2016年03月05日

ここまでの歓喜に感謝

 女子代表のリオ五輪出場がほぼ絶望になってしまった。陳腐な言い方で恐縮だが、1つの時代が終わったのだろう。

 多くの方々も同意されるだろうが、敗因は若返りの失敗だと見た。多くの選手が北京五輪前から代表で活躍、10年近くに渡り世界のトップレベルで戦ってきた。昨年のワールドカップの準決勝を1つのピークに多くの選手が、すり減ってしまったのだろう。澤のみならず、海堀の突然の引退もその顕れだったのかもしれない。

 しかしだ。いや、だからだ。

 私は今回の敗戦を「仕方がない」と思っている。
 何故ならば、若返りを的確に目指していたとすれば、昨年のカナダワールドカップで好成績を得るのは難しかったと思うからだ。このリオ予選で相応に若手選手が活躍するためには、そのような選手をカナダで起用する必要があった。そうした場合、カナダで準優勝できただろうか。
 私は「カナダでの準優勝とリオの予選落ち」は「カナダでもリオでも本大会でそこそこの成績」よりも格段によいと思っている。さらに言えば、カナダで最高の成績を目指さず若返りを目指したとしても、このリオ予選で確実に勝てると言えないのは言うまでもない。
 言うまでもなく、このチームのピークは11年のドイツワールドカップ制覇だっただろう。さらに彼女たちは、その後も12年のロンドン五輪、上記のカナダワールドカップで準優勝と格段の実績を残してくれた。08年のアテネ五輪の4位と合わせれば、世界大会で、1度の世界制覇を含み、4大会連続、8年間に渡りベスト4以上を獲得している。一体、これ以上の成績を、どう望もうというのだ。

 もちろん、佐々木氏以上のカードがあれば、結果は違うのかもしれない。
 けれども。サッカーに浸り切って40余年。幾多の名将のチーム作りと采配を堪能してきた。そして、ここ最近のなでしこの鮮やかな戦績を見るにつけ、氏以上に的確になでしこを勝たせる監督がいるとは、そうは思えないのだ(女子選手に対するマネージメントを含めだが)。まあ、ぺケルマン氏やモウリーニョ氏が女子のチームを率いるのを見てみたい気もあるけれど。

 皆が今回の苦闘と現時点での結果に心を痛めている。しかし、これだけ皆が落ち込むのも、ここ最近のなでしこの成績があまりに輝かしかったから、その明暗の大きさが著しいからだ。予選を勝ち抜くのがやっとで、本大会では冴えない成績を続けているチームが予選で敗れても、ここまでの悲しさは味わえない。
 いつもいつも語っているが、「負ける」と言うことは、サポータにとって快感なのだ。そして、その快感は、結果がよかった時との落差が大きいほど、最高のものとなる。

 先般、澤穂希引退時に、女子代表の歴史を振り返った。繰り返すが、このリオ予選で苦闘している彼女たちの多くは、ここ最近の十年近くに渡り、幾度も幾度も歓喜を我々に提供してくれた、いや提供し続けてくれたのだ。
 今はただ、彼女たちに「ありがとう、お疲れ様」と、伝えるのみである。

 でも、でも。
 この悔しい状況において、感謝の意を伝えるのは、貴女たちに失礼なのはわかっている。
 だから、意地を見せて欲しい。
 リオは忘れよう。でも、4日後の北朝鮮戦で、美しい舞いを見せてくれないか。ベトナム戦もトレーニングの一環と割り切り体調を整え直し、佐々木氏の最後の采配となる試合で。美しい舞いを。

 そのように割り切ることが、ほんの僅かに残っている確率を少しでも高めることにもなるはずだし。
posted by 武藤文雄 at 01:42| Comment(7) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月30日

澤去りし後

 澤穂希引退。

 引退を宣言し、最後の大会として選択した皇后杯で、堂々の優勝。それも決勝戦の終盤に、決勝点を決めてしまうのだから恐れ入る。スーパースタアの所以と言えばそれまでだが、引退を決意してもなおその個人能力が他を圧していると言うことだろう。実際問題として、今大会中盤奥深くで敵の攻撃を刈り取る妙技と落ち着いた展開は、今なお格段のものがあった。準決勝、ベガルタはアイナックに敗れたのだが、澤の存在は忌々しさは格段。数日前の横浜国際で堪能したマスケラーノの読みの冴えを思い起こした。
 個人能力は未だ他を圧しているものの、澤が引退を決意したのは、ひとえにモチベーションの問題なのだろう。引退記者会見で、「心と体が一致してトップレベルで戦うことがだんだん難しくなったと感じたから」と語ったと報道された。アスリートとして考え得る最大限の栄光を手にした澤だからこその思いと言うことか。例えば王貞治、山下泰裕、千代の富士と言った方々が、引退時に類似の発言をしていたのを思い出した。
 その状況で、最後と選んだ大会に、見事に合わせ、結果を出すのですからねえ。長い間、本当にありがとうございました。

 で、今日のお題。
 澤去りし後の、日本女子サッカーは、どうなるのだろうか。

 とても不安なのだ。
 不安なのは、澤とその仲間達の実績があまりに素晴らしかったこと、そのものだ。それにより、一般マスコミが世界一、あるいはそれに準ずる成績を当然と考えてしまうのではないか。そして、それに至らない時に非常に低い評価を与えるのみならず、罵詈雑言を飛ばすのではないか。あるいは、まったく無視をしてくるのではないか。それを、どうこう不安視しても仕方がないのかもけれども。

 澤の日本代表の経歴を振り返ると、3つの時代に分けられる。
 まず、1990年代。澤が10代後半から20代前半で、木岡、野田、高倉、大部、大竹姉妹ら、澤より年長の選手が活躍していた時代だ。当時は、中国や北朝鮮に勝てることはほとんどなく、世界大会に出ても欧州勢に歯が立たなかった。一方で当時のLリーグは、Jリーグバブルの影響もあり、海外のトッププレイヤが続々と参加していた奇妙な時代でもあった。
 2000年代前半。澤は20代後半。酒井(加藤)、三井(宮本)、川上、小林、荒川ら、澤と同世代の選手が中軸の時代。澤より年長選手としては磯ア(池田)が活躍した。この時代になり、ようやく北朝鮮や中国と互角の戦いができるようになり、世界大会でも他地域の代表国に勝てるようになってきた(たとえばこの試合)。単に強くなっただけではなく、小柄な選手達が素早いパスワークで丁寧に攻め込み、組織守備で粘り強く守る、いわゆる「なでしこのスタイル」を、世界で発揮できるようになってきた。アテネ五輪でのスウェーデン戦の完勝は忘れ難いものがある。
 そして2000年代後半以降、澤より若い世代が台頭。宮間、大野、岩清水、川澄、阪口、熊谷、永里(大儀見)らが、澤を軸に戦うおなじみの時代である。分水嶺は2006年の東アジア選手権で、中国に完勝した試合だった。以降、日本はアジアで紛れもない最強国となった。そして2008年北京五輪では、再度地元中国に完勝し、ベスト4を獲得。さらに2011年の歓喜獲得(そしてこの妙技)につながっていく。さらに素晴らしいのは、「世界一」獲得後の、世界大会でも強国の地位を継続したことだ。トップになることそのものはとても難しいことだ。しかし、その地位を維持することは、もっと難しいことなのは言うまでもない。そして、澤とその仲間達は、それを実現し、今日に至っているのだ。

 繰り返すが、なでしこジャパンが、アジアで「トップレベル」と言ってより地位を確保したのは、2004年から2006年あたり。それから、たったの数年で澤とその仲間達は世界一を獲得し、さらにその地位を4年間維持し続けているのだ。これを快挙と言わずして、何と言おうか。そして、この快挙の輝きはあまりにもまぶし過ぎる。
 もちろん、この約10年間で、日本の女子サッカーのレベルは格段に向上した。10年前、北朝鮮や中国に苦戦していた時代、左足でしっかりボールを蹴ることのできる代表選手は少なかった。しかし、今のなでしこリーグの強豪チームならば、いずれの選手もボールを受ける際に、しっかりと敵陣を向いて左右両足でボールをさばくことができる。若年層の代表チームを見ても、技巧や体幹に優れた選手が多数輩出されているのも確かだ。さらに多くの関係者の地道な努力もあり、長年の懸念となっていた中学世代のサッカー環境も、少しずつ改善されている。
 けれども、だからと言って、なでしこジャパンが、現状の世界トップの地位を維持できるかどうかは、わからない。むしろ、一連の女子ワールドカップや五輪の盛況により、多くの国が強化を推進していることを考えると、容易ではなかろう。例えば、アジアのライバルを考えても、豪州、北朝鮮、中国は、常に体格のよい選手を並べてくる。韓国は、世界屈指のスタアになり得る池笑然を持つ。つまり、アジア予選でさえ、相当厳しい戦いになる。そして、欧州勢。先日のオランダへの苦杯は記憶に新しいが、たとえばイングランドが今年の痛恨を忘れるとは思えない。もはや、難敵は合衆国、ドイツ、フランスだけではない。
 しかも、サッカーと言う競技は極めて不条理。戦闘能力が高く、駆け引きに長けていても、勝てるとは限らない。男のアルゼンチン代表は、ワールドカップの度に、世界屈指のチームを送り込んでくるが、昨年決勝に進出したのは、実に24年振りだったのだ。

 そして、もう澤はいない。
 宮間たちが、いかに努力しても、思うような成績が挙げられない時代が来るかもしれない(常に最高の努力を見せてくれる、宮間達に甚だ失礼なことを語っているのはわかっているのだけれども)。冒頭に述べたが、もしそうなってしまったときに、一般マスコミがどのような態度に出てくることか。
 だから。サッカー狂を自負する我々は、冷静にありたい。彼女たちがすばらしいプレイを見せてくれれば感嘆し、よくないプレイを見せたときには批判をする。そして、目先の結果に一喜一憂せずに、重要な大会の結果を大事に見守る。そして、努力する選手達に尊敬を忘れない。
 そのような対応こそが、澤穂希と言う希代のスーパースタアに対する、最大限の感謝につながるのではなかろうか。
posted by 武藤文雄 at 21:58| Comment(4) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月19日

3大会連続世界大会決勝進出を称えて

 早いもので、女子ワールドカップ終了から、2週間が経過した。決勝戦およびその後について雑感を。

 まずは偉業を称える。
 五輪を含め、3大会連続での世界大会決勝進出である。言葉にするのも難しい偉業だ。
 男のサッカーに比較すればマイナー競技かもしれないが、女子サッカーを本格強化している国は少なくない。西欧、北欧、北米、大洋州、東アジア、少なくとも10国を超える。その中での快挙だ。
 重要な指摘。北京五倫では、日本はかろうじて2次ラウンドに進出、何とかベスト4に滑り込んだ印象だった。あの大会を観た限りでは、選手達には失礼だが、このメンバで世界のトップに到達するのは容易ないと思ったものだった。けれども、私は間違っていた。ほぼ同じメンバ(戦力的には、熊谷と川澄が加わったくらい)で、3大会連続の決勝進出。これは、各選手達の努力が生半可なものでなかった事を示している。
 実際、この3大会を振り返ってみると、1つ1つの試合の勝ち抜きぶりの鮮やかさには恐れ入る。大会終盤を目指して的確に体調を整え、大会が進むに連れ連係の精度が増していく。正に本当のプロフェッショナルだけが演じられる戦い振りを見せてくれた。 
 もちろん、宮間と仲間たちは優勝しか考えていなかっただろうから、今大会の最終結果は大いに不満だった事だろう。けれども、サポータの我々からすれば、ここまで鮮やか結果を残してくれた彼女たちに、感謝の言葉しかない。
 本当にありがとうございました。

 ともあれ、何とも重苦しい決勝戦だった。
 サッカーの神は(女神かもしれないが)、時にこのような気まぐれを起こす。昨年のドイツ対ブラジルのように。しかし、この日の女子代表にとっては、この苦闘は昨年のブラジル以上に厳しいものだった。それは、その失点劇の直接要因が、選手の個人的ミスによるものだったからだ。最初の3点の岩清水、残り2点の海堀のプレイは、かばいようのない個人的ミス。もちろん、合衆国の攻撃は見事だったし、3、4点目はボールの奪われ方が、あり得ない軽率なものだった等、2人以外にも失点要因はあったのも確かだ。けれども、5失点とも2人が判断を過たなければ防げたものだった。それをあいまいに記述するのは、かえって2人に失礼と言うものだろう。、
 けれども、この2人がいなければ、決勝まで来る事ができなかったのは言うまでもない。いや、ここ数年間の女子代表の好成績はなかった。何とも残酷な現実ではあったが、胸を張って欲しい。
 それでも、宮間達は崩壊せずに堂々と90分間を戦い抜いた。崩壊し切ったまま、3位決定戦を終えた昨年のセレソンとは異なり。見事なものだ。

 決勝で合衆国にしてやられたのは確かだ。しかし、大会終了後の「合衆国が強かった。恐れ入りました」報道には違和感を感じる。
 開始早々のトリックプレイ以降、序盤に失点を重ねてしまったが故の完敗だった。この試合に関しては、相手が強いとか、こちらが弱いとかを感じる前にやられてしまったのだ。。
 4年前のドイツ、3年前のロンドン、正直言っていずれも戦闘能力は合衆国が上回っていた。今回もそうだった、と思う。「思う」と書いたのは、それを確認する前に勝負がついてしまったからだ。4対2に追い上げた以降を含め、好機の数は合衆国の方が格段に多かったのだし。けれども、今回に関しては、敵に感心する事なく敗れてしまったのも確か。戦闘能力差を云々する前に失点を重ね、勝負をつけられてしまったのだ。
 だから、「合衆国にひれ伏す」的な報道に違和感を感じるののだは、私だけだろうか。

 大会終了後、宮間が「女子サッカーをブームではなく文化にする」と見事な発言をした。それを面白おかしく採り上げるマスコミは論外としても、実に重い問題提起なのは間違いない。
 宮間が潤沢なキャッシュを望んでの発言なのはよく理解している。けれども、身も蓋もない言い方になるが、「文化」にすると言う事は、彼女たちに潤沢なキャッシュを提供できる環境を作る事と等価と言わざるを得ない。そして、過去も女子代表が鮮やかな戦いを見せてくれる度に語ってきたが、どうやったら彼女達に豊かなキャッシュを提供できる環境を作れるのだろうか。
 いつもいつも語っているが、なでしこリーグの最大競合は、Jリーグなのだ。冷めた目で語れば、なでしこリーグが定期的に万単位の観客を集める事は不可能に近い。Jリーグでさえ、スポンサを集めるのに四苦八苦している中で、どうやって、彼女たちにキャッシュを落とせるか。
 日本協会が、女子のトッププレイヤを積極的に欧州に送り出す対応を行ったのは、今大会の成功につながったのは間違いない。また、各Jクラブに女子チームを持つように行政指導?をしているのも悪くない。我がベガルタも、レディーズを持たせていただいたし。このような1つ1つを丁寧に実施し、女子サッカーに落ちるキャッシュを増やしていくしかないのだろう。
 このような努力は、この10年来丹念に続けられてきた。それにもかかわらず、女子の好成績と比較して、男の代表チームを揶揄し、偉そうに「カネを女子に回せ」と言う輩が後から後から出てくるは悲しい事だ。それも、通常サッカーの仕事をしていない人ならさておき、日々サッカーで食っている人間にもそう言うのがいるから残念なのだが。

 それはそれとして。「わたしもボールを蹴りたい」と言う、小学生の女の子が増える事が「文化」には重要な事も間違いない。しかしながら、我が少年団には、宮間達の颯爽といた戦いに感銘し「私も蹴りたい」と言う女の子は、今のところ登場していない。
 もし、そのような女の子を増やすノウハウがあるのならば、どなたか教えてください。

 ともあれ。宮間とその仲間たちの颯爽としたプレイ振りに乾杯。
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2015年07月02日

サッカーの母国の歴史的悲劇

 何歳になっても、何試合経験しても、サッカーの奥深さは尽きない。新たな感動と発見を体験させてくれた両国の選手達に感謝の意を表するしかない。
 講釈の垂れようがない結末だった事は確かだ。また日本の選手達、関係者の方々のきめ細かな努力が歓喜を生んだのも間違いない。しかし、ここは敢えて、あの場面およびその直前について執拗に語る事が、自分なりのローラ・バセットへの最大級の敬意ではないかと考えた。

 そもそも。サッカーの言語において、この自殺点は「ミス」と語るべきではないだろう。バセットがボールに触れなければ、至近距離から大儀見がシュートを放つ事ができたのだ。悲劇は悲劇だったが、バセットはボールに触るしかなかったし、川澄のクロスを誉めるしかない。あのような位置関係で、川澄があのボールを入れた時点で、バセットがやれる事は限られており、バセットは的確にそれを行った。それだけの事だ。これは「ミス」ではない。あのような選手の配置関係を作り出し、川澄がタイミングと精度が適切なボールを入れた瞬間に、日本はバセットの悲劇の準備をすべて終えていたと言う事だ。
 もちろん、細かな事を言えば、いくらでも指摘できる事はある。極力自殺点となるリスクを下げるために、ボールを浮かしたり外に出すために、足首のスナップを使えばよかったとか。直前の大儀見との位置取りの駆け引きを工夫すればよかったとか。しかし、そんな詳細まで語り始めたら、サッカーの論評は成立しない。むしろ、バセットは工夫してクリアを浮かそうとしたからこそ、ボールはネットを揺らさずバーを叩いたのかもしれない。いずれにしても、バセットが何か判断を誤った訳でも、技術的な失敗をした訳でもない。オランダ戦の終盤の海堀のプレイとは異なるのだ。
 
 だから、あの自殺点は「ミス」ではない。

 一方、これはイングランドにとっても「悲劇」ではあったが、決して「不運」ではない。日本は能動的にあの状況を作り、日本の攻撃がイングランドの守備を上回ったから、得点となったのだ。イングランドは日本に得点を奪われる状況を作ってしまったのだ。それを「不運」と呼ぶのは、すばらしい戦いを演じたイングランドに対しても失礼と言うものだろう。
 ただし、日本にとっては「幸運」だった。なぜならば、サッカーで最も厄介な「シュート」と言う要素を自ら行う事なく、得点となったからだ。

 さらに、この場面を作り上げたのが、我らが主将の宮間の明らかな「ミス」だった。
 直前の場面を思い起こそう。イングランドが攻め込みを日本DFがはね返し、宮間はほとんどフリーでボールを持ち出す。「よし、速攻につなげられる。」と思った瞬間、信じ難い事に、宮間がボールを大きく出し過ぎ、敵MFにカットされてしまった。速攻をしようとした日本としては恐ろしい瞬間(逆速攻を受けるリスクがあった)だったが、イングランドもボール扱いに手間取り、そこから速攻をされ直す事はなかった。そして、紆余曲折の末、日本DFがほぼフリーでターンできる状態の川澄にボールを出す事になる。
 敵にボールを奪われ速攻を許しそうな場面が訪れた直後に、逆にボールを奪えると、自軍がよりよく速攻を狙える可能性が高い。宮間のミスの瞬間のイングランドは正にそのような状況を迎えていた。ところが、そこでボールを確保し切れなかった。結果として、イングランドの後方の選手の意識にズレが生まれ、結果川澄の持ち出しにつながった。
 その意識のズレそのものは、イングランドのチーム全体の「ミス」だったが、防ぐ事が非常に難しい「ミス」だったのは言うまでもない。あの終盤の難しい時間帯に、確実なマイボールを確認するまで安全をとるか(安全をとり過ぎると、逆にラインが間延びするリスクともなり得る)、勝負どころと見て前進するか(あの時間帯に上がり過ぎるのは非常に危険でもある)、11人全員が極めて高級な判断を余儀なくされる状況だったから。そして、その難しい状況の起因となったのが、日本の大黒柱のずっと単純な「ミス」からだったのだから、サッカーの無常さを感じずにはいられない。

 この「悲劇」は、長らくイングランドの方々に歴史的悲劇として、語り継がれる事だろう。そのような試合をサッカーの母国と戦う事ができた事を、誇りに思う。 
posted by 武藤文雄 at 23:34| Comment(5) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月16日

女子代表、結果は100点満点のスタート

 女子代表はスイス、カメルーンそれぞれに似た試合で2連勝。グループリーグ1位抜けをほぼ確定した。見事だ。極めて難しいワールドカップ連覇と言うミッションをめざし、ほぼ100点満点のスタートと言えるだろう。
 誰が見てもわかる通り、内容はよくない。早々にリードを奪い、しっかり守る作戦を採ったのは明らかだが、内容的にはうまく機能していない。守りを固めると言っても、体格的劣勢から最後方を固める策をとれない以上は、ラインを上げて厳しいプレスをかけて敵の自由を奪い続けるのが基本的なやり方。もちろん、それでは体力がもたないのでボールを丹念に回し、敵にペースを与えない事が肝要。ところが、これまでの2試合は、いずれもプレスが利かず、ラインを上げきれない時簡帯がしばしば見られ、結果的に敵に決定機を許す時間帯が増えてしまった。
 その要因は明らかで、各選手の体調が今一歩なためだ。たとえば、大儀見がその典型。終盤になると、明らかに切れがなくなり、前線でのボールキープできなくなってしまう。終盤の内容が悪いのは、ここに最大要因がある。しっかり守ろうとしている時間帯、いつもいつもうまくボールを回すのは難しい以上、トップに入ったボールを持ちこたえて時間を稼ぎたいところ。これが有効に機能しなくなるのだから。しかし、これだけ実績のある大儀見である。あれだけ、ボールキープができないと言うのは、体調を大会後半に合わせていると理解するのが妥当だろう。
 他の選手も同様だ。終盤苦しい時間帯、結構ミスが出る。澤が肝心の時にミスパスするのは全盛期からだが(笑、たとえばこれこれね)、大野や宮間のような知性と経験あふれるタレントが、無理をすべきでない時に無理をして状況を悪くしている。しかし、これも彼女達が大会後半、いや終盤に合わせているが故と見る。
 そうこう考えれば、体調が悪いなりに内容は褒められたものではなかったが、最初の2試合にベストの結果を残せたのだから、100点満点と言う評価ではないか。

 説明は不要と思うが、日本は比較的対戦相手に恵まれたグループに入れた。さらに1位抜けをすると、ドイツ、USAと決勝まで当たらない可能性が高まる。さらに、試合会場も、エクアドル戦のウィニペグを除くと、バンクーバーとエドモントンに限られる。この両都市の移動は飛行機で僅かに1時間半程度、広大なカナダを考えると、とても楽な移動だ(全くの余談:私がカナダで訪ねた事がある都市がこの2都市なのですよ、いずれも美しい都市で、人々も親切、とても印象のよい都市でした)。したがい、1位抜けをする事が、1次ラウンドのミッションだった。
 もちろん、準々決勝ではブラジルが来る。1/16ファイナルで、いきなりフランスやイングランドが来る可能性もある(必ずしも確率は高くないがね)。けれども、「優勝」を目指す上では、ドイツとUSAに決勝まで会わないに越した事はない。4年前の「どうせ当たるならば準々決勝も悪くない」とはちょっと違っているのだ。なぜか。

 そもそも。
 前回、我々は世界一となった。素晴らしかった。しかし、日本代表の戦闘能力は、USA、ドイツと比較して、優れているとは言えなかった。それでも、彼女達は、この両国に対し、堂々と戦い、知性の限りを尽くし、ほんの僅かな幸運にも手伝ってもらい、世界一を獲得した。本当に、本当に、素晴らしい戦いだった。今、彼女達の胸に光る星の美しい事と言ったらない。
 間にはさんだ五輪でも彼女達は見事な戦いを見せてくれた。したたかに、フランスとブラジルを破り、堂々の決勝進出。しかし、決勝ではUSAとの戦闘能力差を埋め切れず苦杯した。
 その後、佐々木氏は退任するとの噂がもっぱらだったが留任。連覇を目指す事となった。けれども、4年前の中心選手を凌駕する選手は、開拓できなかった。ほぼ4年前と同じメンバでの連覇への挑戦。これはある意味仕方がない事だ。「世界一」と言う成功経験を積んだタレントは、最高レベルの経験を得る事で、他の選手よりも格段の能力を身につけてしまったのだから。新進気鋭のどんな優れたタレントが登場しても、最高級の成功体験を抜き去るのは容易ではないのだ。
 かくして、連覇を目指すために、佐々木氏は4年前とほぼ同じメンバを連れてきた。元々、戦闘能力で圧倒した訳ではない「世界一」。連覇は容易なミッションではない。それでも、佐々木氏と宮間の仲間たちは連覇を目指す。その道は非常に細い道だ。しかし、その細い道筋は見えている。
 大会終盤に体調を合わせる事、抽選で得た優位を活かすべく最小限のエネルギーでグループラウンドを1位突破する事、2次ラウンドは対戦相手ごとに淡々と策を立て粘り強く勝ち抜く事、そして決勝に残れれば戦闘能力で上回るUSAなりドイツ(他の国かもしれないが、たぶんこのいずれかが来るだろう)に奇策を含めて立ち向かう事。つまり、4年前と異なり、ドイツとUSAと手合せするのは、できれば最後にしたい。
 細い道筋通りに大会序盤を抜けかけているのだ。素晴らしい。この後、どこまで行かれるかはわからない。しかし、真のプロフェッショナルである彼女達が、その総力を賭けて「世界一」を目指す。素晴らしい娯楽を愉しませていただけるのだから、ありがたい事だ。
posted by 武藤文雄 at 00:15| Comment(1) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月05日

リトルなでしこ世界制覇

 気持ちよい世界制覇でした。

 何とも日本らしい、判断力と技巧を活かしたボール回し。組織的な守備。よいチームだった。
 ただこのチームが従前のチームと異なっていたのは、いつもいつも特に若年層で日本の欠点とされているGK、CBの中央が、非常に強かった事。ベストGKに選考された松本の安定感、大熊と市瀬の的確な読みと位置取り、様々な世代、様々なレベルのチームでよく見られた「自陣前における不測の事態」が、ほとんどなかったのが、このチームの強みだった。
 一方で、敵陣近くでの変化あふれる攻撃もまた見事。トップから降りてくる小林の受けの巧さを軸に、長谷川と杉田が技巧あふれる展開を見せる。
 とても、とても、よいチームだった。

 先制弾は、小林が1度裏に抜け出し打ちきれずに戻したボールを、トップ下の長谷川が巧みに落とし、右MFの松原が狙い澄ましたシュート、バーに当たって跳ね返ったところを、左MFの西田が詰めたものだった。ゆるやかなパス回しで敵DFを前に引出し裏を突く。そこからさらに執拗に丁寧なつなぎと崩し。よい攻撃だった。
 以降も、日本は小林を軸に幾度も攻め込むが、スペインの4DFが粘り強い守備を見せ、隙を見せず前半は1-0で終了。
 スペインの4DFの守備の見事さにも感心した。日本は素早いパス回しでスペインDFを引き出しておいて、小林なり長谷川が裏を狙うやり方。しかし、スペインのCBは身体を後方に向きながらも粘り強く、日本の裏を狙うバスに対処。さらに両サイドバックが的確な絞りから、さらにその後を的確にカバー。中盤で劣勢となるチームとしては、この守り方は非常に有効。早々に先制を許しながらも、粘り強く点差を開かせない献身は実に見事だった。スペイン代表と言うと、最近のシャビとイニエスタの攻撃芸術がよく取沙汰されるが、20年から30年前はイエロとかカマーチョみたいな選手の献身的な守備が魅力だったのを思い出したりして。

 一方でスペインの攻撃は、さほどの脅威を感じなかった。日本の素早い切り替えによるプレスも適切な事に加え、アンカーの長野の適切な位置取りが有効。パス回しで中盤を抜け出せないので、後方から頑健なトップに長いボールを入れ強引な突破を狙う事になった。しかし、そこには上記の通り、大熊と市瀬が待ち構えている。
 男子の代表は色々な世代で、スペインや中南米の所謂ラテン系の国を苦手としている。理由は簡単で、日本の持ち味である判断力と技巧によるパス回しで、先方を上回れない状況に陥るから。余談ながら、よく「ブラックアフリカや北欧のチームのパワーにやられる」と大騒ぎする人がいるが、日本がしっかりと準備する時間的余裕があった試合でフィジカル負けした試合はほとんどない。やられるのは、いつも先方の高度な技巧からなのだ。
 そして、この日のリトルなでしこは、技巧でスペインを完全に圧倒。まあ、女子サッカーのランキングを考えれば、当たり前の事かもしれないが。

 65分過ぎには両軍とも疲労からガクッと運動量が落ちてしまい、試合は一層単調なものとなり、正直見ている方がつらくなる展開。決勝含めて7試合の過負荷と言う事もあったかもしれないが、この世代の女子選手に90分試合が適切なのかどうか、議論が必要かもしれない(あ、審判については...)。
 ただ、日本は負傷退場した遠藤に代わってトップに起用された児野が豊富な運動量で攻撃を引っ張り、攻撃を活性化させる。そして、77分には児野が鮮やかな2点目を決め突き放しに成功した。
 疲労困憊で迎えた後半30分過ぎ、2点差になったら、普通のサッカー選手なら諦めるよな。けれども、この日のスペインの娘さん達は諦めないのだから恐れいった。ボール回しでも崩せない、裏を狙ってもカバーされる。「もう君達には攻め手はないだろ!」とテレビ桟敷で思ったのだが、その状況でも、アディショナルタイムの48分まで、諦める事なく闘い続けた。正直、感動しました。おかげ様で、日本の優勝は一層感動的なものになったのも確かです。本当に、本当にスペインの選手たちの気持ちは、素晴らしかった。

 何が嬉しかったって、高倉麻子さんの笑顔だな。
 50過ぎのおじさんにとって、「シニアなでしこ」の歓喜は堪えられないのだよ。児野が2点目を決めた瞬間、そして優勝直後のインタビューの高倉氏の笑顔。高倉氏を支えた大部氏の満面の笑み。解説を務めた、酒井氏じゃなかった加藤氏の、優しくも厳しい一言、一言。
 この日珠玉のプレイを見せてくれた若者達の存在もすばらしい。しかし、高倉氏、大部氏、加藤氏、彼女たちの存在が、日本の女子サッカーをこれまで以上のレベルに高めるために重要なのは言うまでもない。
 資源は着々と増強されている。じっくりと、精悍な若き女性のプレイを愉しんでいけるのがありがたい。
 
 おめでとうございます。ありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 22:49| Comment(4) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月10日

女子ユース代表銅メダル

 五輪の男子4位、女子銀メダルの作文準備中なのですが、終わらぬうちに女子ワールドユースが終わってしまいました。3位決定戦当日は、少年団の練習やら諸事情で生観戦を諦めたのだが、よい試合だったので、ちょっと後悔しています。

 この3位決定戦については、猛暑中の試合にもかかわらず、ハーフタイムまでに2人を交代させなければならないスタメンを選んだ吉田弘氏の采配ミスが酷かった。少なくとも、ほぼポジションが固まって来たスイス戦以降を考えれば、スタメンに柴田がいない事そのものがあり得ないだろう。結果、70分あたりに藤田が負傷交代。その直後にGK池田のミスから失点し、ナイジェリアに押し込まれるが、既に交代カードを切り終わっていたため、もう監督がやれる事はない。それでも、苦しみながら選手達は粘り強く戦い、堂々と銅メダルを獲得してくれた。監督のミスを選手がカバーする試合の感動も、またよい。

 大会を通じての日本のMVPは柴田だ。素早く適切な方向の動き出し、巧みな身体の入れ方、プレイ選択の的確さ、崩しのアイデア、いずれも高水準。大会が進むにつれ、ボールの受け方が格段に上手くなり、能動的なドリブルは非常に効果的だった。間違いなく、この大会で最も成長したタレントだ。若い選手が適切な場を得れば伸びると言う典型例と言えるだろう。ナイジェリア戦の2点目を生んだあのダイナミックで振り幅の大きなジグザグドリブル、ドイツ戦で掴んだ斜めのドリブルからの決定機(最後長駆のために腰が回り切らなかったが、これはフィジカルをもう一段上げれば解決するはずだ、この大会単身でドイツ守備陣を崩しかけたのは、柴田1人だった!)。大会開始時は、前線の撹乱が役目だった柴田は、大会終盤はたった1人で局面を打開し決定機を演出するタレントに成長したのだ。今すぐA代表に入っても、色々な使い方ができそう。大野忍の後継者に名乗りをあげたと言ってよいだろう。おもしろいのは、柴田は西川が入ると、さらに冴えたプレイをしてくれた事だ。上記の2点目は典型だが、体幹が強く前線でよく動く西川は、柴田と相性がよいようだった。と言う事は、柴田は大儀見と相性がよいと言う事ではないか。

 西川は体幹も強くキープもうまいが、スイス戦と言い、ナイジェリア戦と言い、シュートのうまさが見事。大会後半から、西川をトップにした布陣の方が格段に安定感があった。大会序盤トップを任された道上は、大柄な体躯を期待されての抜擢だったのだろうが、西川と比較すると、1つ1つのプレイの確実さに随分差があったように思う。まずは常盤木で経験を積む事だろう。
 ナイジェリア戦で、何が嬉しかったと言うと、ドイツ戦で散々だった土光が、素晴らしいプレイを見せてくれた事だ。的確な読み、鋭い出足、ここぞと言う時のブロック。CBとしては、ちょっと小柄だが大変な素材だ。また、同様にドイツ戦で残念だった木下も、藤田に交代して入り上々のプレイ。それにしても、2人とも、あのひどいプレイしか見せられなかった準決勝からよく立ち直ってくれたものだ。このあたりは、吉田監督の手腕と言えるのかもしれない。
 高木と浜田はおもしろい選手だったな。高木は、韓国戦の失点時のような一本調子のタックルに課題があったが、センタバック、サイドバックをそれぞれ高い水準でこなす戦術能力、韓国戦3点目のアシストの長駆できる能力など、素材は確かだ。浜田は3位決定戦での強引な攻撃参加には笑った。まあ、勝ったからよかったけれどね。いわゆる槙野系の選手なのだろうか。まあ、女子にもこのような選手がいてよいのかもしれない。日本の女子としては貴重な170cmを越える大柄な体躯にも期待か。
 田中ミナと横山の両翼は、やや明暗を分けた。横山にしても、A代表の岩渕にしても、次々と本格ドリブラが登場するのは大変結構なのだが、2人共挙動開始点が定まらないと言うか、何か空回りになってしまう。この手のドリブラは、中盤と言うよりは最前線で使えば、効果的だが、課題はボールの受け方と言う事になるのだろう。一方で田中ミナは、守備もよくする、いかにも日本風のウィングで、韓国戦など大活躍だった。ただ、まだ筋力が足りないため、タッチ沿いからのクロスを上げられず、ドリブルの方向がどうしても内向きになってしまう(たとえば、近賀はタッチ沿いから鋭いクロスを上げられるが、よほどの鍛練の賜物なのだろう)。フィジカルがもう一段上がれば、ドリブルの方向も多様になり、大化けするのではないか。
 田中ヨーコだが、長所(あのシュート力、いやあのロングシュートはすごかった、釜本や久保を思い出したよ)と短所(ボールの奪われ方の悪さ、この短所は今後の努力で、いかようにも改善できるように思うが)が、ハッキリしている選手。また、彼女は実力は存分に発揮したが、どのポジションが最適か、最後までハッキリしなかった。まずは、レオネッサのような、選手層が分厚いチームの中で、どのくらい存在感を発揮できるかどうかか。また、JFAアカデミー否定論者の私としては、彼女のような成功例が出てくる事は、大変快感を味わえる事態だ。そう言う意味でも(それにしても、同アカデミー出身の田中ヨーコ、浜田の2人は、明確な長所短所を持っている、公的指導組織がこう言ったタレントを育成している事そのものが、愉快ではないか)。
 猶本は評価の分かれる選手だろう。よく動くし、中盤から突破のパスも出せる。守備も献身的だ。しかし、自陣での守備はいかにも軽いし、ドイツ戦、ナイジェリア戦でプレッシャがかかると、中盤からの長いパスは、ほとんど通らなかった。まずはプレッシャがかかったところで、あの魅力的な展開の長いパスを通すための、1つ前のプレイの工夫を身につければ、格段に機能する選手となるだろう。

 そう言う意味では、猶本と献身的な藤田との組み合わせは絶妙だった。現時点で、このチームでA代表に一番近いのは、柴田と藤田だと思う。1対1のしつこさ、常識的だがしっかりとボールを散らせる。ナイジェリア戦でポストに当たった攻撃でわかるように、敵のイヤなところに飛び込む判断も的確だ。ただ、藤田がA代表に定着するためには、阪口、田中と格段にフィジカルに優れた先輩と対抗しなければならない。もっとも視点を変えれば、この2人とは全く異なるプレイスタイルである利点を持つと言う事になる。必要なのは、得意分野をさらに極める事、さらなる運動量が必要だろう。目指せ明神、もとへ、目指せ酒井與恵。  

 すばらしい大会だった。
 そして、日本女子サッカーに次々と好素材が登場しているのも愉しめた。個人的な知り合いでもある吉田弘さんの、怪しげな采配に「オイオイ」と思いながら、彼の満面の笑顔を愉しんだ。いや、何より、彼女たちの笑顔が最高だった。いや、日本選手だけでなく、いずれの国の選手達の笑顔と涙も堪能させていただいた。
 改めて、サッカーの偉大さを再確認した3週間だった。
posted by 武藤文雄 at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月04日

女子ユース準決勝を前に

女子ユース代表は、準決勝ドイツ戦を迎える。この大会で初めて当たる同格の相手となる。決して簡単な試合にはならないだろうが、相当な確率で勝つ事はできるはずだ。
ドイツは頑健で、みな技術も優れているが、アジリティでは日本が優れる。さらに後述するが、攻撃のアイデア、守備の組織、それぞれについて、日本は大会に入り格段の進歩を遂げているから。
もちろん、戦闘能力的にも遜色はないが、コンディション面でも日本は相当有利だ。まだまだ続く東アジア独特の高温多湿な残暑。この気候に不慣れな国の選手達には、週2試合は相当きついはずだ 。さらに、開催国特権とでも言おうか、1次リーグを1位抜けできた事もあり、日本の試合はすべてナイトゲームで、試合間隔も空いている。実際、ドイツは準々決勝のノルウェー戦をまだ日が残っている時間帯に戦い、しかも試合間隔も短い。
有利な条件を活かしてうまく勝つのも、「強い」チームの条件となる。堂々とした勝利を期待したい。

さて、韓国戦。世界大会のかなり上の方で、日本が韓国と戦うのが、当たり前になりつつあると言う事なのだろう。何のかの言って、大変結構な事である。
前半の日本の攻撃は鮮やか。1点目は、田中ヨーコのクサビを受けた西川のスルーパス、これはよい連係だった。そして、それを敵CBが自分のプレイイングディスタンスにもかかわ らず空振り、脱け出した柴田は、あわてて飛び出したGKの鼻先で冷静にシュートを決めた。
すぐに同点とされるも、圧迫をかけ、複数本の惜しいシュートを放った時間帯。縦突破に猛威を振るう田中ミナが敵DFの前をよぎる低いクロス(敵の逆を突くよい判断だった)、柴田が狙い済ましたシュートを決める。
その後危ない場面もあったが、チーム一丸となって防ぎ、3点目を決める。これは田中ミナがタッチ沿いに開き、後方から高木が内側にオーバラップすると言う高級な連係。ゴールエリアまで切れ込んだ高木のマイナスのクロスに、西川がつぶれ、後方で我慢していた田中ヨーコが冷静に詰めた。
後半は2点差のビハインドを追う韓国が攻め込もうとするが、日本は全員が引 いて冷静な守備。ほとんど危ない場面を作らせずに、時計を進め、そのまま3対1で押し切った。

このような守備的でいやらしいサッカーもできる事に素直に感心した。選手の戦術遂行能力は、相当高い。
また、1次リーグでは、各自が個人能力を前面に押し出す強引な攻撃が目立っていた。しかし、この日はアイデアあふれ、しかも敵守備網を切り裂くような連係を見せてくれた。
このあたりは、試合を重ねる事で、若い選手達に着実に経験値が積まれていると言う事だろう。

もちろん、課題もあるさ。
失点直前の田中ヨーコは、見事な切り返しで敵を抜き去り、そのまま前進、あ韓国DF 3人を引きつける事に成功した。ここで味方に展開できれば最高だったのだが、強引な突破を狙い、ボールを奪われてしまう。結果、田中ヨーコからのパスを受けようとして前進していた選手達は、皆逆をとられ、韓国の逆襲速攻を許してしまった。いわゆる最悪の取られ方である。
それでも、日本の守備陣は、丁寧にウェイティング、敵FWを右サイドまで追い込んだ。ところが、右サイドバックの高木は、あわててボールを奪いに行き、縦に半身抜かれて好クロスを上げられてしまい、あえなく失点。もちろん、ボールウォッチャになってしまった中央にも問題はあったが、サイドをあそこまで簡単にえぐられてはいかん。しかも、戻ってくる選手で、人数は揃いつつあったのだから。
 後半、韓国の前掛かりを冷静にいなしていた時間帯、前方に出てくる敵の裏を突き、逆襲(そして追加点も)を狙いたいところ。ところが、田中ミナが常に、持ち味でもある強引にオープンから敵陣に向かう内寄りのドリブルを狙ってしまい、逆にボールを奪われる事例が多かった。
田中ヨーコも、高木も、田中ミナも、「若さがゆえの甘さ」露呈したと言う事だろう。

構わないと思う。

彼女達の目標は、ワールドカップの2連覇であり、リオでの金メダルだ。そのために、今欠点がある事は、何も問題はない。
たまたま3人を採り上げたが、この3人は「得点」と言うわかりやすい実績も残してくれているし。
そう言った欠点も残しつつ、あまりある長所を持つこの魅力的なチームもあと2試合。
どんな試合を見せてくれるか、たっぷりと愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 07:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月09日

女子決勝を前に

 必ずしも、当方が有利とは思わない。けれども、1年前の決勝戦の試合前は10回やれば2回勝てるかどうかと言う戦闘能力差があったと思う。その2回を実現したのだから素晴らしかったのだが。しかし、今回は10回やれば3,4回は勝てる差までは詰めてきているのではないだろうか。

 もちろん、合衆国は強かろう。特にモーガンの切れ味は、昨年から一層磨きがかかっているし、ワンバックも相変わらず強力かつ堅実だ。
 しかし、(昨年敗れているだけに仕方がないのだろうが)合衆国が我々を異様に意識している事こそ、当方に有利にはたらくように思える。本来であれば、戦闘能力的に格上の合衆国は、当たり前に阪口と澤にプレスをかけ、鮫島の後方を狙ってくればよいはずだ。しかし、試合前の彼女たちの表情を見ると、意識しすぎて、策を弄してくるように思える。それは当方の思う壺だ。先方が本来の強さを否定してしまうからだ。直前の準備試合で、あそこまで体調を揃え本気モードで勝ちに来たことも、その現れだろう。

 一方の日本は、この1年で大きく成長した。少人数による速攻で崩す事もできるようになったし、全軍で引いて守備を固めて守り切る連係に磨きがかかった。
 また、宮間と仲間たち、佐々木氏らのスタッフは、この日合衆国と戦う権利を得るために、ありとあらゆる創意工夫を重ねてきた。特に準々決勝以降のブラジル戦とフランス戦、ストロングポイントの素早いボール回しを放棄しても、リアリズムを優先して、目的を達してきた彼女たちの目標実現能力は相当なものだ。なるほど、フランス戦の後半は、リズムが狂い猛攻を許してしまった。あそこまでペースを握られてしまったのは、誤算と言うものだろう。けれども、それでも粘り勝ったという事実は大きい。おそるべき勝負強さ。この経験もまた大きいはずだ。
 そのように、したたかに冷静に勝ち抜いてきて、ついに迎えるこの日の決戦。彼女たちの総決算とも呼ぶべき鮮やかな舞いを期待しても構わないだろう。
 ここまで必ずしも好調とは言い難かった宮間が、最後の最後に合わせてきて、我々に歓喜を提供してくれるのではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月18日

澤穂希世界一

 少々旧聞なるが、澤穂希がFIFAの年間最優秀女子選手に選考された。
 あのワールドカップの活躍を考えれば当然と言えば当然なのだが、とても印象的な表彰式だった。緊張しながらも堂々とした挙措、振り袖を着こなした美しい姿勢、含羞の色を浮かべながらも多くの恩人に感謝の念をまじえたスピーチ。いずれも実に見事、正にスーパースタアの振る舞いだった。

 澤と言う選手は、日頃の発言もプレイも知的そのものだ。
 世界一になる前から、彼女の発言は責任感にあふれると共に、多くの仲間を元気づけるものだった。「苦しい時は私の背中を...」のような発言は、凡人ならば気恥ずかしくて口にできないものだが、彼女の口から出れば、説得性がある。この人は、本当に頭がよいのだ。
 一方でその鮮やかなプレイ。最近でも、元日の日本選手権決勝の前半終盤の先制弾の場面など最高だった。ずっと後方でボールをさばき、中盤を引き締めていた澤が、あの時間帯、ここしかない場面で、時間も空間も完璧な前進で先制点を演出した。何と言う判断力の冴えだろうか。

 ただ、以前から述べているように、日本も澤も世界一にはなったものの、女子サッカーの本質的な課題はまだまだ何も解決していない。なでしこリーグの選手達の収入はよいとはとても言えないし、特に中学生世代の選手達のプレイ環境は非常に貧しいものがある。
 澤をはじめとする現在の女子代表選手に、注目が集まり、彼女達が経済的な恩恵を受ける事は誠に結構な事だ。彼女達は、是非稼げるだけ稼いで欲しい。しかし、せっかくならば、これだけ世間の注目が集まっている事をうまく利用して、少しでも女子サッカーの環境を改善、いや改革していきたいところだ。
 そのために、大変だろうが、やはり澤にはもう一肌、二肌脱いでもらう必要があると思う。これだけのスーパースタアなのだから、サッカー界の外からも、その一挙手一投足に注目が集まる。その澤が、直接的にも間接的にも、環境の改善を進めるべく発言するのは、とても重要だろう。いや、女子サッカーのみならず、サッカー全体、いやスポーツ界全体にとっても、今後の澤はとても大切な存在になるのではないか。

 だからこそ、やはり紅白歌合戦の件は飲み込めずにいる。
 実際問題として、翌日朝10時半キックオフのタイトルマッチを控えた選手たちが、前日19時台の生中継のテレビ番組に出ると言う事そのものが受け入れ難い。
 また、その登場の仕方もあまりに残念だった。自チームのユニフォームを着て登場した澤達を、アナウンサが「なでしこジャパン」と紹介。それら一連が、舞台裏の安っぽさそのものを見せてしまっていた。女子サッカーに多大な投資をしてくれている、レオネッサの親会社さんをあまり悪くは言いたくないのだが。
 
 ただ、このあたりのさじ加減は、実に難しいものなのだ。

 そこでカズ。

 先日の日曜日の夜のスポーツニュースは、カズのFリーグでの活躍?が、あちら、こちらで採り上げられていた。
 私は不勉強だったもので、昼間のBSの生中継を見ながらも、この試合は有料の練習試合だと思い込んでいた。試合途中のアナウンサらの説明で公式戦だと知って呆れた次第。さらには、エスポラーダと横浜FCの経営問題などを勉強するにつけ...いくら何でも、トッププロが競う公式戦に、(類似しているとは言え)異なる競技の選手が登場するのは、いかがなものなのだろうか。
 でも、このような「隙」がカズの魅力にも思える。実際、過去の話だが、拡大トヨタカップのオセアニア代表のゲストプレイヤと言うだけで、十二分に怪しいしな。いやいや、ヴェルディ時代のお父上の...
 実際、カズ格好いいんだよな。試合後にエスポラーダのサポータの方々との握手の映像が流れたけれど、本当に格好いい。幾度もスポーツニュースで流れた、またぎの連続など、それだけ見ていても興奮するし。

 澤穂希が、カズ同様、いつまでもスーパースタアである事を期待するものである。
posted by 武藤文雄 at 02:11| Comment(4) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする