2016年10月12日

やはり、我々が一番強い

 何より、守備がすばらしかった。相互の連係、前線からの追い込み、セーフティファースト。イラク戦での危なっかしさがほとんどなくなっていた。考えてみれば、UAE戦の守備は残念だったが、タイ戦は格段に改善されていた。今回も同じと言う事かもしれない。約1週間の強化期間が与えられれば、選手のコンディションも揃い(同時にハリルホジッチ氏も各選手の見極めができる)、氏も約束事を徹底できる、と言う事なのだろうか。
 開始早々に、原口が、自らのボール奪取を起点に本田の軽妙なボールさばきを受け先制したことで、完全に日本ペース。一見、攻め込まれているように見えるが、危ない場面はほとんどなく前半終了。ここまで、ハリルホジッチ氏は攻撃の整備や連係については、あれこれ工夫していたが、守備についてはあまり感心しなかったので、これは嬉しい驚きだった。「これだけやれるならば、もっと早くからやってくれ」との野暮は言うまい。
 原口のPK提供は、「我らがエースが、恰好の失敗経験を積んでくれた」と前向きにとらえればよいだろう。それにしても、あの豪州の速攻に、ちゃんとあそこに戻るのだから、大したものだなとも思うが。タイ戦以降のここまでの3試合、「もし原口元気が存在していなければ」と想像するだけで、何とも言えない恐怖感に襲われてしまうではないか。原口には、「自分が日本を支えているのだ」と、いっそうの自覚からの活躍を期待したい。
 ただ、同点にされ、押し込まれる時間が続いたあたりで、ハリルホジッチ氏が動かなかったのは疑問だった。豪州の攻撃は確かに単調だったが、あれだけ押し込まれれば、交通事故のリスクがある。タイ戦でも、疲労したDF陣が裏をとられかけ、西川の好捕に救われたではないか。負傷上がりとのことだが、献身と言う意味ではこれ以上にない岡崎がいるのだから、いくらでもやりようはあったと思うのだが。
 そういう意味では、技巧にすぐれ、中盤の前の方で使える、守備でも計算できるタレントの招集が必要なのではないか。田口、倉田、さらに五輪代表の矢島など。終了間際に、丸山を原口に代えて起用し守備固めを行い、その丸山が最前線に進出し空中戦から好機を作ったのには、笑ったけれども。
 ともあれ、最後まで交通事故になりかけることもなく、無事1対1で試合終了。守備で相当な自信を持つ事ができて、結果も上々。まことにめでたい試合となった。

 交代と言えば、ちょっと残念だったのは浅野。無理をせず引き分けでよい展開で、しっかり守りを固める場面、縦のスピードが格段の浅野を入れるのは、論理的な策に見える。しかし、浅野は2回早く出過ぎてオフサイド。さらに、上記した丸山が作った好機で、敵DFにマークされているのにかかわらず、オーバヘッドで狙いデンジャラスプレイの反則をとられてしまった。これでは、何のために起用されたのか、わからないではないか。いつまでも、このような青いプレイを続けられては困るのだが。

 長谷部以下の選手たちが悔しそうな表情をしているのは、よく理解できた。豪州に許した決定機は皆無。一方、当方は、前半の原口が作った本田のシュート、高徳のクロスからの小林のヘッド、終了間際の原口のクロスを浅野が狙った場面、と相当数回の決定機があった。勝つべき試合を落とした感のあるの試合だったのだから。
 次のサウジ戦だが、早くから集まり、オマーンと準備試合も戦える。しっかりとした準備を行い、完勝することを期待しようではないか。
 少々、感情の露呈が激し過ぎるハリルホジッチ氏だが、しだいに本領を発揮してくれてきたようだ。そして、この豪州戦を見た限り、やはり我々がアジア最強だと確信することができた。日本が、しっかりと組織守備を確立すれば、やはりアジア最強なのだ。まずは、体調が悪い時でも、今日のような守備をそれなりに安定して行えるよう期待したい。その上で、上記のような決定機を作る頻度を高める連係と判断力の向上を。予選段階から、これらを丁寧に積み上げていけば、本大会のベスト8を目指せるはずだ。
posted by 武藤文雄 at 00:41| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月10日

我々の目標はワールドカップベスト8

 必死の絶叫は継続していたし、あきらめるなど考えてもいなかった。終盤のパワープレイには疑問で、違うやり方の方が得点の可能性は高いと思っていたのは確かだが。それでも、麻也が左サイド奥深くまでボールを追いファウルを奪った時には心底感動した。そしてフリーキック。そして蛍!!!
 さすがにイラクに同点とされ、その後攻めあぐんだ時は「ヤバイ」と思いましたよ。
 変に偉そうで凝った態度をとったり、卑屈で斜に構えた姿勢をとるつもりはまったくないが、これだけしびれる予選は久しぶりだな。そして、それがアジアのライバルのレベルアップによるものだから、決して悪いこととは思わない。UAEのサッカーは単純な逆襲速攻狙いから大きく進歩している。タイも局地戦重視からチーム全体でのボールキープができるようになっていた。イラクも持ち味の技巧と判断が終盤まで落ちなかった、終盤時間稼ぎに終始したのは残念だったが。
 我々の目標はワールドカップのベスト8以上。予選で厳しい戦いをつむことができるに越したことがないではないか。

 立ち上がりから、守備の不安定さが気になった。伝統的にイラクの選手が技巧に長けており、フィジカルも優れているのは当然のこと。このような難敵には、厳しく腰を入れて当たらないと、技巧で外されてしまう。一方でイラクの選手は、スクリーンはうまいので、悪い体勢で強く当たればファウルをとられてしまう。ボールを奪えないならば、ウェイティングとカバーリングが重要となる。ところが、そこが何か全体に甘い。特に柏木、両酒井のプレイは残念だった。
 開始早々にFKからヘディングシュートを許しポストに救われ、前半終了間際には押し込みかけながら攻めきれずボールを奪わ速攻を許し、西川のファインプレイに救われるなど、芳しい守備とは言えなかった。失点時のセットプレイも、「ここを我慢しきれないのか」と言いたくなった。
 ただ、すべてが悪かったわけではない。結果的に、押し込まれる時間帯が増えたが、麻也と森重、たびたび最終ラインまで引く長谷部はセーフティファーストの意識が格段で、いわゆる危ない場面は上記のように数えるほどだった。
 結局バランスなのだと思う。ザッケローニ氏の時代は、ファウルを恐れすぎて無理に当たらず結果的にCKを与えてしまい、そこから失点することが多かった。今回は軽率にかわされり、慌てて与えたファウルからの失点が多い。思うように集合練習ができず、各選手のコンディションが揃わない中、どのようにバランスをとり、チーム力を上げていくか。守備のバランスがよくなり、より前でボールを奪えるようになれば、先制点のような鮮やかな速攻の頻度も上がるはず。
 そう考えれば、上記の通りアジアのレベルが厳しいほど、本大会に向けた準備ができるというものだ。

 攻撃については、なぜ単純にもっともっと原口を使おうとしないのかが大きな不満だった。今の原口の縦に出る能力は格段のものがある。当然イラクDF陣もそこは警戒してくるが、そこを工夫して、最強兵器をいかに生かすかがチームと言うもの。ところが、柏木は原口とはレッズ時代チームメートだったのに右サイド重視の展開、清武もせっかく原口が縦に出ようとしたときに前のスペースを消してしまうことが再三、酒井高徳も外にボールを引き出したうえで単純に原口を使えばよいのに細かな崩しに拘泥。
 結果、必ずしも体調がよいように見えない本田にボールが集まり、本田が一人でキープできないため岡崎がサポートに回り、崩し切れない場面が多くなってしまった。狙うべきは逆だろう。岡崎の粘りと清武の技巧で、原口を前に向かせてボールを持たせ、左から主に崩して、そこを岡崎や本田がねらう方が、得点の確率は格段に高まるのではないか。清武もあれだけ鋭い切れ味を発揮できているのだ。もう一工夫してほしい。
 攻撃については、よい意味で選手層が厚過ぎることが、災いしているのかもしれない。原口と清武が定位置確保としても、他にも多士済々。交代で起用された浅野、小林悠のほかにも斉藤学も武藤ももいるし、大迫も最近絶好調だと言う。岡崎と本田の経験は格段だ。これらのタレントを、いかに交通整理して強力な攻撃陣を編成していくか。

 チームとしての完成度はまだまだで、同グループで日本以外で最も戦闘能力が高そうな豪州と敵地戦をむかえるのは絶妙なタイミングと言える。強敵との試合は、やり方を間違えなければ格段にチーム力を向上させるものだからだ。イラク戦のアディショナルタイムは、間違いなくチームの雰囲気を明るいものにしているはずだ。UAE戦よりタイ戦の方が内容がよかったのと同様に、豪州戦はイラク戦以上に質の高いサッカーを見せてくれることだろう。時差と気候を考えても、サウジ帰りの豪州より、我々の方がコンディション的にも有利なはずだ。よい結果を期待したい。
 監督交代劇や、岡崎と本田の輝きにより、新旧交代とチーム作りが遅れている問題はある。また最前線にくらべて最終ラインに新しい選手を試していないのが心配だ。しかし、ハリルホジッチ氏の実績にせよ、次々に登場するタレントにせよ、我々の潜在力は、やはり相当なレベルにあるはず。目標は本大会ベスト8であることを忘れずに、よいチームが作られることをじっくりと見守りたい。
posted by 武藤文雄 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月05日

イラク戦を前に2016

 早々にUAEに敗れ、多くの選手が欧州の在籍クラブで控えに甘んじていることもあり、各種マスコミは悲観論が渦巻いている。まあ、負ければ「この世の終わり」、勝てば「ワールドカップ優勝」と、白か黒かのデジタル世界が、我が国のサッカーマスコミの論理なのだから、今さら始まったことではないのだが。
 思うようにならないから、サッカーと言う玩具は堪えられないくらいおもしろいと言うことを、多くのサッカーマスコミが理解する時代が来たとき、我々はワールドカップ制覇に大きく近づくことができるのだろう。その時代が、今56歳の私が生きているうちに訪れるのは、どうやら難しそうだけれども。

 ともあれ、何歳になっても、予選は愉しい。堪えられない人生の愉しみだな。

 もちろん、ハリルホジッチ氏に不安があることは否定しない。
 UAE戦については、逆襲速攻を受けづらい攻めを各選手に徹底しなかったことに失望した。しかし、それについては、タイ戦では明らかに改善が見られ、ボールを奪われた直後の守備はよくなった。「どうせだったら、最初からやれよ、本番のタイトルマッチだぞ」と、言いたくなるけれど。
 タイ戦、香川、長谷部、本田らが、疲労困憊にもかかわらず、交代が遅れたのにも失望した。西川のファインプレイがなければ、勝ち点を失う恐れすらあったのだ。おそらく、氏は、リードされると慌てるが、勝っているときは凍るタイプなのだろう。もちろん、UAE戦でひどかった香川をできるだけひっぱり、よい結果を出してもらい、自信を取り戻させることを狙ったのは理解できなくもない。けれども、それはまったくの裏目となり、香川は疲労困憊、自信喪失状態で、ドルトムントに帰ることになってしまった。
 裏目と言う意味では、UAE戦の交代もそうだった。宇佐美、浅野、原口、それぞれの投入は合理的なもので狙いもよくわかった。けれども、結果論としてはピッチを去った清武、岡崎、大島の不在が、投入された選手たちの活躍以上に、痛いものとなった。まあ、うまく行かないときはこういうものだな。
 また、明らかに欠点がある吉田麻也に拘泥し、新しい選手を試さないのも不安だ。麻也は決して悪い選手ではない。しかし、俊敏な選手との1対1で慌てる、たまに信じ難い大ポカをする、ゴール前の一番危ないところを読み切れないなどの欠点もある。年齢的にも決して若くないのだから、もう少し若い選手を試すのは一案だと思うのだが。果たして、タフな予選の戦いを継続しながら、氏がそのような英断をくだすことができるのかどうか。

 あれこれ、文句を並べたが、そもそも代表選手の責務は、「勝つこと」の次は「国民すべてから文句を言われること」なのだから。
 ただ、この監督は決して無能ではない。例えば、昨年の埼玉シンガポール戦は、トップ下の香川が強引にペナルティエリアに進出し、岡崎の妨害ばかりしていた。しかし、春の埼玉シリア戦では、香川が広範な動きを見せることで、岡崎と的確な連係を見せてくれた。少々時間はかかるが、選手の特長を組み合わせること、そのものはうまい監督なのだ。
 ただ、真剣勝負で細かな守備のディテールを徹底するとか、流れを読んで交代カードを切るのは、少々弱いのかもしれないけれどもね。

 冷静に考えれば、明るい話題は多数ある。
 まずは原口元気である。先日のタイ戦は、先制点はもちろん様々な面で格段の貢献だった。いわゆるウィングハーフとして起用された原口は、精力的にボールを引き出し、縦への突破を幾度も試みる。日本がボールを奪われた直後の守備への切替の早さも格段。
 タイ戦では、原口に引っ張られたかのように、酒井高徳、酒井宏樹の両サイドバックがすばらしかった。幾度も幾度も機会をもらいながら、代表で中々はっきりした活躍をしてくれなかった2人が、90分間安定したプレイを見せてくれたのだ。2人は欧州でも定位置を確保し、好調だと言う。
3人とも決して若いとは言えないが、いわゆるロンドン世代のタレントが、自クラブで中核として活躍し、代表で明確な地位を確保しつつあるのだから、結構なことではないか。
 大島、浅野、植田のリオ五輪メンバへの期待も大きい。大島はUAE戦で守備面でミスが出たが、中盤での展開は中々のものだった。もう少し、最前線に積極的に飛び出して欲しかった思いもあったけれども。浅野は、敵が厚い守備ラインを構成してきてもなお、後方を突くことができるストライカ。タイ戦で腰が引けてしまい、強引にゴールを目指さなかったは残念だったが、それでも点をとった。アーセナルと言うクラブへの選択は、過去ないがしろにされた選手たちを考えると、不安山積だけれども。植田はアントラーズで出場機会を得られていないと言うが、とにかく五輪での守備は見事だった。今の日本のセンタバック陣で、一番不満がある「とにかく敵のロングボールをはね返す能力」は格段のものがあるのだし。五輪の勢いで、一気に代表での定位置確保を目指して欲しいところなのだが。
 言い換えると、リオで示されたように、若く新しいタレントは続々と登場しているのだ。ハリルホジッチ氏は、(観察対象としては)興味深いところがあり、ベテランに拘泥するところもあるが、結構大胆に大島や浅野を抜擢するところもある。今後の氏の選手選択がどうなっていくのか、愉しく見守っていきたい。
 もちろん、自クラブでの出場機会が限られ、コンディションが不十分にせよ、岡崎と長谷部と本田が、常にギリギリまで戦ってくれるのは言うまでもない。

 イラクは、伝統的に判断力とボール扱いに優れた選手を輩出するが、国情からどうしても長期にわたる代表選手強化が難しい環境にある。だから、短期集中の大会は強いが、長期のホームアンドアウエー方式となると、力を発揮しづらい傾向がある。今回も、リオ五輪代表選手を多く含むかなり平均年齢の若いチームで来ているのも、その証左となっている。
 したがって、守備のミスを減らす試合運びを行い、丁寧に攻撃を仕掛ければ、相当高い確率で勝てるはずだ。
 その上で、次に控える敵地豪州戦に向けての準備はどうなっているのか。厳しいタイトルマッチでの勝ち点積み上げと、次に向かっての1つ1つの積み上げ。時にその積み上げがうまく行き、時に失敗する。
 その、あれこれを、たっぷり堪能できる。

 ワールドカップ予選は最高の娯楽なのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月05日

最高のエンタティンメント

 腹は立っている。
 しかし、このUAEに対する苦杯を反芻してみると、改めて、サッカーの奥深さを色鮮やかに感じることができ、ワールドカップと言う私の人生にとって最高のエンタティンメントを堪能することに、喜びを禁じ得ないのだ。

 UAEはよいチームだった。ちょっと前のこの国の代表チームは、かなりラフな反則を含め激しく守り、前線の選手の脚力に頼る速攻ばかりを狙う、発展性を感じさせないサッカーしか見せてくれなかった。90年イタリア大会に、このようなサッカーで出場権を得ていたのも、悪影響を与えていたのかもしれない。
 しかし、昨年のアジアカップにせよ、この試合にせよ、今のUAEは違う。悪辣なファウルもないし、単純に縦に行くだけではなく軽妙で精度の高いショートパスは鮮やかだ。
 このような状況での「上から目線」が失礼なのはわかる。でも、私は嬉しかった。「UAEが来てくれた」のだ。日本、韓国、豪州、イラン、イラク、ウズベキスタン、このグループに、完全にUAEは来てくれた。こうやって、アジアのレベルが上がることは、長期的に我々のレベルを上げることになる。毎年毎年の地域内のレベルの高いタイトルマッチが、代表チームのレベルを引き上げていくのだ。
 先日の欧州選手権の映像、単純にうらやましかったではないか。小国も大国も、持てる知性と技巧を丹念にぶつけ、それぞれのサポータ同士が愉しそうに応援し合っている。UAEの参戦は、あのような愉しそうな地域競争に、我々が一方近づく事ができた証左なのだ。
 アジアで簡単に勝てないことを嘆くのは完全にピントがずれている。我々が健全に戦えていると言う前提は必要だが、アジアでの戦いが難しくなればなるほど、我々のワールドカップ優勝への夢は近づいてくるのだ。 
 そして、腹は立っているが、このUAE戦、日本代表は健全に戦ってくれていた。

 だからと言って、腹が立って、腹が立って、腹が立って仕方がないが。
 まあ、「アジア予選で、ここまで不愉快な気持ちになることができる快感は格段なのものだ」と強気の態度を崩さずにおこう。

 で、本題に入る。

 結果は最悪のものだったが、試合内容は悪くなかった。
 この日の敗因は2点だ。

 1つ目は、酒井宏樹と長谷部が、ちょっとあり得ないミスをしたこと。その後、各選手がそれを丁寧にカバーしようとしたが、日本の守備の弱点が矢面に立ってしまった。
 1点目の酒井宏樹のミスを誘引したのは、大島のパスが弱かったこと。しかし、だからと言って、敵にボールを奪われそうなった酒井宏樹が、フィールド中央にグラウンダのキックをしたのにはあきれた。たまたま、そのボールが敵エースのオマールにピタリと合ってしまい、いきなり速攻を許してしまったのは結果論だが。そして、加速した敵FWへの対応は、吉田麻也が最も苦手とするところ。傍目に見ても慌てた対応となり、ファウルをとられてしまった。森重もカバーに入っており、落ち着いてコースを消せばよい場面だったのだが。FKそのものについては、敵が巧かった。ただ、左右のキッカーが揃っている状態で、蹴ったのは先に助走を始めた選手だった、とすれば、西川には、蹴るまでステップは踏まないで、我慢して欲しかったのだが。
 2点目の長谷部、代表100試合目で犯してしまった痛恨。そこからの展開、敵FWを3人で囲みながらも、囲んだのが少々守備が怪しい香川と大島だったこともあり、微妙なPKをとられてしまった。長谷部がミスしてしまってはどうしようもない。ただ、大島には言っておきたい。イニエスタやモドリッチの守備を学んでほしい。
 サッカーにミスはつきものだし、ミスが起こったら、周囲がカバーするのが肝要。そして、この試合、大きなミスが出た直後、各選手は丁寧にそれをカバーしようとしたのだが、それがたまたま弱点を突かれることになってしまった。

 敗因の2つ目は終盤に猛攻を仕掛けられなかったこと。
 リードを奪われたのは後半の序盤。たっぷり時間は残っていた。そして、日本はそこから次々と攻撃をしかけ、決定機を掴む。清武の空振り(あそこはアウトサイドでなく、インサイドで丁寧に狙えば、少なくとも空振りはなかったはず)、岡崎得意のニアからのヘディングがバーをたたく。前半粘り強く中盤で対応していたUAEだが、中盤で止め切れない場面も増えてきた。日本が、素早くボールを動かし、変化を交えた攻撃を継続すれば、あと2点とるのは難しくない状況だった。幸い、ベンチには多士済々の攻撃タレントもいるし。
 ところが、その交代策が様々な面で裏目となる。
 まず清武に代えて宇佐美。宇佐美は得意のドリブルで幾度か好機をつかみ、PKではないかと思える場面も作った(ただし、あの場面の倒れ方は感心しなかった、もう少し強引に前進すればよかったのではないか)。しかし一方で、清武がいなくなり、セットプレイの精度は落ちた感があった。
 次に岡崎に代えて浅野。浅野はゴールインしたのではないかと言うシュートを放ったし(ただし、あのシュートをちゃんとミートしていれば、GKを破ることができて、文句ない得点となったはずだ)、幾度も裏を突いてUAEに脅威を与えていた。しかし一方で、岡崎の不在は、両翼からのクロス攻撃において、敵への脅威を明らかに減らしてしまった。
 そして、最後の交代は、大島に代えて原口。1次ラウンドから、中盤後方に起用され中盤からの持ち上がりを期待されている原口は、再三長駆のドリブルから好機をつかみ、ミドルシュートを果敢に狙った(ただし、残念ながら枠には飛ばなかった)。しかし一方で、大島がやっていた左右への展開はなくなり、攻撃が単調になってしまった。
 そう、これらの「裏目」は結果論なのだ。交代で起用された選手は皆健全に戦い、特長を発揮し、必死に戦った。でも、傍で見ている限りは、何か交代策が裏目に出たようにも見えたのだ。ちゃんと逆転していれば、そんな印象は薄れたかもしれないがね。
 もちろん、ハリルホジッチ氏としては、このような交代策をとっていった最大の理由は、清武、岡崎、大島の役割を、香川がある程度カバーしてくれることを期待したからだと思う。しかし、残念ながら、終盤の香川は、焦りもあったのだろうが、慌てたプレイも目立ち、攻撃の変化や鮮やかな技巧は見せてくれなかった。
 清武を控えにおいていれば、香川と交代する手段もあったろうが、2人をスタメンに並べた以上、ハリルホジッチ氏としては香川を残すしかなかったのだろう。また、清武がスタメンにいたからこそ、本田の先制点が生まれたのも事実だし。
 難しいものだ。
 
 そうこう考えると不運な試合だった。
 ただし、私が嘆く不運は審判の判定ではない。ファウルかそうではないか、ボールがラインを越えたかどうか、これらに伴う運不運は、長い目で見れば公平に左右する。また、浅野のシュートの判定については、いわゆるゴールラインテクノロジー導入の健闘があるべきかもしれない(ただね、私はアジアのアウェイゲームで、「そのようなテクノロジーが正常に動作するのか?」と言う不安も感じるのですがね、まあそれはそれ)。
 私が述べたい不運は、ハリルホジッチ氏も、長谷部とその仲間達も、UAEを舐めていたわけではない。存分なリスペクトを持ち、丁寧に戦い、己の能力を発揮しようとしていた。そして、相応よい試合をしていたのだ。チームメートの大きなミスを丁寧にカバーしようとしていたし、リードを奪われても、執拗にあきらめることなく、それぞれの選手の特長を前面に出し得点も狙った。

 でも、それらが、すべて空回りした。
 まさにサッカーそのものではないか。
 西川、麻也、宏樹、香川、もちろん長谷部、それぞれには、相当厳しい批判を行った。でも、彼らは格段に経験を積んだ我々の英雄だ。もちろん、「もっとできるはずだ」との思いは強いが。

 今メンバに入っている選手達、彼らを逆転しようと虎視眈々と狙っている選手達、それらの選手の特長を最大限に融合し、厳しい予選を勝ち抜き、本大会に最強チームを送り込む。そして、ロシアで丁寧に戦い抜き、ベスト8以上を目指す。
 サポータ冥利につきる、最高のエンタティンメントが、今始まったのだ。
posted by 武藤文雄 at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月01日

ロシアワールドカップ最終予選初戦前夜

 いよいよ最終予選が始まる。
 何歳になっても、ワールドカップ予選は、最高級のエンタティンメント。己が参戦したのは、86年大会が最初だった。そして、2002年大会を除くと、今度の予選体験は8回目。陳腐な言い方になるが、真剣勝負の愉しさは格段のものがある。

 ともあれ。
 正直言って、やはり楽観的な思いに支配されてしまう。今回のレギュレーションは、6チーム総当たりのホーム&アウェイの長期戦。このような総当たり戦で、チーム数が増えれば増えるほど、戦闘能力が高いチームが上位に上がっていく。たとえば、明日のUAE戦に苦杯したとしても、丁寧に勝ち点を積み上げればそれで上位に進んで行ける。一方で、UAEが日本から勝ち点をとれたとしても、残り試合で勝ち点を積み上げられるかどうかは別な話だ。
 たしかに、UAEはワールドユースで好成績を上げた世代だけに、相当な強化をしてきているらしい。報道によると、2ヶ月にわたる長期合宿を行ったとのこと、決して簡単な相手ではないだろう。

 何より岡崎がいる。この精力的なストライカは、2009年に代表の中核に定着以降、足かけ7年に渡り、我々に歓喜を提供し続けてくれた。昨年のアジアカップUAE戦苦杯。アギーレ氏が、負傷を抱えた岡崎を無理に1次ラウンドで引っ張り過ぎ、交代せざるを得なかったことが敗因となった。そして、昨シーズンは、とうとうプレミアリーグチャンピオンの一員となった。岡崎がいる限りにおいて、我々は得点力不足に悩むことはなかった。
 岡崎も30歳になった。このロシア予選、そして本大会が総決算となることだろう。

 もちろん、長谷部も、本田も、(このUAE戦は負傷で離脱してしまったが)長友もいる。みな、長期に渡り、欧州のトップクラブで実績を残してきた男たちだ。苦労を重ねながら、香川も清武も両酒井も、欧州で地位を確保してきた。さらに世代が下がり、武藤も宇佐美も、そして大島も浅野も遠藤航も、続こうとしている。西川、東口、森重、柏木、小林悠と言ったJのトップスタアが、格段の能力を誇ることは言うまでもない。

 攻撃ラインの整備はかなり進んできている。
 ハリルホジッチ氏の初戦のシンガポール戦。わざわざ、岡崎をトップに固定しながら、香川が前線に飛び出して、岡崎を妨害し、勝ち点を能動的に失ったのは記憶に新しい。たまたまハリルホジッチ氏が視察したJリーグで好プレイを見せた選手を、執拗に起用して強化試合を無駄に費やしたのも、愉しい思い出だ。
 しかし、そう言った問題は過去のものとなろうとしている。少なくとも、最近の試合では、岡崎、本田、香川の位置取りや関係性は整理されつつある。

 不安を語るのは愉しい。
 特に、シリア、ブルガリア、ボスニアヘルツェゴビナ、とここ3試合、安定して「ひどい守備」の試合を見せられている。シリア戦とブルガリア戦は、終盤に中盤や前線の選手の怠慢。ボスニア戦は、最終ラインのタレントの集中不足。異なるモードでの大失態だけに、一層悩ましさが増す。
 4年前の最終予選は、初戦のオマーン戦で、日本代表史に残るような完璧な試合を見せてくれた。しかしながら、本大会での悲しい結果が出た今となっては、ピークが早過ぎたようにも思えてくる。最終予選初戦の前夜は、このくらい不安感があったほうが、よいのかもしれないなと。

 などと、あれこれ考えることを堪能する、初戦前夜。これが愉しいのだ。
posted by 武藤文雄 at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月19日

ベガルタ史に残る試合

 8月13日ユアテックスタジアム。ベガルタはレイソルに4対2で快勝。勝ったことも何よりだったが、若手の活躍と言う意味で、ベガルタの歴史に残るような一戦となった。
 実は、自分自身、久々のユアテック詣で。本当に嬉しい夜だった。

 前節に、平岡、石川、梁が負傷。元々、金園、野沢、金久保、蜂須賀も負傷離脱。その結果、ユース出身1年目の小島雅也が左サイドバックで初スタメンとなるなど、相当厳しいメンバ編成となった。もっとも、小島はユース代表の常連、五輪代表のスパーリングパートナとしてリオに帯同したタレント。試合に出るのが当たり前になってくれなければ困るのだが。
 ともあれ、小島の抜擢はチームのバランスを崩していた。(梁の代わりで起用された)左サイドハーフの藤村が、後方の小島を気にし過ぎた感もあり、仕掛けようとせず、球離れを早くするばかりで、攻撃が右サイドに偏る。
 「いかんな」と思っていたら、どうしてどうして。藤村のCKを、ハモン・ロペスが高い打点のヘッドを決めて先制。さらに敵DFのミスパスを藤村が拾い、ウイルソンにラストパス。ウイルソンが、いかにも彼らしい両足使いの特長を存分に発揮する技巧から決め追加点。いきなり藤村の2アシストで、2点差としてしまった。藤村は盛岡商時代から、正確な技術と落ち着いた展開力が評価され、リオ五輪候補にも選ばれたことのある5年目のタレント。昨シーズンから、少しずつ試合出場機会を増やし、今シーズンのベガルタには、不可欠の選手となっている。本来のポジションはボランチだが、FWもサイドバックも攻撃的MFもこなす。その藤村の大活躍でいきなりの2対0。これはこれで、ベガサポとしては涙が出そうな展開である。
 ところが、ベガルタのバランスの悪さはそのまま。2点差になって、引き気味になったところで、藤村と小島の連係ミスを突かれ、PKをとられて2対1とされる。さらに後半。レイソルは、この連係の悪い左サイドを執拗に突いてくる。そして、レイソルの俊足右ウィングの伊東に、小島が突破を許し、同点とされる。
 ここで、ベガルタ渡邉監督は決断する。小島に代えて茂木を起用したのだ。茂木はベガルタユース出身の2年目。ふてぶてしいほどの、ボールキープから色々な仕事ができるタレントで、昨シーズンは新人ながら開幕からスタメンに抜擢された。しかし、敵のマークが厳しくなるにつれ、起用の機会が減り、シーズン途中から、J2のツェーゲンにレンタルされた。ツェーゲンでも、ボールの引き出しに課題があり、中々起用されなかったと聞く。今シーズンオフ、突然アイスランドリーグに挑戦するとの報道があった。欧州とは言え、必ずしもレベルが高いとは思えない欧州極北国のチームに厳寒期にjトライアルと聞き、茂木本人なのか代理人なのかはさておき、相当アレな活動と心配したものだった。そんなこんながあり、今シーズンは序盤からベンチ入りするも少なく心配していた。ただ、前節のアントラーズ戦の終盤に、負傷した梁に代わって起用され、よいプレイを見せてくれていた。
 この交代により、茂木は右サイドMFに。奥埜が左サイドMFに回り、藤村が左サイドバックに。これがうまくいった。茂木は、昨シーズンでは見られなかった質の高い動き出しを再三見せ、ボールをよく引き出し、右からの崩しを演出する。一方、狙われていた左サイドは、奥埜の豊富な運動量と、藤村の落ち着いた位置取りで、攻守ともに大幅に改善された。結果として、ウイルソン、ハモンの2トップを、両翼から奥埜と茂木がサポートする形となり、試合は一気にベガルタペースになった。 
 そして、圧倒的に攻勢をとり、CK崩れからPKを奪い、勝ち越し。反転して攻め込んでくるレイソルの攻撃に耐えながら、速攻から自殺点を誘発し、2点差に、そのまま押し切っての快勝となった

 小島にとっては、ほろ苦い一夜となった。いきなり2失点に絡んでしまったのだ。でも、これも経験だ。とにかく、勝ったのだ。
 もっとも小島自身は、切り替えや押し上げも的確だし、視野も広く絞り開きの位置取りの修正も上々、攻め上がって思い切りよくシュートを放ったし、一度左サイド奥深くに進出し上々の低いクロスも上げた。ただ、DFとして一番肝心な守備で、対面の伊東を止め切れなかったのだ。確かに不合格だった。
 まず目先で改善すべきは、仕掛けてくる相手に対し、もっと勇気を持ち厳しく当たることだろうか。いや違う。そんなこと以上に重要なのは、チームメートからの信頼獲得だ。少なくとも、この日は、藤村、三田、富田、渡部、大岩と周囲を固める選手が、みな小島をカバーしようとしていた。いや、選手達だけではない、サポータも小島が何でもないクリアをする度に「マサヤ!マサヤ!」コールで称える。リーグ戦に起用され、当たり前のプレイをしているだけで、周囲に評価されているうちは、まだまだだ。小島よ、内田篤人はアントラーズ加入直後からスタメンを務めたのだよ。

 ともあれ。この試合はベガルタの歴史に残る試合となった。
 ベガルタは2010年にJ1に復帰したが、それ以降、ほとんど生え抜き(新卒)の選手の育成に成功していなかった。梁、菅井、富田ら生え抜きの選手はみな00年代半ばに加入した選手。そのほかは、上手に獲得した移籍選手をステップアップさせてチーム強化を行ってきた。加入した移籍選手の多くが、ベガルタ加入以降、前所属クラブよりも格段な活躍を見せてくれたことは、サポータとして誇り高いのだが。
 ようやく昨シーズン、ベガルタユース出身の奥埜が、仙台大を経て12年に加入し、Vファーレンへのレンタル経験を加え、中心選手に成長してくれたのが、久々の成功例だった。そのように生え抜きのタレントの育成に苦労してきたベガルタなのだが、このレイソル戦は藤村、茂木、小島が、それぞれ活躍したのだ。
 今シーズン、ベガルタは苦労しながらも、攻撃的なサッカーを指向し、何とか中位から上位をうかがう位置につけている。そこに次々と、前途有為な野心的な若者が多数登場し、結果を出す試合を見せてくれた。しかも、私自身がその試合に参戦できた。忘れ難い一夜だった。
posted by 武藤文雄 at 00:06| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月24日

FC東京は何のために城福氏を起用したのか

 J2ジェフ対エスパルスをノンビリ映像観戦する日曜の夕刻。ふと、気が付いた。両軍の監督は、関塚隆と小林伸二、何と2人とも私の同級生ではないか。考えてみれば、歴史、予算規模、ホームタウン、スタジアム、いずれも相当なレベルにあるが、過去のほんのちょっとした不運から、J2での戦いを余儀なくされている両クラブ。早期のでのJ1復帰を目指し、国内で実績屈指の名監督を招聘しているわけだ。
 試合そのものも、スリリングな点の取り合いでおもしろかった。両軍関係者の悲喜こもごもを想像すると、何とも言えないが。

 さて、その試合中に飛び込んできた情報。FC東京が、城福監督を解任したと言う。おお、この人も、同級生ではないか。いや、同級生かどうかは、何ら本質的な問題ではないのですが。

 FC東京は現在勝ち点26の13位、確かに代表選手やそれに準ずるスタアを多く抱え、昨シーズンは4位に食い込んだクラブとしては、非常に不満がある成績だろう。特にACLの影響がなくなりリーグ戦に専念できるようになった6月以降に、中々勝ち点が上がらないのも印象が悪かった。
 もっとも、ACLでは1次ラウンドを突破、1/16ファイナルで敗退したわけだが、「最後のアディショナルタイムを守り切れなかった」のは、采配云々よりは不運と語られる語られるべきだろう。現実的に、ガンバとサンフレッチェが1次ラウンドで敗退したことを考えると、そう悪い成績ではなかった。

 しかしながら、今回の解任劇については、ここ最近のFC東京の不振だけで議論できないのは言うまでもない。城福氏がFC東京から解任されるのは、2回目なのだから。しかも、前回の解任劇では城福氏の采配の下、FC東京は低迷し、氏を解任した後も成績は上がらずJ2陥落してしまっていた。
 さらにFC東京は昨シーズン上々の成績を収めたフィッカデンティ氏を解任し、敢えて過去J2ア降格を誘引した城福氏を呼び戻している。フィッカデンティ氏を解任した背景は、野次馬にはわかりづあらいが、どうもFC東京のフロントはフィッカデンティ氏の守備的なサッカーがお気に召さなかったらしい。
 ところが、城福氏が以前FC東京の監督を務めていた折は、守備的なやり方をしてナビスコカップを制するなど上々の成績を収めたが、「ムービングフットボール」と言うモットーで志した攻撃的サッカーを、あまり見せることはできなかった。また、FC東京解任後に務めたヴァンフォーレでは、必ずしも恵まれない戦闘能力ながら、リアリズムに富んだ采配でJ1昇格、残留を演じている。つまり、城福氏は、必ずしも攻撃的なサッカーで成果をあげた監督ではないのだ。
 そうこう考えると、野次馬にとって、FC東京のフロントが、何を考え、何を目指し、何を期待して、城福氏を再招聘したのかが、さっぱりわからなかった。それでも、我々が知り得ない何かを望み、氏を呼んだのだろうかと推測していたのだが、シーズン半ばでのこの解任。いよいよ、理解できない。ここでクビにするならば、最初から呼ばなければいいんじゃないの?
 繰り返そう。いったい、FC東京のフロントは、何を求めて、城福氏を再度呼んだのだろうか。

 帝都東京をホームタウンにし、多くのスタアを抱え、カップ戦を複数回制覇し、幾度かACLにも参戦したFC東京。このクラブが、真の強豪を目指し、もがいている。そして、このもがきものが、Jリーグの、あるいは日本サッカーの歴史なのだろう。
 ついでに言うと、城福氏をすぐ招聘しそうなクラブが、中部地方に(以下自粛)。
posted by 武藤文雄 at 23:56| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月18日

扇原貴宏と山村和也

 セレッソの扇原貴宏が、グランパスに移籍したと言う。色々なことを考えさせてくれる移籍劇だ。

 扇原は、ロンドン五輪代表選手。正確なパスを武器にチームの中核として活躍した。しかも、184cmの大柄な体躯、左利きと言う特長も備えている。ロンドン大会準決勝のメキシコ戦で決定的な失点につながるミスをしたものの、そのような失敗経験をプラスに活かし、大成するのではないかとの期待も大きい選手だった。
 その後、2013年の東アジア選手権ではA代表にも選考されたこともあったが(海外クラブ所属選手不在のタイミングだったが)、自クラブのJ2陥落を止めることはできず、もう一つ明確な活躍が見受けられずに、今日に至っている。上記のメキシコ戦のように、時々いわゆる「抜けた」プレイをする悪癖が、なかなか改善されないのが課題に思える。たとえば、昨シーズン肝心かなめのJ1昇格決定戦のアビスパ戦では、ベテランの橋本にスタメンを譲ったのも残念だった。さらには、この大一番の終盤、セレッソがリードした時間帯に、扇原は橋本と交替して起用された。ところが、セレッソはその時間帯にアビスパに同点とされ、J1昇格を逸することになる。その失点の要因の1つが、中盤を老獪に引き締めていた橋本の不在だった印象もあり、いっそう扇原の伸び悩みを印象づけるものとなった。
 今シーズンは、セレッソでもロンドン五輪代表でも、ボランチでコンビを組んでいた山口蛍が、欧州に移籍。扇原にとっても、チームの中核としての自立が期待されたシーズンにもかかわらず、定位置を失ってしまった。
 扇原にとって、新たな場を求めて移籍は、有効な選択と言えよう。グランパスは勝ち点勘定、チーム作りいずれの面でも、苦しい状況にあるようだ。不運にも、加入早々に負傷離脱となってしまったようだが、新加入の扇原にかかる期待は大きいはず。ここで活躍することで、まだ24歳のこのタレントが、再度A代表を目指す道が開かれるかもしれない。活躍を期待したい。

 その扇原がポジションを奪ったのが、山村和也。これまた186pと言う身長に加え、技巧も運動量も優れたタレント。しかも、扇原と同じロンドン五輪代表選手だ。その山村は、前所属のアントラーズでは定位置を獲得できず、セレッソに移籍してきた。
 山村は、ロンドン五輪代表チームがスタートした際は、主将を務め、中核として期待されていた。けれども、傍から見ていて、「気持ちが前面に出てこない」 タイプと言うこともあり、活躍の印象は薄い。結果的に、予選半ばから、扇原に定位置を奪われた形となった。ロンドン本大会でもメンバには入ったものの、中盤の控え選手として、やはり「気持ちが出てこない」プレイに終始。結果的に、同じポジションの山口蛍と扇原を休ませづらい状況となり、大会終盤に勝ち切れなかった要因の1つとなった。正直なところ、「ほかの選手を連れていくべきだったのではないか」と言う印象だった。
 その後、アントラーズでも、思うような活躍ができずにいた山村。昨シーズンオフにセレッソに移籍、シーズン序盤から、扇原からポジションを奪い、そこそこの活躍をしていた。「この好素材が、ようやく本物になってきたか」と雰囲気が出てきている。もっとも、山村は山村で、山口蛍がセレッソに復帰するや否や、 定位置を奪われてしまったのだが。

 選手の成長と言うのは難しいものだと思う。
 そもそも五輪代表の最終メンバに入ることのできる選手は、正にエリート中のエリート。しかも、五輪本大会と言う修羅場を経験することで、一層の成長(すなわちA代表)が期待される存在だ。
 けれども、そのように順調に成長する選手もいるが、伸び悩む選手も少なくない。アトランタ五輪後の前園真聖と中田英寿の明暗がその典型。そこまで極端ではないが、ロンドン五倫のボランチも、山口蛍は代表に定着し(ここに来て、やや壁に当たった感もあるが)、一方で扇原と山村はもがいている。
 選手の成長は、その環境(所属チーム)に左右されるとよく言われる。出場機会がどの くらい得られるか、戦術的にその選手の特長が活かせるか、などが重要だからだ。けれども、扇原と山村については、従来の所属チームが、その成長に不適切な環境だったとは考えづらい。扇原はセレッソユース育ちでそのままセレッソでプレイしていた、チームとの相性が悪いなどの、外部環境問題は少なかったはずだ(もちろん、フォルラン騒動など、チームそのものの不安定感はあったのは確かだが)。山村は、新人選手や移籍選手のスカウト、その後の成長に定評があるアントラーズに所属していた。これまたチームコンセプトと、山村のプレイが合わなかったとは思えない(もちろん、アントラーズにはチーム内の激烈な競争はあるのだが)。

 そもそも、我が国は、180cmを超える中盤でプレイする代表選手を、ほとんど輩出していない。メキシコ五輪の英雄、小城得達は、大柄で技巧に優れていたが178cm(釜本と同じサイズ、180cm未満ではあったが、当時は超大型選手と言う印象はあった)。70年代後半に大器として期待された西野朗は、とうとう代表には定着できなかった。そして、日本サッカーの質が格段に上がった90年代以降も、180cmを超える代表に定着した中盤選手は数えるほどしかいない。90年代前半の浅野哲也、2000年代の福西崇史と稲本潤一、そして本田圭佑くらいだろう。
 世界的に見ても、GK、CB、ストライカ以外でも、185cmを超えるタレントが当たり前になってきている。これは、アフリカ系の選手が各国の代表に増えていること、トレーニング技術が発達し体格のよい少年への技術指導が定着したことなどが要因に思える。中盤の選手に高さがあるのは、セットプレイや敵の放り込みへの対処に有効なだけではない。偶然巻き起こる中盤でのちょっとした空中戦を制することで、思わぬ好機が演出されることもあるのだ。日本協会にしてもJの各クラブにしても、積極的に大柄な少年選手の育成に力を入れているようだが、中々結果に結びついていないのが現実だ。リオ五輪世代を考えてみても、遠藤航でさえ178cm。180cmを超えるタレントはGK、CB、最前線に留まっている。そう考えると、扇原と山村の「タッパ」は、それだけで魅力なのだ。
 扇原も山村も20代半ばとなった、けれども選手の成長曲線はまちまちだ。特に大柄な選手は、20歳を超えたあたりで、身体が大人になったところで、少年時代にできていた動きができなくなるケースが、よくあると言う。2人がそれにあたるかどうかは別な議論となるが、いずれにしても、丹念にコンディショニングを高め、経験を活かして判断力を磨けば、まだまだ「化けられる」可能性はあるはず。粛々と努力を積み、成長を期待したいところだ。
posted by 武藤文雄 at 14:20| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

続関憲太郎の矜持

 65分のことだった。左サイドに流れてきたアルビレックスのエース山崎に裏をとられ、石川の対応が遅れる。慌てた石川は明らかなプッシング。主審がPKスポットを指差す。
 直前にセットプレイから1対1に追いつかれていたベガルタ。ここでPKを決められると相当苦しくなる。5連敗が頭にちらつく。

 しかし、我々には関憲太郎がいた。
 
 前半立ち上がりに、守備ラインの左から右へのスライドが遅れたところを、レオ・シルバに狙われ、中央を崩され、ラファエル・シルバが抜け出す。しかし、関が鮮やかな飛び出しで、シュートブロックで防いでくれた。この場面の関が素晴らしかったのは、その位置取り。ラファエルの前進を的確に把握し、反応可能な距離を置きつつ前進していたことにあった。六反から定位置を取り返した関、その充実振りを如実に示すビッグセーブだった。
 そして、冒頭の場面のPKストップ。
 ここまで4連敗と苦しんできたベガルタを救う、いや生き返らせる、2つのビッグセーブだった。関と六反の、非常にレベルの高い戦い。ありがたいことだ。

 上記した開始早々のアルビレックスの決定機を関が防いだ以降は、重苦しい展開となる。ベガルタ、アルビレックス共に、相手の組織的な中盤守備を抜け出すことができなかったからだ。共に連敗しているだけに、「何としても負けたくない」 意識も高かったからだろう。

 後半、ベガルタは、チーム全体を引き気味に修正し、アルビレックスを引き出しておいて、逆襲をねらうやり方に修正。これが当たった。奪った2得点とも、ようやく体調が整ったウイルソンが、長駆を繰り返せるようにになったことがカギとなった。
 先制点は、ベガルタ陣から左サイドに持ち出したウイルソンが、ハモンの左への流れも利用したカットインで敵DFを抜き去って、振りの非常に速いグラウンダのミドルシュートをニアに決めたもの。何とも鮮やかな一撃だった。持ち出しと言い、振りの速いシュートといい、ウイルソンに往時の切れが戻ってきたのが、何ともうれしい。
 上記関のPKストップ直後の奥埜の決勝点は、ウイルソンがまた異なる魅力を発揮してくれたもの。前の場面と同じように左から持ち出したウイルソンは、ハーフウェイラインを越えたあたりから、逆の右サイドに前進している奥埜にピタリとロングパスを通した。完全に敵DFの裏をとった奥埜は、正確なトラップから落ち着いて中央に切り返し、左足で正確なシュートをファーサイドに叩き込んだ。
 2点とも、美しい逆襲からの、見事な得点だった。

 2対1になった後は、アルビレックスが手替え品替え攻め込んで来るが、渡邉監督もいつになく、早め早めに選手交代。菅井、藤村、二見を起用、終了間際は両サイドにサイドバックを2枚ずつ並べる分厚い守備布陣で、何とか逃げ切りに成功。貴重な勝ち点3獲得に成功した。
 もともと、運動量を基盤に戦うベガルタは、夏場は中々勝ち点を伸ばせない傾向があった。しかし、この日は水曜日に試合をしながら、最後まで戦い続けるタフファイトを継続し、勝ち切ったことは、とても重要だ。

 もちろん、まだまだ課題は大きい。
 短期的に気になるのは、石川の調子が落ちていること。同点弾も、マークしていた舞行龍に、石川が完全に振り切られたものだった(ちなみに、前々節のガンバ戦の先制点も、石川がマークしていた米倉に振り切られたものだった)。さらに冒頭のPKも、山崎に裏を取られた反応の悪さも問題だったが、慌てて不用意なプッシングをしたのも感心しなかった。まずは体調を整えて欲しい。
 また、これからさらに気温が上がる盛夏となる。富田、梁、ウイルソンと言ったベテラン達がいかに、体調を整え継続的に活躍してくれるか。これも、渡邉氏以下のコーチングスタッフの課題となる。

 しかし、連敗中もブレずに積み重ねてきたサッカーは、いずれのチームにも通用する組織力を持つ。そして、敵に最も脅威を与えられるウイルソンが帰ってきた。
 丁寧に、丁寧に、勝ち点を積み上げていきたい。
posted by 武藤文雄 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月09日

ベガルタは完敗だったけれど

 2016年7月9日、敵地ガンバ戦、84分。1対2で負けていたベガルタは、佐々木匠を起用した。
 ベガルタユース時代から、若年層代表で、常時定位置に近いところにいた技巧派、いわゆるスタア候補。正直言って、ベガルタサポータとしては、もっと早くからの登場を期待していた若者である。
 アディショナルタイムを含めて、約10分のプレイ。匠は、軽妙なボール扱いで、ベガルタの攻撃に変化をつけるのには貢献したが、はっきりとガンバ守備陣に脅威を与えることはできなかった。
 匠には、はっきり伝えておきたい。「中村俊輔や小野伸二は、デビュー戦でもっと格段にインパクトのあるプレイを見せてくれたよ」と。このままではダメだ。頑張れ。

 ベガルタは、その後パトリックに追加点を奪われ、1対3で完敗。4連勝のあと、3連敗。しかも、3試合連続で、3失点。何とも、味わい深い難しい状況の落ち込んでしまっている。

 けれども、今日のガンバ戦、内容はよかった。

 序盤から、ハードワークでガンバを押し込む。押し込めば、速攻のスペースを与えるため、一度藤春の突破から好機を許すが、これは仕方がない。ところが、遠藤のFKから、米倉のヘディングシュートを決められ、敢え無く先制を許してしまった。遠藤の精度、米倉の飛び出し、一方当方の石川の対応遅れ。このような詳細を丁寧に詰めなければやられてしまうのだ。
 しかし、このFKの判定には、大きな不満を感じた。ガンバの中盤がボールを回した場面、ガンバのトップのアデミウソンが、ボールよりはるかにベガルタゴール寄りで、マークしていたベガルタDF渡部をスクリーンした。渡部は、ボールに向かい、途中で妨害するアデミウソンに接触しながら前進し、ボールにアプローチ。そのアデミウソンへの接触をファウルにとられのだ。
 これは、アデミウソンの、オブストラクションではないのか。アデミウソンはまったくボールに関係ない地点で、渡部のプレイを妨害していたのだ。

 先制を許した以降しばらく、ガンバに押し込まれる。あのような不可思議なフリーキックをとられたため、腰が引けてしまったためだった。
 それでも、少しずつ冷静さを取り戻し、前半終盤には激しい当たりを思い出し、ペースを再びつかみ直す。
 後半に入っても、ベガルタの良さは継続する。全員が厳しい圧力を継続。幾度も好機をつかむ。そして、55分、CKからハモンがフリーでたたきつけるヘッド。コースは今一歩で、GK正面だったが、これを名手東口がファンブル。幸運にも恵まれ、同点に追いつく事に成功した。

 当然ながら、ガンバは圧力をかけ直してくる。渡部を中心に厳しく守り、この日久々に起用されたGK関の落ち着いたプレイもあって、よく防いでいたのだが。
 結果的に、アデミウソンと交代したパトリックにやられてしまった。強敵に追いついた後、いかにしのぐかは1つの課題。交代の使い方を含め、もっとやりようがあるのではないか。負傷者が多いとは言え、それがサイドバックの交代(今日は大岩から菅井)だけでは、ないように思うのだが。まあ、それはそれとして。
 突き放されたベガルタは、再度攻め直す。菅井でけではない、ウイルソンと匠を起用。圧力をかけ直し、幾度も好機をつかみかける。梁のシュートが、東口に好捕された場面は惜しかった。
 そして、無理攻めを仕掛けたアディショナルタイム、パトリックに決められ、2点差とされ、勝負は決まった。

 悔しい。
 でも、内容は悪くなかった。それなりに攻め込みながら、攻撃に変化が乏しいうちに、速攻から大量点を奪われた、ジュビロ戦、フロンターレ戦と比較すると、格段によかった。守備も安易に逆襲を許さなかった。攻撃も変化をつけることができた。
 たとえ、負けが込んでも、今のよさを伸ばすことを考えるべきだろう。

 匠がようやくピッチに立った。西村もいる。藤村も長時間機能した。ウイルソンも菅井も復帰した。パブロ・ジオゴと言う新ブラジル人も加入した。個人的にずっと期待している、高卒2年目の茂木もいる。
 選手層は格段に厚くなったのだ。渡邉氏の手腕に期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする