1. ついつい楽観
例えば、敵CKに対するファーポストの守りがおかしいとか、 西沢にPKを蹴らせる理由が不明だとか、 名波(TVでは稲本と言っていたが名波だと思う)が不用意に警告を食らって愚かしいとか、 大事な大会中に風邪で欠場する選手が出るとは何事だ等々、 不満は挙げればいくつでも挙げられる。
また、ここまで大差がついてしまうと、 体調のピークが序盤に来すぎている不安も出てくる。この手の大会で、 序盤から調子を上げすぎるとロクな事がない。また、 日本以外のほとんどの国が、チームとしての準備があまりよくない事も確かだ。 一部のチームはピークを来年の予選に持っていこうとしているのだろう。
しかし、かくも多彩な攻撃で、敵を殲滅する攻撃を2試合続けて見せてもらうと、 ついつい楽観的になってしまうではないか。 最大のライヴァルと予想されていたイランは、 初戦レバノンに大差をつけたのは終盤だったし、2戦目ではタイを攻めあぐんだ。 ついつい「我々はアジアを抜けようとしている」などと、邪な考えを持ちたくなる。
ここまで実力的に一つのチームが圧倒している大会と言えば、 74年W杯のオランダ、82年W杯のブラジルを思い出す。おっと不吉だ。 もとえ、70年W杯のブラジル、72年欧州杯の西ドイツ、84年欧州杯のフランスを彷彿させる。
2. 価値あるゴール
8ゴールを分析してみよう。
1点目と3点目は中村のセットプレイ。 5点目は森島のシャープでしつこい突破。 後半の3ゴールは、名波、中村、小野の技巧による崩し。
これらの6ゴールは、トルシェジャパンが過去も見せてくれたパタンから。 1試合に集中したと言う事を除けば、当たり前の事が当たり前に起ったのに過ぎない。
しかし、2点目と4点目は全く違う。 従来の得点パタンには一切無かったものである。 このような得点パタンが確立するとなると、 日本の攻めの多彩さは尋常な物ではなくなってくる。
(1)2トップだけでのゴール
2点目。左サイド好パスを受けた高原が、 素晴らしい突破(事実上3人を突破した)、 中央をよくルックアップして、センタリング。 足元に入る難しいボールを丁寧に西沢が押し込んだ。
そう、2トップの2人だけでゴールを奪ったのである。 FWの個人的な能力によるゴールは最近の日本代表では、 ほとんどお目にかかることができないでいた。 私の記憶する限りでは、3年前のW杯1次予選の初戦、 (おっと同じウズベク戦ではないか)カズの大爆発以来ではないか。 もっとも、その大爆発以降、小爆発すら起らなくなってしまったのだが。
2トップだけのゴールって、いつもいつもうらやましいと思っていた。 ロマリオとロナウド、サモラノとサラス、とまでは行かなくても、 五輪の南アフリカのように、2人だけでさっさとゴールする能力のある2トップがいれば、 どんなに楽だろうと思っていた。
確かにウズベクのDFは緩慢だったかもしれないが、この2点目は、 大差がつく前の出来事。少なくとも、ウズベクの集中が切れていた訳ではなく、 能力差で打ち破ったゴールである。この2人のコンビで、 今後もこのようなゴールを築く事ができれば、 中盤を封鎖された時(もっとも今の日本の中盤を押さえ込む事が極めて難しいのだが) の打開策となる。
西沢も高原もこのゴールの重要性を認識し、自身を持って個人能力を高めていって欲しい。
(2)服部の好パス、高原の1対1
4点目も驚きだった。服部がドリブルで前進、前方をルックアップし、 DFライン後方のスペースを狙い済ましたロブの好パス。 フリーで抜け出した高原がGKを引き付けて落ち着いて決めた。
服部と高原には大変失礼ながら、パスを出したのが名波か中村であり、 ゴールしたのが中田や小野ならば、私は何も驚かない。
まず服部のパスだが、あれは非常に難しいパスだ。 ちょっとボールを蹴った事がある人ならわかるだろうが、 静止しているボールか自分に向かってころがっているボールならば、 精度あるロブは蹴りやすい。しかし、自分から遠ざかるボール (つまりドリブルしているボール)で精度あるロブを蹴るのは、 非常に難しい。トッププロでも、このようなパスを蹴る事のできる人材は限られる。 まして、この場面は、トップスピードのドリブルと言い、 限られたスペースと言い、敵との相対関係と言い、極めて難しい状況だった。
あの体勢を見る限り、明かにあのパスは狙い済ましたもの。 服部と言う格段の守備能力と常識的ながらミスの少ないつなぎを期待されているタレントが、 このような好パスを出せるとすると、敵に対して大変な脅威を与える事ができる。 日本の攻撃の幅が大きく広がる可能性がある。いや、別に今回の1回限りでも、 服部が凄い選手である事には変わりはないんですけどね。
さらに高原。高原がこの手のGKとの1対1が下手なのは定評のあるところ。 従来の高原のゴールのほとんどは、センタリングに飛び込むパタンか、 (サウジ戦のように)パワーで叩きこむもの。 トラップ後やドリブルからのシュートはGKにタイミングを読まれてブロックされるか、 枠を外すのが再三だった(五輪の南アフリカ戦の決勝ゴールも、 中田のパスが完璧でGKの前でつつくだけだったので、 GKにタイミングを読まれる恐れはなかった)。
ところが、この場面では、正確なボール扱いと落ち着いた判断で、 きれいにボールを流し込んだ。嬉しい事に、 後半の7点目も落ち着いて流し込みのゴール。 サウジ戦の一発もそうだが、成功事例をしっかり捉え、 反復練習を重ねて欲しい。
高原(別に高原でなくても西沢でも久保でも柳沢でもいいのだけど)のシュートが、 そこそこ入るようになれば、日本代表の「得点力不足」は、 僅か半年で解消する事になるのだが(参照「得点力不足」の代表チーム)。
3. 小野と北嶋
交替出場した小野と北嶋の態度には大きな違いが見られて面白かった。
小野はサウジ戦もそうだったが、実に落ち着いている。 本人自身、体調と試合勘が戻れば、必ず代表に呼ばれるし、 レギュラも確保できると、確信しているに違いない。まあ、 その「天分」からすれば、そう思うのもよくわかる。無理せずに、 少しずつフィットしていこうとしているようだ。しかし、 高校チームに3年い続けたことや、不運な負傷から、 欧州進出が遅れているのも事実なのだ。冷静なのは素晴らしいが、 もっと貪欲さを前面に出してもらえぬものか。決勝トーナメントでの活躍を期待したい。
一方、北嶋の立場は全く違う。次回、 呼ばれる保証は何もない。投入早々から必死でゴールを目指していた。
気の毒なのは、五輪代表を含めて、 トルシェのチームではあまり登場機会を得られていない事。 パスの出し手との連携が巧く取れていなかった。それでも、 結果を出した事を高く評価したい。しかも、 シュートそのものも見事。小野のパスで勝負ありだったが、 GKのかわし方、ゴールへの流し込み、いずれも意図通り。 さすが、ユース時代から、シュートの巧さでは定評のあるタレントである。 A代表のデビュー戦でゴールできた選手は、そうはいない。
上記のように高原のシュート能力に向上が見られ、西沢、 柳沢らも結果を出している状況は、北嶋にとって厳しい物はある。 しかし、天性とも言うべきシュートの巧さは、他のライヴァルにはないもの。 この日のようにチャンスを逃さずに、一歩一歩向上していって欲しい。
2000年10月19日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック








