2015年06月17日

ハリルホジッチ氏、罠にはまる

 ひどい試合だった。
 正にサポータ冥利に尽きる試合だった。40年以上にも渡る己のサポータ人生でも忘れ難い、腹が立って仕方のない試合と語っても過言ではないな。ハリルホジッチのバカ野郎。

 前半、香川と本田の厳しいマークに岡崎は苦しんだ。本田が絞って入ってくるのは、このチームのやり方の1つなので、本田がマークを引き連れて岡崎の近傍に入ってくるのは一種の必要悪とも言える。実際、ペナルティエリア近傍で、本田がしっかりとキープしての好機は作れていたのだし。しかし、香川がズルズルと岡崎と同じラインでボールを待ち続けるのは不思議だった。確かに開始早々に、トップ近くで見事なターンから決定機を掴んだのは確かだが、それ以外の時間帯は最前線でほとんど消えていた。さらに悪い事に、各所で報道されたように、岡崎はハリルホジッチ氏に「最前線から動くな」と指示されていた模様で、普段ならば岡崎が作るスペースを活かしや、岡崎の飛び出しから作られる好機が生まれない。結果的に、バイタルエリア周辺で、敵のDF4人と香川と本田が、岡崎を厳しくマークする状況になり、長谷部も柴崎も、有効な縦パスが入らず、単調な攻撃に終始して45分が経過した。
 もう一つ悪い事に、審判の判定が日本向きではなかった。一昔前のJリーグの判定を思い出すような、選手が転んだらファウルと言う笛だったのだ。結果、相手に蹴られても持ちこたえる日本選手はファウルをとられず、簡単に転ぶシンガポールはファウルをもらう展開。それでも、審判の基準そのものは明確だっただから、学習して欲しかったのだが、麻也には。
 香川が前線に張り続けるのを放置したのだから、これはハリルホジッチ氏の作戦と理解するしかない45分間だった。ハーフタイムには、友人と「アルジェリアをあそこまで育てた監督だ、この45分間は後半への伏線に違いない(と、考える事にしよう)」と語り合った。

 後半立ち上がりから、香川は前線に張らず、中盤でプレイするようになった。改めて、ハーフタイムの友人との会話が誤りで、香川とハリルホジッチ氏の連係不足が45分間放置された事が理解できた。状況はたちまち改善し、岡崎へのマークが緩くなり、日本の攻撃がスムーズになる。10分、長谷部の展開からの太田のクロス、岡崎のヘディングはGKを破り、ゴールラインを越えたように私からは見えたのだが。まあ、このような判定は審判に任せるしかないが、その瞬間副審がゴールラインまで戻れていなかったのだけは、よく見る事ができた。
 60分過ぎに香川に替えて大迫。大迫の変化をつけた動きにより、岡崎もやりやすくなったのだろう。日本はさらに押し込み、好機を再三作れるようになる。
 問題は次の交代だった。何かきっかけを掴みたいところだったから、原口投入は妥当だろう。しかし、交代される選手が宇佐美ではなく、柴崎なのにビックリした。直後、原口の仕掛けから、ゴール前のFKを獲得。本田が直接狙うもポストに当たる。「さすが、このような狙いなのか」と友人と語り合ったが、原口が機能したのはこの場面が最後だった。以降、原口は中盤のバランスを取る事に終始し、攻撃にほとんど登場しなかった。
 原口にしても、両サイドバックの酒井にしても太田にしても、思い切りよく飛び出す場面は、ほとんど見られなかった。これは、ハリルホジッチ氏の指示だったと考えるしかあるまい。ハリルホジッチ氏は、敵の逆襲を警戒し、後方に人数をある程度残す事を厳しく指示したのだろう。そのため、日本の終盤の攻撃は迫力を欠く事になった。まあ、それも1つの考え方だろうが、だったら前半の香川に「不用意に前に行くな」と厳しく指示すれば、すべての問題は解決していたようにも思うのだが。さらに言えば、後半半ば過ぎから、シンガポールの各選手は疲労で青息吐息。とてもではないが、逆襲を心配する状況には見えなかったのだが。
 上がらない両サイドバックと、前線で効力を発揮するストライカ4人を抱え、長谷部が1人労苦を重ねたが、状況は打開されなかった。終盤には、酒井が再三ビックリするようなミスを連発し、攻撃ムードを阻害してしまった。こう言った状況下で、ベンチで長友は何を思ったのか。それにしても、長友の欠場には驚いた、よく言えば「トレーニングで充実していた太田を抜擢した」と言う事なのだろうか、いや、悪く言えば、ハリルホジッチ氏が自己顕示欲を発揮し過ぎて、奇策を当て損ねたようにも思えるが(それとも、長友は負傷だったのだろうか、でもメンバには入っていたし)。

 無様な試合だった。このような試合で勝ち切れない事も悔しいが、終盤のメンバ選定の誤りで、絨毯爆撃のような猛攻を仕掛けられなかったのが、また腹が立つ。思えば、イラク戦で香川のバックアップを試さず、総とっかえを選択したハリルホジッチ氏の油断。柴崎を残さず、原口を投入したハリルホジッチ氏の焦り。監督の油断と焦りが錯綜し、自ら勝ち点ロスに向かった無様な試合だったのだ。
 各地で鮮やかな実績を残してきた名監督ハリルホジッチ氏が、罠にはまった試合だったのだ。

 イライラ、怒り、不完全燃焼、正にサポータ冥利に尽きる試合だった。

 この時点では、よくある不出来な試合に過ぎなかった。このような怒りを、過去幾度味わってきた事か。
 しかし、今日はそれで終わらなかったのだ。試合終了と同時に競技場を飛び出した時は、雨は大したことなかった。ところが...
 埼玉スタジアムを出て、浦和美園に向かった瞬間、雨は半端ないものと変わった。ゲリラ豪雨である。スタジアムを出る時に、カッパを来たり、カバンをビニールで覆っていれば被害は少なかったのだが、その手当を怠っていた。腹が立っていて、冷静さを欠いていたのかもしれない。そして、1度競技場を出てしまうと、それを修正する場所がない。細い道に多数の観客が充満、大渋滞をお越し、どうしようもなくなってしまったのだ。かくして、傘でかろうじて身を守りながら、ゲリラ豪雨の中を、失意のサポータの皆様と、粛々と浦和美園まで行進する事と相成った。本当につらい行軍だった。

 八つ当たりである。
 本当に不愉快な一夜だった。油断と焦りから、次々と繰り返される監督の采配ミス。自ら失ってしまった貴重な勝ち点。これほど腹が立つ試合は珍しい。正にサポータ冥利に尽きる不快感。
 そこにゲリラ豪雨。

 繰り返すが、八つ当たりである。
 もう許せない。私はハリルホジッチ氏を許せない。
 いや、私は寛容だ。氏を許す事にしようと思う。ロシアでベスト8以上を獲得してくれるだろうから。
posted by 武藤文雄 at 02:08| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月16日

女子代表、結果は100点満点のスタート

 女子代表はスイス、カメルーンそれぞれに似た試合で2連勝。グループリーグ1位抜けをほぼ確定した。見事だ。極めて難しいワールドカップ連覇と言うミッションをめざし、ほぼ100点満点のスタートと言えるだろう。
 誰が見てもわかる通り、内容はよくない。早々にリードを奪い、しっかり守る作戦を採ったのは明らかだが、内容的にはうまく機能していない。守りを固めると言っても、体格的劣勢から最後方を固める策をとれない以上は、ラインを上げて厳しいプレスをかけて敵の自由を奪い続けるのが基本的なやり方。もちろん、それでは体力がもたないのでボールを丹念に回し、敵にペースを与えない事が肝要。ところが、これまでの2試合は、いずれもプレスが利かず、ラインを上げきれない時簡帯がしばしば見られ、結果的に敵に決定機を許す時間帯が増えてしまった。
 その要因は明らかで、各選手の体調が今一歩なためだ。たとえば、大儀見がその典型。終盤になると、明らかに切れがなくなり、前線でのボールキープできなくなってしまう。終盤の内容が悪いのは、ここに最大要因がある。しっかり守ろうとしている時間帯、いつもいつもうまくボールを回すのは難しい以上、トップに入ったボールを持ちこたえて時間を稼ぎたいところ。これが有効に機能しなくなるのだから。しかし、これだけ実績のある大儀見である。あれだけ、ボールキープができないと言うのは、体調を大会後半に合わせていると理解するのが妥当だろう。
 他の選手も同様だ。終盤苦しい時間帯、結構ミスが出る。澤が肝心の時にミスパスするのは全盛期からだが(笑、たとえばこれこれね)、大野や宮間のような知性と経験あふれるタレントが、無理をすべきでない時に無理をして状況を悪くしている。しかし、これも彼女達が大会後半、いや終盤に合わせているが故と見る。
 そうこう考えれば、体調が悪いなりに内容は褒められたものではなかったが、最初の2試合にベストの結果を残せたのだから、100点満点と言う評価ではないか。

 説明は不要と思うが、日本は比較的対戦相手に恵まれたグループに入れた。さらに1位抜けをすると、ドイツ、USAと決勝まで当たらない可能性が高まる。さらに、試合会場も、エクアドル戦のウィニペグを除くと、バンクーバーとエドモントンに限られる。この両都市の移動は飛行機で僅かに1時間半程度、広大なカナダを考えると、とても楽な移動だ(全くの余談:私がカナダで訪ねた事がある都市がこの2都市なのですよ、いずれも美しい都市で、人々も親切、とても印象のよい都市でした)。したがい、1位抜けをする事が、1次ラウンドのミッションだった。
 もちろん、準々決勝ではブラジルが来る。1/16ファイナルで、いきなりフランスやイングランドが来る可能性もある(必ずしも確率は高くないがね)。けれども、「優勝」を目指す上では、ドイツとUSAに決勝まで会わないに越した事はない。4年前の「どうせ当たるならば準々決勝も悪くない」とはちょっと違っているのだ。なぜか。

 そもそも。
 前回、我々は世界一となった。素晴らしかった。しかし、日本代表の戦闘能力は、USA、ドイツと比較して、優れているとは言えなかった。それでも、彼女達は、この両国に対し、堂々と戦い、知性の限りを尽くし、ほんの僅かな幸運にも手伝ってもらい、世界一を獲得した。本当に、本当に、素晴らしい戦いだった。今、彼女達の胸に光る星の美しい事と言ったらない。
 間にはさんだ五輪でも彼女達は見事な戦いを見せてくれた。したたかに、フランスとブラジルを破り、堂々の決勝進出。しかし、決勝ではUSAとの戦闘能力差を埋め切れず苦杯した。
 その後、佐々木氏は退任するとの噂がもっぱらだったが留任。連覇を目指す事となった。けれども、4年前の中心選手を凌駕する選手は、開拓できなかった。ほぼ4年前と同じメンバでの連覇への挑戦。これはある意味仕方がない事だ。「世界一」と言う成功経験を積んだタレントは、最高レベルの経験を得る事で、他の選手よりも格段の能力を身につけてしまったのだから。新進気鋭のどんな優れたタレントが登場しても、最高級の成功体験を抜き去るのは容易ではないのだ。
 かくして、連覇を目指すために、佐々木氏は4年前とほぼ同じメンバを連れてきた。元々、戦闘能力で圧倒した訳ではない「世界一」。連覇は容易なミッションではない。それでも、佐々木氏と宮間の仲間たちは連覇を目指す。その道は非常に細い道だ。しかし、その細い道筋は見えている。
 大会終盤に体調を合わせる事、抽選で得た優位を活かすべく最小限のエネルギーでグループラウンドを1位突破する事、2次ラウンドは対戦相手ごとに淡々と策を立て粘り強く勝ち抜く事、そして決勝に残れれば戦闘能力で上回るUSAなりドイツ(他の国かもしれないが、たぶんこのいずれかが来るだろう)に奇策を含めて立ち向かう事。つまり、4年前と異なり、ドイツとUSAと手合せするのは、できれば最後にしたい。
 細い道筋通りに大会序盤を抜けかけているのだ。素晴らしい。この後、どこまで行かれるかはわからない。しかし、真のプロフェッショナルである彼女達が、その総力を賭けて「世界一」を目指す。素晴らしい娯楽を愉しませていただけるのだから、ありがたい事だ。
posted by 武藤文雄 at 00:15| Comment(1) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月13日

評価のしようがない試合が続く

 イラク戦。格段に素晴らしい試合でもなかったが、特別に悪い試合でもなかった。
 岡崎と本田の調子がよければ、どのようなチームから得点を奪う事は可能な事はわかっている事。長谷部のサポートを受けた柴崎が再三早いタイミングでよい縦パスを出した事、宇佐美が再三よい突破を見せた事、原口の得点も相応に見事だった事、よい事はたくさんあった。地味ながら、槇野が無茶な攻撃参加を控え冷静な守備を継続したと言う、嬉しい誤算もあった。後述するが、イラクの悪さを差し引かなかければならないのだが。
 しかし、守備はもう少し安定感が欲しかった。川島と麻也のドタバタを愉しんだ事は否定しないが、いつになったらこの2人は落ち着くのか。前半、酒井宏樹と本田の右サイドの守備に軽さも気になった。序盤に2点差としてしまい攻撃のペースが落ちたのは仕方がないが、それを活性化する采配をハリルホジッチ氏を採らなかったのも不満、攻撃ライン総とっかえをしては攻撃は機能しない。そのため、蛍によるクローズを除くと、メンバの組み合わせを広げるテストは、ほとんどできなかった。例えば、清武が離脱してしまっているのだし、後半総とっかえなどせずに、今一歩の出来だった香川のところに他選手を入れるテストをするのが常識と言うものだろう。
 巷で言われる「縦の意識の向上」だが、イラクが比較的ノーガードだったのだから、評価のしようがない。敵を自在に引出し、狙い澄まして素早い速攻を連発でもしてくれれば別だが。単にコンディションのよくないイラクに対し、立ち上がりにうまく点をとり、その後低調ながら押し切った試合に過ぎなかった。
 可もなし、不可もなし、評価のしようがない試合だったのだ。

 イラクは確かに残念な出来だった。キリンチャレンジにアジアの代表チームを招聘すると、どうしてもコンディショニングの差が出てしまい、一方的な試合となる傾向がある。とは言え、シンガポールとの初戦を前にしたA代表マッチデー。スポンサとの約束している国内での有料準備試合を行うには適切な日だし、その相手としてアジア最強(あるいはそれに準ずる)クラスのイラクを選考したのは、有効な選択だろう。本番のシンガポール戦を前に、ウルグアイやらベルギーを呼んでしまっては、何が本番かわからなくなってしまうではないか(もちろん、コパアメリカやら、ワールドカップ予選で、これらの列強を呼ぶことは不可能だったのだが)。
 もちろん、イラクには国内情勢から安定した長期の強化が難しい事情もある。ために、2007年のアジアカップ制覇、2004年のアテネ五輪ベスト4など、短期集中大会では見事な成績を収めるが、長期のホーム&アウェイには今一歩と言う傾向なのも確か。その上、イラクは16日のインドネシアとのアウェイゲームが、インドネシア協会の不祥事によりキャンセルになっていた。そう考えると、選手のモチベーションや準備を含め、イラクが残念な出来だったのは仕方がない事なのだ。

 シンガポールを軽視する気は毛頭ないが、日本での試合ならば10回試合して1回引き分けまで持ち込めるかどうかだろう。当然シンガポールは「その1回」を目指す事になる。しかし、今の日本は岡崎と本田を筆頭に、宇佐美、原口、武藤ら、得点能力の高い選手が前線に多く、リスクはほとんどないと考える。
 一方でこの2次予選グループの対戦相手は、その他にはシリア、カンボジア、アフガニスタン。シンガポールより歯応えがありそうなのはシリアくらい。来年春先(2018年への折り返し点あたり)まで、貴重なA代表試合日をこう言ったチームとの試合が続く訳で、、「強化」と言う視点からは感心しない状況が続く。しかし、アジア各国にとっては日本との公式試合は、単に代表チームに止まらず、その国のサッカー界の総合強化にも、最高の経験となる事だろう。だから、「困った事だ」と言ってはいけないし、長期的にはアジア全体の底上げがなければ、日本のワールドカップ制覇もない。ゆったりと、慌てず、進んでいく事が肝要なのだ。

 ハリルホジッチ氏はわかりやすい人だ。まずは過去を徹底的に否定し、うまく行った事を針小棒大に語り、自慢し、自分の実績と語る。このような外国人監督は、トルシェ氏、アギーレ氏と同じ系列で、安心して任せる事ができる1つのタイプだ。就任前から絶大な信頼をおけたオシム爺さんは別格として、何も考えていないジーコ氏、決して失言しないオフト氏よりは、その自慢話から状況を正確に推定する事が可能だからだ(ザッケローニ氏はオフト氏と同じく寡黙系だったが、就任早々のアジア制覇とアルゼンチンへの勝利と言う実績で、我々を納得させてしまったが)。また、そのハリルホジッチ氏の自慢話、景気のよい勝利、日本のサッカーマスコミの報道姿勢、いずれのマッチングのよさも中々だ。
 現実は現実ととらえ、じっくりとサポートしていきたい。3年後の歓喜を信じて。
posted by 武藤文雄 at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月05日

井原正巳監督への期待

 Jリーグには無限の魅力が詰まっている。その全てをしゃぶり、味わい、語り尽くしたいのは山々なのだが、ベガルタの七転八倒を愉しむだけで、ほとんどの時間が過ぎていく。それでも、隙を見て浮気を愉しみたいのは男の常。で、どうせならば、あれこれ手を出さず、唯一の愛人と愉しむのがよかろう。と、言う事で、今シーズンに関しては井原正巳監督が率いるアビスパ福岡だ。いや、もとへ。言い換えよう、ベガルタ以外の時間は、いよいよJの監督に就任した井原正巳氏を見守る事に費やしているのだ。

 私は井原正巳選手が大好きだった。
 88年10月26日の日韓定期戦。筑波大学3年生だった井原が、日本代表の守備の中核として、崔淳鎬を軸とした韓国に対して、ほぼ完璧な守備を見せてくれた。あの晩の興奮は今でも忘れられない。そして、あの晩の期待通り、井原は幾多の喜び(もちろん涙も)を私に与えてくれた。92年の広島ビッグアーチ、93年のドーハ、そして97年のあのジョホールバル、98年のトゥールーズ、ナント、そしてリヨン。
 井原は1988年1月27日、敵地でのUAEとの親善試合に20歳で起用され、すぐに中心選手として活躍を期待され、常にレギュラとして活躍を継続した。つまり122試合の代表戦のほとんどを、いや違う、すべてを中心選手として戦ったのだ。そして、上記のUAE戦以降93年のUSAワールドカップ1次予選タイ戦で退場になるまでに、B、C代表戦を含め88試合、7958分フル出場を継続した。さらに、その後同予選のスリランカ戦に復帰以降、97年の2月11日のキングスカップルーマニア戦にバックアップ(秋田、小村、斉藤の3DF)のテストを行うまで、52試合のA代表戦4,706分(93年10月4日国立のアジアアフリカ選手権、つまりドーハ直前、コートジボワール戦はカズのVゴール勝ちで延長の26分を戦っている)にフル出場している。その後、幾度かバックアップテストで抜ける事があったが、負傷で戦列を離れたのは、98年4月1日ソウルでの日韓戦での途中交代が初めて(この時井原は30歳になっていた)。つまり、20代の10年間、井原は壊れる事すら一切なく、常に日本代表の大黒柱として活躍してくれたのだ。今日のように、A代表戦が年間15〜20試合行われていたならば(たとえば88年のA代表戦は5試合、90年は6試合、91年は何とたったの2試合!、USAワールドカップが行われた94年ですら9試合に止まっている)、代表出場記録はどこまで伸びていたのだろうか。
 しかも、井原が活躍したのは、日本代表戦でもスタンドに閑古鳥が鳴いていた80年代から始まり、全国民がその勝敗に熱狂するあのフランスワールドカップまで続いたのだ。幾度か書いたが、この日本サッカー界が経験した(おそらく日本を除くいずれの国も経験していない)「超右肩上がり」時代のすべてを、井原は経験したのだ。
 現実的に、井原は日本サッカー史上最高の守備者であった事も間違いない。いや、日本代表選手としても、井原は史上最高の存在だと確信している。井原が活躍していた当時と比較し、国際試合における日本代表の相対的地位は間違いなく高くなった。しかし、苦しい試合になればなるほど、「今、ここに井原がいてさえくれれば」と嘆息する経験が増えていく。06年のドイツでも、昨年のブラジルでも、同じ思いを抱いたのは私だけではないのではないか。
 選手、井原正巳には、いくら感謝してもし切れない思いばかりがある。

 その「日本代表史上最高の巨人」であり、「超右肩上がりの全ての体験者」である井原正巳氏が、アビスパ福岡で、とうとうJリーグの監督に就任した。
 輝かしい実績から考慮すると、あまりに遅すぎた感もある。これは2つの要因があると思っている。1つには、レイソルでのコーチ(ネルシーニョ氏の補佐官)が、あまりに板につき過ぎた事があるだろう。ネルシーニョ氏からすれば、かつてのライバルチームの大黒柱が守備組織構築を担当してくれるのは、とてもありがたかったに違いない((95年のJリーグプレイオフではヴェルディのネルシーニョ氏と、マリノスの守備の要井原の虚々実々の駆け引きは実におもしろかった)。今1つには日本においては「名選手必ずしも名監督ならず」が定着しており、名選手の監督登用に、クラブも相当慎重になっている事が挙げられるのではないか。
 そして、井原氏はいきなり開幕戦から3連敗を喫する。このあたりの映像を見ていると、特に守備ラインでの球際の当たりの不安定さが目についた。よい時はよいのだが、90分の中で、何人かの選手が突然当たりが甘くなってしまっていたのだ。けれども、連敗を脱した4節あたりから、そのような不安定さがなくなり、守備ラインの各選手が粘り強く90分間戦いを継続できるようになってきた。守備が安定した試合が続けば、攻撃も安定してくる。前節、フォルランを軸に猛攻を仕掛けるセレッソ戦は、セットプレイから先制すると粘り強く守り、時に効果的な速攻を繰り出し、見事な勝利を収めた。アビスパが、ジュビロ、ジェフ、セレッソ、アルディージャと言ったクラブと、J2の上位争いを完全に争える戦闘能力を持っていることを示す試合となった。
 アビスパのメンバを見ると、中村北斗、堤、濱田、鈴木惇と言った、かつて若年層代表チームに選考されながらも、伸び切れていなかった選手が目につく。彼らは能力は非常に高いのだが、90分間の集中継続、あるいはシーズンを通しての集中継続と言った課題を克服できずに、ここまで来てしまった感がある。そして、序盤の3連敗時代は、彼らもそのようなプレイ、つまり90分間の中で「抜けてしまう」場面が散見されていた。けれども、ここ最近は、特に堤と濱田に関しては、そのような姿をほとんど見なくなってきた。これは井原氏の薫陶が大きいのではないか。
 選手井原は、判断力、ボール扱い、肉体能力と言った他者に見える能力は、もちろん格段のものがあった。けれども、その格段のプレイを常時継続し、10年以上も日本代表の大黒柱として君臨し続ける事ができたのは、そう言った格段の能力を常に発揮する精神力を具備していたからのはずだ。アビスパの序盤低迷からの脱出は、その自らの精神力を、選手達に的確に伝授できたからではないかと思えるのだ。そう考えると、アビスパの選手はベテランを含め、この偉大な監督から学べる事は非常に多いはず。そして、その指導が的確に遂行されれば、J1復帰も現実的な目標となってくるはずだ。
 もちろん、井原氏の監督経歴は始まったばかり、これから艱難辛苦を乗り越えない限り成功はない。そしてJ2からJ1に昇格する難しさは、今さら繰り返すまでもないだろう。
 けれども、上記したような選手として究極の経験を持った井原氏が、アビスパで監督として成功を築いてくれたとしたら、これは日本サッカー界にとっても、非常に重要な事となる。井原氏は手倉森誠氏と同級生。手倉森氏と異なり監督としてはこれからだが、(ベガルタサポータとしてはちょっと悔しいが)井原氏は手倉森氏が現役時代に積む事ができなかった経験を、あふれるほど持っている。そう、何より井原氏は1億3千万国民に歓喜を提供してきたのだ。
 ちょっとは夢を持っても構わないだろう。

 以下余談。
 井原を称える「イハラー、イハラー、イハラー」と言う歌は、私が歌い始めたものだ。個々の選手を称える歌としては、この「イハラー、イハラー、イハラー」は、植田朝日氏が始めた「オー、ナカヤマ」と並び、日本サッカー界で初めてのものだったと自負している。そして、いつか井原が日本代表監督に就任した際に、「イハラー、イハラー、イハラー」を歌うのを密かなる夢としてきた。でも、ちょっと待ちきれない自分がいる。
 で、もしこの文書を読まれたアビスパサポータの方がいれば教えてください。アビスパが勝った時、「イハラー、イハラー、イハラー」を歌ったりしているのでしょうか。もし「Yes」ならば、こっそりと偽アビスパサポータとして、ゴール裏に忍び込み、一緒に歌わせていただきたいのですが。
posted by 武藤文雄 at 01:21| Comment(7) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月03日

苦闘続くベガルタ

 ベガルタは敵地でサンフレッチェに0-2で敗戦。疲労が溜まっている連戦下、攻守の弱点を森保氏に的確に突かれての完敗となった。4連敗と言うつらい結果に加え、守備の大黒柱鎌田が負傷、さらにCBでコンビを組む渡部が次節出場停止。何とも重苦しい結果となってしまった。

 双方とも連戦のため、身体が重い。そのため、前半は無理をしない手堅い試合を狙ってきた。その中で、サンフレッチェは大きなサイドチェンジでスライドするベガルタのサイドバックの外を狙う。そして、ベガルタのブロックにギャップを作ろうとしてきた。その策にはまり、野津田にミドルシュートのスペースを与え先制を許した。この一撃の前にも、柴崎のミドルシュートがバーに当たり事なきを得た場面もあった。森保氏としては狙い通りと言う事だったのだろう。サンフレッチェの強みの1つは、相手の守備組織がしっかりしている状況でも巧みな位置取りで僅かな隙を逃さずに点を狙える寿人がいる事。したがい、センタバックは寿人との位置関係に相当神経を使う必要があり 、どうしてもバイタルのカバーが遅くなる。この攻撃を防ぐためには、サイドチェンジをさせぬように前線から厳しいプレスを仕掛けるか、ミドルシュートを打たれないように中盤選手が几帳面にスペースを埋める必要がある。しかし、連戦で各選手に疲労が蓄積しているだけに前者はあまり現実的ではない。したがって、後者が重要となり、渡邉氏もそれを考慮して、ボランチにフレッシュな武井を起用したのだろう。ところが、この野津田の一撃時、対応した武井がスリップし野津田を止められなかったのだから皮肉なものだ。
 ベガルタとしては、お互いが慎重に戦った前半に速攻で活路を開きたいところだったが、サンフレッチェの水本と塩谷の2ストッパがウイルソンを押さえる。ウイルソンとこの2人の攻防は見ごたえがあったが、とにかく当方の負け。これはこれで悔しいけれど仕方がない。もう少し、金園がウイルソンの近くでプレイし、サポートを密にしたいところだったが、このあたりの連係の熟成はこれからの課題と言う事か。

 リードされた事もあり、後半は序盤から前線に人数をかけ攻めに出るが、分厚く守るサンフレッチェを崩せない。ちょっとチグハグだったのは交代のタイミング。64分に野沢と茂木の2枚を同時交代して勝負に出た訳だが、そうするならば後半頭からあそこまで前掛かりに出る必要はなかったのではないか。せっかくフレッシュな選手を2枚入れた時間帯にもかかわらず、ベガルタの後方の選手達は後半立ち上がりからの攻勢に一息つく時間帯となってしまった。現実的に、連敗している状況で先制を許したのだ。どの選手も同点を狙いに前に行こうとするはず、それならば後半の最初から、ベテランの梁に代えて若い茂木を入れてグッと攻めに出るのも一手段だと思ったのだが。
 そうこうしているうちに、人数をかけた攻めの精度がちょっと悪くボールを奪われ、青山の鮮やかなロングボールを、(寿人に代わって入った)前進速度豊かな浅野に決められ引導を渡される。完全にサンフレッチェの注文相撲にはまってしまった。その後も、ベガルタはいつものように諦めず丁寧に攻め込んだのだが、崩し切れず。

 今年のチームに始まった事ではないが、ベガルタのサッカーは豊富な運動量と球際の強さを軸にしたものだから、連戦や夏場は苦手としている。そして、このサンフレッチェ戦はその難しさが完全に出た試合となってしまった。ナビスコを含め、ここまでの全試合にフル出場していた鎌田が負傷したのも疲労の蓄積からだろう。
 確かに状況は重苦しい。けれども、私は楽観的だ。丁寧に修正を加え、チームとしての戦闘能力を積んで行けばよいのだ。むしろ、新しいチームが早い段階で問題を明確に把握できたと、考えるべきだろう。
 次節以降、中3日で、ホームに強豪FC東京とレッズを迎える。非常に難しい試合となろうが、調子が悪いときは強豪と当る方がよいのだ。対策が絞り込めるから。鎌田と渡部が不在なのはつらいが、上本と多々良がいるのだから、連係面はさておき陣容としては問題ない。昨シーズンの序盤や連敗時と異なり、控えには若い藤村、山本、金眠泰ら実効的な選手も控えているから、様々なトライも可能だ。序盤に勝ち点を積んでいたから、勝ち点計算で短期的に追い込まれる事もない。
 オロオロ、イライラを堪能しつつ、よいチームに成長していく事をじっくりと愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 00:21| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月01日

茂木と渡邉氏が若さを露呈

 ベガルタはユアテックでアントラーズに1対2で苦杯。前半こそ好機を多数つかんだものの、40分過ぎ先制されてからは、終始しっかりと引いてボールを回すアントラーズペース。スコアから見ると1点差だが、当方の得点はアディショナルタイム。試合運びと言う意味では完全に圧倒されており、今シーズン最悪の試合内容と言っても過言ではなかった。
 そして、その敗因は、茂木と渡邉監督の若さにあった。

 先制点はCKから、アントラーズ昌子のヘディングを許したもの。これは完全に茂木のミスだった。ベガルタはゴール前のセットプレイをゾーンで守る。セットプレイ守備がゾーンがよいかマンツーマンがよいかの議論は、とても愉しい知的遊戯。ただ、ゾーンを採る以上は常にボールの落下点への出足を怠ってはいけない。今シーズンのベガルタの守備のよさは、正にそこにあり、いずれの選手も格段の集中力でそれを完遂しているところにあった。しかし、この場面茂木は完全に昌子の後手を踏み、昌子に走りながらジャンプせずともよい高さのヘッドを決められてしまった。高さでやられたのではなく出足でやられた(実際出遅れた茂木は弱々しく足を出していたのだが)。流れの中で「消えられた」訳でも、駆け引きでしてやられたのでもない(ゾーンで守っているのだから、なおさらの事だ)。単に集中が切れ、出足で負けたのだ。直前、ゴール前のもみ合いで、昌子は完全に茂木を明らかに押し、茂木のアピールで主審に注意されていた。茂木は若いものの、このようなしたたかさをしっかり身につけている、と思ったら直後にこれだ。主審が昌子を注意した事で、逆に気が抜けてしまった訳だ。これも経験である。経験なのだが、これを繰り返してはいけない。絶対にいけない。このような事をしていたら、リオは夢と消え去ってしまう事を、強く自覚して欲しい。

 前半、4-1-4-1気味の配置でベガルタは攻勢をとり、多くの決定機を掴む事ができた。梁や野沢のシュートが決まっていれば試合展開は全く異なったものになっていたに違いない、と言いたいところだが、そうだったろうか。正直そうは思えないのだ。と、言うのは、後半立ち上がりからはアントラーズに圧倒されたからだ。これは、先制されて後方のリスクヘッジが弱くなったからではない。老獪な小笠原のサポートを受けた柴崎の挙動開始を、ベガルタの中盤選手が押さえ切れなくなったからだ。要は、前半から飛ばし過ぎたのだ。だから、前半で先制できていたとしても、そのまま1点差をしっかり守り、丁寧にクローズする試合に持ち込めたかとなると、相当疑問なのだ。
 2点目は、そうやってアントラーズペースが続いた時間帯だった。富田が見事なインタセプトを見せ前線をルックアップするも出しどころがない、そこで後方の菅井に戻したところ、ミスパスとなりカイオに拾われ、そのまま失点。厳しい連戦で、中盤で止め切れず苦しい時間帯。闘将が中盤で拾ったにもかかわらず、前線の選手が呼応できず、後方の選手が一息ついたところでミスが出た。もちろん一義的な責任は富田と、明らかに集中を欠いていた菅井にある。
 特に菅井には一言言いたい。押し込まれた場面での投入、久々の試合、普通の選手であれば「難しい時間帯、入りづらい時間帯での投入」と言えるかもしれない。けれども、菅井なのだ。菅井なのだから、そのような普通の選手に対するコメントを述べさせないで欲しいものだ。菅井なのだのだから。いや、菅井らしいか。でも違う、菅井ならば、あのようなミスはご愛嬌だが、反対側のゴールに鮮やかな得点を決めてもらわなければ。菅井なのだから。
 話を戻そう。一義的には富田と菅井のミスだが、あのような状況に持ち込んでしまったのは、やはり渡邉氏の采配の拙さが最大要因だ。あれだけ、ペースが落ちているのだから、前々節のフロンターレ戦同様に選手交代で中盤を活性化させるべきだった。このあたり、フロンターレ戦の反省が足りない。ただ、フロンターレ戦とは異なり、敵監督が奇策を弄してきた訳でもなかった。むしろ、連戦下で前半からあそこまで攻勢をとるべきだったのか、と言う議論にさかのぼるべきなのではないか。
 2点差となって金園を投入。一見、押し返したように見えるが、フロンターレ戦や山雅戦同様、敵エンドには入っているが、前半よかった時間帯のようにサイドに起点を作る事ができず。右サイドを起点にウイルソンの妙技から梁がフリーとなた場面と、敵DFのミスを金園が引っ掛けウイルソン経由で金園が掴んだ2つの絶好機を除くと、それ以外の攻撃はアディショナルタイムの金園の得点を含め、偶然から掴んだチャンスに止まった。アントラーズが落ち着いて引いているのだから、まともに行っては好機を多数作るのは難しい。金園投入と前後して、中盤にフレッシュな選手を投入していれば、中盤が活性化し改めてサイドに起点を設け、効果的な遅攻も可能になったと思うのだけれども。ベンチには、独特の技巧を持つ藤村、強さと展開力を具備する金眠泰、経験豊富な武井らが控えていたのだが。そして、この試合の藤村の起用は88分。2点差で負けているのだ、あまりに遅過ぎる。主将の富田、機動力で好機を作れる梁、信じ難いラストパスを操れるの野沢、この3人に拘泥する気持ちはわかるのだが、せっかく良好な控え選手を保有しているのだから。後は決断だ。あるいは、梁や野沢をフレッシュな状態で勝負どころで投入するやり方だってあるはずだ。このあたり、渡邉氏はまだまだ若い、いや青い。
 渡邉氏の手腕に疑いはない。前節の山雅戦での拙攻を反省し、ちょっとしたフォーメーションの切り替えで良好な攻撃を再三見せてくれた。気が付いてみたら、上記の控え選手含め、選手層も相当分厚くなっている。堅牢な守備も、中盤の運動量が落ちなければ健在だ。氏の巧みな指導により、チームの質は日増しに向上しているのだ。ただ、唯一残念な事は、その見事な指導を、本番で活かし切れない事。もっともっとやれるはずなのに、何とも、もどかしい。

 渡邉氏が名監督となるまでの「もどかしさ」と言う最高級のディナーを堪能できるなんて、何と素敵なシーズンだろうか。そこに茂木が大選手となるまでの「経験と苦闘」と言う最上級の葡萄酒まで加わっているのだ。正にサポータ冥利に尽きると言うもの。諸事情で中々現地参戦できない己の愚かしさを反省する毎日である。
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2015年04月26日

ベガルタ渡邉監督が迎えた壁

 アディショナルタイム、少々単調だが強引に攻め込み同点を狙ったベガルタだが、田中隼磨に対しウイルソンがファウル。直前の場面で、何やらもめていたこの2人だが、隼磨の挑発にウイルソンが乗せられてしまったと言う事だろう。そして無意味にボールを失ったこの瞬間、ベガルタの連続攻撃が途切れ敗北が確実となった。
 ベガルタは敵地で山雅に完敗。リーグ戦は前節のホームフロンターレ戦に続き連敗、公式戦としては水曜日のエスパルス戦を含め3連敗、一時期の勢いがすっかり薄れてしまった。まあ、贅沢を言ってはバチが当たるのだが。

 開幕戦から組織的で厳しい当たりを軸にした堅実な守備と、ウイルソンを軸にした速攻で上々の成績を収めていたベガルタがおかしくなったのは、前節フロンターレ戦の後半だった。
 まず前々節の敵地マリノス戦は、アディショナルタイムに追いつかれたものの、今シーズン最高の内容と言っても過言ではなかった。堅実な守備はそのままに攻撃もよかったのだ。ナビスコカップでよいプレイを見せ、マリノス戦で右バックに起用された多々良が前進のたびに丁寧なファーストタッチ、ふてぶてしいボールキープを見せる茂木とよい連係を見せる。そこに梁、ウイルソン、奥埜らが絡み、いわゆる「3人目の動き」で幾度も好機を作った。元々左サイドは石川直樹と野沢の連係で崩す形は昨シーズンより確立しており、両翼から「行ける」状態となったのだから、期待は広がった。
 フロンターレ戦の前半は上々の内容。中村憲剛と大島を軸に高精度のパスを回してくるフロンターレに対し、前節に確立した両翼からの速攻が機能、ウイルソンの先制弾の他にも、好機の数はベガルタの方が多かった。これは、今シーズン序盤より好調な守備に加え、前々節のマリノス戦から機能し始めた右サイドの攻撃がよかったからだ。
 ところが、後半フロンターレが前に選手を増やし攻めかけてきた60分以降、完全に押し込まれ逆襲が全くできなくなった。渡邉氏はその状況を放置し、押されるがままで様子を見ようとした。大変な愚策だった。あれだけ押し込まれたらいつかやられる。あえなく逆転されてしまった。悔しいのは、その後フレッシュな金園を投入し、押し返す事ができた事だ。敵が無理を仕掛けてきたのだから、落ち着いて対応さえしていればよかったのに。
 そして、点の取り合いとなれば、流れはフロンターレのもの、バタバタした内容となり守備へのしつこさがなくなり、さらに押し込まれた時間帯が長かった事で後方の選手の疲労も顕著で、一度同点に追いついたが突き放されて2対3での敗北となった。
 采配ミスは、常に一種の結果論。しかし、あそこまで押し込まれて事態を放置したのだから、この敗戦については、渡邉氏の責任としか言いようがなかった。
 続くナビスコのエスパルス戦は、ゴールデンウィークの過密日程を考慮して、完全なターンオーバ。CBの渡部と鎌田を除き、すべてのメンバを代えて臨んだ。負けたと言う結果、蜂須賀、二見の両サイドバックのボール扱いが不安定だった事、開幕から中盤の控え一番手の杉浦が消極的だった事など残念な事も多かった。一方で、ようやく金園が得点した事、3年目の藤村が独特のボール扱いで変化をつけた事、負傷で出遅れいた金眠泰が強さと展開力を見せた事など、よい内容も多かった。

 そして、迎えた山雅戦。ウイルソンがベストでないとの事で、スタメンは金園。控えにも藤村、金眠泰が入るなど、上記エスパルス戦で好調な選手を重要視する渡邉氏らしい布陣に期待は高まった。
 しかし。全然ダメだった。
 反町氏にしてやられたと言えばそれまでだが、完全に蹴り合いに巻き込まれ、サイドバックが思うように上がれない。最前線で金園がよく頑張るが、中央突破に終始し、上記したサイドからの気の利いた攻撃がほとんど繰り出せない。結果、押し込んでいる時間帯も、攻撃に変化が乏しく、フロンターレ戦の前半やマリノス戦のように好機を作れない。
 失点場面は、山雅の岩上に「恐れ入りました」と言うしかない。渡部も石川も的確に位置取りしていたのだが、スクランブルから見事にターンされてしまった。攻撃は機能しない試合だったが、守備は相変わらず粘り強く丁寧に行われていたのだけれども。
 失点後、ウイルソンを投入したが、反町氏は3DF を固め、梁と富田へのプレスを強化する。だからこそ、多々良と石川を上げてサイドに起点を作らなければならないのだが、中央突破に拘泥し崩せない。「ここは、藤村なり金眠泰の投入か」と思っていたら、多々良に代えて蜂須賀。これはビックリした。おそらく、「富田と梁のベテランボランチはいじりたくない、しかし攻撃を活性化したい」と悩んだ渡邉氏の苦渋の決断だったのではないか。けれども、その決断はうまくはたらかなかった。蜂須賀には一層の努力を期待したい。
 そして冒頭のウイルソンと隼磨の絡みへと続く。反町氏と隼磨だ、大したものですよ。くそぅ。

 渡邉監督のここまでの実績はすばらしい。昨シーズンの残留も見事だったが、今シーズン新しい選手を次々に機能させ、よいチーム作りをしているのは間違いない。我々は、「格段な監督」になり得る最高級の素材を手にしているのだ。
 だからこそ、氏には、フロンターレ戦の失敗、そこから始まった消極性による今日の苦杯を反省して欲しい。幸いに、次節からアントラーズ、サンフレッチェ、FC東京、レッズ、と強豪との対戦が続く。敵が強い以上は、得意の守備の充実と速攻を磨けばよいのだから。

 決して裕福とは言えない愛するクラブが、若い監督の苦闘や失敗と共に成長する。数年前に味わった最高の快感を、また味わえる。何と幸せな事なのか。
posted by 武藤文雄 at 00:52| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月06日

ホーム2勝、アウェイ2分け、最高のスタートだが

 ベガルタはアディショナルタイムの渡部の劇的ゴールで、エスパルスに勝利。勝ち点を8に積上げる事に成功した。ここまでの4試合、ホーム2勝、アウェイ2分け、理想的な展開だ。

 しかしながら、エスパルス戦の内容は、とてもではないが褒められた内容ではなかった。
 エスパルスの先制点は、見事な速攻からの分厚い攻めにやられたもの。序盤からエスパルスの厳しいプレスに悩まされていたところ、何とかそれを凌いで攻め込もうとしたがパスの精度が悪い。左サイドの攻め込みから中央ウィルソンへのパスを狙われ、速攻を許す。4対5と数的不利になり、かろうじてそれをはね返すものの、野沢が拾いきれず、右サイド村田にえぐられ、ファーサイドから進出された白崎に見事に決められてしまった。その後も試合は完全にエスパルスペース。失点時と同様の速攻はもちろんだが、大前の巧みなポジショニングを押さえ切れず幾度も好機を許す。いくばくかの幸運、六反のファインセーブがなければ、2点差とされ、ホームで痛恨の敗戦を喫していてもおかしくなかった。
 エスパルスもベガルタも、前線から厳しいプレスを仕掛け、敵を自由にさせない激しい守備をベースに戦っている。お互い僅かなスペースを許さなれないため、丹念に身体を入れ、そこにガッチリと当たりが入る。流行り言葉で言えば「インテンシティ」あふれる試合、そう言った中で選手1人1人がアイデアを発揮する。個人的にはこのような戦いは大好きだ。

 後半に入り、エスパルスのプレスが緩むと、ベガルタもそれなりにペースを取り戻す。60分過ぎには、CKから鎌田がすらしたボールを、ウイルソンが「さすが!」としか言いようがない反応で同点に追いつく。
 余談。このオフにベガルタは20周年記念DVDを発売、その表示がベガルタの歴代得点者ベスト6だった。1位は梁、続いてマルコス、赤嶺、菅井(笑)、阿部良則、そして中島裕希だった。「あれ、ウイルソンは?」と思って調べたら(いや、裏表紙に歴代得点者リストが出ているのですが)、4位の菅井が39、5位の阿部が32、6位の中島が31、そしてウイルソンは30で7位だった。つまりだ、ウイルソンは今シーズン3得点。阿部と中島を抜いて、堂々の5位に進出した。是非今シーズンは得点王を獲得し、菅井、いや赤嶺(44点)を抜いて、歴代3位に上がってください。マルコス(55点)を抜いてくれてもよいですが。あ、ちなみに梁は71点です。
 その後もタフな当たり合いが続く。ホームのベガルタとしては、何としても勝ち切りたいところで、同点直前に投入した金園の引き出しと奥埜の豊富な運動量で攻め込もうとするが、野沢の溜めと梁の配球に今一歩噛み合わない。そうこうしているうちに、速攻を仕掛けた奥埜をヤコビッチが引っ掛け、2枚目のイエローで退場。カナダ代表からの帰国直後との事で、疲労が切れを失わせていたのかもしれない。
 10人になったエスパルスに対し、ベガルタは必死に攻め込むが崩し切れない。梁の見事な右サイド進出からのウイルソンのシュートは決定的だったが、五輪予選帰りの櫛引に見事に防がれる。そうこうして、迎えたアディショナルタイム。ヤコビッチ退場に伴い、大前に代わって起用されていた河井が、ウイルソンに対し足裏アタック、一発退場。非常にタフな当たり合いが続く試合、突然起用された事で流れに入らず、魔が差したのだろうか。驚いたのは、エスパルス大榎監督の態度。明らかな一発退場のプレイに対し、主審を口汚く罵るのがテレビ桟敷でもよくわかった。シビアに戦っていたエスパルスの選手達にとって、この監督の場をわきまえない態度はつらいものだったろう。チームメートの明らかな失態を、監督が強引に正当化しようとする姿勢は、選手達を戦いづらくしたはずだ。
 終了間際、ベガルタは逆転に成功した。敵監督の愚行により拾った勝利だった。

 勝つ可能性が非常に低かった試合を幸運にも勝利できた。長いシーズン、このような事もある。
 けれども、内容は悪かった。敵プレスが厳しい際の凌ぎ方、大前のような知的な受けができる選手の押さえ方、終盤点を取りたい時のフォーメーション。理想の勝ち点積上げでよい入りをしたこのシーズンだが、課題はまだまだ多い。大事に大事に戦い続けたい。
posted by 武藤文雄 at 00:17| Comment(3) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月03日

選手の個人能力で勝ち切った2連戦

 テレビ桟敷で堪能したチュニジア戦は素晴らしかった。ほとんど初顔合わせの意表を突いたスタメンながら、チュニジアにほとんど好機を作らせなかったからだ。前線からの精力的な守備は実に見事。冴え渡る長谷部と蛍には素直に感心しました。一方の攻撃、チュニジアのCBアブデヌールが素晴らしく、中々崩し切れなかったが、これは相手が凄過ぎたと考えるべきだろう。もっとも、後半になれば相手が消耗してくるのは、国内の親善試合の常、そこの時間帯に本田、香川、岡崎、宇佐美を投入する、非常に理に叶った采配で、キッチリと勝利した試合となった。もっとも、公式戦ではこのような采配は不可能なのだが。

 さて久々の代表生観戦となったウズベク戦。初戦のビックリスタメン、スタア交代劇を思い起こせば、初戦起用されなかった大迫、柴崎、太田らが起用されると思っていた。ところが、内田、本田、香川、岡崎の揃い踏み。こうなると「単に意表を突きたいだけなのではないか」とも思えてくるが。そして開始早々に、青山の超弩級弾で先制。5万大観衆の盛り上がりは最高潮に達する(余談、FC東京サポータと一緒に参戦していたのだが、「こんな満員になるなんて、同じ競技場とは思えない」と感動していた、もっとも私にとっては普段と異なる飛田給駅からの大混雑で中々競技場にたどり着けず「キックオフに間に合わないのでは」とオロオロ慌てた悪い記憶が残ったのだが)。
 ところが、その後がいけない。とにかく守備が緩いのだ。本田も香川もサボっている訳ではないが、切れがない。内田もとにかく重い(内田について、起用する意味があったのかが、そもそも疑問だが)。そして、今野が明らかに体調不十分。寄せが甘く中盤で敵を止められない。結果最終ラインでの戦いとなり、森重の奮戦でかろうじて凌ぐ展開となった。まあ、仕方がないよな。チュニジア戦で相応に仕事して安心した本田と香川に、この環境でタフファイトは望めない。終盤腕章を巻いた森重にも、とにかく敵をはね返す能力を見せた昌子にも、よい経験となったのだから、それはそれで結構な事だ。
 試合そのものは、岡崎が仕事して2点差としたところで実質的には勝負あり。国内親善試合の常で、ウズベクの動きが止まってしまった。その後のフエスタは愉しゅうございました。素直に喜ぼう。

 以下雑感を少し。

 ハリルホジッチ氏。実績面を考慮すれば、とてもよい人と契約できたものだと思う。ただ、この2試合については手腕云々を語るのは失礼と言うものだろう。ともあれ、おぼろげながら、幾つか。
 チュニジア戦、中盤に長谷部、蛍、永井、清武、武藤と、真面目な選手を並べて、相応の組織守備を見せてくれたのは間違いない。が、本田と香川が、敵が疲労したチュニジア戦終盤に機能し、敵が元気なウズベク戦序盤では機能しなかった。わかりやすいと言っていまえばそれまでだが、最初の2試合で非常に難しい問題が健在化したと言う事だ。もっとも、早々に問題を健在化する手腕が素晴らしいと言う見方もあろうが。
 水本アンカーが機能した。森重、昌子が後方から、水本が前方から、それぞれ敵2トップを挟み込んで止めて、それが速攻の起点となった。おそらく起用された水本自身が驚いた事だろう。とりあえずは「恐るべき眼力」と感心しておこうか、「相手をワナにはめた」ほど、うまく行ったとはとても言えないが、少なくとも守備は前半よりは安定した。もっとも、「体調が不十分な今野に無理をさせずに、前半からそうしろよ」との思いもあるが。いや、成功させたのですから、文句を言ってはいけませんね。
 このような知的遊戯が愉しめる監督は大好き。うん、期待したい。

 大迫と川又。大迫がピッチ沿いでスタンバイした時、誰もが「岡崎に代わってトップに入る」と思ったに違いない。ところが、交代は本田、そして大迫は不慣れな右サイドMFに、低調な出来だった。そして、その後岡崎に代わってトップに入った川又は得点も奪った。得意のポジションへの起用すらなく、川又や宇佐美に丁寧にパスをする大迫。2試合目にもチャンスをもらい、ものにした川又。うん、仕方がないな。いや、それだけ。うんや、頼むよ、大迫。

 柴崎。確かに3点目は鮮やかだった。でも、それだけ。もっとも、本来の中盤後方ではなく、トップ下に起用され、いかにも窮屈そうだった。今はとにかく、中盤の展開、タイミングと精度両面で格段のラストパス、そしてシュート精度、それぞれを淡々と磨いてほしい。とは言え、あの超ロングシュートを決めるよりも、UAE戦のフリーキックを決める事の方が、ずっと重要だったことを、改めて強調しておきたい。

 宇佐美。ウズベク戦の一撃は、この選手の潜在能力を示すものだった。あれだけ高速ドリブルで前進しながら、ファーサイドにあの速い球足の正確で低いシュートが打てるとは。あんなシュートを打てた日本人は、過去釜本と久保くらいだった。しかし、それだけの能力の持ち主である事は、わかっていた事。問題は、これをいかに継続できるのか。期待は大きいのだ。

 長谷部。素晴らしかった。そして、長谷部不在のウズベク戦の中盤守備の酷い事。改めて、この日本代表史屈指の主将が、負傷で、ブラジル大会にベストに持ってこれなかった不運を呪おうか。遠藤航にとって、極めてレベルの高いライバルがいる事が、これまためでたい。

 そして岡崎。恐れいりました。この2試合、いずれも「消えるプレイ」で隙を見つけ、しっかりと得点できる位置に進出できる能力に感嘆。このスタアを欠いて、アジアカップファイナルで敗退した要因がはっきりわかった。当面、岡崎が充実している間は、日本代表の攻撃の課題は「いかに、岡崎に点をとれせるか?」と言う事になる。その事実を、ハリフホジッチ氏が明確に理解できたのが、この2試合の最大の成果のようにも思える。

 組織云々以前に、個人能力の高さで完勝した訳だ。我々の素材は最高なのだ。だからこそ、新料理人ハリフホジッチ氏の今後の手腕に期待したい。
posted by 武藤文雄 at 02:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月14日

痛恨の引き分けにも明るい展望

 ベガルタは敵地でレイソルに対し完璧に近い内容の試合を展開しながら、試合終了間際に関のミスで失点し、1対1で痛恨の引き分けに終わった。

 前半からベガルタは見事な組織守備。DF、MF8人の整然としたブロックは、浅いラインを保ちながら的確に左右にスライド。金園、ハモンの2トップが、レイソルのDFなりアンカーの茨田に絡み始めるタイミングも絶妙で、隙を作らない。この日の対戦相手のレイソルから移籍してきた渡部は定評のある強さを存分に発揮、守備ラインの中核として地位を確立した。しかも、この日は先制点も決めた。レイソルで定位置を確保し切れなかった渡部だがベガルタでのこの機能振り、この移籍は大成功と言えるだろう。元々、ベガルタの最大の強みは、この組織守備にあるが、新しい選手が多く加入したシーズン早々に、これだけの連係の冴えを見せてくれるのだから素晴らしい。
 ボールを奪うや、梁の落ち着いたキープを起点に、効果的な速攻。ハモンも金園も迷いなく前進し、奥埜が2トップをよくフォローするので、少人数でも有効な攻撃ができる。奥埜は飛び出す場所が的確で、トップスピードでも正確にボールを受けてくれる。そして、何より嬉しかったのが、茂木のロングパスの精度が高い事。前節ホームで攻撃的に戦った際は、この若者のふてぶてしいボールキープに感心させられた。そして、この日は守備的に戦った事もあり、射程距離の長いボールを蹴る場面が増え、その能力も格段の事を見せてくれた。

 一方、レイソルの吉田新監督のチーム作りの意図もよく理解できる。茨田をアンカーに置き、その前に大谷と栗澤を配置する4-3-3。茨田をアメリカンフットボールのクォータバックのように機能させようと言う狙いなのだろう。この育成で定評あるクラブが、若年層を長年指導していたコーチをトップチームの監督に抜擢し、ユース出身の茨田と言うパスの名手を活かそうとするフォーメーション。練度はこれから上がってくるのだろうが、この攻撃を完璧に止めたのだから、ベガルタの守備の質の高さは相当なものとなる。
 さらにベガルタにとって幸運もあった。レイソルはCBの増嶋、サイドバックの輪湖が負傷退場。負けているのに守備選手の交代にカードを2枚切らざるを得なくなったのだ。

 かくして、順調に試合は進んでいた。ところが。
 75分過ぎにハモンが微妙な判定でイエロー2枚で退場。いずれのイエローも妥当な判定だったが、「これは警告だ!」とは言い切れない反則に見えただけにちょっと残念。ともあれ、ハモンが軽率だっとのは間違いない。ともあれ、これも経験だ。
 それでも、ベガルタは整然と守る。工藤が引いて空いたスペースを大谷や大津がいやらしく狙うが、それも押さえる。このまま時計を進めて1-0のままで試合を終えられるかと思われた時間帯。金昌洙の単調なクロス、勢いよく飛び出した関がファンブル。敢え無く同点に追いつかれてしまった。完全に手中にしていた勝ち点がこぼれてしまう、過去幾度も味わったサッカーの魔力。
 こう言う試合もある。小柄ながら丹念な努力で今日の地位を築いた関、今シーズンは六反と言う強力なライバルも加入した中、ほんの僅かに意欲が空回りしてしまったのだろう。関は29歳、GKとしてはまだこれからの年齢だけに、この痛恨をどのように活かしてくれるか。

 先の展望は明るい。奥埜と茂木がここまで機能すると、野沢に負担をかけずに済むようになる。金園とハモンの連係はこれからだし、何よりも開幕戦で格段の得点力を発揮したウィルソンが体調を上げてくる。昨シーズンと異なり、平均年齢も真っ当になったチームだけに、90分間戦い抜くのも問題ないはずだ。
 もちろん、不安もある。茂木は近々ボールの受け方を研究され壁に当たるだろう。負傷の多い菅井が離脱した際に蜂須賀がカバーできるレベルまでに達しているか。そして何より、オフにアジアカップを戦ったにもかかわらずシーズン当初から梁の体調が良好過ぎるのが気になる。
 まあ、こうやって楽観悲観組み合わせて思いをはせるのがまた愉しいのだ。いずれにせよ、ここまで短期に新しい選手で守備組織を機能させた渡邉監督の手腕に疑いはない。新しいベガルタをじっくりと堪能し、近い将来の大成功を愉しみたい。
posted by 武藤文雄 at 20:16| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする