ところで、2011/12年より、競技規則第5条に興味深い条文が加わった。曰く
試合中、試合球以外のボール、その他の物、または動物がフィールドに入り、プレーの邪魔になった場合に限り、主審は試合を停止しなければならない。プレーは、試合が停止されたとき、試合球があった位置からドロップボールにより再開されなければならない。ただし、ゴールエリア内でプレーが停止された場合は、主審はプレーを停止したときにボールがあった地点に最も近いゴールラインに平行なゴールエリアのライン上でボールをドロップする。この条文の日本協会の解説も引用しておく。
試合中、試合球以外のボール、その他の物、または動物がフィールドに入ったがプレーの邪魔にならなかった場合、主審はできるだけ早い機会にそれを排除させなければならない。
これまでは、試合球以外のボールがフィールドに入った場合の対応についてのみ第2条(ボール)に規定されていた。また、競技規則の解釈と審判員のためのガイドラインに、外的要因としての部外者がフィールドに入った場合の対応について、説明している。去年の事だったろうか、リバプールだったと記憶しているが、フィールド内に紛れ込んだ風船に当たって方向が変わったシュートがネットを揺らし、その判定をどうすべきかが話題になった。個人的には、「フィールドにある異物はすべて『石』として扱うしかないから、あの得点は認めるしかない」と思っていたのだが、この条文が競技規則に加われば、あのようなケースに対する対応は、非常にはっきりする。もっとも、主審は「その異物は『外部から入ったものか否か』を判定する」と言うややこしい行為をしなければならなくなったのだが。
ボールや人以外の物や動物等の外的要因が入った場合については、実際、試合球以外のボールが入った場合と同じように対応していたが、それについて、主審の任務として第 5 条に規定することとなった。また、第 5 条に規定することで、第2条の当該規定を削除することになった。
今を去る事30数年前の高校時代。何とも牧歌的な時代からかもしれないが、ベンチに入れない選手が球拾い兼GKの応援で、自陣ゴールの後ろに座って試合を観る習慣があった(いや、宮城県ではそうだっただけで、他県では禁じられていたのかもしれませんが)。ある重要な試合で、味方GKがつり出され、無人のゴールにシュートを決められた事があった。試合後、その後ろに座っていた友人が、真剣な顔で「フィールドに入ってあのボールを蹴り出そうと思ったんだ」と語っていた。確かに、この条文がなければ、そのようなケース、乱入した男は「石」に過ぎなかったから...
もう1つ、このe-learningなのだが、なかなかよい。毎年、内容が改善されて、理解しやすくなっているのにも感心する。
たとえば、オフサイドなのだが、「プレイへの干渉」だけでなく、「相手競技者への干渉」と、「その位置にいる事で利益を得る」事も、ビデオで説明している事。この事がわかってない人が結構多いんだ。数年前の事だが、四十雀の試合で「明らかにCBに干渉していた敵FW」を「プレイに干渉していない」と称して、「オフサイドではない」と言う主審に遭遇して困惑した事があった。くそ真面目で、ルールブックの表層は読むが、「競技規則の背景と審判のガイドライン」、「日本協会の通達」は読まず、かつルール改定の背景を理解できない困った審判が多いのも、また確か。今回の映像は、そのあたりをうまく補足している。贅沢を言うと、GKが飛び出した後の事例(最終のフィールドプレイヤでなく、2人目のフィールドプレイヤを見る必要がある)や、小学生の下手サッカーで「思わぬ事態」も実例にいれれば、もっと有効とは思ったが。
以前も述べたが、このe-learning、Jのサポータ向けに公開するとよいと思う。たとえば、副審が旗を上げるのは、上記の「プレイへの干渉」、「相手競技者への干渉」、「その位置にいる事で利益を得る」のいずれかが成立した以降になる。ところが、それを知らないサポータは、オフサイドポジションに敵がいるのに旗を上げない副審にブーイングをする事になる訳だ。わざわざ、お金をかけて作っている審判用のコンテンツを、他に利用すればよいではないか。考えてみれば、サポータだけではないな、一般の選手にも、サッカーライターにも...