2004年01月13日

しつこく平山を考える

 昔と異なり、時間的な制約もあり、思うように高校選手権をじっくりと愉しむ事ができなくなってきている。とは言え、いくつかのチームを愉しむ事はできた。筑陽、滝川ニの切れ味鋭い個人技集約サッカー(両チームともMFからの持ち出しを個人能力で行うのに感嘆)、ベガルタ入りする大河内の守備力と正確なキック(萬代の方はニュース映像すら見られず残念)、宮内氏率いる新概念のチーム成立の出入り激しい試合(甥子さんにも期待したい)等々。そして中でも、1月2日の日記で講釈した立正大淞南の「勝利への執念」は、大変な発見だった。



 と、私のような不熱心なサッカー狂でも、愉しみを多数発見できる大会だったが、例によってマスコミは平山一色。例年だとそのような報道に「おいおい」と言いたくなるのだが、さすがに今年だけは仕方が無いかなとも想う。スケールの大きい選手が平山とカレン、増嶋だけだったかどうかはさておき、優勝チームのエースストライカがここまで派手な活躍をしたのだから。



 昨日も吹いたように、私も平山の活躍には浮かれている。昨年は長身を利した空中戦での得点がほとんど。一方、準決勝までの得点は見事なトラップとボールコントロールで、敵を外しつつ強いインステップキックが蹴れるポイントにボールを完璧に置くパタン(しかも、左右両足!)。決勝の6点目も同じ形、ただしこの6点目は、敵DFに正対状態で平山が「来る」事が十分に読まれている状態から、フェイントとスピードで抜き去ったのだから、単純な個人技の高さは素晴らしい。

 ところが、決勝の2点目は全く異なるパタン。逆襲から自らのドリブルを起点として、左に展開、その瞬間展開方向に向けダッシュしマーカをボールサイドに引き付け、マーカがドリブラを見た瞬間に右方向に向きを変え(マーカの視野から消える)、センタリングに対応する時はフリーとなっていた。おそらく、左に展開する直前から、平山には「どのようにして得点するか」のイメージが完璧にできていたのだろう。この選手は、個人能力が高いだけではなく、得点を生み出す創造性も具備しているのだ!(確かにワールドユースのエジプト戦の得点も、谷澤のスルーパスを受ける前から、イメージが出来ていた)



 気になったのは、6−0になってから2回決定機を逸した事。1度目は、右サイドからのセンタリングを無人のゴールに押し込もうとしたが、体勢がやや悪くてしっかりミートできず、シュートは枠を捉えるが、DFにかき出される。2度目は、味方とのパスワークでGKまで抜き去り、完全にフリーになりながら、カバー(と言うより捨て身のブロックしてきた)敵DFにぶつけた。

 ここまで、ゴール前で実に冷静なプレイを見せていた平山とは思えない凡プレイだった。6点目のゴールでの個人技に満足しきっていて気が抜けたのか、それともフリー過ぎる状態は苦手なのか。
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2004年01月12日

小嶺先生の泰然

 ユースレベルのサッカーは、そう頻繁にフォローしている訳ではないし、今大会も丁寧に見続けてきた訳ではないので、この日の大差の結果が偶然の産物なのか、実力の賜物なのかは判断できない。TVによると、練習試合で筑陽学園が国見を下した事があるらしい。したがって、(全国大会なり国立競技場に)経験豊富な国見が前半早々に先制したため筑陽が前掛りになった事が大差の要因で、両チームの戦闘能力にはそれほどの差はなかったのではないのかもしれない。

 とは言え、この大舞台で立ち上がりから猛攻をかけ、前半に先制、後半も早々に追加点を上げて勝負を決めてしまう国見の強さには感心させられた。平山、兵藤と言った大駒の個人能力も相当だが、それ以上にチームとしてのタイトルマッチの戦い方の巧さだろう。

 そして、その戦い方のツボを押さえたチーム作りは、明らかに小嶺先生のお仕事と見た。

 

 試合後のインタビューで、「帝京に並ぶ6度目の優勝おめでとうございます」と言うインタビュアの言葉に対し、小嶺先生は泰然とした態度で「黎明期の高木琢也らが先般訪問してくれた。高木ら過去の教え子や支援者のおかげ」と答えた。30年以上に渡り、幾多の名選手を生み栄光に包まれた、この日本サッカー界屈指の偉人の凄みを感じた。

 氏が育てた主要人物を振り返ってみよう。坪田、勝矢、高木、三浦淳、(課題山積だが)大久保らある一定期間A代表でプレイした選手たち、吉田(元トヨタ)、小島、原田、永井兄弟、路木、塚本らJSL、Jリーグで長期間活躍した選手たち、都築、徳永、近藤ら売出し中の若手など、優秀な選手は列挙に暇ない。さらに素晴らしいのは、小林伸二氏(トリニータ)、山田耕助氏(前橋育英)などの、国内を代表する指導者も先生の教え子である事。

 余談ながら、この完璧な実績を持つコーチの指導がけしからんと言う輩がいるのだから、世の中面白いものだ。

 

 平山は、かくも見事な実績のある小嶺先生の指導者人生の集大成と言える作品なのかもしれない。日本協会の偉い人が「釜本二世」と浮かれているようだ、なるほどこの日の6点目の右45度は釜本を髣髴させた。もっとも、私は、あの膝の柔らかさとシュートへのアプローチの速さに、ファン・バステンを思い出したりした。つまり、私も浮かれているのである。
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2004年01月05日

平山すごいな

 高校サッカー準々決勝だが、さすがに仕事始めをさぼる訳にもいかないので、夜のスポーツニュースで愉しむのみ。市立船橋のPK沈没は確かに意外だが、相手が鹿児島実業なら仕方が無いか(鹿児島実業の選手たちは、天皇杯でも井原引退試合でも見かけた、勉強熱心さがサッカーの神の好みにあったのかもしれない)。後のベスト4は久保の出身校筑陽は初出場だがレベルの高い福岡代表、幾多の名手を生んだ滝川ニと、「まあ、なるほど」と言う2チームと、例によって国見が残った。



 さて、こうなると平山である。この日の決勝ゴールを何と形容してよいのだろうか。密着マークを受けながらも、後方からのフィードを巧みな角度をつける事で、確実に胸で止め、落ち着いて振り向きゴールへ向かうドリブルを開始、軟らかい膝を良く曲げたドリブルで2人をかわし、最後自分が強くボールを打てるポイントに着実にボールを置き、一蹴。

 その前のポストに当てたシュートへの挙動も、同様に見事な個人技から。まず好トラップからの右足シュート(ここでも強くボールが蹴れるポイントに着実に止めている)がGKに防がれ混戦に、こぼれ球を拾った後、複数のDFに囲まれると見るや、一度前進する振りをして守備ラインを揺さぶった後、悠然と右回転し約270度回ったところで、左足の一撃。大柄で膝がやわらかいので、あそこまで悠然と回転されると敵DFは寄せるチャンスがなかった。

 さらに一昨日の得点も、ヘディングする振りの陽動動作(あの打点の高さを見ればそれだけでDFは揺さぶられる)で敵DFをいなしながら、胸でトラップし、落ち着いたステップを踏みながら身体の向きを修正しながらボールをコントロール、落ちてくるボールと例の強く蹴る事のできるポイントを一致させた。



 これはもう、釜本、ボニエク、ファン・バステン、パパン、ロナウドと言ったクラスの選手の技だ。あと2試合、小嶺先生の指導へのお礼をした後で、トップレベルへの挑戦が始まる。

 まずアテネ予選。大久保と田中と高松と前田と坂田とのポジション争いが、この逸材の大人の世界へのスタートとなる。
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2004年01月02日

高校選手権 仙台育英−立正大淞南

 驚いたのは立正大淞南の、イタリア風と言うかウルグアイ風と言うかの、勝とうとする執念。仙台育英を応援していた私だが、皮肉では一切無く立正大湘南のやり方に感心した。敵ながら天晴れ、まさに「サッカー精神」あふれていた。
 前半は、技術、戦術、肉体それぞれに、よく鍛えられている両チームが特長を出す面白い展開(余談:この2チームと同等の戦闘能力を保持するユースチームが国内に数十はあるだろう、私は日本サッカーの将来に極めて楽観的である)。そして後半10分頃、立正大の守備選手が膝の負傷でフィールドを離れる。中心選手らしく、立正大は治療に時間をかけても、フィールドに戻そうとする(アビスパ入りが決まっている選手らしいが、この試合の無理が将来に悪影響を残さなければよいのだが)。結果的に試合全体が何かしら集中を欠いたものになった。その時間帯に立正大が見事なオープン攻撃から先制。育英の精神的な隙をついた見事な得点、やられた悔しさよりも、あの隙を見逃さないしたたかさに舌を巻いた。
 その後の立正大の時間稼ぎが実に見事。チーム全体が、時計を進める見え見えの動きを見せる。その時間稼ぎに育英が焦り、前半見せた変化ある攻撃が見せられなくなる。育英を応援している私としては、最初は腹が立っていたが、次第に感心し始めた。一番笑ったのは、25分過ぎに獲得したコーナキック。試合時間はあと10分以上残っているにも関らず、コーナフラッグ近傍でボールキープするのだから。解説の前田秀樹氏(ホーリホック監督)が「大柄なチームなのだし、まだ時間はあるのだから、普通に攻めればよいと思うのだが」と呆れていた。かくして、立正大が焦る育英をいなして試合終了。
 初期のトヨタカップで、老獪なウルグアイやアルゼンチンのチームが、イングランドの正直な攻めを1−0で凌ぎ切る試合を思い出してしまった。いや、立正大淞南、お見事でした。仙台第一主義の私としては、育英の敗退はもちろんとても悔しい。しかし、立正大のあそこまで「したたかさ」を見ると、「仕方がないかな」と言う気になったのだ。

 ただ、困るのは宮城県勢が負けてしまうと、以降の宮城テレビの高校選手権のテレビ中継がなくなってしまう事だ。明日は何をして時間をつぶそうか。
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2003年12月20日

坂田得点王

 ワールドユース、決勝と3位決定戦を見た。あれほど、コテンコテンにやられたブラジルにせよ、コロンビアにせよ、確かに強いチームだったが、戦いよう(と言うか守り方だな)をもっと工夫していれば、もっと存分に抵抗できたのではないかと思うのだが、まあ、いいや。ワールドユースやオリンピックはあくまでも経験の場、あくまでも勝負はA代表なのだから。アトランタ初戦で激突した2人のGKの現状を見ると(当方の方が間違いなく優れていた)改めて思う(涙)。頑張れ川口。あ、話題がずれた。

 ともあれ、坂田が得点王になった。この種の大会で日本人が得点王を取ったのは、釜本のメキシコ五輪以来では初めてではないか。アジアのローカル大会でさえ、メルデカ大会で釜本の72年、奥寺の76年、ダイナスティで高木の92年などが思い出されるくらいで、やはり、「得点王を取った日本人」は、案外に少ないのだ。総得点数は4点と決して多くはなく、同得点数で4人が並ぶと言う、格段の成績はないが、結果は結果、胸を張っていい。奪った得点はいずれも見事なものだったし、コロンビア戦以外は皆重要なもの。しかも、大熊氏の不可解な起用法により、出場時間は相当短かかったにも関わらずである。

 日本代表サポータとして嬉しいのは、今回のチームでFWとしての坂田が紛れも無い大黒柱であり、将来も期待できるプレイを見せてくれた事。将来過去のワールドユースを振り返っても、いずれのチームもMFに強さの基盤があり、FWでここまでの存在感を見せた選手はあまりいなかった。
 しいて言えば97年の柳沢くらいか(そうなんだよ、このあたりまでの柳沢はシュートも巧かった印象が強かったのだが)。ただし、この時はMFに中村と明神と言う大駒が2枚いたので、チーム力の源泉はMFと言う印象が強かった。
 ところが今回のチームで、坂田は(今野と並んで)堂々と他を圧する存在感を見せた(谷澤は出場時間が短く、成岡は各方面で批評されるほど酷くはなかったと思うが確かに運動量は物足りなかった)。特に韓国戦の2得点は、FWとしての個人能力を見事に発揮したもの。少なくとも、4年前の高原、6年前の柳沢よりも、印象的な活躍を見せてくれた。20歳そこそこで、世界に堂々と通用したストライカと、賛辞を浴びせても過言ではあるまい。
 
 まずは、マリノス(久保との組合せは期待できる、坂田のためのマルキーニョス解雇なのか)及び五輪チーム(大久保、田中達との組合せはポストプレイが巧い高松の方が適切に見えるところが苦しいところだが、坂田ならば田中へのスペースメークも巧くこなせるのではないか)での、レギュラ奪取がポイントになる。ライバルは多いが、あの韓国戦の得点感覚を発揮してくれれば、相当な期待ができるのではないか。
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2003年12月12日

この壁をいかに越えるか ワールドユース、ブラジル戦

 本当に悔しいが、前半序盤のガタガタ振りに、一種の既視感を感じたのは私だけではあるまい。そう、4年前のワールドユース決勝なり、01年春先のサンドゥニの惨劇である。当時のスペイン、フランス、今日のブラジルなど、日本よりもスキルフルでボール回しが巧みな国に対し、ラインを下げてしまい、いいように振り回されての大量失点。まあ、コロンビア人の主審に不満を言いたくなる場面もあったが、それもまた経験なのだろう。

 このチームは、今野のような精神的な柱もしっかりしており、菊地のような判断力に富む選手を抱えており、大崩れはしないのではないかと思っていた。しかし、肝心の菊地がズルズルと下がり、あまつさえゴールエリア内でボール処理を誤り、決定的な2点目を提供してしまったのだから、打つ手なしとなった。菊地と言うこの有能な守備タレントの守備スタイルは、井原のように敵の攻撃の一番恐ろしい部分に自らを振り向けるスタイル、宮本のように敵の攻撃の意図を丁寧に予測し危機を未然に防ぐスタイル等とはまた異なる魅力を持つ。自分のプレイイングディスタンスと敵の攻撃との相対関係を正確に予測する事で球際ギリギリを見事に防ぐやり方なのだ。ところが、立ち上がりに徳永がFKを提供した場面、敵右サイドバック2番(上記の2点目の完璧な起点にもなる)の球出しと左ウィング7番(そのFKを見事に決める)の動き出しに崩される事で、菊地は持ち味の予測能力に完全に自信を失ってしまったのだろう。この日の大失敗経験を糧として、成長する事を望む。まずは強力そのもののジュビロ守備陣でのレギュラ獲得が課題となる。



 それにしても悔しいが、戦闘能力に差があったのは事実。センタバックやボランチが強くて攻めあぐむのは、このレベルの敵ならば当然だが、前述の2番、7番、あと10番の3人の攻撃能力の前に屈した訳だ。この3人ほどの圧力を、坂田にせよ、平山にせよ、谷澤にせよ、成岡にせよ、ブラジルに対して与える事ができなかったと言う事だ。この差を冷静に見つめる事も必要だろう。



 こう言うと悔しいが、結果論として、今大会、この日本ユースが素晴らしい経験を積んだのもまた事実。同格のイングランドを競り落とし、やや格上のコロンビアに沈没し、同じくやや格上のエジプトに辛抱勝ち。さらに宿敵韓国と世界大会で初お目見えし打ち破り(しかも逆転、Vゴール)、最後にブラジルに殲滅された。この5試合の経験こそ、ワールドユースで積みたかったものそのものではないか。



 素晴らしい奮戦振りを見せてくれた、我らの若者たちに、休息はほとんど無い。帰国すれば、多くの選手に天皇杯が待ち構え、すぐにアテネ予選が始まる。彼らは必ずや、この砂漠の国で積んでくれた経験を有益に活かしてくれるに違いない。
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2003年12月08日

歴史の始まり

 いや、本当によかった。そして愉しませてもらった。それにしても、坂田は、巧くて、度胸が据わっていて、しかもシュートが巧い。二階級特進ですぐに帰国させ、明日の久保の相方に使いたいくらいだ(笑)。おお、いつも一緒にやっているコンビではないですか。



 それにしても、よかった。世界大会の2次トーナメントで、韓国と戦える事自体がまず素晴らしいではないか。考えてみれば、ワールドカップで、ブラジル−アルゼンチンとか、イタリア−ドイツとか隣国同士の死闘は日常茶飯事。我々も予選で競うのではなく、本大会の大事なところでこれらの強国と混じりながら雌雄を決するべきなのだ。お互い、志は高く持とう。

 ここ10年近くで急速にレベルを上げてきた日本だが、ようやく韓国に追いつき、かつ両国とも刺激し合って、さらに世界レベルに近づこうとしている現状。そして、今回のワールドユースでの激突は、今後、未来永劫継続する両国代表チームが、世界大会で直接対決した記念すべき最初の試合だったのだ。そう、歴史の始まりなのだ。そして、両国の若きエリートたちが堂々と2時間余の死闘を戦い抜き、歴史の始まりに相応しい素晴らしい試合を演じてくれた。

 そして、その最初の死闘を、我らの若者が堂々と制した事を、素直に喜びたい。そして、今野とその仲間たちに感謝すると共に、ここで止まることなく後3勝を上げ、さらに五輪代表あるいはA代表への速やかな昇格する事を期待したい。



 ただ、試合全体を通して韓国ペースだったのは歴然たる事実。その要因のほとんどは、大熊氏の出し惜しみ采配(笑)によるものと見た。前半FWがキープできず、再三韓国に鋭いカウンタアタックを許す。後半はリードした韓国が、落ち着いて守りを固め、日本は攻めあぐんだ。同点ゴールは、徳永?の好クロスを平山が落とし坂田が決めたもので、(韓国DF陣の疲労はあったが)チーム力と言うよりは2トップの個人能力によるもの。さらに延長戦圧倒的に押し込まれた一因は日本MF陣の疲労によるもの(交替3枠のうち、2枠をFWで使うのはいかがなものか)。いずれも、スタメンから平山、坂田を使っていれば、解決できた問題だと思う。どこかの代表監督ほど「単一のベストメンバにこだわれ」とは言わないが、この日の苦戦の主要因は、出し惜しみにつきる。

 まあ、勝ったからいいけど、韓国には失礼だが、ブラジルやアルゼンチンは、きっともっと強いと思うよ。
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2003年12月06日

ワールドユース、エジプト戦

 見事な勝利だった。

 大会前から1次リーグ最強と言われていたエジプトとの最終戦。始まってみると、日本と同じように丁寧なビルドアップを得意とするチームで、体格もよく、やはり相当な強豪と言う事がわかった。奇策とも思えるメンバ構成で完敗したコロンビア戦の事もあり、不安は高まった。しかも、この日も坂田を先発させない作戦、何とも言えず重苦しい(いや、自分が重苦しさを感じただけですが)立ち上りとなった。

 しかし、中盤に小林を戻した事で、中盤全体のキープ力が上がり、前半から徳永、鈴木の両翼が前進する事ができるようになり、再三成岡を起点として左右への展開で好機を作るのに成功した。一方、エジプトの攻撃ラインは強力で、日本が僅かに中盤でミスをすると、巧みな速攻で3DFの裏をつき、たびたび危機を迎える。しかし、相変わらずGK川島が好調で、何とか無失点で前半を終える。

 後半立ち上がりにエジプトの激しいプレッシャに日本はMFでキープできず、猛攻を許す。ここで、川島の活躍と、守備陣が丁寧に身体を寄せて、耐え抜いたのがポイントとなった。谷澤を起用したあたりから、エジプトに攻め疲れが見受けられるようになり、前半同様攻め込む機会が増える。そして、平山投入。驚く事に日本の高校生が、堂々とヘディングを取ってしまう。これにより、すっかり日本もペースを取り戻す。そして、成岡?のインタセプトから、谷澤の絶妙なスルーパス、平山の舞い。いや、よかった、よかった。



 このような同格、同タイプの難敵に対し、幾多の幸運はあったとは言え、丁寧に戦い抜き、最後に勝利を収めるとは、結果のみならず何と素晴らしい経験である事か。よりによって、2次トーナメント初戦がこのチームが勝っていない韓国だと言う。どのみち、このチームはこの大会で負けた瞬間に解散し、2度と組まれる事はない。とすれば、今まで1度も勝っていないこの宿敵にこのチームで勝っておく事は、非常に意味がある。その上で、ブラジル、アルゼンチンを連覇すれば完璧ではないか。彼らの目標は今大会ではなく、2006年、10年、14年、18年のワールドカップなのだから。



 この日の決定的なピンチにいずれもが、不用意な状態で中盤でボールを奪われてのもの。逆に言えば、そのような逆襲からの速攻以外は、このチームの選手個々の個人能力の高さを考えると、失点のリスクは非常に小さいと言う事だ。ここまでの3試合で拙かったそのような場面を丁寧に反省し、修正をかける事ができれば(彼らの学習能力の高さ次第だが)、このチームは大変な潜在能力を発揮してくれるのではないか、期待は高まる。



 一抹の不安は、大熊氏の出し惜しみ采配である。この日は終盤坂田投入で勝負に出るつもりだったのだろうが、永田の負傷で危うく作戦倒れになるところだった。決勝ゴールの得点、アシストが、交替選手と言うのは、作戦成功とも思えるが、逆に言えばよい選手を出し惜しみしているとも言えるではないか。
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2003年11月30日

ワールドユース、イングランド戦

 衝撃に打ちひしがれながら(「悲しみを味わう」快感を感じていたとも言うのだが)ダラダラと飲んでいた昨晩、色々な方から連絡をいただいた。サンガと田中隼磨ファンと言うAさんからのメール、「最悪の結果で残念でした、悔しい思いの講釈を読むのを愉しみにしています」嘆きと励ましと慰めをまとめていただいたが、重要な情報が添付されていた。「ところで今夜はワールドユース、それもイングランド戦だということはご存じでしたか?忘れずご覧下さいね」いや、すっかり忘れてました(笑)。Aさんどうもありがとう。

 と言う事で、対イングランド。
 最初に思ったのは、日本の選手たちはキックオフ10時間前に母国で起こった劇的な結末をどう咀嚼し、戦いに臨んだのかと言う事。坂田、阿部のように喜びの報せを聞いたのならばさておき、成岡、菊地、そして誰よりも角田、彼らのように悲しい情報を入手した選手は、どのように自分の気持ちを整理したのか。さらに余談めくが、彼らとは全く異なる立場の解説の清水氏(日本のスタジオではなくUAEにいたように思えたのだが)の想いは...
 ともあれ、このチームの選手達の素材の高さにはいつも感心する。特にフィジカルでイングランドに何ら遜色ない。前半など、この相手に蹴り合いの試合を挑むのだから。私も解説の清水氏同様、「もっとつなげばいいのに」と思って見ていた。これでは小林も成岡も活きないではないか。しかし、大熊氏が正しかった、蹴り合いでも何ら負けないのだから。殴り合い、もとへ蹴り合いの前半を無難に終え、イングランドが疲れプレッシャが甘くなった後半に攻め掛け得点を奪うゲームプランを完璧に演じるのだから恐れ入った。イングランドの終盤のパワープレイにも川島(豪州戦の不振が嘘のようだった)を軸に堂々と押さえ切った。チームの本当のよさである技巧とパスワークは、他国に完全に隠し初戦を制したのだ。
 ただし、もちろん不安もある。最大の問題はFW。坂田は得点にせよ、運動量にせよ、引き出しの積極性にせよ、完璧に近かった。マリノスが来シーズン、マルキーニョスと再契約しないと言う情報があるが、この坂田を見るとなるほどと言う思いを持つ。しかし、阿部と茂木には課題が多い。阿部の懐の深さと柔軟性、強さ、高さを兼ね備えた肉体能力、茂木の裏を突く瞬間的なスピード、いずれも日本人離れしている。しかし、この2人には共通の課題は「判断能力」にある。この2人のプレイを見ていると、阿部は「自分がボールをキープする事」、茂木は「自分が突破する事」が、それぞれメインテーマとなり、「得点する事」を目指していないようの思えるのは私だけだろうか(よく柳沢の課題として「自ら得点する事」を目指さないのが問題と議論されるが、柳沢は「自チームが得点する事」を意識しているだけに、この2人よりは格段にましである)。

 かくして、この試合は完勝。上々の滑り出しとなった。イングランドはワールドユースにそれほど力を入れていないと言うし、今回もルーニらの主軸が来ていない。近い将来ワールドカップでイングランドと戦う事を想定すると、敵にこれらのエースが不在だった事を忘れていはいけない。例えば、この日のイングランドのメンバ構成は、日本が角田、今野、坂田が不在で臨むようなチームだった訳だ。我々はワールドカップ上位進出を目指す国なのだ。物事の基準はこのような高いレベルで考えなければいけないのだ。
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2003年11月17日

最高の弟子、偉大な師匠を破る

 この週末は、J1、J2いずれも凄い試合を多数愉しめたのは、一昨日の日記で語った通り。言うまでもなく最も興奮した試合は昨日のベガルタ−サンガ。そして、その次に印象的だった試合は、Jリーグではなく、正月高校選手権の東京大会決勝、帝京高−成立高だった。



 もちろん、試合そのものも素晴らしかった。しかし、私にとって感慨深いのは、両チームの指導者対決だった。成立の総監督宮内氏は、言うまでもなく日本代表の名MF。帝京監督古沼先生が手塩にかけて育て、氏の40年近くにも渡る指導者生活でも、最高クラスの実績と印象を残したタレントだった。言い換えると「ユース指導者として最高クラスの実績を持つコーチ」対「日本代表選手として最高クラスの印象を残した名手」の師弟対決だったのだ。

 さらに、中年ファンにはこたえられない因縁がいくつも。成立の監督、山本健二氏は韮崎高の高校選手権連続ベスト4に貢献し、後日古河、ジェフで活躍した小柄なサイドバック。韮崎高3年時は、準決勝で平岡(現大津高教諭、今年の正月大会で帝京に苦杯)、前田(元フリューゲルス)、広瀬(元レッズ)らがいた帝京に苦杯している(帝京は決勝で三羽ガラスの清水東を破って優勝)。

 さらに、帝京のコーチ広瀬龍氏(上記広瀬とは別人)は、この日選手達の胸に燦然と輝いていた帝京の9個の星(全国優勝の数)の、1つ目を獲得した時の主将ではないか。フジタでプレイした後、教諭に転身し山梨の帝京三高を率いて全国大会に導いていたが、いつのまにか母校のコーチになっていた。そして、この日はご子息がプレイしていた。



 試合内容も、いかにも高校サッカーのトップレベルらしく、両チーム共、技巧、肉体、戦術眼いずれも揃っており、市川(成立)、関口(帝京、ベガルタ入りの噂あり、でもこの試合では市川の方がよかったぞ、しっかり頑張れ、最後に泣き崩れる味方を起こすだけでは不足だ)を軸に攻めの道筋も明確。

 ただし、チーム全体での意思統一については、成立が一枚上手だった。後半、エース市川の得点以降も、巧みな速攻を軸に帝京陣でプレイを進め、ほぼ完璧な試合運びで全国大会に近づいて行った。

 しかし、試合は簡単には終わらなかった。ロスタイム、ハーフウェイライン近傍のFKから、帝京が信じられない得点で追いついたのだ!伝統の力と言うのか、古沼先生の指導の賜物なのか。同点になった瞬間、古沼、宮内両氏が大映しになるが、2人とも表情を変えないところに、並々ならぬ凄みを感じた。

 延長後半、先ほどの帝京が得点したのと同じような距離のFKから成立がVゴールを決める。よく守っていた帝京守備陣だが、この場面は守備陣が皆ボールに気をとられ、敵FWを見失ってしまった。若さが出たとも言えるし、成立の猛攻を防ぎ続けたための疲労が出たとも考えられるだろう



 試合終了後、私は師匠と弟子の固い握手を想像し期待した。しかし、古沼先生は、宮内氏が座るベンチをわざわざよけて、退場した(日本テレビは実にお見事、その場面を見事に映してくれた)。私は古沼先生に改めて感心した。

 「この人は本当に負けず嫌いなのだ」
posted by 武藤文雄 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする