2012年01月23日

4級審判員更新周辺2012

 例年の事だが、この季節は審判員資格更新の季節。毎週末、子供達と遊んでもらうために、4級審判の更新は、言わばノルマなので、サボる訳にはいかない。更新のためには、昔は講習会(いわゆる集合教育)受講が義務だったが、最近はe-learningになって、随分と簡単になった。もっとも、面倒ではあったが講習会を受けるのは、それなりに愉しかったのも確か。毎年、オフサイドなどの判定基準の微妙な変更について、「その考え方はサッカー的におかしくありませんか?」などと質問して、講師の真面目そうな1級審判員の方を困らせたっけな。

 ところで、2011/12年より、競技規則第5条に興味深い条文が加わった。曰く
試合中、試合球以外のボール、その他の物、または動物がフィールドに入り、プレーの邪魔になった場合に限り、主審は試合を停止しなければならない。プレーは、試合が停止されたとき、試合球があった位置からドロップボールにより再開されなければならない。ただし、ゴールエリア内でプレーが停止された場合は、主審はプレーを停止したときにボールがあった地点に最も近いゴールラインに平行なゴールエリアのライン上でボールをドロップする。
試合中、試合球以外のボール、その他の物、または動物がフィールドに入ったがプレーの邪魔にならなかった場合、主審はできるだけ早い機会にそれを排除させなければならない。
 この条文の日本協会の解説も引用しておく。
 これまでは、試合球以外のボールがフィールドに入った場合の対応についてのみ第2条(ボール)に規定されていた。また、競技規則の解釈と審判員のためのガイドラインに、外的要因としての部外者がフィールドに入った場合の対応について、説明している。
ボールや人以外の物や動物等の外的要因が入った場合については、実際、試合球以外のボールが入った場合と同じように対応していたが、それについて、主審の任務として第 5 条に規定することとなった。また、第 5 条に規定することで、第2条の当該規定を削除することになった。
 去年の事だったろうか、リバプールだったと記憶しているが、フィールド内に紛れ込んだ風船に当たって方向が変わったシュートがネットを揺らし、その判定をどうすべきかが話題になった。個人的には、「フィールドにある異物はすべて『石』として扱うしかないから、あの得点は認めるしかない」と思っていたのだが、この条文が競技規則に加われば、あのようなケースに対する対応は、非常にはっきりする。もっとも、主審は「その異物は『外部から入ったものか否か』を判定する」と言うややこしい行為をしなければならなくなったのだが。
 今を去る事30数年前の高校時代。何とも牧歌的な時代からかもしれないが、ベンチに入れない選手が球拾い兼GKの応援で、自陣ゴールの後ろに座って試合を観る習慣があった(いや、宮城県ではそうだっただけで、他県では禁じられていたのかもしれませんが)。ある重要な試合で、味方GKがつり出され、無人のゴールにシュートを決められた事があった。試合後、その後ろに座っていた友人が、真剣な顔で「フィールドに入ってあのボールを蹴り出そうと思ったんだ」と語っていた。確かに、この条文がなければ、そのようなケース、乱入した男は「石」に過ぎなかったから...

 もう1つ、このe-learningなのだが、なかなかよい。毎年、内容が改善されて、理解しやすくなっているのにも感心する。
 たとえば、オフサイドなのだが、「プレイへの干渉」だけでなく、「相手競技者への干渉」と、「その位置にいる事で利益を得る」事も、ビデオで説明している事。この事がわかってない人が結構多いんだ。数年前の事だが、四十雀の試合で「明らかにCBに干渉していた敵FW」を「プレイに干渉していない」と称して、「オフサイドではない」と言う主審に遭遇して困惑した事があった。くそ真面目で、ルールブックの表層は読むが、「競技規則の背景と審判のガイドライン」、「日本協会の通達」は読まず、かつルール改定の背景を理解できない困った審判が多いのも、また確か。今回の映像は、そのあたりをうまく補足している。贅沢を言うと、GKが飛び出した後の事例(最終のフィールドプレイヤでなく、2人目のフィールドプレイヤを見る必要がある)や、小学生の下手サッカーで「思わぬ事態」も実例にいれれば、もっと有効とは思ったが。
 以前も述べたが、このe-learning、Jのサポータ向けに公開するとよいと思う。たとえば、副審が旗を上げるのは、上記の「プレイへの干渉」、「相手競技者への干渉」、「その位置にいる事で利益を得る」のいずれかが成立した以降になる。ところが、それを知らないサポータは、オフサイドポジションに敵がいるのに旗を上げない副審にブーイングをする事になる訳だ。わざわざ、お金をかけて作っている審判用のコンテンツを、他に利用すればよいではないか。考えてみれば、サポータだけではないな、一般の選手にも、サッカーライターにも...
posted by 武藤文雄 at 00:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 自己啓発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月01日

バクスター氏に学ぶ

 拙宅から自転車で15分の平塚競技場にヤン・リトマネン襲来との事だったが、坊主の試合とバッティングと言う事で回避、その代わり自己啓発に励もうとこちらを選択する事にした。
 ベルマーレは昨年より、若年層の育成と地域における普及を統合して活動している。その具体活動として「ベルマーレフットボールアカデミーカンファレンス」を行っており、今回はその第2回。第1回としてこのような活動が行われたと言う。第1回も参加したかったのだが都合がつかなかった。この報告におけるベルマーレのチョウキジェユース監督(当時、現トップチームコーチ)のコメント
Jのクラブとして初の試みではないでしょうか。今後サッカーがどんなに進化しても、闘う気持ちだけは変わらず大切だと思います。今日は多くの指導者の方々と交流するよい機会となりました。これからもこうした取り組みを続け、サッカーを通じて人間力を育んでいきたいと思います
にあるように、我々底辺指導者と地域のトップクラブが情報交換する機会を設けようとする発想はすばらしいと思う。他のJクラブにも非常に参考になる活動ではなかろうか。
 過去も再三述べているように、ベガルタサポータの私だが居住地はベルマーレホームタウンの一角。少年の指導をしているのだから、当然出席資格はあるのじゃ。
 そして今回は、何とバクスター氏の講演会と言うのだから、ベルマーレの企画力も何とも見事なものだ。

 入場すると、浅野哲也氏(現ベルマーレユース監督、グランパス、レッズで活躍した日本代表選手、オフト氏就任直後はレギュラだったのだが、92年アジアカップ直前に負傷し離脱、あの負傷がなければドーハで我々は異なる歴史を味わったのかもしれない)が「ご苦労様です」と挨拶してくれて気持ちいい。さすがにこれだけのイベントゆえ100人を超える出席者、いかにもサッカー指導者と言う風情のジャージ姿のオジサン達も皆浮き浮きしている。開始直前にかの男が地味に入場してくる。当然ながらも出席していると思ったのだが発見できなかった。いなかった訳はないと思うのだが。きっとサングラスをかけて隅っこに座っていたのだろう。
 真壁社長が冒頭の挨拶で、アカデミー活動の説明、バクスター氏の紹介を行う。そして最後に「南アフリカで、フィンランドと日本、ベルマーレのサッカーファミリーの再会を」と付け加える。さすがだな。
 「通訳はどこかで見た事がある人だな」と思っていたら、最後に紹介があった。何と西野努氏ではないか。聞き取りづらいバクスター氏の英国英語を、実に見事なタイミングとサッカー用語で日本語化してくれた。

 内容は大きく2つに分けられていた。前半は昨年のユーロと欧州チャンピオンズリーグの統計からUEFAが分析した現代サッカーの分析。後半は日本が取るべきサッカースタイル。指導者向きとも言えるが、一般サッカー狂から見ても実に興味深いテーマだ。詳細はベルマーレ当局がまとめてくれるだろうから、興味を引いた部分の抜粋を。

 現代サッカーについて。
 上記2大会の得点のうち70%が「Transition」と「セットプレイ」によるもの。「Transition」をバクスター氏は「KIRIKAE」とはっきり日本語化してくれた。今までの感覚からすると「Transition」は「逆襲」とか「速攻」とか言い換えたくなるところだが、なるほど「KIRIKAE」はしっくりくるな。
 ちなみに上記2大会の得点でセットプレイによるものは23%と案外低い。過去8シーズンの欧州トップゲームの得点の40%がセットプレイだったのと比較すると、驚異的な低さだと言う。これは、「各チームの監督がセットプレイ対策を存分に行った」からであり、「小柄な選手が多い日本にとって勇気付けられる結果ではないか」と示唆してくれた。かの無様なバーレーン戦後に、豪州戦を(あるいはバクスター氏率いるフィンランド戦を)控える我々にも重要な見解だな。
 そして勝敗を分けるのは「KIRIKAE」直後の守備。ボールを奪われた直後に(1)奪われた選手がまず厳しく取り返しに行き(2)チーム全体が「KIRIKAE」てプレスし、敵の「KIRIKAE」スターの10番を押さえ(3)チーム全体が隊形を整え直し(4)敵の攻撃を遅らせる(そして、「すべきではないが」と前置きした上で「イタリア風のファウル」まで言及)と、具体的に説明してくれた。

 日本サッカーのあるべきスタイルについて。バクスター氏は、いきなり
「If you do not understand and respect your past then the present will always be confused and therefore no hope for the future」
と語ってくれた。武藤風の意訳では
「自分達の過去を理解し尊重できなければ、現在は混迷し未来への希望はない」
と言うところか。サッカー界の昔話を自慢するのが大好きな私にとって、大変都合がよく、ありがたい意見だ。そして、いきなり宮本武蔵の五輪書にこそ、サッカーの真髄が述べられていると、話は吹っ飛んでいった。「地」は基本、「水」は鍛錬、「火」は戦い、「風」は伝統、「空」は「地水火風がなければ空になる」のだそうだ。そこから、見事にサッカー用語への展開がなされるのだが、このあたりの例えが抜群に面白く、完全に引き込まれてしまった。

 最後に質疑応答。この手の機会を図々しい私は逃さない。ちゃんと質問しました。
「子どもを指導していて、運動神経のあまりない子は上達にすごく時間がかかる。そのような子どもの意欲をどう上げたらいいだろうか。」
 底辺指導者の私の質問を、西野努氏が通訳し、バクスター氏が真剣にうなずいてくれるだけで、結構な快感だ。そしてバクスター氏はうなずきながら答えてくれた。
「Very important question. We have lost a lot of players.」
面倒だから以降は日本語で。
「ついつい指導者は、チームの中でレベルの高い子との接触頻度が高くなる。そうではなくて力の落ちる子どもと共にできるだけ触れ合うべき。」
これは重要だよな。いつも、いつも気をつけているけれど、上手な子どもへの指導時間がどうしても長くなってしまう事を真摯に反省しよう。
「そのような子には、やる気が出る情報を提供すればいい、オーウェンやルーニーはなるほど子どもの頃から格段に能力が高かった。でもソル・キャンベルは全然違う。20歳くらいまで大変貧弱なフィジカル(「本当ですか」と言う突っ込みはなし)だったが、努力で強いフィジカルを作った。20歳くらいの時にキャンベルはFAに自ら電話してきて『身体を鍛えたから見てくれ』と言ったのだよ。」
 そこまで答えてくれたので、さらに突っ込みました。
「私の子ども達からすれば、オーウェンやルーニーよりも、ベルマーレの選手達なんです。是非ベルマーレで後から伸びてきた選手を教えてください。それが子ども達への最大の励ましです。」
 バクスター氏が、私の目を見てニヤリと笑った。
 ベルマーレ強化部長の大倉智氏が最後のまとめで答えてくれた。
「鎌田翔雅がそれに当たると思います。ジュニアの時代から能力は高かったのですが『背が小さく判断が悪い』と言う評価だったのですが、翔雅は努力でここまで上がってきました。」
 バクスターさん、大倉さん、ありがとう。これで来週から、子ども達に指導する材料は全部そろいましたよ。実際には、キャンベルも鎌田も、私の子ども達の一番優秀な奴よりも格段に能力が高いのはわかっている。でも、考え方はそれだ。来週から、もっと巧く子ども達と触れ合う事ができるような気がしてきた。

 実に勉強になる話を聞かせてくれたバクスター氏、見事な通訳をしてくれた西野氏、すばらしいイベントを提供してくれた(J1昇格のライバルでもある)ベルマーレ関係者に多謝。
posted by 武藤文雄 at 23:44| Comment(5) | TrackBack(0) | 自己啓発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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