2009年06月26日

も1つACLを愉しむ

 ACL1/16ファイナルのガンバ−フロンターレ戦は、西野朗氏と関塚隆氏(2人とも南アフリカ後の日本代表監督の有力候補だ)が、お互いに「虚々実々の駆け引きを行い損ねた事」が、勝敗を決めた試合だった。
 西野氏は戦闘能力でフロンターレを押しつぶすと言う、確率的には最も妥当な策を採った。そして、ほとんど勝利をつかみながら、いくつかの不運で詰め損ねた。
 関塚氏は、戦闘能力でガンバと真っ向勝負を挑むと言う、アジアのほとんどのチームが「採るべきではない」策を採った。そして、ほとんど徳俵まで追い詰められたが、いくつかの幸運と、中村憲剛の能力で勝利した。

 フロンターレに同点に追いつかれるまで、ガンバは完璧に近かった。結果が出た今となっては、3点目を強引に取りに行くべきだったとか、前半の憲剛の得点はあそこに至る前に止めなければとか、色々な事が言える。けれども、戦闘能力を前面に押し出して押し切る策は、ほとんど成功しかけていたのだ。2−1とリードした後半は、前半ほど無理をせずに、しっかりとボールを保持、フロンターレは打つ手がないまま時計は進んでいた。
 一方のフロンターレは関塚氏の採る策は完全に裏目に出ていた。スタメンの3トップは、万博のガンバに対しての策としては無謀と言うもの。憲剛の個人能力によるあの同点弾がなければ、前半で勝負はついていた。さらに後半から鄭大世に代えて養父を起用し中盤を厚くした修正にしても、リードされる前ならいざ知らず、リード後のものだっただけに、通常ならば「遅過ぎる修正」としか言いようがないものだった。実際、ガンバが遠藤を軸にしっかりボールをキープするだけに、得意の速攻は仕掛けられず、むしろボールを持たされて奪われる最悪の展開となっていた。

 ところが「格段の個人能力」による同点弾が全てを変えてしまった。鄭とジュニーニョ抜きでも「格段の個人能力」が残っているところはフロンターレの最大の強みか。そして、逆転弾の憲剛のラストパスに至っては、采配や運不運をどうこう語っても仕方がないだろう。。
 この日、西野氏に唯一ミスがあったとすれば控え選手の選択。寺田も倉田もベンチに入れていなかったのには、ちょっと驚いた。この日のスタメンのMF4人は皆すばらしい選手で、すばらしいプレイを見せていた。しかし、それぞれ皆相応なお年だし、体調的にも十分ではないのは自明だった。リードしている後半半ば、あるいは同点とされた直後に、寺田か倉田のいずれか(もちろん両方でもよい)を投入すれば、ガンバの中盤は再度活性化され、そのまま押し切る確率は高まったのではないか。寺田も倉田もそんなに体調が悪かったのだろうか?
 一方の関塚氏。氏はどんな劣勢でもあきらめず「鄭とジュニーニョを外す」勇気があった。そう言う事である。

 いま思えば、西野氏と山口の仲間達には3つの不運が襲いかかっていたのだ。
 ACLは非常に珍しいレギュレーションを採用している。1/16ファイナルが一発勝負な事だ。これは、セントラル方式でない国際試合では非常に珍しいやり方だ。1次リーグの興味をつなぎ(従来は1位のみがトーナメントに進出できた)、日程問題も解決する(1/16ファイナルと決勝を一発勝負にしたから、昨年までと1チームの総試合数は変わらない)一挙両得の方策だった。そして、この珍しいレギュレーションは、「番狂わせ」を生みやすくした。ガンバにとっては、これが1つ目の不運だった。もしこれがH&Aだったならば、西野氏としても前半からあそこまで飛ばさずに、丁寧に戦う選択肢もあっただろう。ところが、この試合はACL独特のレギュレーション「一発勝負」。無理をせずに90分間で確実に1、2点を取って勝つ事を狙う策が、圧倒的に攻勢を取り殲滅戦を狙う策より、果たして有効だっただろうか。私は西野氏の策は正しかったと思う。
 こう書くと、フロンターレ関係者の方は、「ガンバにフロンターレが(敵地とは言え)勝つ事は番狂わせではない」とおっしゃるだろう。そうだ、ガンバにとっては、いきなり1/16ファイナルでフロンターレで戦う事自体が、2番目の不運だったのだ。思い起こせば、1次リーグの第4節まで、この2クラブは圧倒的な強さでグループの首位を走っていた。ガンバはそのまましっかりと首位を確保したが、フロンターレは最後の詰めを誤った。例の天津とのラフファイト。その天津戦の影響もあり浦項戦には注文相撲負け(森勇介の出場停止は痛かった)。この2連敗によって、フロンターレは2位となり、この対戦がこの早期に実現してしまったのだから、ガンバも「天を恨む」しかあるまい。
 さらに3つ目の不運は、代表チームでの遠藤と憲剛。遠藤は負傷したため早々に離脱、憲剛はそのため(遠藤不在)もあって、疲労困憊でフロンターレに復帰した。前節のJは2人とも休養。これで疲労が抜けた憲剛はフル回転、一方の遠藤はやや試合勘に欠けた感があった。試合前は、むしろ憲剛の疲労が心配されていたのだが。

 昨期のアジアチャンピオンガンバは、このオフに大幅な補強を敢行し、シーズンのここまでも連覇を最優先した戦い方をしてきた。そして、上記した通り、多くの不運とほんの僅かなミスから敗退した。これも歴史なのだろう。
 関塚氏と中村憲剛の仲間達は、アジア制覇に向けて、とてつもなく大きな壁を破る事に成功した。しかし、彼らはまだ一昨年涙を飲んだ地点まで到達したに過ぎない。アジアチャンピオンへの道は、まだまだ遠い。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フロンターレの勝利は素直にうれしいです。
2007年セパハン戦を等々力で観戦し、PKで敗退。

帰りの道でセパハンサポに「PKはしょうがないよ〜」と言われた悔しさがあったので・・。

9月にまたフロンターレを応援できる喜びはなんともいえません。

ただガンバにもアントラーズにも消えてほしくなかったですが。
Posted by 横浜サッカー人 at 2009年06月29日 13:00
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