紆余曲折あったが、終わってみれば無事予選突破を決めた森保氏率いる日本代表。
6月の準備試合シーズンが始まった。ただ、過去と比較して非常に窮屈な強化計画となっている。特に出場決定後、欧州遠征しての親善試合がかなり組みづらいのが苦しい。欧州ネーションズリーグが設立されてしまったためなのだが、何とか工夫して強化を進めたいところだ。日本で行う強化試合は、相手国がどの程度充実した選手を集め、どのくらい体調を整えてくるのか、まったく読めないのがつらいところだが。
今回のパラグアイについては、選手のレベルはかなりのものだったが、体調は微妙なところ、連係はまったく整っていなかった。あれだけ守備ラインが揃っておらず、プレスの連係もなければ、堂安と鎌田と田中碧らの個人能力で簡単に崩せる。ただ、森保氏のチームの常として、最終ラインをいかに崩すかの連係は選手任せになっている。そのため、ペナルティエリアに入ったところですぐに崩し切れないと、敵の守備も戻ってくるから、ゴール前がゴチャゴチャになり、シュートに行き切れないことになる。久保のプレイがその典型。それでも、各選手の個人能力で4点取ったのだから結構な時代になったものだ。
一方で守備面では「おいおい」という場面が多かった。失点場面もそうだが、マイボールで丁寧に回すべき場面でボールを奪われるケースが多かった。予選終盤はそのようなミスはほとんど見受けられなかった。そう考えると、この不首尾は、大差がついて若干弛緩があったこと、吉田麻也、遠藤航と言ったチームリーダが不在だったことなどが要因だろう。もっとも、本大会であんなミスをしたら、とんでもないことになる。大丈夫だよね、代表チームのみなさん。
現実的に、今回の残り3試合で、日本にとって本当に負荷となる試合がいくつあるのかはわからない。ガーナとチュニジアはカタール本大会出場を決めているから、相当厳しい試合を経験できることを期待しているのだが。とは言え、明日のブラジルは世界最強国。日本代表にとって、格段の強化機会になることは間違いないだろう。
そして、できる範囲でベストを尽くすのは当然のこと。パラグアイの連係不足による手応えのなさは残念だった。しかし、手薄だった中盤で鎌田大地と板倉が相応のプレイを見せた事、堂安が輝いた事、(堂安や鎌田らによる引き付けがあれば)三笘が相手に対して相当脅威になること、原口が気の利いたラストパスを連発したこと、売り出し中の伊藤洋輝が一番手薄な左DFで機能したことなど、明るい材料も多かった。一方で、もう本大会まではそう時間もないし、強化合宿も限られている。新しい選手を多数試す段階ではなく、有力な選手同士の連係練度をいかに高めるのが課題なのだが。
さてブラジル戦。おそらく、森保氏は予選のベストメンバに近いメンバで、ブラジルを迎えるのだろう。GKは権田、右DFは山根、CBは吉田麻也と冨安、冨安の体調が悪ければ板倉、左DFは中山で来ると思うが、伊藤を抜擢するか。中盤は遠藤航、田中碧、守田、両翼は伊東純也と南野。CFはたぶん上田綺世(これはパラグアイ戦で起用されなかったことからの推測に過ぎませんが)。そして、ロースコアの勝負に持ち込み、終盤に堂安、鎌田、三笘らを起用し勝負に出たい。もしリードしたり同点で終盤を迎えられれば、原口や谷口を起用してのクローズのテストとなるが、そんな展開に持ち込めれば嬉しいな。
実際、今回の予選のホーム中国戦、サウジ戦での守備組織、特に攻撃から守備への切り替えはすばらしいものがあった。本大会でドイツとスペインから勝ち点2以上を奪おうと言うのだ、まず堅牢な守備を磨くのが重要なことは言うまでもないだろう。そう言う意味では、韓国から5点を奪ったブラジルに対し、今の日本がどこまで粘れるかを見極めると言う意味で、とても大切な試合となる。
ブラジルにボールを奪われた直後に、どれだけ早く切り替えられるのか。一方でボールを奪取した後に、どのくらい有効な攻撃がしかけられるのか。先方の世界最高峰の遅攻にどのくらい我慢できるのか。マイボールで守備を固められた時、どのくらい落ち着いてリズムを作れるのか。これらすべてが、我々がカタールでどこまで戦えるかの試金石となる試合となる。
2017年11月、日本はアジア予選を勝ち抜いた直後、明日と類似の状況でブラジルと対戦した。当時のハリルホジッチ監督は、予選の埼玉豪州戦、長谷部、山口蛍、井手口と3人の守備の強い選手を組み合わせた4-3-3で完勝した。その試合とほぼ同じメンバで、このブラジル戦を行ったが、前半に3点とられる完敗。ミスが連発し、無理なパス回しからボールを奪われ、再三速攻に脅かされる。粘ることも何もできない完敗だった。以降、ハリルホジッチ氏はチームを立て直すことができず、数ヶ月後解任された。
果たして、明日はどこまで戦えるか。
今の日本のレベルは相当なところまで来ている。過去の代表チームにはない分厚い選手層も確保できている。我々は、過去にないほどの成績を収められる潜在力を持った代表チームを確保しつつあるのだ。我々の代表チームがどこまで戦い得るのか。明日のブラジル戦、その戦いを(声が出せないけれど)新国立で応援できる。本当に楽しみだ。
2022年06月06日
2022年05月18日
続 赤鬚のフォギーニョ
最近作文をサボり過ぎていたと少し反省しました。短くてもよいから少しは頻度を上げるようにします。
さて、ここのところ好調なベガルタ。前節はツエーゲン金沢に4-1で快勝、自分のクラブの大勝、それだけで最高だったのは、言うまでもない。
加えて嬉しかったのは、私の大好きな赤鬚のフォギーニョが来日初得点、それもいきなり2得点を決めてくれた。もちろん、贔屓選手の連続得点は喜びも格段。しかも、2つの点の取り方が、タフファイトを得意とするこの赤鬚らしいものだったのだから、堪えられなかった。
前半互角の攻防ながら、35分過ぎ自陣からの遅攻で崩して得たFKを中島が強烈に決めて先制。
そして迎えた後半、圧力を加えてきた金沢の猛攻をかろうじてしのいだ49分。左DF内田が自陣でボールを奪い、中島が左サイドで前進する氣田へ。氣田は中央富樫につなぎ、富樫が見事なターンで逆サイド加速して前進する名倉へ。この富樫の展開で、ベガルタは手薄な逆サイドからの速攻スタートに成功した。少し前進した名倉は、落ち着いて中央遠藤にラストパス。遠藤は、いかにもこの男らしい優しいボールコントロールから、ターンして得意の左足シュート。しかし、惜しくも敵DFのブロックに防がれる。そのボールがこぼれ、帰陣しつつあった金沢MF2人の中間にこぼれたところに、我らがフォギーニョが襲いかかる。いかにも、この赤鬚らしい加速でボールを確保し、ペナルティエリア内に進出。敵DFのカバーが遅れるとみるや、やや外側の自分のシュートレンジに1歩ドリブル(と言うよりは「ボールを丁寧に置き直した」と言う表現が正確か)、立ち足の左足を鋭角に踏み込んで低いインステップキックで逆サイドネットに蹴り込んだ。トラップからシュートの流れは見ていて気持ちよいくらい、本人の意図を感じた。決して足が速い訳でも、精妙なボール扱いを誇る訳でもないこの守備的MF。長駆前進力と丁寧なボール扱い、本人の特長を完璧に活かした得点だった。シュートが決まった時、攻めに絡んだ氣田・富樫・名倉・遠藤の4人がペナルティエリア内外に進出、金沢の4DFはその4人を捕捉中。一方帰陣した金沢MFは3人いたが、フォギーニョの勢いに完全に置いていかれ何もできなかった。フォギーニョは5対7の数的不利を打ち破ったのだ。
続く60分過ぎ。ベガルタ陣内で金沢右DF松田陸から中央でパスを受けたボランチ藤村に、フォギーニョが襲いかかる。そしてボール奪取に成功、10mほど前に位置取りしていた冨樫に縦パスし、ダッシュで前進。冨樫は落ち着いた溜めから、左サイドを疾走する氣田に好パス。この時点でベガルタは、氣田と遠藤が残っていた金沢の2DF(松本と庄司)に対して、2対2の形を作ることに成功した。正にボランチボール奪取から、トップの好ターンと言う絵に描いた速攻。フォギーニョの前進開始時に、松田陸も藤村も同様に高速で帰陣しようとしたが、冨樫の溜めにつられ、2人とも減速してしまった。そのため、フォギーニョは藤村より数m敵陣に近いところを疾走する状態となった。ここで勝負あり。トップに残っていた遠藤は、フォギーニョの高速前進を見て、左サイドに流れ氣田の縦パスを受ける。この時点で、氣田について外に流れた松本は無力化。残るは遠藤とフォギーニョ対庄司の2対1。中央をルックアップした遠藤は、もうこの時点で全身に喜びを表したかのような雰囲気で、強く正確なグラウンダのラストパス。庄司は何もできない。赤鬚はゴール前4mの距離で左足インサイドキックで誰でも決められるようなシュートを決めた。シュートそのものは簡単だったが、ボール奪取力と躊躇せず高速前進を継続した決断力、これまたこの守備的MFの卓越した特長が完璧に発揮された得点だった。
2得点とも、この大好きな赤鬚の高速長駆の前進が活きたと言う意味では共通点がある。しかし、発揮した持ち味は、上記の通り異なる得点。贔屓選手(最近の流行り言葉では「推し」と言うのかな)の能力をじっくり堪能できた快勝。まこと、サポータ冥利に尽きる試合だった。ああ、現地にいたかった。
ついでに言うと、いずれの得点も遠藤と赤鬚によるもの。この2人のボール扱いの精度を比べると、遠藤の方が格段に上なのは言うまでもない。格段に上手な日本人の演出で、タフで頑張るブラジル人が見事な得点を相次いで奪った。よい時代になったものだ。日本サッカーの向上と、ブラジルサッカーの奥深さ。
この2人の連係を思いながら、6月6日はセレソン戦を堪能できる。繰り返すが、よい時代になったものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=2G2MK9w6HcE
さて、ここのところ好調なベガルタ。前節はツエーゲン金沢に4-1で快勝、自分のクラブの大勝、それだけで最高だったのは、言うまでもない。
加えて嬉しかったのは、私の大好きな赤鬚のフォギーニョが来日初得点、それもいきなり2得点を決めてくれた。もちろん、贔屓選手の連続得点は喜びも格段。しかも、2つの点の取り方が、タフファイトを得意とするこの赤鬚らしいものだったのだから、堪えられなかった。
前半互角の攻防ながら、35分過ぎ自陣からの遅攻で崩して得たFKを中島が強烈に決めて先制。
そして迎えた後半、圧力を加えてきた金沢の猛攻をかろうじてしのいだ49分。左DF内田が自陣でボールを奪い、中島が左サイドで前進する氣田へ。氣田は中央富樫につなぎ、富樫が見事なターンで逆サイド加速して前進する名倉へ。この富樫の展開で、ベガルタは手薄な逆サイドからの速攻スタートに成功した。少し前進した名倉は、落ち着いて中央遠藤にラストパス。遠藤は、いかにもこの男らしい優しいボールコントロールから、ターンして得意の左足シュート。しかし、惜しくも敵DFのブロックに防がれる。そのボールがこぼれ、帰陣しつつあった金沢MF2人の中間にこぼれたところに、我らがフォギーニョが襲いかかる。いかにも、この赤鬚らしい加速でボールを確保し、ペナルティエリア内に進出。敵DFのカバーが遅れるとみるや、やや外側の自分のシュートレンジに1歩ドリブル(と言うよりは「ボールを丁寧に置き直した」と言う表現が正確か)、立ち足の左足を鋭角に踏み込んで低いインステップキックで逆サイドネットに蹴り込んだ。トラップからシュートの流れは見ていて気持ちよいくらい、本人の意図を感じた。決して足が速い訳でも、精妙なボール扱いを誇る訳でもないこの守備的MF。長駆前進力と丁寧なボール扱い、本人の特長を完璧に活かした得点だった。シュートが決まった時、攻めに絡んだ氣田・富樫・名倉・遠藤の4人がペナルティエリア内外に進出、金沢の4DFはその4人を捕捉中。一方帰陣した金沢MFは3人いたが、フォギーニョの勢いに完全に置いていかれ何もできなかった。フォギーニョは5対7の数的不利を打ち破ったのだ。
続く60分過ぎ。ベガルタ陣内で金沢右DF松田陸から中央でパスを受けたボランチ藤村に、フォギーニョが襲いかかる。そしてボール奪取に成功、10mほど前に位置取りしていた冨樫に縦パスし、ダッシュで前進。冨樫は落ち着いた溜めから、左サイドを疾走する氣田に好パス。この時点でベガルタは、氣田と遠藤が残っていた金沢の2DF(松本と庄司)に対して、2対2の形を作ることに成功した。正にボランチボール奪取から、トップの好ターンと言う絵に描いた速攻。フォギーニョの前進開始時に、松田陸も藤村も同様に高速で帰陣しようとしたが、冨樫の溜めにつられ、2人とも減速してしまった。そのため、フォギーニョは藤村より数m敵陣に近いところを疾走する状態となった。ここで勝負あり。トップに残っていた遠藤は、フォギーニョの高速前進を見て、左サイドに流れ氣田の縦パスを受ける。この時点で、氣田について外に流れた松本は無力化。残るは遠藤とフォギーニョ対庄司の2対1。中央をルックアップした遠藤は、もうこの時点で全身に喜びを表したかのような雰囲気で、強く正確なグラウンダのラストパス。庄司は何もできない。赤鬚はゴール前4mの距離で左足インサイドキックで誰でも決められるようなシュートを決めた。シュートそのものは簡単だったが、ボール奪取力と躊躇せず高速前進を継続した決断力、これまたこの守備的MFの卓越した特長が完璧に発揮された得点だった。
2得点とも、この大好きな赤鬚の高速長駆の前進が活きたと言う意味では共通点がある。しかし、発揮した持ち味は、上記の通り異なる得点。贔屓選手(最近の流行り言葉では「推し」と言うのかな)の能力をじっくり堪能できた快勝。まこと、サポータ冥利に尽きる試合だった。ああ、現地にいたかった。
ついでに言うと、いずれの得点も遠藤と赤鬚によるもの。この2人のボール扱いの精度を比べると、遠藤の方が格段に上なのは言うまでもない。格段に上手な日本人の演出で、タフで頑張るブラジル人が見事な得点を相次いで奪った。よい時代になったものだ。日本サッカーの向上と、ブラジルサッカーの奥深さ。
この2人の連係を思いながら、6月6日はセレソン戦を堪能できる。繰り返すが、よい時代になったものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=2G2MK9w6HcE
2022年02月03日
完璧な180分間
中国戦に続き、サウジ戦も2-0で完勝。
この2試合180分間のの日本の組織守備のすばらしさを、どう表現したらよいのか。特にボールを奪われた直後の切り替えの早さと位置取りの修正は格段だった。出場全選手の献身に最大限の敬意と感謝を捧げたい。100年の歴史が育んだ知性と技巧とフィジカルに優れた我らのサッカーエリート達が、ここまで戦ってくれるとは。カタールでのベスト8はもちろん、生きているうちにベスト4も体験できるかもとすら思えてきた。
過去日本代表が組織守備を十分に機能させた試合と言えば、やはり南アフリカワールドカップと言うことになるだろう。あれは見事な4試合だった。ただ、本大会は事前にフィジカルコンディションを整える合宿を行える。それに対し予選では欧州から帰国した選手と国内の選手を直前に集めて試合に臨むのだから、2試合続く予選で質の高い試合を見せるのは難しい。実際、ブラジル予選ではCBの弱さがチーム全体の課題となっていたし、ロシア予選では連戦2試合続けてよい試合を見せてくれることは少なかった。もちろん、この2試合はホーム連戦で調整がしやすかったのは確かなのだが。
しかも、この中国戦とサウジ戦は、国内はオフでレギュラーのCB2人が不在。これだけ難しい状況だったのに180分間に渡り、組織守備を機能させたのだからすばらしい。ホーム豪州戦以降採用した遠藤航、守田、田中碧のトレスボランチがよく機能。谷口と板倉のCBの充実と合わせ、難敵サウジにも好機を与えなかった。しかも、速攻を許すようなリスク高いパスをほとんど使わず、田中碧の制度の高いパスと伊東格段の突破力を軸に、複数回崩し切り得点を重ねた。
サウジは中国とは異なり、前線から厳しいプレスをかけてきた。しかし、日本も落ち着いてボールを回し不用意な取られ方はしない。ただ、田中碧が自由にボールを持たせてもらえないこともあり、どうしても前線へのフィードは甘くなり攻め切れない時間が続く。それでも25分過ぎあたり、伊東が敵DFを打ち破り低いクロスをGKが好セーブの好機をつかんだあたりから連続攻撃。そしてサウジが一度それをしのいだところで、ボールを奪った酒井が伊東に絶妙な縦パス。伊東が長駆で再度振り切り上げたボールを大迫がスルーし、南野が切り返しから左足で決めてくれた。
日本の攻勢が続いたところで、サウジDFが深めに位置取りしているところで、前線の選手が中途半端に前に出てきたので、酒井が精度の高いボールを入れることができた。サウジは引き分け狙いだったのだろうが、あの場面はコンパクトで無くなっていた。この予選好調に首位を走るサウジが、精神的なスタミナが残っている前半からそのような不十分な意思統一を見せるとは少々驚きだった。サウジのホームでの勝利は、日本のミスからの自滅だったのだが、選手たちは「日本より強い」とでも錯覚したのだろうか。
その後、やや日本のプレスが消極的になったこともあり、日本陣まで攻め込まれることもあり複数回CKを許す。ただ、そうなればサウジ後方のスペースを狙えるから、伊東のシュートをGKがブロック、田中碧がペナルティエリア内で倒された疑惑、遠藤航のフリーのミドルシュートが宇宙開発など、日本も好機を複数回つかむが決め切れず前半終了。
後半立ち上がりから日本が積極的なプレスをかけ、サウジ陣でボールを狩れるようになる。そして50分、遠藤航のボール奪取から南野(だと思った)がつなぎ、左の長友に。長友が敵タックルをかわすように上げた逆サイドへのクロス(どの程度ねらったのかは少々微妙だったが)が伊東へ。球足の速いボールだったが、伊東は正確に右斜め前にボールを置き、超弩級の一撃を叩き込んでくれた。それにしても、伊東は正に大エースとしか言いようがない存在になってくれた。ボールの置き所の見事さ、突破をする時の精妙なボールタッチ、正確な技術とその使い所の的確な判断。大学までそれほど著名ではなかったこのタレントの格段の成長振りは本当にすばらしい。
サウジとしては前半戦って「リードを許した以上は勝つのは相当難しい」と覚悟を決めていたはず。なので、1点差の時間を延ばし、僅かな交通事故に期待したいところだったろう。それを打ち砕く一撃を喰らい、オーロラビジョンに大映しになる各選手の絶望的な表情がうれしい。
以降は、完全に日本ペース。交代出場した前田大然と浅野と伊東の3超高速トリオが、サウジDFの後方を再三付き複数回決定機をつかむが決め切れず、2-0で試合終了。点差以上の完勝だった。
まあ、フィジカルコンディションのよい選手がそろい、選手選考を誤ったり、疲弊した選手の交代をしっかりしてくれれば、森保氏はすばらしい試合ができるのはわかっていたことだ。また、集まっては解散を繰り返す代表チームで、序盤自らの采配不備による勝ち点喪失という失態を行いながら、各選手たちを精神的にまとめ上げた手腕も恐れ入るものがある。しかも、今回の招集は精神的支柱の吉田麻也と、(おそらく)日本人選手で歴代市場価格ナンバーワンとなっている冨安が不在だったにもかかわらず。
ただ相変わらずディテールについて、ネチネチ文句を言えるツッコミどころには事欠かないのは楽しい娯楽だ。勝った試合の後ならばだが。
何回でも繰り返すが、トレスボランチ採用するのに、どうして守備の強い中盤のバックアップ呼んでないのだろうか。川辺や稲垣や橋本や松岡など有効な選手は多数いるはず。もし序盤に3人のうち誰かが負傷離脱したり、いやそれ以前にこの3人のうち誰かが自クラブで負傷し招集できないとしたら、森保氏はどうするつもりなのだろうか。もちろん、柴崎がロシアの輝きを取り戻すことを期待し、招集を継続するのを否定はしない。しかし、柴崎が現状のレギュラー3人組のように戦うことが難しいのは、先日の敵地オマーン戦でも示されたではないか(もちろん終盤何がしかの理由で試合がばたついた時などに柴崎を起用し、落ち着けることは今でも十分期待できるだろうが)。
このMFのポジション以外は、このチームには多士済々のタレントが揃っている。今回の板倉、谷口がまったく不安ないプレイを披露してくれたのがその典型だ。左DFは少々手薄だが、長友と中山と2人は常時招集され、2人とも存分に機能することはわかっている。なのに、なぜここだけは手薄なままを放置するのだろうか。
もう1つ。終盤遠藤航→原口の交代ちょっと前に、酒井宏樹が足をつり気味だったが、森保氏は交代しなかった。まだ交代枠が残っていたのだから、山根を投入するべきだろう。こう言う甘い采配するから、メモするのに忙しくて試合見ていないのではないか、と言いたくなるのだw。このような細部をおろそかにする采配で、本大会の2次ラウンドで本当に厳しい相手と戦えるだろうか。
ともあれ、すばらしい180分間をたっぷり堪能することができた。
敵地豪州戦を引き分ければ出場権が確定する。中盤の3人が負傷なく上々の体調で招集できれば、よほどのことがない限り、敵地とは言え勝ち点獲得は難しくないだろう(3人が揃わなければ、それはそれで心配だが上記の通り人材はいる、ベテランの山口蛍あたりに頼る手段もあるし)。3月24日の豪州か、よい季節だし行って歓喜を堪能したいなあ、疫病が忌々しい。
この2試合180分間のの日本の組織守備のすばらしさを、どう表現したらよいのか。特にボールを奪われた直後の切り替えの早さと位置取りの修正は格段だった。出場全選手の献身に最大限の敬意と感謝を捧げたい。100年の歴史が育んだ知性と技巧とフィジカルに優れた我らのサッカーエリート達が、ここまで戦ってくれるとは。カタールでのベスト8はもちろん、生きているうちにベスト4も体験できるかもとすら思えてきた。
過去日本代表が組織守備を十分に機能させた試合と言えば、やはり南アフリカワールドカップと言うことになるだろう。あれは見事な4試合だった。ただ、本大会は事前にフィジカルコンディションを整える合宿を行える。それに対し予選では欧州から帰国した選手と国内の選手を直前に集めて試合に臨むのだから、2試合続く予選で質の高い試合を見せるのは難しい。実際、ブラジル予選ではCBの弱さがチーム全体の課題となっていたし、ロシア予選では連戦2試合続けてよい試合を見せてくれることは少なかった。もちろん、この2試合はホーム連戦で調整がしやすかったのは確かなのだが。
しかも、この中国戦とサウジ戦は、国内はオフでレギュラーのCB2人が不在。これだけ難しい状況だったのに180分間に渡り、組織守備を機能させたのだからすばらしい。ホーム豪州戦以降採用した遠藤航、守田、田中碧のトレスボランチがよく機能。谷口と板倉のCBの充実と合わせ、難敵サウジにも好機を与えなかった。しかも、速攻を許すようなリスク高いパスをほとんど使わず、田中碧の制度の高いパスと伊東格段の突破力を軸に、複数回崩し切り得点を重ねた。
サウジは中国とは異なり、前線から厳しいプレスをかけてきた。しかし、日本も落ち着いてボールを回し不用意な取られ方はしない。ただ、田中碧が自由にボールを持たせてもらえないこともあり、どうしても前線へのフィードは甘くなり攻め切れない時間が続く。それでも25分過ぎあたり、伊東が敵DFを打ち破り低いクロスをGKが好セーブの好機をつかんだあたりから連続攻撃。そしてサウジが一度それをしのいだところで、ボールを奪った酒井が伊東に絶妙な縦パス。伊東が長駆で再度振り切り上げたボールを大迫がスルーし、南野が切り返しから左足で決めてくれた。
日本の攻勢が続いたところで、サウジDFが深めに位置取りしているところで、前線の選手が中途半端に前に出てきたので、酒井が精度の高いボールを入れることができた。サウジは引き分け狙いだったのだろうが、あの場面はコンパクトで無くなっていた。この予選好調に首位を走るサウジが、精神的なスタミナが残っている前半からそのような不十分な意思統一を見せるとは少々驚きだった。サウジのホームでの勝利は、日本のミスからの自滅だったのだが、選手たちは「日本より強い」とでも錯覚したのだろうか。
その後、やや日本のプレスが消極的になったこともあり、日本陣まで攻め込まれることもあり複数回CKを許す。ただ、そうなればサウジ後方のスペースを狙えるから、伊東のシュートをGKがブロック、田中碧がペナルティエリア内で倒された疑惑、遠藤航のフリーのミドルシュートが宇宙開発など、日本も好機を複数回つかむが決め切れず前半終了。
後半立ち上がりから日本が積極的なプレスをかけ、サウジ陣でボールを狩れるようになる。そして50分、遠藤航のボール奪取から南野(だと思った)がつなぎ、左の長友に。長友が敵タックルをかわすように上げた逆サイドへのクロス(どの程度ねらったのかは少々微妙だったが)が伊東へ。球足の速いボールだったが、伊東は正確に右斜め前にボールを置き、超弩級の一撃を叩き込んでくれた。それにしても、伊東は正に大エースとしか言いようがない存在になってくれた。ボールの置き所の見事さ、突破をする時の精妙なボールタッチ、正確な技術とその使い所の的確な判断。大学までそれほど著名ではなかったこのタレントの格段の成長振りは本当にすばらしい。
サウジとしては前半戦って「リードを許した以上は勝つのは相当難しい」と覚悟を決めていたはず。なので、1点差の時間を延ばし、僅かな交通事故に期待したいところだったろう。それを打ち砕く一撃を喰らい、オーロラビジョンに大映しになる各選手の絶望的な表情がうれしい。
以降は、完全に日本ペース。交代出場した前田大然と浅野と伊東の3超高速トリオが、サウジDFの後方を再三付き複数回決定機をつかむが決め切れず、2-0で試合終了。点差以上の完勝だった。
まあ、フィジカルコンディションのよい選手がそろい、選手選考を誤ったり、疲弊した選手の交代をしっかりしてくれれば、森保氏はすばらしい試合ができるのはわかっていたことだ。また、集まっては解散を繰り返す代表チームで、序盤自らの采配不備による勝ち点喪失という失態を行いながら、各選手たちを精神的にまとめ上げた手腕も恐れ入るものがある。しかも、今回の招集は精神的支柱の吉田麻也と、(おそらく)日本人選手で歴代市場価格ナンバーワンとなっている冨安が不在だったにもかかわらず。
ただ相変わらずディテールについて、ネチネチ文句を言えるツッコミどころには事欠かないのは楽しい娯楽だ。勝った試合の後ならばだが。
何回でも繰り返すが、トレスボランチ採用するのに、どうして守備の強い中盤のバックアップ呼んでないのだろうか。川辺や稲垣や橋本や松岡など有効な選手は多数いるはず。もし序盤に3人のうち誰かが負傷離脱したり、いやそれ以前にこの3人のうち誰かが自クラブで負傷し招集できないとしたら、森保氏はどうするつもりなのだろうか。もちろん、柴崎がロシアの輝きを取り戻すことを期待し、招集を継続するのを否定はしない。しかし、柴崎が現状のレギュラー3人組のように戦うことが難しいのは、先日の敵地オマーン戦でも示されたではないか(もちろん終盤何がしかの理由で試合がばたついた時などに柴崎を起用し、落ち着けることは今でも十分期待できるだろうが)。
このMFのポジション以外は、このチームには多士済々のタレントが揃っている。今回の板倉、谷口がまったく不安ないプレイを披露してくれたのがその典型だ。左DFは少々手薄だが、長友と中山と2人は常時招集され、2人とも存分に機能することはわかっている。なのに、なぜここだけは手薄なままを放置するのだろうか。
もう1つ。終盤遠藤航→原口の交代ちょっと前に、酒井宏樹が足をつり気味だったが、森保氏は交代しなかった。まだ交代枠が残っていたのだから、山根を投入するべきだろう。こう言う甘い采配するから、メモするのに忙しくて試合見ていないのではないか、と言いたくなるのだw。このような細部をおろそかにする采配で、本大会の2次ラウンドで本当に厳しい相手と戦えるだろうか。
ともあれ、すばらしい180分間をたっぷり堪能することができた。
敵地豪州戦を引き分ければ出場権が確定する。中盤の3人が負傷なく上々の体調で招集できれば、よほどのことがない限り、敵地とは言え勝ち点獲得は難しくないだろう(3人が揃わなければ、それはそれで心配だが上記の通り人材はいる、ベテランの山口蛍あたりに頼る手段もあるし)。3月24日の豪州か、よい季節だし行って歓喜を堪能したいなあ、疫病が忌々しい。
2022年01月31日
サウジは無理をして来ない
2022年1月27日 日本2-0中国 於埼玉スタジアム。
個人的には、日本代表史に残る完璧な試合だったとは思う。「だったと思う」ではなくて「だったとは思う」だが。
元々、戦闘能力で中国を圧していることは事前にわかっていた。ただ、戦闘能力が劣るチームに対し確実に勝ち点3を確保するのが、必ずしも容易ではないことは、サッカー狂ならば誰もが理解している。そして、本大会出場のために、この試合で勝ち点3をしっかり獲得すること、その確率を極力高めることが重要なこと、それぞれもサッカー狂ならば誰もが理解していたことだ。
そして、この日、遠藤航とその仲間たちは、そのミッションをほぼ完璧に演じてくれた。この「ほぼ」の徹底ぶりは実に見事。
開始早々から、ボールを奪われた直後の切り替えが格段(最近の流行り言葉では「ネガティブトランジション」)。そのため、中国はまともにつないでハーフウェイラインを越えられない。それならばとロングボールで前線をねらってくると、板倉と谷口がそれを冷静にはね返すので、中国はまったく前線で起点を作れない。そしてこの急造CBコンビは、後方に引いてくる田中碧と連携し、前線に次々と好パスを送り出す。
それにしても、板倉の出足(その前提となる読みを含めて)はすばらしかった。ベガルタが天皇杯決勝で浦和に苦杯を喫したのは、この日と同じ競技場での3年前のことだった。あの試合、ベガルタの左CBとして起用された板倉、マークする相手に詰め切れない弱点を突かれ、幾度も裏への突破を許してしまった。欧州での3年の経験は、この若者をまったく質の異なる戦士に変えてくれた。板倉は、この中国戦でのプレイ振りで、完全に吉田麻也との定位置争いに名乗りを上げたことになるだろう。少しずつ、最高レベルのCBになりつつあるこの逸材と、1年間ともに戦えた幸せ、ベガルタサポータとして本当に嬉しい。
攻撃には色々不満もあるが、このレベルの相手に、これだけ素早いネガティブトランジションを継続すれば、試合は一方的なものとなる。遠藤航と守田の切り替えは当然かもしれないが、3トップの切り替えの早さも格段。そして序盤に見事なパス回しで伊東純也の突破場面を作りPKで先制に成功。以降は、攻撃面で無理をするリスクを負わず、執拗に切り替え早さで守備を固める試合となった。この切り替え早さを90分間継続するのだから、「日本代表史に残る完璧な試合」と表現した次第。加えて、中国が田中碧をまったく押さえにこないので、一度日本がボールを奪うと、上記の通り2CBと田中碧を起点におもしろいようにボールを回すことができた。結果、90分間に渡り試合をコントロール。僅かなズレから許した数少ないCKや自陣のFKからシュートを許したものの、交通事故のリスクも最小限。まったくおもしろさはないかもしれないが、リアリズムと言う視点からは「完璧な試合」と言うしかないではないか。少なくとも、戦闘能力が明らかに落ちる中国に対し、勝ち点3を間違いなく獲得するという視点では、この試合はすばらしかった。
もちろん不満もある。上記の通りボールをしっかり回すことはできたが、なかなか追加点を奪えなかったこと。これは開始早々に先制したこともあろうが、各選手が「悪い取られ方をしないこと」を徹底し、無理をしなかったためだった。正直言って勝ち点3を確保するのが最重要な試合だから、各選手の思いはわからないでもない。しかし、あれだけボールを奪われた直後の守備が機能していたのだ。最前線の選手は、もう少し無理をしてよかったはずだ。特に南野には不満がある。長友との連係を工夫したり、もう少し無理をしてもよかったのではないか。だから、冒頭で「だったとは思う」と微妙な表現をとった次第。贅沢なのかもしれないけれど。
さてサウジ戦。
中国と比較すれば、戦闘能力が格段に高いことは間違いない。しかし、落ち着いて考えてみよう。先般の敵地戦の苦杯だが、序盤のセットプレイから許したピンチ(権田が好フィスティングでしのいだ)を除くと、危ない場面は皆柴崎のミスによるものだった(それにしても、あの柴崎の完璧な敵へスルーパスには驚いたが)。どんな選手にも不調の時はある。にもかかわらず、柴崎を交代させなかった森保氏の問題なのだ。加えて、サウジは日本時間28日の未明にホームでオマーンと戦った後の来日となっている。それも極寒の日本に。コンディションがよいとはとても思えない。さらにサウジとの試合、日本はホームで過去勝ち点を失ったことはないはず、引き分けもなく常に勝っているはずだ(記憶違いだったらごめんなさい)。中国戦の守備強度を含め、常識的に考えれば、日本が圧倒的に優位なのだ。
さらに各国の勝ち点勘定を考えると、サウジは出場権獲得をほぼ決めており、一方で豪州は相当追い込まれているのだ。
1位 サウジ 勝ち点19 得失点差+7 残試合 A日本 A中国 H豪州
2位 日本 勝ち点15 得失点差+4 残試合 Hサウジ A豪州 Hベトナム
3位 豪州 勝ち点14 得失点差+9 残試合 Aオマーン H日本 Aサウジ
4位 オマーン 勝ち点7 得失点差-2 H豪州 残試合 Aベトナム H中国
ベトナムと中国が圏外と考えると(いや、ベトナムは本大会出場可能性なくなっても最後まで相当な抵抗はしてくるだろうが)、サウジは次節の敵地中国戦に勝てば勝ち点は22確保できる。そうなると、日本と豪州は直接対決が残っているので、サウジは残る豪州と日本の直接対決に敗れたとしても、2位には入れるのだ。サウジにとっての唯一の悪夢は日本に2点差で敗れ、(可能性は低いが)中国に引き分け以下で終わり、日本が豪州に1点差で負けたケース。その場合以下となる。もし、火曜日に日本に負けたとしても0-1ならば、サウジが悪夢にはまっても得失点差で日本を2上回ることができる。そうなると日本はベトナムに大量点が必要になる。
サウジ勝ち点20、得失点差+5 ホームとは言え豪州と直接対決
豪州 勝ち点20、得失点差+10以上 敵地とは言えサウジと直接対決
日本勝ち点18、得失点差+5 ベトナムに勝てば2位には入れる
そうこう考えると、サウジにとって火曜日の日本戦は引き分けで十分、負けても1点差ならば問題ない試合なのだ。
余談ながら、オマーンのホームゲーム豪州戦はすごい試合になるだろう。オマーンはこの豪州戦を勝てば、勝ち点16まで行ける可能性が出てくる。豪州が日本にもサウジにも勝てなければ、オマーンが3位になれる。
以上考えると、サウジは絶対無理をして来ない。日本がリードしても、強引に同点をねらわず最小得点差を維持することを考えるはずだ。
とすれば、日本は中国戦の守備強度を確保しながら、左右両翼から攻勢をかけるべきだろう。南野が強引に無理をしに行くのか、久保を左サイドに使い強引に行くのか、中山を起用し左オープンに開かせるのか、森保氏はいずれを選択するのか。冷静な采配で2点差以上の勝利を期待したい。
個人的には、日本代表史に残る完璧な試合だったとは思う。「だったと思う」ではなくて「だったとは思う」だが。
元々、戦闘能力で中国を圧していることは事前にわかっていた。ただ、戦闘能力が劣るチームに対し確実に勝ち点3を確保するのが、必ずしも容易ではないことは、サッカー狂ならば誰もが理解している。そして、本大会出場のために、この試合で勝ち点3をしっかり獲得すること、その確率を極力高めることが重要なこと、それぞれもサッカー狂ならば誰もが理解していたことだ。
そして、この日、遠藤航とその仲間たちは、そのミッションをほぼ完璧に演じてくれた。この「ほぼ」の徹底ぶりは実に見事。
開始早々から、ボールを奪われた直後の切り替えが格段(最近の流行り言葉では「ネガティブトランジション」)。そのため、中国はまともにつないでハーフウェイラインを越えられない。それならばとロングボールで前線をねらってくると、板倉と谷口がそれを冷静にはね返すので、中国はまったく前線で起点を作れない。そしてこの急造CBコンビは、後方に引いてくる田中碧と連携し、前線に次々と好パスを送り出す。
それにしても、板倉の出足(その前提となる読みを含めて)はすばらしかった。ベガルタが天皇杯決勝で浦和に苦杯を喫したのは、この日と同じ競技場での3年前のことだった。あの試合、ベガルタの左CBとして起用された板倉、マークする相手に詰め切れない弱点を突かれ、幾度も裏への突破を許してしまった。欧州での3年の経験は、この若者をまったく質の異なる戦士に変えてくれた。板倉は、この中国戦でのプレイ振りで、完全に吉田麻也との定位置争いに名乗りを上げたことになるだろう。少しずつ、最高レベルのCBになりつつあるこの逸材と、1年間ともに戦えた幸せ、ベガルタサポータとして本当に嬉しい。
攻撃には色々不満もあるが、このレベルの相手に、これだけ素早いネガティブトランジションを継続すれば、試合は一方的なものとなる。遠藤航と守田の切り替えは当然かもしれないが、3トップの切り替えの早さも格段。そして序盤に見事なパス回しで伊東純也の突破場面を作りPKで先制に成功。以降は、攻撃面で無理をするリスクを負わず、執拗に切り替え早さで守備を固める試合となった。この切り替え早さを90分間継続するのだから、「日本代表史に残る完璧な試合」と表現した次第。加えて、中国が田中碧をまったく押さえにこないので、一度日本がボールを奪うと、上記の通り2CBと田中碧を起点におもしろいようにボールを回すことができた。結果、90分間に渡り試合をコントロール。僅かなズレから許した数少ないCKや自陣のFKからシュートを許したものの、交通事故のリスクも最小限。まったくおもしろさはないかもしれないが、リアリズムと言う視点からは「完璧な試合」と言うしかないではないか。少なくとも、戦闘能力が明らかに落ちる中国に対し、勝ち点3を間違いなく獲得するという視点では、この試合はすばらしかった。
もちろん不満もある。上記の通りボールをしっかり回すことはできたが、なかなか追加点を奪えなかったこと。これは開始早々に先制したこともあろうが、各選手が「悪い取られ方をしないこと」を徹底し、無理をしなかったためだった。正直言って勝ち点3を確保するのが最重要な試合だから、各選手の思いはわからないでもない。しかし、あれだけボールを奪われた直後の守備が機能していたのだ。最前線の選手は、もう少し無理をしてよかったはずだ。特に南野には不満がある。長友との連係を工夫したり、もう少し無理をしてもよかったのではないか。だから、冒頭で「だったとは思う」と微妙な表現をとった次第。贅沢なのかもしれないけれど。
さてサウジ戦。
中国と比較すれば、戦闘能力が格段に高いことは間違いない。しかし、落ち着いて考えてみよう。先般の敵地戦の苦杯だが、序盤のセットプレイから許したピンチ(権田が好フィスティングでしのいだ)を除くと、危ない場面は皆柴崎のミスによるものだった(それにしても、あの柴崎の完璧な敵へスルーパスには驚いたが)。どんな選手にも不調の時はある。にもかかわらず、柴崎を交代させなかった森保氏の問題なのだ。加えて、サウジは日本時間28日の未明にホームでオマーンと戦った後の来日となっている。それも極寒の日本に。コンディションがよいとはとても思えない。さらにサウジとの試合、日本はホームで過去勝ち点を失ったことはないはず、引き分けもなく常に勝っているはずだ(記憶違いだったらごめんなさい)。中国戦の守備強度を含め、常識的に考えれば、日本が圧倒的に優位なのだ。
さらに各国の勝ち点勘定を考えると、サウジは出場権獲得をほぼ決めており、一方で豪州は相当追い込まれているのだ。
1位 サウジ 勝ち点19 得失点差+7 残試合 A日本 A中国 H豪州
2位 日本 勝ち点15 得失点差+4 残試合 Hサウジ A豪州 Hベトナム
3位 豪州 勝ち点14 得失点差+9 残試合 Aオマーン H日本 Aサウジ
4位 オマーン 勝ち点7 得失点差-2 H豪州 残試合 Aベトナム H中国
ベトナムと中国が圏外と考えると(いや、ベトナムは本大会出場可能性なくなっても最後まで相当な抵抗はしてくるだろうが)、サウジは次節の敵地中国戦に勝てば勝ち点は22確保できる。そうなると、日本と豪州は直接対決が残っているので、サウジは残る豪州と日本の直接対決に敗れたとしても、2位には入れるのだ。サウジにとっての唯一の悪夢は日本に2点差で敗れ、(可能性は低いが)中国に引き分け以下で終わり、日本が豪州に1点差で負けたケース。その場合以下となる。もし、火曜日に日本に負けたとしても0-1ならば、サウジが悪夢にはまっても得失点差で日本を2上回ることができる。そうなると日本はベトナムに大量点が必要になる。
サウジ勝ち点20、得失点差+5 ホームとは言え豪州と直接対決
豪州 勝ち点20、得失点差+10以上 敵地とは言えサウジと直接対決
日本勝ち点18、得失点差+5 ベトナムに勝てば2位には入れる
そうこう考えると、サウジにとって火曜日の日本戦は引き分けで十分、負けても1点差ならば問題ない試合なのだ。
余談ながら、オマーンのホームゲーム豪州戦はすごい試合になるだろう。オマーンはこの豪州戦を勝てば、勝ち点16まで行ける可能性が出てくる。豪州が日本にもサウジにも勝てなければ、オマーンが3位になれる。
以上考えると、サウジは絶対無理をして来ない。日本がリードしても、強引に同点をねらわず最小得点差を維持することを考えるはずだ。
とすれば、日本は中国戦の守備強度を確保しながら、左右両翼から攻勢をかけるべきだろう。南野が強引に無理をしに行くのか、久保を左サイドに使い強引に行くのか、中山を起用し左オープンに開かせるのか、森保氏はいずれを選択するのか。冷静な采配で2点差以上の勝利を期待したい。
2022年01月27日
CB2人不在だけれども
Jリーグオフという厄介なタイミングで迎えるホームの中国戦、サウジ戦。この季節以外では、欧州でプレイする選手の体調は呼んでみなければわからず、国内の選手の体調は計算できるのが常。しかし、今回については国内の選手はみな体調があまりよくないことは自明(長いシーズンに向けたフィジカルトレーニングの最中だから)。で、さらにCOVID-19でのバブル対応がコンディショニングを難しくする。
まあ、ずっと日本国内に滞在し移動がない有利さは格段だ。同じバブルでも、異国と母国ではまったく精神的負担は異なるはず。加えて、敵軍の戦闘能力との相対比較という意味では、両試合ともかなり有利なことは間違いない。
中国の弱さは初戦で明らかになった。元々あまり機能していなかった帰化選手たちの去就も曖昧だ。中途半端に帰化選手に頼らず、真面目に強化を積んだらよかったのではないかとの上から目線も楽しい。それにしても、この国のサッカーはどうしてダメなのだろうか。合衆国が地味ながらワールドカップで好成績を収めているから、超大国がサッカーがダメという理屈はないはず。テレビで習近平氏(大変なサッカー好きとのことだが)のふんぞり返った態度を見る度に「いいから、サッカーが強くなってから偉そうにしてください」と、つぶやくのも楽しい。
サウジは難敵で先日も苦杯を喫している(詳細は後述する)。しかし、2月の日本のナイトゲームの寒さは彼らには相当厳しいハンディキャップとなるだろう。いや、アラビア半島の湿度と高さと気温の高さのしんどさと言ったら形容し難いものがある。そのような地域で生まれ育った選手たちに、2月の日本の寒さは厳しい試練になることだろう。歴史的にもこのアジアの強国は日本で勝ち点を獲得したことはないと記憶している(間違っていたらごめんなさい)。そう考えると、日本との勝ち点差4を考えれば無理をしないはず、引き分ければ大成功と思っているはずだ。
したがって、両軍とも完全な引き分け狙いで来る。落ち着いて90分で複数回崩し切る工夫をし、当方の豪華絢爛な我々のスター選手の誰かがゴールネットを揺らしてくれるはずだ。よほど妙なことが起こらない限り勝ち点6を確保の可能性は高い。
と書いたわけだが、その「よほど妙なこと」を起こすのが、我らが森保監督。これまでの予選の2敗を振り返ってみよう。
ホームオマーン戦では、CBと守備的MFの控えがいない異常事態にもかかわらず新しい選手を呼ばない謎対応。さらに疲弊したサイドバックを交代させず状況を放置。その結果、終了間際に遭えなく失点した。
敵地サウジ戦では、再三ミスパスやボールロストを繰り返す柴崎を交代させず、そうこうしていたら柴崎の誰も予測できないようなミスパスから失点した。さらに、1点を取りに行く必要が出てきたので柴崎→田中碧の交代が妥当だったのだが、失点前に準備していた柴崎→守田の交代を変更せず、終盤の攻めあぐみを招いた。
以前から幾度も書いてきたが、森保氏は決して悪い監督ではない。中心選手を固め、彼らに試合を委ねる。全員にハードワークを期待し、まず試合を無失点で終えることを目指す。そうこうしているうちに、かなりの確率で勝利を収めることができる。サンフレッチェでJを制覇した際も、佐藤寿人を軸にしたチームで丁寧に勝ち点を積み上げていった。アジアカップの準優勝や、先日の東京五輪での準決勝進出も、これらのチーム作りの成果と言えよう。
しかし、これまた幾度もイヤミを語ってきたが、
そうこう考えていたら、なんとこの2試合、吉田麻也と冨安が欠場すると言う。さらに古橋亨と三笘薫まで。でもあまり不安はないのですがねw。
散々イヤミを語っている敵地サウジ戦だが、柴崎がからんだ場面以外に敵に許した好機は序盤のFKからのみ。後はサウジの個人技による攻撃を、ことごとく冨安の1対1の強さと、麻也の老獪なカバーで防いでいた。前線からの組織守備と、遠藤航の協力な中盤デュエルにより、敵FWが加速して攻めてくる場面は非常に少なかったので危ない場面はほとんど作らせなかった。しつこいのは承知で繰り返すが、森保氏が適切な采配を振るっていれば、間違いなく勝ち点1を確保できていたことだろう。
そう考えると、麻也と冨安の不在に不安感は高まる。おそらく、谷口と板倉が中央を固めることになるのだろうが、この2人にとっては代表定着の絶好機ということになる。フロンターレでの谷口の最終ラインでの安定感は相当なものだし、板倉の東京五輪での守備ぶりは中々で欧州での評価もかなり高い。そう考えると、この2人については、それほど心配する必要はないだろう。
むしろ不安は守備的MFの控えの薄さではないか。おそらく、4-3-3のスタメンで、遠藤航、田中碧、守田が先発となるのだろうが、中盤後方のタレントの控えは柴崎しかいない。そうこう考えると、(森保氏が以前選考したことのある)稲垣祥や川辺駿あたりを呼べばよかったにと思うのは私だけだろうか。随分チーム運営が楽になると思うのだが。
以前から何度か書いているが、30年前の森保一のような選手を、もっと呼べばよいと思うのだが。
不安や不満を語り始めればキリがない。心配していない。中国とサウジを、圧倒的な戦闘能力で完全に殲滅すればよいのだ。
まあ、ずっと日本国内に滞在し移動がない有利さは格段だ。同じバブルでも、異国と母国ではまったく精神的負担は異なるはず。加えて、敵軍の戦闘能力との相対比較という意味では、両試合ともかなり有利なことは間違いない。
中国の弱さは初戦で明らかになった。元々あまり機能していなかった帰化選手たちの去就も曖昧だ。中途半端に帰化選手に頼らず、真面目に強化を積んだらよかったのではないかとの上から目線も楽しい。それにしても、この国のサッカーはどうしてダメなのだろうか。合衆国が地味ながらワールドカップで好成績を収めているから、超大国がサッカーがダメという理屈はないはず。テレビで習近平氏(大変なサッカー好きとのことだが)のふんぞり返った態度を見る度に「いいから、サッカーが強くなってから偉そうにしてください」と、つぶやくのも楽しい。
サウジは難敵で先日も苦杯を喫している(詳細は後述する)。しかし、2月の日本のナイトゲームの寒さは彼らには相当厳しいハンディキャップとなるだろう。いや、アラビア半島の湿度と高さと気温の高さのしんどさと言ったら形容し難いものがある。そのような地域で生まれ育った選手たちに、2月の日本の寒さは厳しい試練になることだろう。歴史的にもこのアジアの強国は日本で勝ち点を獲得したことはないと記憶している(間違っていたらごめんなさい)。そう考えると、日本との勝ち点差4を考えれば無理をしないはず、引き分ければ大成功と思っているはずだ。
したがって、両軍とも完全な引き分け狙いで来る。落ち着いて90分で複数回崩し切る工夫をし、当方の豪華絢爛な我々のスター選手の誰かがゴールネットを揺らしてくれるはずだ。よほど妙なことが起こらない限り勝ち点6を確保の可能性は高い。
と書いたわけだが、その「よほど妙なこと」を起こすのが、我らが森保監督。これまでの予選の2敗を振り返ってみよう。
ホームオマーン戦では、CBと守備的MFの控えがいない異常事態にもかかわらず新しい選手を呼ばない謎対応。さらに疲弊したサイドバックを交代させず状況を放置。その結果、終了間際に遭えなく失点した。
敵地サウジ戦では、再三ミスパスやボールロストを繰り返す柴崎を交代させず、そうこうしていたら柴崎の誰も予測できないようなミスパスから失点した。さらに、1点を取りに行く必要が出てきたので柴崎→田中碧の交代が妥当だったのだが、失点前に準備していた柴崎→守田の交代を変更せず、終盤の攻めあぐみを招いた。
以前から幾度も書いてきたが、森保氏は決して悪い監督ではない。中心選手を固め、彼らに試合を委ねる。全員にハードワークを期待し、まず試合を無失点で終えることを目指す。そうこうしているうちに、かなりの確率で勝利を収めることができる。サンフレッチェでJを制覇した際も、佐藤寿人を軸にしたチームで丁寧に勝ち点を積み上げていった。アジアカップの準優勝や、先日の東京五輪での準決勝進出も、これらのチーム作りの成果と言えよう。
しかし、これまた幾度もイヤミを語ってきたが、
選手の体調を見極められないこと、選手交代について計画性がないこと、勝っている試合のクローズが稚拙なこと。そして、五輪での最大の失敗である選手の消耗対応を反省していないこと。要は森保氏は、1試合ずつ丁寧に勝ち切る用兵が決定的にお粗末なのだ。その結果上記のホームオマーン戦や敵地サウジ戦で、非常識な采配を行い、後半煮詰まった時間帯にありえないような失点をしてしまい、そのまま敗北を喫してしまった。東京五輪でもチームの要である遠藤航と田中碧を酷使し消耗させ、結果メダルを逃したは記憶に新しい。
そうこう考えていたら、なんとこの2試合、吉田麻也と冨安が欠場すると言う。さらに古橋亨と三笘薫まで。でもあまり不安はないのですがねw。
散々イヤミを語っている敵地サウジ戦だが、柴崎がからんだ場面以外に敵に許した好機は序盤のFKからのみ。後はサウジの個人技による攻撃を、ことごとく冨安の1対1の強さと、麻也の老獪なカバーで防いでいた。前線からの組織守備と、遠藤航の協力な中盤デュエルにより、敵FWが加速して攻めてくる場面は非常に少なかったので危ない場面はほとんど作らせなかった。しつこいのは承知で繰り返すが、森保氏が適切な采配を振るっていれば、間違いなく勝ち点1を確保できていたことだろう。
そう考えると、麻也と冨安の不在に不安感は高まる。おそらく、谷口と板倉が中央を固めることになるのだろうが、この2人にとっては代表定着の絶好機ということになる。フロンターレでの谷口の最終ラインでの安定感は相当なものだし、板倉の東京五輪での守備ぶりは中々で欧州での評価もかなり高い。そう考えると、この2人については、それほど心配する必要はないだろう。
むしろ不安は守備的MFの控えの薄さではないか。おそらく、4-3-3のスタメンで、遠藤航、田中碧、守田が先発となるのだろうが、中盤後方のタレントの控えは柴崎しかいない。そうこう考えると、(森保氏が以前選考したことのある)稲垣祥や川辺駿あたりを呼べばよかったにと思うのは私だけだろうか。随分チーム運営が楽になると思うのだが。
以前から何度か書いているが、30年前の森保一のような選手を、もっと呼べばよいと思うのだが。
不安や不満を語り始めればキリがない。心配していない。中国とサウジを、圧倒的な戦闘能力で完全に殲滅すればよいのだ。
2022年01月15日
2022年サッカーはどこまで正常化するか
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。最近筆が重くなって、なかなか更新できませんが、ゆるゆると講釈を垂れていこうと思います。
約2年間、疫病禍に襲われたこの世界。国内外、関係者の多大な努力で何とかサッカーを楽しむことができていた。幾度も語ってきたが、関係者の丹念な努力の賜物、改めて感謝したいと思う。
残念ながら、年が明け新変異したオミクロン株により、状況が再び悪化したようだ。高校選手権準決勝関東一高の出場辞退、ラグビーリーグワンの開幕戦中止。日本国内での陽性者増加も悩ましいが、欧州主要国では10万人オーダの日次新規陽性者増加とのこと、「だったらマスクぐらいしろよ」とも言いたいが。声を出して応援できる環境に羨望しているだけかな。
そもそもCOVID-19対応は科学的に何が正しいのかよくわからないのが厄介。ここ最近の陽性者増加が、我々の正常な生活に対してどのくらい深刻なリスクなのか、それを客観的に示してくれるマスコミ報道がどれなのか判別し難いのが大きな悩みとなっている。
先ほど「関係者の努力」と簡単に述べたけれど、すべてのサッカー人の「努力」には感謝の言葉もない。
国内の若年層の公式戦、Jリーグを頂点とする国内のトップレベルの試合、各種国際試合、それぞれのレベルで、それぞれのリソースを駆使しながら異なる対策が行われてきた。
国際試合での帰国時の「バブル対応」、ACL奮闘直後にJの各クラブが相当な苦労をしていたのは記憶に新しい。また月末に行われるワールドカップ予選のバブル対応について、先日ヴィッセル神戸の実質オーナの三木谷氏が噛み付いたのもごもっとも。
国内トップレベルの試合で陽性者が出た場合の適正対応、何か起こる度にマスコミがおもしろおかしく語る中での難しい対応だった。Jリーグ当局が早々に立ち上げたプロトコル。プロ野球との連係を早々に立ち上げた政治的手腕もすばらしかったが、早々に明確なルールを作り、丸々2年運用継続をおこなった手腕は尊敬に値する。もっとも、その延長で湘南対浦和を無効試合にしてしまった痛恨時も表裏一体なのかもしれない。賞賛するしかない業績と、非難するしかない業績。
上記した今年の高校選手権の準決勝の悲劇ほどではないが、約1年前の高校選手権でチームメートが競技場ではなく学校での応援を余儀なくされたのも残念だった。いや、それ以上に大きな大会でもやむを得ず中止の判断が行われたケースも多かった。それでもサッカーは、相応の組織力があり、多くの人々の献身的努力により、他競技よりは中止の悲劇を防ぐことはできた。
グッとレベルは下がるが、底辺の少年団でも本当に大変だった。中でも大事な少年団最後の大会が中止になった時の子供たち、そしてずっと自分の子供とその大会に向けて準備を進めてきた父親コーチの失望を見るのは、それぞれつらかった。それでも子供たちは小学校を卒業した以降も無限のサッカーライフが待っているが、父親コーチには次はない。14年前の私とは異なり、彼らは人生の歓喜を味わえなかったのだ。
また幾度か語ったことがあるが交代人数が増えた新ルールは、サッカーを大きく変えた。活動量が激しいポジションは交代を行うのが前提の戦い方が当たり前になっている。長期のリーグ戦でも、短期決戦一発勝負でも、監督の作戦と駆け引きがやたら複雑になったこのルール変更。年寄りとしては抵抗感もあるが、サッカーの新しい側面を見せてくれている。もっとも、このルール変更にまったく対応することができてない代表監督を抱えているスリルも中々なのだが。
そして、サッカー観戦で声を出せないつらさは格段だ。
そうこうしながら2年近い月日が流れた。
冨安健洋、遠藤航、田中碧、伊東純也らがいるだけに、どんなに代表監督が愚行を重ねても出場権獲得はまったく問題ないと思っている。
しかし、俺はカタールに観客として行けるのだろうか。我々は、あと約10ヶ月でノンビリと観光旅行を楽しめる世界を取り戻すことができるのだろうか。
約2年間、疫病禍に襲われたこの世界。国内外、関係者の多大な努力で何とかサッカーを楽しむことができていた。幾度も語ってきたが、関係者の丹念な努力の賜物、改めて感謝したいと思う。
残念ながら、年が明け新変異したオミクロン株により、状況が再び悪化したようだ。高校選手権準決勝関東一高の出場辞退、ラグビーリーグワンの開幕戦中止。日本国内での陽性者増加も悩ましいが、欧州主要国では10万人オーダの日次新規陽性者増加とのこと、「だったらマスクぐらいしろよ」とも言いたいが。声を出して応援できる環境に羨望しているだけかな。
そもそもCOVID-19対応は科学的に何が正しいのかよくわからないのが厄介。ここ最近の陽性者増加が、我々の正常な生活に対してどのくらい深刻なリスクなのか、それを客観的に示してくれるマスコミ報道がどれなのか判別し難いのが大きな悩みとなっている。
先ほど「関係者の努力」と簡単に述べたけれど、すべてのサッカー人の「努力」には感謝の言葉もない。
国内の若年層の公式戦、Jリーグを頂点とする国内のトップレベルの試合、各種国際試合、それぞれのレベルで、それぞれのリソースを駆使しながら異なる対策が行われてきた。
国際試合での帰国時の「バブル対応」、ACL奮闘直後にJの各クラブが相当な苦労をしていたのは記憶に新しい。また月末に行われるワールドカップ予選のバブル対応について、先日ヴィッセル神戸の実質オーナの三木谷氏が噛み付いたのもごもっとも。
国内トップレベルの試合で陽性者が出た場合の適正対応、何か起こる度にマスコミがおもしろおかしく語る中での難しい対応だった。Jリーグ当局が早々に立ち上げたプロトコル。プロ野球との連係を早々に立ち上げた政治的手腕もすばらしかったが、早々に明確なルールを作り、丸々2年運用継続をおこなった手腕は尊敬に値する。もっとも、その延長で湘南対浦和を無効試合にしてしまった痛恨時も表裏一体なのかもしれない。賞賛するしかない業績と、非難するしかない業績。
上記した今年の高校選手権の準決勝の悲劇ほどではないが、約1年前の高校選手権でチームメートが競技場ではなく学校での応援を余儀なくされたのも残念だった。いや、それ以上に大きな大会でもやむを得ず中止の判断が行われたケースも多かった。それでもサッカーは、相応の組織力があり、多くの人々の献身的努力により、他競技よりは中止の悲劇を防ぐことはできた。
グッとレベルは下がるが、底辺の少年団でも本当に大変だった。中でも大事な少年団最後の大会が中止になった時の子供たち、そしてずっと自分の子供とその大会に向けて準備を進めてきた父親コーチの失望を見るのは、それぞれつらかった。それでも子供たちは小学校を卒業した以降も無限のサッカーライフが待っているが、父親コーチには次はない。14年前の私とは異なり、彼らは人生の歓喜を味わえなかったのだ。
また幾度か語ったことがあるが交代人数が増えた新ルールは、サッカーを大きく変えた。活動量が激しいポジションは交代を行うのが前提の戦い方が当たり前になっている。長期のリーグ戦でも、短期決戦一発勝負でも、監督の作戦と駆け引きがやたら複雑になったこのルール変更。年寄りとしては抵抗感もあるが、サッカーの新しい側面を見せてくれている。もっとも、このルール変更にまったく対応することができてない代表監督を抱えているスリルも中々なのだが。
そして、サッカー観戦で声を出せないつらさは格段だ。
そうこうしながら2年近い月日が流れた。
冨安健洋、遠藤航、田中碧、伊東純也らがいるだけに、どんなに代表監督が愚行を重ねても出場権獲得はまったく問題ないと思っている。
しかし、俺はカタールに観客として行けるのだろうか。我々は、あと約10ヶ月でノンビリと観光旅行を楽しめる世界を取り戻すことができるのだろうか。
2021年12月31日
2021年10大ニュース
1.湘南ベルマーレ対浦和レッズ戦、考えられないノーゲーム裁定
日本サッカー100年の歴史でも愚かな意思決定。詳細はこちらを。
浦和レッズが、自クラブの指定公式検査を受けていないU24代表帰りの選手(代表で必要な検査実施済みでCOVID-19リスクは指定公式検査で陰性だった選手と同じ)を湘南ベルマーレ戦に出場させてしまった。ルール上は、同等の検査を受診している申請をする必要があったがそれを怠ったとのこと。本質的な要因は日本協会と浦和の間で情報の連係がうまくとられていなかったためらしい。後日その件に気がついた浦和がJリーグ当局にその件を自己申告。そのため規律委員会が3-2での湘南の勝利に終わった試合結果をくつがえし、湘南の3-0の勝利と裁定した。
試合結果をくつがえす以上は、その試合が完全に不公平な状況で行われ「なかったもの」と扱うしかない状況しか考えられない。例えば、登録不備や警告累積などで出場資格がない選手を使ったケースが考えられよう。けれども、このケースでは当該選手は適切な検査は受診済みでCOVID-19リスクは問題なかった。事務手続き不備はあったが、疫病拡大防止視点で出場権がない選手ではなかったのだ。したがって、この試合を「なかったもの」にする必要はなかった(もちろん、事務手続きにミスがあった浦和に何がしかの罰が与えられるのはしかたがないかもしれないが)。
けれども、試合結果を覆すと言う適用はどういうことなのか。試合結果が覆ることで、(得点者などの個人成績は残ると言うが)死力を尽くして戦った両軍の試合結果が反故となり、リーグ戦を戦っているすべてのチームに影響を与えることになる。およそ、サッカー的見地から理解できない懲罰である。
このような愚かな判断は日本サッカー界では聞いたことがない。強いて言えば、1970年代に完全なアマチュアの某国立大学テレビ出演公式戦による公式戦出場停止事件(「同大学サッカー部」として視聴者参加のテレビ番組に出演しアマチュア資格抵触したとされた)、1998年のフリューゲルス消滅事件が挙げられようか。ただ上記の2事件は、決定は愚かだったと思うが、その意思決定の目的は理解できなくもなかった。けれども、今回の判断の目的はまったく理解できない。ただただ起こった事態を機械的に処理し誰も得もしない。むしろ悪しき前例にすらなり得る(撤回されたが、類似事例の愚行をJ3でも起こしかけた)。このような判断しかできなくなった日本協会とJリーグ当局が悲しい。
2.冨安健洋と堂安律が輝かなかった東京五輪
こちらでまとめました。本気で五輪をねらいにきたスペインやメキシコと個人能力で遜色ない選手を並べることができるようになったことを素直に喜びたい。冨安健洋と堂安律が期待通り活躍しなかったが故の4位止まりだった。この2人がこの痛恨を反省し、22年カタール大会、26年北中米大会、30年南米大会で復讐戦を演じてくれればそれでよい。
3.限界が見えた森保監督
上記リンクでも述べた五輪での稚拙な采配に始まり、ホームオマーン戦、中立地中国戦、敵地サウジ戦と、森保氏の自滅的采配が継続したワールドカップ最終予選。それでも、地元豪州戦、敵地ベトナム戦・オマーン戦と最小得点差で3連勝し、自動出場権獲得の2位まで立て直し。現実的には1月末から2月頭の埼玉中国戦とサウジ戦には相当な確率で2連勝できるだろうし、そこで事実上のトップ通過も確定すると思っている、森保氏が妙な采配をしなければだが。ただ、幾度も述べたように森保氏の限界も明確に見えている。
4.川崎フロンターレの連破と強豪クラブの責務
終わってみれば、2位横浜マリノスに勝ち点13の差をつけて独走体勢でJ連覇を決めた川崎フロンターレの強さが目立ったのが今シーズンだった。
とは言え、ACLで苦杯を喫したあたりは、チーム全体の疲労、ACL帰りのバブル対応など、一時期極端に戦闘能力が落ち、横浜に追撃された時もあった。シーズン半ばまでは、ACL、J1、天皇杯、ルヴァンの4冠もねらえるのではないかと言われたこともあったのだが。
しかし、中村憲剛の引退、守田英正、田中碧、三笘薫の海外移籍、大島僚太の負傷離脱などがありながら、後から後から有為な人材を輩出し、常に最強クラブとしての地位を確保してるのだから恐れ入る。来シーズンこそは、悲願のACL制覇は叶うだろうか。
余談ながら、天皇杯準決勝での敗退も、この最強クラブらしく美しかった。90分間圧倒的な攻勢をとりながら、どうしても大分トリニータの守備を破れない。それでも延長の113分、控えの小塚和季の見事な突破から小林悠がゴールをこじ開ける。その後、負傷者が出て10人になり守備強度が落ちたところでアディショナルタイムに同点に追いつかれ、最後はPK戦で敗れる。このような毅然とした姿勢の猛攻と、ただ不運としか言いようがない敗戦。強豪チームの責務の一つにはこのような美しい敗戦があるのだ。
5.浦和レッズの天皇杯制覇とロドリゲス監督の冴え
浦和レッズの天皇杯制覇も見事だった。
開始早々の関根貴大と小泉佳穂の個人技からの江坂任の先制点。その後も大分トリニータの執拗な攻撃を巧みにいなし、ほぼ勝利を決めかけたところでパワープレイから失点。その直後に、柴戸海の落ち着いたミドルシュートを槙野智章が方向を変えるヘディングで決め勝ち切った。大分ペレイラに同点弾を食らった際にマークしきれなかった柴戸が強シュートを放ち、このクラブからの退団が決まっている槙野が決めたのだから劇的だった。槙野はこのような得点を決められる選手だけに、自己顕示欲という特長を活かす意味でもDFではなくFWとして育成すべきだったのではないかと思うのは私だけだろうか。
ともあれ、明本考浩、伊藤敦樹、小泉、柴戸など、20代前半から半ばの大学出のJ2タレントを次々とJ1のトッププレイヤに仕立てるのだから、ロドリゲス監督の手腕恐るべし。さらに酒井宏樹、江坂、ショルツ、ユンカーと経験豊富な選手の補強も的確。浦和のような人気クラブが強いのは、リーグ戦の充実という意味では結構なことだ。
また天皇杯決勝をリーグ戦終了直後に持ってくるこの日程を定着させたい。過去幾度も述べてきたが元日決勝は(1) 決勝進出チームのオフが極端に短くなる、(2)テレビや新聞の露出が少ない、などメリットは少ない、などから問題が多い。それを伝統とか恒例行事などの言葉で、曖昧に継続してきたのがまずかった。準決勝をリーグ戦終了後に持ってくるかどうかは議論が分かれるだろうけれど(大分対川崎のように凄絶な準決勝を見てしまうと、今年のように2週使って準決勝、決勝と行うのも一案だろうが、選手のオフをどう見るかが課題か)。また、クラブワールドカップが復活した場合も日程調整が難しいのだが。
6.名古屋のルヴァンカップ制覇とフィッカデンティ監督の謎
元々名古屋グランパスは、ランゲラック、中谷進之介、稲垣祥、柿谷曜一朗と中央軸線は安定。攻撃ラインは前田直輝、マテウス、相馬勇紀、シュヴィルツォク、G・シャビエルと言った名手が脇を固める強豪。いかにもフィッカデンティ氏らしい堅固な守備を軸にきっちりとこのカップを制した。
ただ不思議なのは、フィッカデンティ氏がこのオフにこのクラブを去ること。やり方は守備的なことは確かだが、見ていて退屈なサッカーをするわけでもない。今の名古屋ならば、さらにフィッカデンティ氏に強力なタレント(例えば守備力とラストパスを具備したタレント)を補強すれば、十分川崎に対抗できる戦闘能力を確保できそうな気がするのだが。名古屋の資金力を考えるとがあれば十分可能に思える。FC東京時代も好成績を収めながら、野次馬には不可解な理由でクラブを去った同氏、よくわからない。
7.大学卒選手の充実
伊東純也、守田英正、古橋亨梧、三笘薫など、大学経由で日本代表の定位置をうかがう選手が増えてきた。しかも彼らは欧州のクラブで完全に中心選手として確立しつつある。
少し歴史を振り返る。Jリーグ開始前の80年代まで、多くの日本代表選手は大学卒だった。当時、JSLの各クラブがプロフェッショナルではなかったこともあり、若年層代表チームに選ばれるようなタレントでも大学進学を好む傾向が多かった。ただ、JSLと比較し大学チームはトップレベルだとしても専従の指導者不在など環境は不十分、多くの人材が伸び悩み消えていった。そう言った難しい環境下で90年代の日本代表を支えた井原正巳、中山雅史、福田正博、堀池巧、名波浩、相馬直樹などは、大学で研鑽を積みJリーグでも大成したわけだ。当時高校終了後JSLに進んだ森島寛晃、名良橋晃は例外的存在だった(ブラジルで単身プロになって帰国したカズは別格ですが)。
一方Jリーグ開幕後は、一気に高校終了後タレント達はJリーグ入りすることになる。いわゆるアトランタ五輪世代以降で、前園真聖、中田英寿、故松田直樹、田中誠、城彰二、中西英輔らである。当時服部年宏が大学を中退しジュビロ磐田に加入したのは、過渡期ゆえの事件だった。以降、大学経由のトップレベルの選手は限定的となる。もちろん、晩熟で代表に定着した坪井慶介、巻誠一郎、中村憲剛、岩政大樹、伊野波雅彦、東口順昭、武藤嘉紀と言ったタレントは継続して登場しているが。もっとも、彼らが育った大学サッカーは90年代以前とは異なり、いずれのチームにもプロフェッショナルの指導者がいて、トレーニング環境も非常に充実していたわけだが
ここに来て、伊東、守田ら多くの大学出身選手が著しい成果を挙げているのには多くの要因があろう。10代選手の適正な育成が多くの若年層チームに広がったこと、大学チームの科学的指導体制が整ったこと、Jのレベルが上がり10代選手の出場機会が限られるため能動的に大学で研鑽することを目指す選手が増えたことなど。選手育成の多様性という視点では結構なことだ。
ただ、大学チームというのは構造的な問題もある。チーム間の移籍が簡単ではないこと、大学に所属しないとチーム入りできないこと(当たり前と言われるかもしれないが、これはU18の選手が飛び級で加入できないわけで、サッカー的見地からすれば大きな問題なのだ)。またJクラブから見た競合と言う視点では、大学という存在そのものが税制優遇されて設備投資がやりやすいと言う不公平感もある。これらを含めて、日本サッカー界は一層合理的な強化体制をどうとっていくのか。
8. 残念だった女子代表
多くの競技が好成績を収めた東京五輪で、女子サッカーは芳しい成績ではなかった。
大会中2つ文章を書いたが、最大の要因は高倉監督の能力が足りなかったと言うことだろう。これは2019年のワールドカップでも顕在化していたことで、ワールドカップ後にもっと議論されるべきだったような気がするが、女子サッカーの批評というのは、男性の私からは中々難しい(という考え方が古いのかもしれませんが)。ただし、90年代日本女子代表の中心選手として活躍し、その後指導者に転身し若年層代表監督として実績あった高倉氏に一度代表監督を任せる選択肢が間違っていたとは思えない。むしろ、このような経歴の高倉氏でうまくいかなかったことそのものが、日本サッカー界の経験と言えるのではないか。
女子サッカーは、男性と同じピッチやゴールで戦うことが普及してしまったが、本当にそれが正しかったのか。ピッチの大きさとゴールの高さを僅かでよいから小さくしていれば、単純な縦パスで裏を突くことができたり、バーすれすれのシュートをGKが止めきれない的なハプニング的な得点を減らし、判断力や技術の優れたチームに優位なレギュレーションにできたはず。その方が見せる競技としてのおもしろさを確立できたように思う。しかし、残念ながらそうはならなかった。結果、東京五輪でも大柄で頑健な選手を軸にした国が上位を占めることになってしまっている。日本が2011年を凌駕するチームを作りこの流れを止めない限り、「見せる競技」としての確立は簡単ではないかもしれない。
とは言え国内の女子サッカーの普及は少しずつ進んでいる。日本中各地域で最大の課題だった中学生年代のクラブチームの充実などもあり、選手層は着実に厚くなっている。WEリーグの将来は予断を許さないかもしれないが、多くの心あるサッカー人が前向きに問題解決に取り組んでいる。上記した日本代表への期待と矛盾するかもしれないが、少しでも女性がサッカーをプレイできる環境の充実が、結局強化の近道のようにも思えるのだが。
9. カズはどこに行く
横浜FCから下部リーグへの移籍が噂されているがどうなるのか。
「晩節を汚す」という言葉があるが、この男はこの陳腐な言葉を完全に超越してしまった。カズの全盛期だった90年代半ばにデビューした選手も皆現役を去った。指導者や評論家を目指さず一選手と言うポジションで、天命を知る年齢を遥かに超えてしまい、もう誰も何もツッコミどころではない。「そろそろ引退するのだろうな」と思って、こんな文章を商業媒体に書いたのが16年前、カズが38歳の時だった。
選手としての存在を継続することで自らをスターとして証明し続けてきたカズは、いつまで輝き続けるのだろうか。
10. 疫病禍下でのシーズン無事終了
あれこれ日本協会やJリーグ当局にイヤミを語ってきたが、疫病禍下にもかかわらず今年も難しいシーズンを無事終えることができたことに最大限の敬意を表したい。
一方で、トップリーグは何とかなったが、今年も地域リーグや全国社会人選手権など、中止を余儀なくされたメジャーな大会も少なくない。来年COVID-19がどうなるかはさておき、疫病禍3年目は極力中止となる大会を減らし、多くの人が観戦できる状態の復帰に、日本協会はもっと尽力してもらえないものか。
例えば会場来訪者の管理を容易化にするデジタルツールを日本協会が開発し全国へ展開する。例えば、百人単位の人が集まる際のガイドラインを明文化し大会運営者に提供する、など。サッカーが行えば他競技にも応用はできるはず。単一競技団体として最も潤沢な経済力を持ち、組織力にも優れる日本サッカー協会がやれることは少なくないはずだ。
日本サッカー100年の歴史でも愚かな意思決定。詳細はこちらを。
浦和レッズが、自クラブの指定公式検査を受けていないU24代表帰りの選手(代表で必要な検査実施済みでCOVID-19リスクは指定公式検査で陰性だった選手と同じ)を湘南ベルマーレ戦に出場させてしまった。ルール上は、同等の検査を受診している申請をする必要があったがそれを怠ったとのこと。本質的な要因は日本協会と浦和の間で情報の連係がうまくとられていなかったためらしい。後日その件に気がついた浦和がJリーグ当局にその件を自己申告。そのため規律委員会が3-2での湘南の勝利に終わった試合結果をくつがえし、湘南の3-0の勝利と裁定した。
試合結果をくつがえす以上は、その試合が完全に不公平な状況で行われ「なかったもの」と扱うしかない状況しか考えられない。例えば、登録不備や警告累積などで出場資格がない選手を使ったケースが考えられよう。けれども、このケースでは当該選手は適切な検査は受診済みでCOVID-19リスクは問題なかった。事務手続き不備はあったが、疫病拡大防止視点で出場権がない選手ではなかったのだ。したがって、この試合を「なかったもの」にする必要はなかった(もちろん、事務手続きにミスがあった浦和に何がしかの罰が与えられるのはしかたがないかもしれないが)。
けれども、試合結果を覆すと言う適用はどういうことなのか。試合結果が覆ることで、(得点者などの個人成績は残ると言うが)死力を尽くして戦った両軍の試合結果が反故となり、リーグ戦を戦っているすべてのチームに影響を与えることになる。およそ、サッカー的見地から理解できない懲罰である。
このような愚かな判断は日本サッカー界では聞いたことがない。強いて言えば、1970年代に完全なアマチュアの某国立大学テレビ出演公式戦による公式戦出場停止事件(「同大学サッカー部」として視聴者参加のテレビ番組に出演しアマチュア資格抵触したとされた)、1998年のフリューゲルス消滅事件が挙げられようか。ただ上記の2事件は、決定は愚かだったと思うが、その意思決定の目的は理解できなくもなかった。けれども、今回の判断の目的はまったく理解できない。ただただ起こった事態を機械的に処理し誰も得もしない。むしろ悪しき前例にすらなり得る(撤回されたが、類似事例の愚行をJ3でも起こしかけた)。このような判断しかできなくなった日本協会とJリーグ当局が悲しい。
2.冨安健洋と堂安律が輝かなかった東京五輪
こちらでまとめました。本気で五輪をねらいにきたスペインやメキシコと個人能力で遜色ない選手を並べることができるようになったことを素直に喜びたい。冨安健洋と堂安律が期待通り活躍しなかったが故の4位止まりだった。この2人がこの痛恨を反省し、22年カタール大会、26年北中米大会、30年南米大会で復讐戦を演じてくれればそれでよい。
3.限界が見えた森保監督
上記リンクでも述べた五輪での稚拙な采配に始まり、ホームオマーン戦、中立地中国戦、敵地サウジ戦と、森保氏の自滅的采配が継続したワールドカップ最終予選。それでも、地元豪州戦、敵地ベトナム戦・オマーン戦と最小得点差で3連勝し、自動出場権獲得の2位まで立て直し。現実的には1月末から2月頭の埼玉中国戦とサウジ戦には相当な確率で2連勝できるだろうし、そこで事実上のトップ通過も確定すると思っている、森保氏が妙な采配をしなければだが。ただ、幾度も述べたように森保氏の限界も明確に見えている。
選手の体調を見極められないこと、選手交代について計画性がないこと、勝っている試合のクローズが稚拙なこと。そして、五輪での最大の失敗である選手の消耗対応を反省していないこと。要は森保氏は、1試合ずつ丁寧に勝ち切る用兵が決定的にお粗末なのだ。また最近世界中で急速に発展している相手スカウティングによる用兵対応もあまりうまくない(これは本大会まで隠している可能性があったが、勝負をかけた五輪や最終予選での稚拙な采配により、隠しているのではなくできないことが明らかになってしまった)。ややこしいのは、森保氏が監督として完全に無能ではないことだ。少々守備重視で引き出しは少ないが長期のリーグ戦をしぶとく勝ち抜く能力は間違いない。今思い起こせば、アジアカップの準優勝もその長所と短所が顕在化したものだった。我々の目標はカタールでのベスト8以上、森保氏ではその実現は困難と見る。
4.川崎フロンターレの連破と強豪クラブの責務
終わってみれば、2位横浜マリノスに勝ち点13の差をつけて独走体勢でJ連覇を決めた川崎フロンターレの強さが目立ったのが今シーズンだった。
とは言え、ACLで苦杯を喫したあたりは、チーム全体の疲労、ACL帰りのバブル対応など、一時期極端に戦闘能力が落ち、横浜に追撃された時もあった。シーズン半ばまでは、ACL、J1、天皇杯、ルヴァンの4冠もねらえるのではないかと言われたこともあったのだが。
しかし、中村憲剛の引退、守田英正、田中碧、三笘薫の海外移籍、大島僚太の負傷離脱などがありながら、後から後から有為な人材を輩出し、常に最強クラブとしての地位を確保してるのだから恐れ入る。来シーズンこそは、悲願のACL制覇は叶うだろうか。
余談ながら、天皇杯準決勝での敗退も、この最強クラブらしく美しかった。90分間圧倒的な攻勢をとりながら、どうしても大分トリニータの守備を破れない。それでも延長の113分、控えの小塚和季の見事な突破から小林悠がゴールをこじ開ける。その後、負傷者が出て10人になり守備強度が落ちたところでアディショナルタイムに同点に追いつかれ、最後はPK戦で敗れる。このような毅然とした姿勢の猛攻と、ただ不運としか言いようがない敗戦。強豪チームの責務の一つにはこのような美しい敗戦があるのだ。
5.浦和レッズの天皇杯制覇とロドリゲス監督の冴え
浦和レッズの天皇杯制覇も見事だった。
開始早々の関根貴大と小泉佳穂の個人技からの江坂任の先制点。その後も大分トリニータの執拗な攻撃を巧みにいなし、ほぼ勝利を決めかけたところでパワープレイから失点。その直後に、柴戸海の落ち着いたミドルシュートを槙野智章が方向を変えるヘディングで決め勝ち切った。大分ペレイラに同点弾を食らった際にマークしきれなかった柴戸が強シュートを放ち、このクラブからの退団が決まっている槙野が決めたのだから劇的だった。槙野はこのような得点を決められる選手だけに、自己顕示欲という特長を活かす意味でもDFではなくFWとして育成すべきだったのではないかと思うのは私だけだろうか。
ともあれ、明本考浩、伊藤敦樹、小泉、柴戸など、20代前半から半ばの大学出のJ2タレントを次々とJ1のトッププレイヤに仕立てるのだから、ロドリゲス監督の手腕恐るべし。さらに酒井宏樹、江坂、ショルツ、ユンカーと経験豊富な選手の補強も的確。浦和のような人気クラブが強いのは、リーグ戦の充実という意味では結構なことだ。
また天皇杯決勝をリーグ戦終了直後に持ってくるこの日程を定着させたい。過去幾度も述べてきたが元日決勝は(1) 決勝進出チームのオフが極端に短くなる、(2)テレビや新聞の露出が少ない、などメリットは少ない、などから問題が多い。それを伝統とか恒例行事などの言葉で、曖昧に継続してきたのがまずかった。準決勝をリーグ戦終了後に持ってくるかどうかは議論が分かれるだろうけれど(大分対川崎のように凄絶な準決勝を見てしまうと、今年のように2週使って準決勝、決勝と行うのも一案だろうが、選手のオフをどう見るかが課題か)。また、クラブワールドカップが復活した場合も日程調整が難しいのだが。
6.名古屋のルヴァンカップ制覇とフィッカデンティ監督の謎
元々名古屋グランパスは、ランゲラック、中谷進之介、稲垣祥、柿谷曜一朗と中央軸線は安定。攻撃ラインは前田直輝、マテウス、相馬勇紀、シュヴィルツォク、G・シャビエルと言った名手が脇を固める強豪。いかにもフィッカデンティ氏らしい堅固な守備を軸にきっちりとこのカップを制した。
ただ不思議なのは、フィッカデンティ氏がこのオフにこのクラブを去ること。やり方は守備的なことは確かだが、見ていて退屈なサッカーをするわけでもない。今の名古屋ならば、さらにフィッカデンティ氏に強力なタレント(例えば守備力とラストパスを具備したタレント)を補強すれば、十分川崎に対抗できる戦闘能力を確保できそうな気がするのだが。名古屋の資金力を考えるとがあれば十分可能に思える。FC東京時代も好成績を収めながら、野次馬には不可解な理由でクラブを去った同氏、よくわからない。
7.大学卒選手の充実
伊東純也、守田英正、古橋亨梧、三笘薫など、大学経由で日本代表の定位置をうかがう選手が増えてきた。しかも彼らは欧州のクラブで完全に中心選手として確立しつつある。
少し歴史を振り返る。Jリーグ開始前の80年代まで、多くの日本代表選手は大学卒だった。当時、JSLの各クラブがプロフェッショナルではなかったこともあり、若年層代表チームに選ばれるようなタレントでも大学進学を好む傾向が多かった。ただ、JSLと比較し大学チームはトップレベルだとしても専従の指導者不在など環境は不十分、多くの人材が伸び悩み消えていった。そう言った難しい環境下で90年代の日本代表を支えた井原正巳、中山雅史、福田正博、堀池巧、名波浩、相馬直樹などは、大学で研鑽を積みJリーグでも大成したわけだ。当時高校終了後JSLに進んだ森島寛晃、名良橋晃は例外的存在だった(ブラジルで単身プロになって帰国したカズは別格ですが)。
一方Jリーグ開幕後は、一気に高校終了後タレント達はJリーグ入りすることになる。いわゆるアトランタ五輪世代以降で、前園真聖、中田英寿、故松田直樹、田中誠、城彰二、中西英輔らである。当時服部年宏が大学を中退しジュビロ磐田に加入したのは、過渡期ゆえの事件だった。以降、大学経由のトップレベルの選手は限定的となる。もちろん、晩熟で代表に定着した坪井慶介、巻誠一郎、中村憲剛、岩政大樹、伊野波雅彦、東口順昭、武藤嘉紀と言ったタレントは継続して登場しているが。もっとも、彼らが育った大学サッカーは90年代以前とは異なり、いずれのチームにもプロフェッショナルの指導者がいて、トレーニング環境も非常に充実していたわけだが
ここに来て、伊東、守田ら多くの大学出身選手が著しい成果を挙げているのには多くの要因があろう。10代選手の適正な育成が多くの若年層チームに広がったこと、大学チームの科学的指導体制が整ったこと、Jのレベルが上がり10代選手の出場機会が限られるため能動的に大学で研鑽することを目指す選手が増えたことなど。選手育成の多様性という視点では結構なことだ。
ただ、大学チームというのは構造的な問題もある。チーム間の移籍が簡単ではないこと、大学に所属しないとチーム入りできないこと(当たり前と言われるかもしれないが、これはU18の選手が飛び級で加入できないわけで、サッカー的見地からすれば大きな問題なのだ)。またJクラブから見た競合と言う視点では、大学という存在そのものが税制優遇されて設備投資がやりやすいと言う不公平感もある。これらを含めて、日本サッカー界は一層合理的な強化体制をどうとっていくのか。
8. 残念だった女子代表
多くの競技が好成績を収めた東京五輪で、女子サッカーは芳しい成績ではなかった。
大会中2つ文章を書いたが、最大の要因は高倉監督の能力が足りなかったと言うことだろう。これは2019年のワールドカップでも顕在化していたことで、ワールドカップ後にもっと議論されるべきだったような気がするが、女子サッカーの批評というのは、男性の私からは中々難しい(という考え方が古いのかもしれませんが)。ただし、90年代日本女子代表の中心選手として活躍し、その後指導者に転身し若年層代表監督として実績あった高倉氏に一度代表監督を任せる選択肢が間違っていたとは思えない。むしろ、このような経歴の高倉氏でうまくいかなかったことそのものが、日本サッカー界の経験と言えるのではないか。
女子サッカーは、男性と同じピッチやゴールで戦うことが普及してしまったが、本当にそれが正しかったのか。ピッチの大きさとゴールの高さを僅かでよいから小さくしていれば、単純な縦パスで裏を突くことができたり、バーすれすれのシュートをGKが止めきれない的なハプニング的な得点を減らし、判断力や技術の優れたチームに優位なレギュレーションにできたはず。その方が見せる競技としてのおもしろさを確立できたように思う。しかし、残念ながらそうはならなかった。結果、東京五輪でも大柄で頑健な選手を軸にした国が上位を占めることになってしまっている。日本が2011年を凌駕するチームを作りこの流れを止めない限り、「見せる競技」としての確立は簡単ではないかもしれない。
とは言え国内の女子サッカーの普及は少しずつ進んでいる。日本中各地域で最大の課題だった中学生年代のクラブチームの充実などもあり、選手層は着実に厚くなっている。WEリーグの将来は予断を許さないかもしれないが、多くの心あるサッカー人が前向きに問題解決に取り組んでいる。上記した日本代表への期待と矛盾するかもしれないが、少しでも女性がサッカーをプレイできる環境の充実が、結局強化の近道のようにも思えるのだが。
9. カズはどこに行く
横浜FCから下部リーグへの移籍が噂されているがどうなるのか。
「晩節を汚す」という言葉があるが、この男はこの陳腐な言葉を完全に超越してしまった。カズの全盛期だった90年代半ばにデビューした選手も皆現役を去った。指導者や評論家を目指さず一選手と言うポジションで、天命を知る年齢を遥かに超えてしまい、もう誰も何もツッコミどころではない。「そろそろ引退するのだろうな」と思って、こんな文章を商業媒体に書いたのが16年前、カズが38歳の時だった。
カズの選手としての経歴は終わりに近づいてきている。そして、カズは我々の夢を再三叶えてくれてきた。あれから16年、4ワールドカップを経た。この文章を書いた直後の高校選手権は乾貴士を擁した野洲高校が優勝したのだから、大昔だなw。
選手としての存在を継続することで自らをスターとして証明し続けてきたカズは、いつまで輝き続けるのだろうか。
10. 疫病禍下でのシーズン無事終了
あれこれ日本協会やJリーグ当局にイヤミを語ってきたが、疫病禍下にもかかわらず今年も難しいシーズンを無事終えることができたことに最大限の敬意を表したい。
一方で、トップリーグは何とかなったが、今年も地域リーグや全国社会人選手権など、中止を余儀なくされたメジャーな大会も少なくない。来年COVID-19がどうなるかはさておき、疫病禍3年目は極力中止となる大会を減らし、多くの人が観戦できる状態の復帰に、日本協会はもっと尽力してもらえないものか。
例えば会場来訪者の管理を容易化にするデジタルツールを日本協会が開発し全国へ展開する。例えば、百人単位の人が集まる際のガイドラインを明文化し大会運営者に提供する、など。サッカーが行えば他競技にも応用はできるはず。単一競技団体として最も潤沢な経済力を持ち、組織力にも優れる日本サッカー協会がやれることは少なくないはずだ。
2021年ベストイレブン
今年はとにかく冨安と堂安は選びません。東京五輪で勝てなかったのは、この2人がすべてを出し切ってくれなかったからw。そういう条件の下、W杯予選、東京五輪、Jリーグを見て選んだベスト11です。
GK 谷晃生
あの五輪ニュージーランド戦のPK戦見たら、今年は谷しかいないでしょう。経験が重要なポジションだが、どこまで権田の域にせまれるか。
DF 菊池流帆
球際の強さ、特に突破されそうになったところでの粘り強い対応がすばらしい。空中戦の強さと合わせ、代表でも試したい選手。
DF 吉田麻也
五輪でもW杯予選でも、どんなに疲労していても忘れないすばらしいリーダシップに敬意を表したい。先日の敵地オマーン戦直後の監督のようなインタビューは感動的だった。
DF 板倉滉
五輪で見せた粘り強い守備には正直驚いた。国内でプレイしていた際は1対1の淡白さが課題だったのだがすばらしい成長だ。代表で麻也から定位置を奪うことができるかどうか。
DF 明本考浩
衰えない脚力、豊富な運動量、様々なポジションをこなす多様性、貴重な戦える左足タレントとして期待。東京五輪代表選考も考慮してよかったのではないか。
MF 稲垣祥
ルヴァンカップ制覇時に代表される中盤での献身性。30数年前の帝京高校先輩の宮内聡を彷彿させる。このような戦えるタレントは代表でも貴重だと思うのだが。
MF 遠藤航
東京五輪3位決定戦は疲労困憊で直接の敗因となったが、これは森保氏が遠藤航の疲労を何も考慮しない采配を行ったから。その疲労困憊下でも戦い続けた姿勢に敬服。
MF 田中碧
ベッケンバウアとかファルカンとかピルロとかシャビとかイニエスタとかデ・ブライネの域を目指してほしいのですが。
FW 伊東純也
2021年日本代表のエースと呼ぶに相応しいプレイ振り。この切れ味をそのままワールドカップ本大会に持ち込んでほしい。
FW 古橋亨梧
抜け出しの速さを見せながら正確にボールを扱えるのが魅力。セルティックでゴールを多産。Jのレベルの高さを示すとともに、さらなるステップアップも望める地位を確保した。
FW 前田大然
トップスピードに乗りながらちょっとした踏み替えやボールタッチができるタレント、Jの得点王を獲得し、古橋を追うようにセルティックに移籍。あの傍若無人な突破に期待。
GK 谷晃生
あの五輪ニュージーランド戦のPK戦見たら、今年は谷しかいないでしょう。経験が重要なポジションだが、どこまで権田の域にせまれるか。
DF 菊池流帆
球際の強さ、特に突破されそうになったところでの粘り強い対応がすばらしい。空中戦の強さと合わせ、代表でも試したい選手。
DF 吉田麻也
五輪でもW杯予選でも、どんなに疲労していても忘れないすばらしいリーダシップに敬意を表したい。先日の敵地オマーン戦直後の監督のようなインタビューは感動的だった。
DF 板倉滉
五輪で見せた粘り強い守備には正直驚いた。国内でプレイしていた際は1対1の淡白さが課題だったのだがすばらしい成長だ。代表で麻也から定位置を奪うことができるかどうか。
DF 明本考浩
衰えない脚力、豊富な運動量、様々なポジションをこなす多様性、貴重な戦える左足タレントとして期待。東京五輪代表選考も考慮してよかったのではないか。
MF 稲垣祥
ルヴァンカップ制覇時に代表される中盤での献身性。30数年前の帝京高校先輩の宮内聡を彷彿させる。このような戦えるタレントは代表でも貴重だと思うのだが。
MF 遠藤航
東京五輪3位決定戦は疲労困憊で直接の敗因となったが、これは森保氏が遠藤航の疲労を何も考慮しない采配を行ったから。その疲労困憊下でも戦い続けた姿勢に敬服。
MF 田中碧
ベッケンバウアとかファルカンとかピルロとかシャビとかイニエスタとかデ・ブライネの域を目指してほしいのですが。
FW 伊東純也
2021年日本代表のエースと呼ぶに相応しいプレイ振り。この切れ味をそのままワールドカップ本大会に持ち込んでほしい。
FW 古橋亨梧
抜け出しの速さを見せながら正確にボールを扱えるのが魅力。セルティックでゴールを多産。Jのレベルの高さを示すとともに、さらなるステップアップも望める地位を確保した。
FW 前田大然
トップスピードに乗りながらちょっとした踏み替えやボールタッチができるタレント、Jの得点王を獲得し、古橋を追うようにセルティックに移籍。あの傍若無人な突破に期待。
2021年11月21日
私はベガルタ仙台の将来を楽観視している
J2降格が決定した。
今の感情を日本語化すると、どうなんだろう。空虚感と言うのだろうか。
類似の感情は幾度か経験ある。2009年シーズンの入替戦の磐田、2003年シーズンの降格決定、1993年のドーハのアルアリスタジアム。もちろん悔しいし悲しい、胸が張り裂けそうだ。でも、胸は張り裂けそうだが、物理的に何かを失ったわけではない。誰かが肉体的に傷ついたり、もちろん命を落としたりもしていない。多額の資産を失ったわけではない。
改めて思う。それでもここまで感情が揺さぶられるのだ。改めてサッカーのすばらしさを感じている。
今シーズン、ベガルタ仙台にとって最も重要な活動は、将来に渡りクラブとして存続できる体制再構築だった。そして、クラブは昨シーズンの債務超過問題を1年前倒しで来年度までに解決する目鼻を立てた。佐々木社長以下、ベガルタ仙台はその最大目標はしっかりこなしてくれた。また地味ながら、スポンサの増加や、広報活動の充実など、過去思うように進められなかった活動も、一定以上の成果を出している。
そして今シーズン、2番目の目標はJ1残留だった。残念ながらそれに失敗したわけだ。
J2降格は、クラブとしては衝撃的な出来事だが、クラブを未来永劫存続させるための、最優先とされる活動は成功しつつあることは忘れてはいけない。もちろん、この降格に伴い、直接ベガルタに関与している方々の収入などに残念な影響がある恐れはある。そのような方々に一介のサポータが無責任なことは語れないが、もっとも重要なのはクラブの永続的存続なのだ。
元々、J1クラブの中では経営基盤の小さいクラブ。戦闘能力が優れた選手を集められているわけではない。また、上記した債務超過問題もあり、前向きな投資(特に補強面)が行いづらい状況もあった。数年前より改善されているとは言え若年層チームからの選手補強も、まだまだ不十分だ。
その中で、約10年前に我がクラブで格段の成果を残し、五輪代表監督としても成果を見せた手倉森氏に託した今シーズン。結果は出なかった。
J1残留に失敗したチーム戦略での失敗要素は、いくつも挙げられる。
4-2-2-2を基本布陣としたが、いわゆる攻撃的サイドMFは、関口大老と新人の加藤以外のタレントは機能しなかった。移籍加入した氣田と秋山、シーズン中チームを去ったクエンカとマルチノス、潜在力は高そうだが負傷ばかりのオッティ。今シーズンも目立った活躍できなかったユース出身の至宝佐々木匠。シーズン前期待したタレントの多くが機能しなかった。終盤、中原や西村をこの位置に起用し機能させるに成功したのは確かだが、あまりに泥縄だった。湘南に先制点を許した場面、敵主将の右MF岡本がまったくフリーで前線進出しているのに、左サイドMFの西村は遥か彼方に位置取りしていたのが典型だった。
中盤戦で、引き分けられる試合にもかかわらず、試合終盤に無理に勝ちを狙いに行き勝ち点を失ったのも痛かった。敵地札幌戦や、ユアテック福岡戦、清水戦がその典型。開幕直後は、様々な要因でチーム力が上がらず惨敗を繰り返す時期があったが、4月以降はいずれのチームと相応の戦いができるようになっていた。この3試合の終盤を丁寧に戦い、1試合でも勝ち点1を拾うことができていれば終盤戦の様相は随分と変わっていたはずだ。
終盤、残留争いチームとの直接対決にことごとく敗れたわけだが、一方で神戸や名古屋など上位を争うチームとは相応の戦いができていた。これは最近の潮流となっているスカウティングによる各試合の対策が不十分だったとしか言いようがない。
しかし、上記のような戦略不備は、一方で将来を見据えた各選手の成長・チームとしての基盤戦闘能力向上に寄与した可能性もある。来シーズンはJ2での戦いを余儀なくされるし、今シーズン経験を積んだ中心選手をどこまで保持できるかの問題もあるのだが。
J2の戦いは非常に厳しいものがあるだろう。J1経験あるクラブがJ3に降格する事例もあるし、短期のJ1復帰が容易ではないことは自明のことだ。またCOVID-19影響で、基盤観客動員数が大幅に減ってしまった回復からの再スタートとなる。クラブ経営、若年層育成、補強、やらなければならないことは無数にあるだろう。、多くの企業の合同経営体制、曖昧な責任体制など、経営の根底にかかわる問題も山積している。多くのサポータが、悲観的な発言をしているのは理解できなくもない。
けれども、私は楽観的だ。何故ならば、上記した通りベガルタ仙台の経営層は、今シーズン最大の難題を解決しつつあるからだ。直近の問題に対し、優先度をつけた実績を挙げている経営陣は信頼できる。
ともあれ、サッカーなのだ。目先の試合に勝つことが重要なのは言うまでもない。まず今シーズンのまずは残り2試合、どのような戦いを行い、結果を出せるか。まずはそこに注目したい。この2試合をしっかり戦うことができるかどうかは、来シーズン、いや将来のベガルタにとって重要なはずだ。
改めて、12年に渡りJ1を維持し、ACLも経験させてくれたすべてのベガルタ関係者に感謝したい。
今シーズンも、ここまで結果も内容も思わしくない試合が多かったが、私としてはサポータ冥利に尽きる経験を積むことができた。残り2試合を丹念に戦うベガルタを楽しみにしている。そして来期は来期で、じっくりとベガルタを楽しめる。
故郷にプロサッカークラブがあり、毎週末その奮闘を楽しむことができる。どんなに空虚感に襲われても、私は幸せだ。
今の感情を日本語化すると、どうなんだろう。空虚感と言うのだろうか。
類似の感情は幾度か経験ある。2009年シーズンの入替戦の磐田、2003年シーズンの降格決定、1993年のドーハのアルアリスタジアム。もちろん悔しいし悲しい、胸が張り裂けそうだ。でも、胸は張り裂けそうだが、物理的に何かを失ったわけではない。誰かが肉体的に傷ついたり、もちろん命を落としたりもしていない。多額の資産を失ったわけではない。
改めて思う。それでもここまで感情が揺さぶられるのだ。改めてサッカーのすばらしさを感じている。
今シーズン、ベガルタ仙台にとって最も重要な活動は、将来に渡りクラブとして存続できる体制再構築だった。そして、クラブは昨シーズンの債務超過問題を1年前倒しで来年度までに解決する目鼻を立てた。佐々木社長以下、ベガルタ仙台はその最大目標はしっかりこなしてくれた。また地味ながら、スポンサの増加や、広報活動の充実など、過去思うように進められなかった活動も、一定以上の成果を出している。
そして今シーズン、2番目の目標はJ1残留だった。残念ながらそれに失敗したわけだ。
J2降格は、クラブとしては衝撃的な出来事だが、クラブを未来永劫存続させるための、最優先とされる活動は成功しつつあることは忘れてはいけない。もちろん、この降格に伴い、直接ベガルタに関与している方々の収入などに残念な影響がある恐れはある。そのような方々に一介のサポータが無責任なことは語れないが、もっとも重要なのはクラブの永続的存続なのだ。
元々、J1クラブの中では経営基盤の小さいクラブ。戦闘能力が優れた選手を集められているわけではない。また、上記した債務超過問題もあり、前向きな投資(特に補強面)が行いづらい状況もあった。数年前より改善されているとは言え若年層チームからの選手補強も、まだまだ不十分だ。
その中で、約10年前に我がクラブで格段の成果を残し、五輪代表監督としても成果を見せた手倉森氏に託した今シーズン。結果は出なかった。
J1残留に失敗したチーム戦略での失敗要素は、いくつも挙げられる。
4-2-2-2を基本布陣としたが、いわゆる攻撃的サイドMFは、関口大老と新人の加藤以外のタレントは機能しなかった。移籍加入した氣田と秋山、シーズン中チームを去ったクエンカとマルチノス、潜在力は高そうだが負傷ばかりのオッティ。今シーズンも目立った活躍できなかったユース出身の至宝佐々木匠。シーズン前期待したタレントの多くが機能しなかった。終盤、中原や西村をこの位置に起用し機能させるに成功したのは確かだが、あまりに泥縄だった。湘南に先制点を許した場面、敵主将の右MF岡本がまったくフリーで前線進出しているのに、左サイドMFの西村は遥か彼方に位置取りしていたのが典型だった。
中盤戦で、引き分けられる試合にもかかわらず、試合終盤に無理に勝ちを狙いに行き勝ち点を失ったのも痛かった。敵地札幌戦や、ユアテック福岡戦、清水戦がその典型。開幕直後は、様々な要因でチーム力が上がらず惨敗を繰り返す時期があったが、4月以降はいずれのチームと相応の戦いができるようになっていた。この3試合の終盤を丁寧に戦い、1試合でも勝ち点1を拾うことができていれば終盤戦の様相は随分と変わっていたはずだ。
終盤、残留争いチームとの直接対決にことごとく敗れたわけだが、一方で神戸や名古屋など上位を争うチームとは相応の戦いができていた。これは最近の潮流となっているスカウティングによる各試合の対策が不十分だったとしか言いようがない。
しかし、上記のような戦略不備は、一方で将来を見据えた各選手の成長・チームとしての基盤戦闘能力向上に寄与した可能性もある。来シーズンはJ2での戦いを余儀なくされるし、今シーズン経験を積んだ中心選手をどこまで保持できるかの問題もあるのだが。
J2の戦いは非常に厳しいものがあるだろう。J1経験あるクラブがJ3に降格する事例もあるし、短期のJ1復帰が容易ではないことは自明のことだ。またCOVID-19影響で、基盤観客動員数が大幅に減ってしまった回復からの再スタートとなる。クラブ経営、若年層育成、補強、やらなければならないことは無数にあるだろう。、多くの企業の合同経営体制、曖昧な責任体制など、経営の根底にかかわる問題も山積している。多くのサポータが、悲観的な発言をしているのは理解できなくもない。
けれども、私は楽観的だ。何故ならば、上記した通りベガルタ仙台の経営層は、今シーズン最大の難題を解決しつつあるからだ。直近の問題に対し、優先度をつけた実績を挙げている経営陣は信頼できる。
ともあれ、サッカーなのだ。目先の試合に勝つことが重要なのは言うまでもない。まず今シーズンのまずは残り2試合、どのような戦いを行い、結果を出せるか。まずはそこに注目したい。この2試合をしっかり戦うことができるかどうかは、来シーズン、いや将来のベガルタにとって重要なはずだ。
改めて、12年に渡りJ1を維持し、ACLも経験させてくれたすべてのベガルタ関係者に感謝したい。
今シーズンも、ここまで結果も内容も思わしくない試合が多かったが、私としてはサポータ冥利に尽きる経験を積むことができた。残り2試合を丹念に戦うベガルタを楽しみにしている。そして来期は来期で、じっくりとベガルタを楽しめる。
故郷にプロサッカークラブがあり、毎週末その奮闘を楽しむことができる。どんなに空虚感に襲われても、私は幸せだ。
2021年11月15日
スリルあふれる優雅な娯楽が継続(敵地オマーン戦前夜2021)
ワールドカップ最終予選。敵地ベトナム戦に1-0で渋く勝ち切り、明日は最終予選の折り返し点を迎え、明日は初戦で苦杯を喫したオマーンとのアウェイゲーム。豪州、ベトナムに2連勝して勝ち点勘定は回復してきたわけだが、厄介な中東の敵地戦とは言え、2位以内を目指すためには勝ち点3が欲しいところ。不運な航空機トラブルなどに襲われたベトナム戦だが、そこからオマーンに移動し、選手達の体調をどのくらい整えられるのか。オマーンは、前節中国のホーム戦を疫病禍対応のため比較的近隣のUAEで行えたこともあり、体調管理は当方より有利だろうが、前回の吹田の失態を取り返せるか。
以前述べたように、私は森保氏は日本代表監督に不適任だと確信している。
東京五輪でいたずらに遠藤航と田中碧を消耗させ、Jリーグで猛威を奮っていた三笘や上田や前田を有効に機能させられなかった。加えて、リードしている試合での試合終盤の采配は稚拙そのものだった。
改めて、W杯最終予選の序盤3試合を振り返っても、森保氏の不首尾が目立った。
ホームオマーン戦、CBと守備的MFにバックアップ不在の状況を放置して試合に臨むと言う、いい加減な準備でホームで惨敗。疲弊したベテランサイドバックを交代させない消極的采配は論外だった。
中立地中国戦、相手が弱かったこともあり内容は圧倒したが、試合終盤のクローズが適当でのかろうじての勝利。負傷者が出たところで、場当たり的な交代策を行い、フレッシュな選手を並べる努力を怠った。
敵地サウジ戦、丁寧に守備的に戦ったことは悪くなかったが、体調が整わずミスを連発した柴崎を放置し、その柴崎の致命的なミスであり得ない失点を食らう。さらにその失点後の采配もおよそ非合理的だった。
何度か嫌味を語ったが、森保氏は、1試合、1試合を勝ち切るために丹念に几帳面に工夫することができないのだ。選手の調子を見極めたり、試合の流れを読み選手交代を行うなど、柔軟な采配ができないのだ。サンフレッチェでの成果を含め、よい選手を呼び取捨選択を継続しチームを積み上げていくことについては、中々の手腕を見せているのだが。
そして追い込まれた状態下、迎えた埼玉豪州戦。
スタメンに驚いた。遠藤航、守田、田中碧の3人の守備的MFを並べてきたからだ。これまで、東京五輪でもW杯予選でも準備試合でも、執拗に4-2-3-1にこだわってきた森保氏に何が起こったのかと思った。ツッコミどころ満載のキックオフ前、「そういう事やれるならもっと早くやれよ」とか「中盤後方の控えがいないじゃないか」とか「結局田中碧をトップ下に使う4-2-3-1だったりして」とかw。
キックオフ。どうやら、航がアンカーで碧と守田がインサイドMFの模様。ただし、碧は航と並んで後方に引くことが多く、守田が右サイドに張り出し気味。と思ったら、守田が左に回る時もある。前線も伊東純也は右前方に張り出すことが多いが、左の南野は中に絞り気味。トップの大迫が引き気味に位置取ることも多い。左右非対称でかなり流動的なやり方だった。
序盤から幾度も好機をつかむ。これは布陣変更が奏功したと言うよりは、中盤にボールを刈り取れる選手、パスを出せる選手を3人並べたことで、前線によいパスが供給できるようになったことが大きかったように思える。そして、左サイドのうまい崩しから、田中碧が先制弾を決める。そもそも、Jで圧倒的な存在感を見せ、五輪代表でも格段のプレイを見せていた田中碧。最終予選4試合目にして、初めて起用されたところそのものが、森保氏の代表監督不適任を示す証左だろう。
その後いくつも決定機を得ながら決めきれずにいたところで、後半速攻から左サイドを簡単に崩され直接FKから同点にされる。これは前線からの組織守備をかわされ、(日本から見て)左サイドに拠点を作られかけたところで、長友が意味不明の深追いを行うというミスからだった。長友は前半にも、麻也からのロングボールに安易に攻めかけ、同様に裏を突かれて豪州にポスト弾を許している。守田があちらこちらに出す変則守備網が災いしたこともあろうが、いずれもリードしている状況だっただけに、このベテランDFのミスは残念だった。
最悪の事態も予想される中、麻也のロングボールを受けたジャガー浅野が強引なドリブルで崩し、自殺点を誘引。ヤレヤレ感満載の歓喜とあいなった。中々2点目をとれない攻撃組織の不備、長友の決定的ミスに代表される守備組織の曖昧さ。それでも、終盤までの戦いで豪州の守備陣は相当疲弊していたのだろう、麻也の性格だが常識的なロングボールを、浅野が正確な個人技で受けてターン、独特の加速ドリブルで振り切ると言う単純な攻撃で崩すことができた。各選手の圧倒的個人能力で、豪州に勝ち切ることができる時代が来たと言う意味でも感慨深い勝利だった。
もっとも、これだけ個人能力の高い選手を揃えながら、勝ち点を揃えられないのだから、森保氏の監督継続は残念なのだが。
そして一息ついたところで迎えたベトナム戦。
引き続き採用した守田が左サイドに張り出す4-3-3。序盤に南野の個人技から伊東が決めて先制に成功。前半終了間際に、伊東がスーペルゴラッソとしか言いようがない一撃があったが、謎のVAR介入でノーゴール。後半も手変え品変え攻め込むが、どうしても2点目が奪えない。共通理解による攻撃の連動性が少ないこと、前線の選手が失点を怖がり強引な突破を自粛したこと、ベトナムの中盤選手が日本の起点となる田中碧や冨安からの展開を必死に押さえたことなど、要因は複数に渡るのだが。
ただ、麻也と冨安が中央を固め、遠藤航がその前を見張り、前線の選手も攻撃から守備への切り替えが非常に早いので、危ない場面は皆無。終盤には、無理に2点をとりに行かず、田中碧→柴崎(短い時間ならば柴崎も守備で破綻はきたさない)、守田→原口と、経験豊富なベテランで守りを固め、堅実なクローズが行われた。東京五輪や最終予選序盤に、およそ非合理的な試合終盤の采配を連発した森保氏とは思えない丁寧な采配だった。
もちろん、体調がよいとはとても思えない大迫や長友の拘泥など、いかにも森保氏らしい硬直采配も見受けられた。それでも、まったくベトナムに好機をつかませることなく重苦しい1-0での勝ち切り。疫病禍により満員とは言えなかったが、ベトナムのホームらしい熱狂下で、まったく危ない場面を作らせないのだから大したものだ。
オマーン戦は守田が出場停止。最終予選序盤までの森保氏ならば、4-2-2-2に戻したり、守田の代わりに柴崎を起用したり、硬直した采配を見せていたことだろう。しかし、豪州戦の守備的MF3人起用や、ベトナム戦の終盤の堅実なクローズを見ていると、かたくなに学習を拒絶していた森保氏にも少し変化が見受けられる。野心あふれる若い前線の選手を多く選考した今回の遠征だが、森保氏がどこまで柔軟な采配を振るってくれるか。
田嶋幸三会長が、日本代表の確実なワールドカップ出場、上位進出よりも、森保氏の代表監督留任に拘泥する理由はよくわからない。ともあれ、しばらく森保氏が代表監督を継続するのだろう。おかげでスリルあふれる優雅な娯楽が継続する。
以前述べたように、私は森保氏は日本代表監督に不適任だと確信している。
東京五輪でいたずらに遠藤航と田中碧を消耗させ、Jリーグで猛威を奮っていた三笘や上田や前田を有効に機能させられなかった。加えて、リードしている試合での試合終盤の采配は稚拙そのものだった。
改めて、W杯最終予選の序盤3試合を振り返っても、森保氏の不首尾が目立った。
ホームオマーン戦、CBと守備的MFにバックアップ不在の状況を放置して試合に臨むと言う、いい加減な準備でホームで惨敗。疲弊したベテランサイドバックを交代させない消極的采配は論外だった。
中立地中国戦、相手が弱かったこともあり内容は圧倒したが、試合終盤のクローズが適当でのかろうじての勝利。負傷者が出たところで、場当たり的な交代策を行い、フレッシュな選手を並べる努力を怠った。
敵地サウジ戦、丁寧に守備的に戦ったことは悪くなかったが、体調が整わずミスを連発した柴崎を放置し、その柴崎の致命的なミスであり得ない失点を食らう。さらにその失点後の采配もおよそ非合理的だった。
何度か嫌味を語ったが、森保氏は、1試合、1試合を勝ち切るために丹念に几帳面に工夫することができないのだ。選手の調子を見極めたり、試合の流れを読み選手交代を行うなど、柔軟な采配ができないのだ。サンフレッチェでの成果を含め、よい選手を呼び取捨選択を継続しチームを積み上げていくことについては、中々の手腕を見せているのだが。
そして追い込まれた状態下、迎えた埼玉豪州戦。
スタメンに驚いた。遠藤航、守田、田中碧の3人の守備的MFを並べてきたからだ。これまで、東京五輪でもW杯予選でも準備試合でも、執拗に4-2-3-1にこだわってきた森保氏に何が起こったのかと思った。ツッコミどころ満載のキックオフ前、「そういう事やれるならもっと早くやれよ」とか「中盤後方の控えがいないじゃないか」とか「結局田中碧をトップ下に使う4-2-3-1だったりして」とかw。
キックオフ。どうやら、航がアンカーで碧と守田がインサイドMFの模様。ただし、碧は航と並んで後方に引くことが多く、守田が右サイドに張り出し気味。と思ったら、守田が左に回る時もある。前線も伊東純也は右前方に張り出すことが多いが、左の南野は中に絞り気味。トップの大迫が引き気味に位置取ることも多い。左右非対称でかなり流動的なやり方だった。
序盤から幾度も好機をつかむ。これは布陣変更が奏功したと言うよりは、中盤にボールを刈り取れる選手、パスを出せる選手を3人並べたことで、前線によいパスが供給できるようになったことが大きかったように思える。そして、左サイドのうまい崩しから、田中碧が先制弾を決める。そもそも、Jで圧倒的な存在感を見せ、五輪代表でも格段のプレイを見せていた田中碧。最終予選4試合目にして、初めて起用されたところそのものが、森保氏の代表監督不適任を示す証左だろう。
その後いくつも決定機を得ながら決めきれずにいたところで、後半速攻から左サイドを簡単に崩され直接FKから同点にされる。これは前線からの組織守備をかわされ、(日本から見て)左サイドに拠点を作られかけたところで、長友が意味不明の深追いを行うというミスからだった。長友は前半にも、麻也からのロングボールに安易に攻めかけ、同様に裏を突かれて豪州にポスト弾を許している。守田があちらこちらに出す変則守備網が災いしたこともあろうが、いずれもリードしている状況だっただけに、このベテランDFのミスは残念だった。
最悪の事態も予想される中、麻也のロングボールを受けたジャガー浅野が強引なドリブルで崩し、自殺点を誘引。ヤレヤレ感満載の歓喜とあいなった。中々2点目をとれない攻撃組織の不備、長友の決定的ミスに代表される守備組織の曖昧さ。それでも、終盤までの戦いで豪州の守備陣は相当疲弊していたのだろう、麻也の性格だが常識的なロングボールを、浅野が正確な個人技で受けてターン、独特の加速ドリブルで振り切ると言う単純な攻撃で崩すことができた。各選手の圧倒的個人能力で、豪州に勝ち切ることができる時代が来たと言う意味でも感慨深い勝利だった。
もっとも、これだけ個人能力の高い選手を揃えながら、勝ち点を揃えられないのだから、森保氏の監督継続は残念なのだが。
そして一息ついたところで迎えたベトナム戦。
引き続き採用した守田が左サイドに張り出す4-3-3。序盤に南野の個人技から伊東が決めて先制に成功。前半終了間際に、伊東がスーペルゴラッソとしか言いようがない一撃があったが、謎のVAR介入でノーゴール。後半も手変え品変え攻め込むが、どうしても2点目が奪えない。共通理解による攻撃の連動性が少ないこと、前線の選手が失点を怖がり強引な突破を自粛したこと、ベトナムの中盤選手が日本の起点となる田中碧や冨安からの展開を必死に押さえたことなど、要因は複数に渡るのだが。
ただ、麻也と冨安が中央を固め、遠藤航がその前を見張り、前線の選手も攻撃から守備への切り替えが非常に早いので、危ない場面は皆無。終盤には、無理に2点をとりに行かず、田中碧→柴崎(短い時間ならば柴崎も守備で破綻はきたさない)、守田→原口と、経験豊富なベテランで守りを固め、堅実なクローズが行われた。東京五輪や最終予選序盤に、およそ非合理的な試合終盤の采配を連発した森保氏とは思えない丁寧な采配だった。
もちろん、体調がよいとはとても思えない大迫や長友の拘泥など、いかにも森保氏らしい硬直采配も見受けられた。それでも、まったくベトナムに好機をつかませることなく重苦しい1-0での勝ち切り。疫病禍により満員とは言えなかったが、ベトナムのホームらしい熱狂下で、まったく危ない場面を作らせないのだから大したものだ。
オマーン戦は守田が出場停止。最終予選序盤までの森保氏ならば、4-2-2-2に戻したり、守田の代わりに柴崎を起用したり、硬直した采配を見せていたことだろう。しかし、豪州戦の守備的MF3人起用や、ベトナム戦の終盤の堅実なクローズを見ていると、かたくなに学習を拒絶していた森保氏にも少し変化が見受けられる。野心あふれる若い前線の選手を多く選考した今回の遠征だが、森保氏がどこまで柔軟な采配を振るってくれるか。
田嶋幸三会長が、日本代表の確実なワールドカップ出場、上位進出よりも、森保氏の代表監督留任に拘泥する理由はよくわからない。ともあれ、しばらく森保氏が代表監督を継続するのだろう。おかげでスリルあふれる優雅な娯楽が継続する。