バーレーン戦のテレビの生中継がないと言う。一般の方々における日本代表人気の凋落と景気の悪化が重なった事がきっかけなのだろうが、残念であると共にどうも釈然としない。一部報道に見られた日本協会首脳の発言「バーレーンサイドが法外な金額をふっかけてきて、交渉決裂」がよく理解できないのだ。いくつか推定できる原因を整理してみた。
1つ目の可能性、登場人物の皆が間抜けだったと言うのが原因か。最初ふっかけきたのは事実かもしれないが、あくまでもこれは交渉ごとだ。最終的に交渉が決裂してしまっては、誰も得をしないではないか。バーレーンサイドは得るものはゼロだし、日本サイドも我々は試合を見られないし、テレビ局もコンテンツを失いカネは一銭も入ってこない。日本協会も非難される。交渉術においては、「意地を張りすぎて誰も得をしない」と言うヘタクソな交渉そのものの典型例ではないか。玄人が交渉したとは考えられない見苦しい結果である。
2つ目の推測。もちろん、スポンサがこのコンテンツに対して払う対価が、中継の費用を下回るならば、テレビ局は何もしない方がよい。特にこの不況でスポンサの財布の紐が固い事は容易に予想される。これならば決裂も仕方がない(もっとも、「この苦境を救った○○社」と大きなPRになるので、結構な宣伝効果はあったと思うが)。しかし、それならば冒頭の日本協会首脳の発言は嘘になり「代表チームへのテレビ局とスポンサの評価が、バーレーンサイドの限界金額を下回った」と言うべきだ。これまでは交渉が成立していたのだから、今回だけが法外な金額を要求されたとは考えづらい。もっとも、それでもバーレーンサイドは、テレビ局の下限金額を下回る金額で販売した方が収入になるのだから、妥協の余地はあったはずで、ヘタクソ極まりない交渉なのは言うまでもない。
3つ目。「交渉当事者の『誰か』が、相場を下げたくなかった」と言う可能性がある。バーレーンサイドかもしれないし、AFCかもしれないし、広告代理店かもしれないし、日本協会かもしれない(複数関係者の共謀による可能性もある)。今回のアジアカップで、日本のテレビ局サイドが許容できる金額で妥結してしまうと、今後の商売に差し支えると言う考えだ(あるいは既に別権利を購入した客に顔向けできない、あるいは値下げ交渉をされる、などもあるかもしれない)。これならば、1つ目、2つ目と異なり、日本協会も「嘘をつく」しかないのだから、ある意味で納得できる。
4つ目、今回の試合は有料のネット放送(と言う日本語が正しいのかどうかはわかりません)で観戦可能だと言う。私も早速登録を行い、これで試合を愉しむつもりだ。もし、こちらのルートの会社が、日本の放送局より高い金額を払っているならば、十分考えられる事態。今回のネット放送局は登録も簡単だったし、これが成功し、かつビジネスとして成立するならば、これまでの放送の概念を大きく変える事になるかもしれない。消費者サイドの我々としては、このルートで観戦可能ならば、それはそれで全く問題ないのだし。ただし、報道で噂されている数千万円の放映料を、今回の聴取料でカバーするとなると、10万人もの人の観戦が必要なのだが、そんなに多数の人が利用するのだろうか。広告料との抱き合わせ、ネット中継そのもの宣伝など、別収入も考えられるのだろうが。
おそらく、2、3、4番目なりが混在したあたりが真実なのではないか。日本のテレビ局が許容できる金額が低すぎる事に困る誰かが交渉を長引かせ、最終的にテレビ中継をするには時間切れとなり、ネット局に(やや安価で)投売りされたとか。
ネットで見られるのだから不満を言ってはいけないのかもしれないが、大昔のように「映像が見られるだけまし」と言う悲しい時代にだけは戻って欲しくない。とりあえず重要なのはそれにつきる。