2016年12月01日

シャペコエンセ

 何ともやりきれない。このような事故がまた起こるなんて。
 生存した方々の早期の回復を祈り、亡くなった方々のご冥福をお祈りし、ご家族や親しい方々にお悔やみを申し上げます。

 中学生の折、サッカーをかじり始めた当初から、トリノのスペルガの丘、ユナイテッドのミュンヘン空港、それぞれの悲劇を学んだ。そして、リアルタイムに体験した、アリアンサ・リマとザンビア代表。
 今回は、カイオ・ジュニオール氏やケンペスたち、身近で触れ合う機会が多かった方々が悲劇に見舞われた。さらに、スルガ銀行カップと言うつながりもある大会。うまい言葉が見つからない。昨日来、悲劇に見舞われた彼らと、共にプレイしてきたJリーガやサポータの方々の悲嘆を目にするにつけ、何とも言えない気分になる。

 まずは、自分と家族が、こうやって日々安穏と愉しく暮らせることに改めて感謝したい。
 そして、このような事故の再発を何とか防ぎたい。言い方は悪いが、事故と言うものの発生確率をゼロにするのは不可能だ。またゼロに近づけるためには膨大なコストがかかる。けれども、丁寧に物事を分析し、正しい対策を積み上げれば、常識的なコストで、ゼロを目指すことはできる。
 私は航空機事故を減らすことはできない。でも、少なくとも職業人として30年余働いてきた、自分の範疇でゼロを目指すことはできる。

 やれることはやる。それが、サッカー狂の私が、カイオ・ジュニオール氏たちのためにできる、数少ないことだ。
 繰り返します。生存した方々の早期の回復を祈り、亡くなった方々のご冥福をお祈りし、ご家族や親しい方々にお悔やみを申し上げます。
posted by 武藤文雄 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月29日

プレイオフはやめよう

 J1昇格決定戦。準決勝の時点で2試合ともすばらしいドラマを見せていただいた。
 映像観戦は、セレッソ対サンガを選択。経営規模も比較的大きなクラブだけに、両チームにJ1レベルのスタアも多く、とてもおもしろい試合となった。
 柿谷の妙技からセレッソが先制。ソウザのミドルシュートを、サンガの名手菅野がキャッチしきれず、そこを鋭く詰めた得点だったが、飛び出しが格段の菅野の上を行くロブの鮮やかなこと。その後の時間帯も、蛍、ソウザの鋭い押し上げから、両翼の清原と杉本が精力的な上下動と個人技を発揮し、セレッソペースで試合は進む。しかし、終盤チームはガス切れ、これは柿谷の負傷などもあり、1年間をかけたチーム作りがうまく進まず、存分な組織力を持つまで強化できなかったと言うことだろう。本来であれば独走で首位を走ってもおかしくない戦闘能力を誇る(いや、そもそもJ1陥落そのものが考えづらい)クラブなのだが、監督のめぐり合わせが悪いのか、チームとしての強化が進まない。もっとも、終盤戦に向けて連勝し、このJ1昇格プレイオフにあわせてきたのはさすが。考えてみれば、昨シーズンもベテラン選手を組み合わせ、アビスパとすばらしい試合を演じてくれたっけな。ただ、チーム全体の組織力が不十分なだけに、どうしてもこのような消耗戦では、終盤エネルギー切れを起こしてしまう。ただ、このクラブには山口蛍がいた。この強力なMFの帰国には、様々な論評が渦巻くが、90分間を通し、「なるほど、代表の定位置を確保している選手は違うものだ」と、感心したものだ。
 サンガの不運は、堀米をスタメンから使えなかったことだろう(体調不良とのことだが)。ために、エスクデロが1人最前線で奮闘するが、山下、藤本のベテランCBコンビに抑えられてしまう。しかし、後半堀米が起用され、再三左サイドから見事なえぐりを見せると、エスクデロへのマークも分散。幾度も好機をつかんだが、その度にセレッソの守護神金鎭鉉が立ち塞がった。それでも、最終盤にパワープレイから1点を奪い、「あわや」と言う場面も作ったがここまで。パワープレイそのものの選択は否定しないが、もう少し堀米、エスクデロの個人技を活かす算段をすべきにも思ったのだが。

 こうして「いや、よいものを見せていただきました」と感心していたのだが、「裏番組」ではとんでもないことが起こっていた。アディショナルタイムに、ファジアーノが赤嶺の一撃で、山雅を振り切ったというのだから。繰り返すが、赤嶺の一撃で。
 山雅は、今シーズン常時安定した成績で、終盤まで2位をキープし続けてきた。首位を走るコンサドーレが失速しかけたため、じりじりと差をつめ、一時は逆転優勝でJ1昇格に花を添えるのではないかとすら思われた。ところが、終盤、ゼルビアに苦杯。名将小林伸二氏が、すさまじい勢いとチーム完成度で仕上げてきたエスパルスにひっくり返されての3位に終わり、プレイオフに回ることになった。しかし、安定した戦い振りと、反町氏の用意周到な采配を考えると、最後のJ1昇格チケットを獲得するのは、山雅が本命と考えていたのだが。
 繰り返すが、正にストライカとしか言いようのない赤嶺の一撃。名将反町氏の憮然とした表情。そして、両軍サポータの天国と地獄。この表裏一体となったドラマは今年始まったわけではない。過去も幾度幾度も堪能させていただいた。

 熊田達規氏の「マネーフットボール」、主人公が自らの将来と恋人との幸せを賭け、プレイオフ出場権を目指すストーリは感動的だった。このマンガは大好きだし、リアルな世界でも上記のように様々な講釈を垂れたように幾度も興奮させていただいた。そして、この2試合もすばらしい経験となった。


 けれども。 

 やはり、J1昇格プレイオフはやめるべきだと思う。


 長期のリーグ戦の成績をあまりに無視し過ぎているからだ。幾度も触れるが赤嶺の一撃は最高だ。けれども、サッカーと言う競技は、1試合で評価するには、あまりに偶然が左右し、理不尽なのだ。理不尽が故に最高の愉しさを提供してくれるサッカーではある。そして、その理不尽さを回避するために、長期のリーグ戦が必要なのだ。それなのに、上位リーグへの昇格を理不尽にゆだねてよいものだろうか。

 チャンピオンシップが不適切なことは過去述べたとおりだ。しかし、金儲けのためと考えれば、それはそれで1つの理屈である。
 今シーズンのJ1。レッズの粘り強さが、フロンターレを上回った。技巧的でよいチームを作る能力には疑いないペトロビッチ氏が、過去の弱点と言われた、詰めの甘さ、リードされると慌てる悪癖をよく修正。さらに、遠藤航の獲得による守備の安定もあり、とうとう年間のリーグ戦を制したシーズンだった。一方で、中村堅剛と大久保嘉人が、小林悠と大島僚太と言う配下を得て見せてくれた技巧的なサッカーも中々だった。もちろん、前期シーズンを制したアントラーズの集中力も見事だった。
 明日から始まるレッズとアントラーズの戦いは愉しみだし、どのような結果になるかはわからない。しかし、どのような結果になろうとも、今シーズンは上記の記憶を愉しむシーズンとなるのだ。アントラーズがチャンピオンズシップを制したとしても、今シーズンのレッズとフロンターレの輝きが、損なわれるものではない。繰り替えすが、今シーズンのリーグ戦を制したのは浦和レッズだ。チャンピオンシップの結果がどうあれ、これは変わらない。皆がその記憶を語り合っていけばよいのだ。

 しかしだ。
 J1昇格決定戦は違う。たとえ、山雅が長期のリーグで3位を獲得しても、そしてその戦い振りを記憶しようとしても、そこには涙しかない。より上位リーグでの戦いを目指す人々にとっては、記憶は何のなぐさめにもならない。結果がすべてなのだ。
 確かにプレイオフはおもしろい。何度でも語るが、赤嶺の一撃は最高だ。上記したように過去幾度も興奮させていただいた。しかし、そのような刺激が、いかにおもしろいとは言え、劇薬に頼るエンタティンメントが健全ではない。エンタティンメントを求めるならば、入替戦を復活させればよいだろう。中位クラブに、終盤まで上位進出の希望を持たせるために、長期リーグの結果を軽視するのは、本末転倒なのは言うまでもない。
 上位リーグとの入替は、年間の通算勝ち点で評価するべきなのだ。
posted by 武藤文雄 at 01:30| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月13日

サウジ戦、そんなに心配はしてないけれど

 いわゆるAマッチデイにワールドカップ予選がなかったがために準備されたオマーン戦。久々に代表復帰した大迫が前半に2得点し、4対0で快勝した。まずは、15日火曜のサウジ戦に向けた準備と言う視点で、いくつか考えたことを。

 スタメンで起用された大迫、齋藤学、清武のできが上々だった。しかし、これは当たり前と言えば当たり前のこと。3人とも能力は折り紙付きのタレントでブラジルワールドカップのメンバ。そして、大迫と学はチームの大黒柱として好調ぶりを発揮しているし、清武はレベルの高いクラブで定位置確保に苦労しているようだが、起用されればよいプレイを見せている。
 既に完全に定位置を確保し代表の中心選手となりつつある原口と合わせ、彼らが代表の攻撃の中心を担うのは当然のことなのだ。ただ、原口を含めた彼らはみなそれほど若いわけではなく、20代半ば過ぎ。チームとしては極端な若返りでも何でもなく、今まで起用機会が少なかった実力ある選手達が、当然のごとく起用され始めたと解釈すべきだろう。
 こう言ったタレントたちが、中々代表で定位置を確保できずにいたのは、ハリルホジッチ氏が気弱の性格のためか、1次予選で岡崎や本田など既存の経験豊富な選手の起用にこだわったため。もっとも、この2人の輝きが格段だったことも確かで、ハリルホジッチ氏を責めるのは気の毒からもしれないが。
 さて、そうなると気になるのは岡崎と本田。岡崎はレスターで一時定位置を失っていたが、ここに来て取り戻しつつある。オマーン戦でも、得点こそなかったが、前線での存在感は格段。そもそもUAE戦にしても、イラク戦にしても苦戦の要因は、岡崎を勝負どころの後半半ばに交代させてしまったことにあった。サウジ戦でも頼りになることだろう。
 一方の本田は、オマーン戦ではスタメン起用。決して悪い内容ではなく、清武に前を向くスペースを提供し、よいクロスには大迫とタイミングをずらして飛び込むなど、よく機能してはいた。ただ、かつての体幹を活かした格段のボール保持力は失われ気味。これは年齢的な問題もあり、プレイスタイルの変更を考える時期に来ていると言うことなのではないか。そんなバランスの崩れが、豪州戦の前半、原口が作った決定機を外したことにもつながったようにも思える。さらに9、10月の試合では後半半ばに明らかなスタミナ切れを見せていた。ミランで「干されてる」のは、プレイスタイルの問題があるのだろう。そして、干されているが故にスタミナに課題が出てきているのだろう。いわゆる悪循環である。しかし、これだけの実績を残した男である、このまま衰えていくとはとても思えない。この苦しみの中から、新しい本田圭佑が登場することを期待したい。

 などと考えると、このオマーン戦はもう少し戦い方に工夫ができたのではないかと思えてくる。
 たとえば、サウジ戦で予想される中盤より前のスタメンは、長谷部、蛍、本田、清武、原口、大迫、と言うところか(私ならば、本田ではなく岡崎をスタメンとするが)。どうしても点をとりたければ、岡崎(または本田)、学、浅野を随時投入することになる。ただ、ここで、誰をどう並べるのかが、整理できているのだろうか。
 たとえば、リードしている状況以外で、原口を外すことは考えられないが、そうなると学をどう使うのか。2人を両翼に並べるとしても、2人とも左サイドから挙動を開始するのを得意としているのを、どう整理するのか。それをオマーン戦で試すべきだったのではないか。
 たとえば、大迫と岡崎を並べて起用する時間帯が必ずあると思うが、どのように並べるのか。岡崎を右サイドに置くのか、いわゆる2トップにするのか、大迫をトップ下にするのか(その場合の清武の起用法をどうするか)。こう言ったことこそ、もオマーン戦で試すべきだったのではないか。
 たとえば、ワントップの布陣を基本にしているのにかかわらず、岡崎、大迫、浅野、久保と、いわゆるトップで起用すると機能する選手を4人呼んで、どう並べ、使い分けるつもりなのか。特にオマーン戦の終盤、岡崎、浅野、久保を並べたわけだが、その3人の位置関係が不明確だった。オマーンが精神的に切れてしまい、日本継続猛攻状態になっていたから、いい加減な配置で問題は起こらなかったが、日本からすれば貴重な準備試合の時間を無駄にしたことになる。また、いわゆるストライカタイプの選手は足りているのだから、異なるタイプの選手を招集しなくてよかったのか。
 さらに言えば、リードをしたときのクロージングのやり方が見えてこない。タイ戦でも1対0でリードして、各選手が消耗した時間帯、ハリルホジッチ氏はぎりぎりまで選手交代を使わず、終盤ピンチを招いたのは記憶に新しい。香川にいたっては自分が得点できない焦りから、チームのリズムを崩すプレイを連続していたのに。豪州戦でも、守備組織はよく機能していたが、香川や本田が前線でキープもできなくなっており、交通事故のリスクが出始めたのに、氏の動きは遅かった。今のメンバを見ても、永木や井手口など、中盤守備で貢献できそうな選手はいるが、彼らをどのように起用するのか、よくわからない。岡崎や本田や香川がベンチに控えていれば、彼らを「守備を期待して」起用する選択肢もあるのかもしれないが。
 昨年、1次予選でシンガポールと埼玉で引き分けたあの凡戦。直前の準備試合のイラク戦で、大勝に浮かれたのか、香川の交代選手の確認などを怠ったことを思い出したりするのだ。

 そうは言っても。
 チームは着実に前進している。特に、春先のシリア戦以降、情けない限りだった守備面が、先日の豪州戦では格段に改善された。「やれるのだから、もっと早くやってくれ」との思いもあったけれど。さらには、豪州戦にしても、このオマーン戦にしても、麻也が落ち着いて守備の中核をどうどうと担ってくれたのは頼もしい限り。一時のおバカがなくなってくれれば、これほど嬉しいことはない。
 実際、オマーン戦では、前半日本のCK崩れのあと、蛍や丸山が対応を誤り持ち出された場面は感心しなかったが、組織守備は機能していた。いくら何でも、このサウジ戦の守備は期待できるだろう。
 攻撃にしても、冒頭から述べているように、働き盛りの多くの名手が、爪を研いでいる。色々迷走気味だったハリルホジッチ氏さが、さすがに的確なメンバを選考してくるだろう。
 何のかの言っても、ハリルホジッチ氏は着実にチームを前進させているのは、間違いない。そうこう考えると、過剰にサウジを警戒するのは、かえって逆効果かもしれない。むしろ、しっかりとスカウティングされた敵の長所、短所を把握したうえで(ハリルホジッチ氏のスタッフは、そのようなシゴトはしっかりしているはずだ)、当方のよさを前面に出す戦いが適切なようにも思える。
 サウジ戦、しっかりと組織化された試合で、確実に勝ち点3を獲得することを期待したい。
posted by 武藤文雄 at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月06日

レジェンドへの処遇

 マリノスが、中澤に大幅な減俸を提示したと言う。あくまでも、この報道が事実としてだが、何とも複雑な思いにとらわれる。

 まず今シーズンの中澤は、マリノスのまごうことなき大黒柱だった。いや、今シーズンに限らず、ここ10数年ずっとですが。ともあれ、今シーズンのマリノスが、中澤の格段の守備能力に支えられていたのは間違いない。
 そして、敵にするとこれほど忌々しい男もいない。先日のユアテックで0対1でベガルタがやられた試合。栗原のミスを拾ったウイルソンが落ち着いてフリーのハモンにラストパス、しかしハモンはドタドタと寄せる中澤に魅入られたかのように左外に持ち出し過ぎ、シュートはあえなく枠を外れた。中澤の寄せのタイミング、位置取りのうまさ、事前研究によるハモンのドリブルとシュートの癖の理解、いずれも完璧な守備ぶりだった。中澤とハモンを比較し、「格の違い」と言ってしまえばそれまでかもしれないが、あの中澤の守備は本当にすばらしかった。考えてみれば、この悔しさを味わえないのだから、マリノスのサポータの方々はお気の毒だな(と、負け犬の遠吠え)。
 南アフリカでのカメルーン戦、試合終盤に、闘莉王のおバカにより「うわあぁぁぁぁぁあ」と悲鳴を上げた直後に、中澤が例のドタドタ寄せで見事にカバーリングしてくれた場面を思い出した。38歳になった今でもなお、その守備能力は、衰えを見せていないのだ。しかも、中澤は、この3シーズンフル出場だと言う。CBでのこの偉業は、万全な体調維持、警告を食らわない読みの深さによるものだ。大したものである。

 これだけの減俸を提示すると言うことは、マリノスフロントは「来シーズン、中澤は不要」と判断していることとなる。とすれば、その後継者候補を見つける自信があるのかもしれない。確かに、マリノスには、資金潤沢の出資団体がいるらしいので。確かに世界に目を広げれば、中澤よりすぐれたセンタバックはいるだろう。ただし、そのような選手は、皆欧州の超一流クラブに雇用されており、今シーズンの中澤と同等の年俸で雇えるとはとても思えないのだが。 
 もちろん、マリノスには朴正洙、ファビオなどのよいタレントがいるので、周辺のポジションでよい選手を補強して、強力な守備網を構築する構想があるのかもしれない。このあたりは、毎試合マリノスの試合を追いかけているわけではない野次馬には、わかりかねるところがある。しかし、マリノスは、J屈指の右サイドバックである小林祐三と契約更新しないことが、公表されており、謎は深まるばかりである。
 少なくとも、野次馬が見る限り、中澤と小林が2人ともマリノスを去るとすれば、マリノスは来シーズン、まったく新しいチームとして再構築が必要になるように思う。これは、随分思い切った判断に思える。

 もっとも。
 マリノスと言うクラブは、中澤のほかに、同じ38歳の中村俊輔と言う、超弩級のレジェンドを抱えている(一部報道によると、その俊輔にも他クラブからの強力なオファーがあるとのことだが)。そして、2人のプレイが格段であるだけに、チームの若返りが難しいと言う状況がある。さらに、この2人には相当レベルの高給が支払われていることだろう。そして、どんなに節制を重ねても、30代半ば以降、多くの選手は負傷のリスクを抱えることになる。実際、今年、中澤はフル出場したが、俊輔は負傷がちのシーズンを送った。高給で年長の選手は、その選手がどれほど偉大な存在でも、クラブにとって、リスクとなり得るものだ。まして、こう言ったレジェンドに対するサポータの崇拝は格段のものがある。このような選手への待遇は、とても微妙なものなのだ。
 そもそも、マリノスと言うクラブは、歴史的にも、。中澤、俊輔以前にも、木村和司と井原正巳と言う、日本サッカー史に輝くレジェンドを輩出している。そういう意味では、レジェンドの扱いの経験は豊富なはずなのだが、何かねえ、木村も井原も、このクラブとは微妙な別れ方をしている印象が強いのですよね。
 ともあれ、レジェンドを所有できるのは、クラブにとって、とても幸せなことだ。しかし、そのレジェンドたちを適切に処遇するのは、案外に難しい。そして、同世代のレジェンドを2人抱えるマリノスフロントの悩みは、わからなくもない。

 まあ、そんなこんなを考えても、マリノスの今回の中澤への対応は、あまり上手とは言えない。
 個人的には賛成しかねるが、この大ベテランを戦力外と判断するにしても、高給を負担しても雇いたいと考えるクラブが他にもあるはず。そのようなクラブへの移籍を花道として準備する手段もあったはず。
 それとも、まさかこの偉大な選手を、ディスカウントで雇用しようとは思っていないですよね。
posted by 武藤文雄 at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月03日

ホーム最終戦を前に2016

 早いもので、2016年シーズンも最終節。今シーズンは、ベガルタはホームにジュビロを迎えて戦う。そして、残念ながら天皇杯で苦杯を喫していることもあり、このジュビロ戦が、今シーズンのまごうことなき最終戦となる。ただでさえ、ホーム最終戦は胸高まるものがあるのだが、このメンバで戦う最後の試合と思うと気持ちは高まる。考えてみれば、リーグ最終盤よりかなり早くJ1残留を決めたシーズンは珍しい。勝とうが負けようが、大勢に影響のない最終戦。だからこそ、純粋に「勝ちたい」と言う思いが高まる。さらに、敵方のジュビロが追い込まれていると言うスパイスも加わっている。そしてウイルソン

 11月上旬にシーズンが終わってしまうことの愚かさを、いまさら語ろうとは思わない。少なくとも、Jリーグ当局は、「過ちては改むるに憚ること勿れ」と言う概念は理解しており、残念な方式は今年で打ち止めになるのだし。ただ、レッズとフロンターレによる1年を費やしたすばらしい戦いが明日完了するにもかかわらず、最終的な結果が別オプションとなる間抜けさは強調しておくべきだとは思うが。

 ともあれ。
 上記のとおり、ワクワクする最終戦である。いや、それだけではない。今シーズンベガルタが早々に、J1残留を決めることができたのは、、渡邉監督が組み上げてきた攻撃的サッカー志向の賜物だ。ハモンの大化け、奥埜の充実、三田の展開力、そして藤村、西村、茂木と言った自前の若手選手たち、これらの明らかなプラスを軸に、貪欲に攻め切ろうとするサッカーが結実しつつある。
 ただ、守備は難題だった。とくに、敵の速攻への対応は、なかなか修正されなかった。それでも、今シーズン加入した平岡と大岩の、個人能力の高さが、昨シーズンと比較すると、改善点にはなっていたが。
 しかし、ようやくこの終盤戦、敵速攻への対応が改善されてきた。前々節のヴィッセル戦の組織守備は中々よかった。前節のFC東京戦、充実した中島に切り崩された失点場面はさておき、後半幾度も迎えた東京の速攻への対応が、格段に充実していたのは嬉しかった。
 明日は、これらの集大成を見たい。今シーズン格段に改善された攻撃力と、終盤に向上してきた守備力。それらが、しっかりとバランスがとられた試合を見たいのだ。その、すばらしい組織戦を見ることができると期待したい。

 もちろん。
 ジュビロにとっては、とても大切な試合となった。「引き分ければ大丈夫」ではなく「大差で負けなければたぶん大丈夫」と言う試合は、入り方がとても難しい。かつて、アジアを制覇した名門クラブ、その制覇時の大黒柱だった名波監督が、選手達をどのようにモチベートしてくるか。
 そして、ジュビロは、典型的な「先方は特にそう思ってはいないが、当方は忘れられない」クラブなのだ。ベガルタのクラブ史においてとても重要な存在だった太田吉彰が敵方にいるのも、何とも言えない思いがある。
 ベガルタとしては、この尊敬すべき友人を粉砕することが、最大限の敬意となるのは言うまでもない。

 報道によると、ピッチで舞うウイルソンを堪能するのは難しそうだ。佐々木匠が起用される可能性もあると言う。どのような布陣で、どのような戦い方をするのか。上記したとおり、今シーズン、このメンバでの、集大成を愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月23日

ありがとう、ウイルソン

 ベガルタが、ウイルソンとの契約満了を発表した。
 31歳で、3シーズン続けて再三負傷での離脱が続き、年俸も決して安いとは言えないストライカとの再契約が、難しいのは予想していた。そして、その予想どおりとなったわけだ。クラブの経営と言う視点からは妥当な結論だ。
 また、あと2節を残しての発表そのものも、これだけ貢献してくれた選手との別れの機会を、我々サポータに提供してくれたクラブの判断に敬意を表したい。

 と、クラブの判断は適切だとは思うが、むしょうに寂しいのは言うまでもない。感情と言うものは、理屈では語り切れないのだ。
 ベガルタサポータとって、ウイルソンはあまりに大切な選手だった。今思い起こしても夢だったのではないかと感じるACL出場への貢献は格段だった。
 冷静な判断からの落ち着いたシュート。しっかりした前線でのボールキープ。広範な視野から速攻の起点となる。単身でも強引にシュートに持ち込み敵DFに与えるプレッシャ。そのような天才肌のストライカにもかかわらず、攻守両面の献身。
 最前線にウイルソンがいるだけで、ベガルタのサッカーはまったく異なるものとなった。そして、今シーズンも、復帰したアルビレックス戦やベルマーレ戦で、正にスーペルゴラッソとしか言いようのない美しい得点を決めてくれた。「まだまだやれる」と言う強い思いもあるのだ。

 監督就任後、実質3年目となる渡邉氏だが、この3シーズン、エースと期待され、実績も豊富なウイルソンがの体調が、シーズンを通してそろうことはなかった。それでも、コンディションさえ整えば、ウイルソンが一番頼りになるストライカだったことは間違いない。
 その中で、渡邉氏は丁寧にチーム強化を継続。特に今シーズンは、氏が監督に就任した14年シーズンに途中加入したハモン・ロペスが完全に「化けた」感がある。昨シーズンまで、左足の一撃は強烈だが、そこに持ち込むことができず、敵DFにつぶされていたばかりのハモン。しかし、今シーズン、後方からのボールをしっかりと収められるようになり、クロスに合せる呼吸が格段に上達したのだ。ベガルタのフロントが、「ウイルソンに頼らずとも」と、判断したのも理解できる。もっとも、このハモンに他クラブからのオファーが集まっているとの報道があるが、それはそれと言うものだろう。
 
 ウイルソンについて美しいな思い出は幾多もある。しかし、最も甘く苦い思い出はこれに尽きる。ウイルソンと世界屈指の名審判の、日本最高のスタジアムでの邂逅の悲劇。このような感情を味合わせてくれただけで、ウイルソンには感謝の言葉もない。

 来シーズン、ウイルソンはどこに行くのだろうか。負傷が続いた中で、ブラジルに帰るのか。アジアの他国にプレイ機会を求めるのか。それとも他のJクラブか。大好きなこのストライカのプレイを見続けたい思いは強いが、ベガルタゴールドとは異なるジャージを身に着けたウイルソンを見たくない思いもある。
 いや、ここはつまらない思いは捨てよう。ウイルソンの次の人生での幸運を祈りたい。ブランメルから始まり、ベガルタと言うクラブは、ようやく22年間と言う歴史を積み上げてきた。22年と言う歴史は、決して長くもないが、短くもない。その歴史を、ウイルソンは鮮やかに彩ってくれた。
 マルコスも、シルビーニョも、朴柱成も、幾多の歓喜を我々に提供し、母国に帰って行った。

 あと2試合ある。
 ウイルソン。さよなら、そしてありがとう。
posted by 武藤文雄 at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月13日

香川真司の今後

 ここのところ、香川真司は逆風下の状況に置かれている。ドルトムントでのプレイ機会が相当減っている。UAE戦でもタイ戦でも冴えが見られなかった。そして、イラク戦では代わって起用された清武が上々のプレイ。豪州戦でも清武のスタメンが予想されていた。
 しかし、豪州戦、ハリルホジッチ氏の選択は香川だった。両翼の原口と小林悠が相当引き気味に位置取りをする中、ワントップの本田と連係をとりながら、いわゆるファーストディフェンダとして、派手ではないが落ち着いたプレイを見せ、90分間フル出場をした。しかしながら、我々が香川に期待するところの、鮮やかな個人技による好機演出は、ほとんど見せてくれなかった。また、後半半ば、押し込まれた苦しい時間帯に、格段のボール扱いでチームを落ち着けることもできなかった。
 この日の日本の守備は見事なもので、その一員として、香川が機能したことは評価すべきだろう。ハリルホジッチ氏が、清武でなく香川を起用した意図は明確でないが、守備をしっかりと行うねらいの試合において、体調を整えた香川の方が清武より適切と言うことだったのだろうか。
 けれども、このようなプレイを望むのならば、香川よりもっとうまくこなせる選手が他にいるのではないか。例えば、昨日も述べたが、田口、倉田、矢島と言ったタレントならば、もっと巧みに守備もこなすだろうし、押し込まれた時間帯に的確にボールキープしてくれるのではないか。いや、もっと簡単な話で、そのようなシゴトは岡崎ならば完璧にこなすだろう。岡崎はボール扱いと言う面では、香川に遠く及ばないが、激しくファイトし自分に出されたボールを全身でキープする能力は格段なのだから。

 香川真司と言う選手は、これからどうあるべきなのだろうか。

 香川が格段の個人技を持つタレントであるのは言うまでもない。特に、2010年から12年にかけては、ドルトムントでも日本代表でもすばらしかった。トップスピードに乗りながらも正確にボールを扱い、ほんの小さなスペースで加減速や左右の変化を操るドリブルで、敵守備陣を崩し切っていた。
 ところが、マンチェスターユナイテッドに移籍したあたりから、少しずつ往時の切れ味が失われたような印象がある。そして、香川自身が、その往時のプレイを目指すのだが、思うようにならず、いらだっているように見えるのだ。ブラジルワールドカップでも、アジアカップでも、我々は「乗り切らない」香川を見ることになった。
 UAE戦が典型だが、香川は敵陣近くでボールを持つと、敵ペナルティエリアで難しいことを狙い過ぎる。確かに往時の香川は、敵ペナルティエリアに入ってからのわずかスペースから、巧みにボールを動かし、敵を崩していた。しかし、今の香川には、そこまでの切れ味がない。おそらくだが、往時の香川は20歳そこそこだったが、そこから身体が大きくなりバランスが崩れてしまったのではないか。
 しかし、香川は往時の切れ味を追い求め、当時のプレイを目指すが、今一歩うまく行かない状況が続いているのではないか。さらに、わずかなスペースでの細工を狙い過ぎるために、瞬間瞬間の刹那的なプレイの連続になる。もちろん、サッカーの最大の魅力は、トップ選手の瞬間的なヒラメキであることは間違いない。けれども、香川はヒラメキきらずに、難しいことをしてボールを失うか、敵DFを抜き切れないと判断するや外側に逃げるような持ち出しをする結果に陥っているように見えるのだ。

 香川は異なったスタイルを目指すべきなのではないか。たとえば、一枚後方にポジションを移し、いわゆるゲームメークを担当し、中盤でいったん持ちこたえ、時に広範な展開を狙い、時にラストパスを狙うなどできないだろうか、中村憲剛のように。あるいは、今のポジションのままで行くにしても、刹那的なヒラメキを狙うのではなく、事前に計画的に複数考えておいた崩しのいずれかを狙うことはできないだろうか、中村俊輔のように。
 香川はまだ27歳、もう若いとは言えないが、格段の技巧とこれまでの経験を活かし、新境地を開くことはできるはずだ。
 そうすれば、この豪州戦で見せた知的な守備もできるし、元々体幹が強いのだから、従来にはないスケールの大きな中盤選手に転身できるのではないか。
 私は、もっと光り輝く香川を見たい。しかし、今、香川が必死に尽力している方向の延長に、光り輝く香川が見えないように思うのだ。
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2016年10月12日

やはり、我々が一番強い

 何より、守備がすばらしかった。相互の連係、前線からの追い込み、セーフティファースト。イラク戦での危なっかしさがほとんどなくなっていた。考えてみれば、UAE戦の守備は残念だったが、タイ戦は格段に改善されていた。今回も同じと言う事かもしれない。約1週間の強化期間が与えられれば、選手のコンディションも揃い(同時にハリルホジッチ氏も各選手の見極めができる)、氏も約束事を徹底できる、と言う事なのだろうか。
 開始早々に、原口が、自らのボール奪取を起点に本田の軽妙なボールさばきを受け先制したことで、完全に日本ペース。一見、攻め込まれているように見えるが、危ない場面はほとんどなく前半終了。ここまで、ハリルホジッチ氏は攻撃の整備や連係については、あれこれ工夫していたが、守備についてはあまり感心しなかったので、これは嬉しい驚きだった。「これだけやれるならば、もっと早くからやってくれ」との野暮は言うまい。
 原口のPK提供は、「我らがエースが、恰好の失敗経験を積んでくれた」と前向きにとらえればよいだろう。それにしても、あの豪州の速攻に、ちゃんとあそこに戻るのだから、大したものだなとも思うが。タイ戦以降のここまでの3試合、「もし原口元気が存在していなければ」と想像するだけで、何とも言えない恐怖感に襲われてしまうではないか。原口には、「自分が日本を支えているのだ」と、いっそうの自覚からの活躍を期待したい。
 ただ、同点にされ、押し込まれる時間が続いたあたりで、ハリルホジッチ氏が動かなかったのは疑問だった。豪州の攻撃は確かに単調だったが、あれだけ押し込まれれば、交通事故のリスクがある。タイ戦でも、疲労したDF陣が裏をとられかけ、西川の好捕に救われたではないか。負傷上がりとのことだが、献身と言う意味ではこれ以上にない岡崎がいるのだから、いくらでもやりようはあったと思うのだが。
 そういう意味では、技巧にすぐれ、中盤の前の方で使える、守備でも計算できるタレントの招集が必要なのではないか。田口、倉田、さらに五輪代表の矢島など。終了間際に、丸山を原口に代えて起用し守備固めを行い、その丸山が最前線に進出し空中戦から好機を作ったのには、笑ったけれども。
 ともあれ、最後まで交通事故になりかけることもなく、無事1対1で試合終了。守備で相当な自信を持つ事ができて、結果も上々。まことにめでたい試合となった。

 交代と言えば、ちょっと残念だったのは浅野。無理をせず引き分けでよい展開で、しっかり守りを固める場面、縦のスピードが格段の浅野を入れるのは、論理的な策に見える。しかし、浅野は2回早く出過ぎてオフサイド。さらに、上記した丸山が作った好機で、敵DFにマークされているのにかかわらず、オーバヘッドで狙いデンジャラスプレイの反則をとられてしまった。これでは、何のために起用されたのか、わからないではないか。いつまでも、このような青いプレイを続けられては困るのだが。

 長谷部以下の選手たちが悔しそうな表情をしているのは、よく理解できた。豪州に許した決定機は皆無。一方、当方は、前半の原口が作った本田のシュート、高徳のクロスからの小林のヘッド、終了間際の原口のクロスを浅野が狙った場面、と相当数回の決定機があった。勝つべき試合を落とした感のあるの試合だったのだから。
 次のサウジ戦だが、早くから集まり、オマーンと準備試合も戦える。しっかりとした準備を行い、完勝することを期待しようではないか。
 少々、感情の露呈が激し過ぎるハリルホジッチ氏だが、しだいに本領を発揮してくれてきたようだ。そして、この豪州戦を見た限り、やはり我々がアジア最強だと確信することができた。日本が、しっかりと組織守備を確立すれば、やはりアジア最強なのだ。まずは、体調が悪い時でも、今日のような守備をそれなりに安定して行えるよう期待したい。その上で、上記のような決定機を作る頻度を高める連係と判断力の向上を。予選段階から、これらを丁寧に積み上げていけば、本大会のベスト8を目指せるはずだ。
posted by 武藤文雄 at 00:41| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月10日

我々の目標はワールドカップベスト8

 必死の絶叫は継続していたし、あきらめるなど考えてもいなかった。終盤のパワープレイには疑問で、違うやり方の方が得点の可能性は高いと思っていたのは確かだが。それでも、麻也が左サイド奥深くまでボールを追いファウルを奪った時には心底感動した。そしてフリーキック。そして蛍!!!
 さすがにイラクに同点とされ、その後攻めあぐんだ時は「ヤバイ」と思いましたよ。
 変に偉そうで凝った態度をとったり、卑屈で斜に構えた姿勢をとるつもりはまったくないが、これだけしびれる予選は久しぶりだな。そして、それがアジアのライバルのレベルアップによるものだから、決して悪いこととは思わない。UAEのサッカーは単純な逆襲速攻狙いから大きく進歩している。タイも局地戦重視からチーム全体でのボールキープができるようになっていた。イラクも持ち味の技巧と判断が終盤まで落ちなかった、終盤時間稼ぎに終始したのは残念だったが。
 我々の目標はワールドカップのベスト8以上。予選で厳しい戦いをつむことができるに越したことがないではないか。

 立ち上がりから、守備の不安定さが気になった。伝統的にイラクの選手が技巧に長けており、フィジカルも優れているのは当然のこと。このような難敵には、厳しく腰を入れて当たらないと、技巧で外されてしまう。一方でイラクの選手は、スクリーンはうまいので、悪い体勢で強く当たればファウルをとられてしまう。ボールを奪えないならば、ウェイティングとカバーリングが重要となる。ところが、そこが何か全体に甘い。特に柏木、両酒井のプレイは残念だった。
 開始早々にFKからヘディングシュートを許しポストに救われ、前半終了間際には押し込みかけながら攻めきれずボールを奪わ速攻を許し、西川のファインプレイに救われるなど、芳しい守備とは言えなかった。失点時のセットプレイも、「ここを我慢しきれないのか」と言いたくなった。
 ただ、すべてが悪かったわけではない。結果的に、押し込まれる時間帯が増えたが、麻也と森重、たびたび最終ラインまで引く長谷部はセーフティファーストの意識が格段で、いわゆる危ない場面は上記のように数えるほどだった。
 結局バランスなのだと思う。ザッケローニ氏の時代は、ファウルを恐れすぎて無理に当たらず結果的にCKを与えてしまい、そこから失点することが多かった。今回は軽率にかわされり、慌てて与えたファウルからの失点が多い。思うように集合練習ができず、各選手のコンディションが揃わない中、どのようにバランスをとり、チーム力を上げていくか。守備のバランスがよくなり、より前でボールを奪えるようになれば、先制点のような鮮やかな速攻の頻度も上がるはず。
 そう考えれば、上記の通りアジアのレベルが厳しいほど、本大会に向けた準備ができるというものだ。

 攻撃については、なぜ単純にもっともっと原口を使おうとしないのかが大きな不満だった。今の原口の縦に出る能力は格段のものがある。当然イラクDF陣もそこは警戒してくるが、そこを工夫して、最強兵器をいかに生かすかがチームと言うもの。ところが、柏木は原口とはレッズ時代チームメートだったのに右サイド重視の展開、清武もせっかく原口が縦に出ようとしたときに前のスペースを消してしまうことが再三、酒井高徳も外にボールを引き出したうえで単純に原口を使えばよいのに細かな崩しに拘泥。
 結果、必ずしも体調がよいように見えない本田にボールが集まり、本田が一人でキープできないため岡崎がサポートに回り、崩し切れない場面が多くなってしまった。狙うべきは逆だろう。岡崎の粘りと清武の技巧で、原口を前に向かせてボールを持たせ、左から主に崩して、そこを岡崎や本田がねらう方が、得点の確率は格段に高まるのではないか。清武もあれだけ鋭い切れ味を発揮できているのだ。もう一工夫してほしい。
 攻撃については、よい意味で選手層が厚過ぎることが、災いしているのかもしれない。原口と清武が定位置確保としても、他にも多士済々。交代で起用された浅野、小林悠のほかにも斉藤学も武藤ももいるし、大迫も最近絶好調だと言う。岡崎と本田の経験は格段だ。これらのタレントを、いかに交通整理して強力な攻撃陣を編成していくか。

 チームとしての完成度はまだまだで、同グループで日本以外で最も戦闘能力が高そうな豪州と敵地戦をむかえるのは絶妙なタイミングと言える。強敵との試合は、やり方を間違えなければ格段にチーム力を向上させるものだからだ。イラク戦のアディショナルタイムは、間違いなくチームの雰囲気を明るいものにしているはずだ。UAE戦よりタイ戦の方が内容がよかったのと同様に、豪州戦はイラク戦以上に質の高いサッカーを見せてくれることだろう。時差と気候を考えても、サウジ帰りの豪州より、我々の方がコンディション的にも有利なはずだ。よい結果を期待したい。
 監督交代劇や、岡崎と本田の輝きにより、新旧交代とチーム作りが遅れている問題はある。また最前線にくらべて最終ラインに新しい選手を試していないのが心配だ。しかし、ハリルホジッチ氏の実績にせよ、次々に登場するタレントにせよ、我々の潜在力は、やはり相当なレベルにあるはず。目標は本大会ベスト8であることを忘れずに、よいチームが作られることをじっくりと見守りたい。
posted by 武藤文雄 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月05日

イラク戦を前に2016

 早々にUAEに敗れ、多くの選手が欧州の在籍クラブで控えに甘んじていることもあり、各種マスコミは悲観論が渦巻いている。まあ、負ければ「この世の終わり」、勝てば「ワールドカップ優勝」と、白か黒かのデジタル世界が、我が国のサッカーマスコミの論理なのだから、今さら始まったことではないのだが。
 思うようにならないから、サッカーと言う玩具は堪えられないくらいおもしろいと言うことを、多くのサッカーマスコミが理解する時代が来たとき、我々はワールドカップ制覇に大きく近づくことができるのだろう。その時代が、今56歳の私が生きているうちに訪れるのは、どうやら難しそうだけれども。

 ともあれ、何歳になっても、予選は愉しい。堪えられない人生の愉しみだな。

 もちろん、ハリルホジッチ氏に不安があることは否定しない。
 UAE戦については、逆襲速攻を受けづらい攻めを各選手に徹底しなかったことに失望した。しかし、それについては、タイ戦では明らかに改善が見られ、ボールを奪われた直後の守備はよくなった。「どうせだったら、最初からやれよ、本番のタイトルマッチだぞ」と、言いたくなるけれど。
 タイ戦、香川、長谷部、本田らが、疲労困憊にもかかわらず、交代が遅れたのにも失望した。西川のファインプレイがなければ、勝ち点を失う恐れすらあったのだ。おそらく、氏は、リードされると慌てるが、勝っているときは凍るタイプなのだろう。もちろん、UAE戦でひどかった香川をできるだけひっぱり、よい結果を出してもらい、自信を取り戻させることを狙ったのは理解できなくもない。けれども、それはまったくの裏目となり、香川は疲労困憊、自信喪失状態で、ドルトムントに帰ることになってしまった。
 裏目と言う意味では、UAE戦の交代もそうだった。宇佐美、浅野、原口、それぞれの投入は合理的なもので狙いもよくわかった。けれども、結果論としてはピッチを去った清武、岡崎、大島の不在が、投入された選手たちの活躍以上に、痛いものとなった。まあ、うまく行かないときはこういうものだな。
 また、明らかに欠点がある吉田麻也に拘泥し、新しい選手を試さないのも不安だ。麻也は決して悪い選手ではない。しかし、俊敏な選手との1対1で慌てる、たまに信じ難い大ポカをする、ゴール前の一番危ないところを読み切れないなどの欠点もある。年齢的にも決して若くないのだから、もう少し若い選手を試すのは一案だと思うのだが。果たして、タフな予選の戦いを継続しながら、氏がそのような英断をくだすことができるのかどうか。

 あれこれ、文句を並べたが、そもそも代表選手の責務は、「勝つこと」の次は「国民すべてから文句を言われること」なのだから。
 ただ、この監督は決して無能ではない。例えば、昨年の埼玉シンガポール戦は、トップ下の香川が強引にペナルティエリアに進出し、岡崎の妨害ばかりしていた。しかし、春の埼玉シリア戦では、香川が広範な動きを見せることで、岡崎と的確な連係を見せてくれた。少々時間はかかるが、選手の特長を組み合わせること、そのものはうまい監督なのだ。
 ただ、真剣勝負で細かな守備のディテールを徹底するとか、流れを読んで交代カードを切るのは、少々弱いのかもしれないけれどもね。

 冷静に考えれば、明るい話題は多数ある。
 まずは原口元気である。先日のタイ戦は、先制点はもちろん様々な面で格段の貢献だった。いわゆるウィングハーフとして起用された原口は、精力的にボールを引き出し、縦への突破を幾度も試みる。日本がボールを奪われた直後の守備への切替の早さも格段。
 タイ戦では、原口に引っ張られたかのように、酒井高徳、酒井宏樹の両サイドバックがすばらしかった。幾度も幾度も機会をもらいながら、代表で中々はっきりした活躍をしてくれなかった2人が、90分間安定したプレイを見せてくれたのだ。2人は欧州でも定位置を確保し、好調だと言う。
3人とも決して若いとは言えないが、いわゆるロンドン世代のタレントが、自クラブで中核として活躍し、代表で明確な地位を確保しつつあるのだから、結構なことではないか。
 大島、浅野、植田のリオ五輪メンバへの期待も大きい。大島はUAE戦で守備面でミスが出たが、中盤での展開は中々のものだった。もう少し、最前線に積極的に飛び出して欲しかった思いもあったけれども。浅野は、敵が厚い守備ラインを構成してきてもなお、後方を突くことができるストライカ。タイ戦で腰が引けてしまい、強引にゴールを目指さなかったは残念だったが、それでも点をとった。アーセナルと言うクラブへの選択は、過去ないがしろにされた選手たちを考えると、不安山積だけれども。植田はアントラーズで出場機会を得られていないと言うが、とにかく五輪での守備は見事だった。今の日本のセンタバック陣で、一番不満がある「とにかく敵のロングボールをはね返す能力」は格段のものがあるのだし。五輪の勢いで、一気に代表での定位置確保を目指して欲しいところなのだが。
 言い換えると、リオで示されたように、若く新しいタレントは続々と登場しているのだ。ハリルホジッチ氏は、(観察対象としては)興味深いところがあり、ベテランに拘泥するところもあるが、結構大胆に大島や浅野を抜擢するところもある。今後の氏の選手選択がどうなっていくのか、愉しく見守っていきたい。
 もちろん、自クラブでの出場機会が限られ、コンディションが不十分にせよ、岡崎と長谷部と本田が、常にギリギリまで戦ってくれるのは言うまでもない。

 イラクは、伝統的に判断力とボール扱いに優れた選手を輩出するが、国情からどうしても長期にわたる代表選手強化が難しい環境にある。だから、短期集中の大会は強いが、長期のホームアンドアウエー方式となると、力を発揮しづらい傾向がある。今回も、リオ五輪代表選手を多く含むかなり平均年齢の若いチームで来ているのも、その証左となっている。
 したがって、守備のミスを減らす試合運びを行い、丁寧に攻撃を仕掛ければ、相当高い確率で勝てるはずだ。
 その上で、次に控える敵地豪州戦に向けての準備はどうなっているのか。厳しいタイトルマッチでの勝ち点積み上げと、次に向かっての1つ1つの積み上げ。時にその積み上げがうまく行き、時に失敗する。
 その、あれこれを、たっぷり堪能できる。

 ワールドカップ予選は最高の娯楽なのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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