。そして勝利直後の涙。

 今大会は「鹿実のための大会」で、よかったのではないかと。

 

 そして、渡邉広大よ、ベガルタで復讐戦を。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする