2009年07月07日

もう、どうにもとまらない

 ヴィッセル0−2FC東京。
 一杯やりながらノンビリとした映像観戦。改めて、もはや「絶好調」では語れない石川直宏を愉しんだ。
 
 前半、石川が宮本のミスを拾って挙動開始。その宮本に向かって行って抜き去り、敵陣に向かい斜行してヴィッセルDFを引き付けた上で、外側でフリーの平山にラストパス(この後の平山のGKニアサイドを狙ったシュートは強さもコースもやや甘く、GK榎本が好捕)。
 この場面の、抜き去る際に抜こうとする敵に向かって行くのは1対1の基本、さらにここでのフェイントは瞬間的にボールを横−縦に動かす典型的なフェイント。この突破は小学生への格好の教材になるプレイだった。さらに斜め方向、敵ゴールの中心線の延長上に向かう(つまりゴールへの最短距離を選択した)。宮本のカバーに入っていた北本は石川のシュートが怖いから中に絞るしかなく、北本の体重が完全に内側に寄った瞬間に、右外に走りこんでいた平山に、ほぼ完璧なスルーパス。このラストパスは、ドリブルの方向の的確さ、パスを出すタイミング、パスそのもののコースと強さ、いずれも中学生への格好の教材となるプレイだった。
 元々若い頃から、石川は瞬間的な足の速さが注目されてきた(特にアテネ五輪代表監督は、石川にサイドの突破ばかりを期待するような起用を行った)。しかし、当時からこの場面のように内側に切れ込んでの鋭いスルーパスと言う武器もあった。これが高精度のシュートと言う脅しにより、一層効果的になってきたと考えればよいか。

 余談ながら、平山の逸機。トラップも悪くなく、北本の体勢を的確に判断して、ブロックが届かないニアを狙ったのだが、ややコースも強さも甘くGK榎本に好捕されてしまった。このあたりは、もっと数を蹴って欲しいところ、少しずつだがシュートが増えてきた事を、今は喜ぶべきなのだろうか。
 それにしても、よくもま収めるのものだ。この試合では足下の強いボールのみならず、少々不正確な緩い浮き球も収まるようになってきている。でも、何をどう収めようが、この男はドカスカ打ち始めるまではダメだ。

 以降も石川の好プレイは継続する。カボレのパスを受けた平山がペナルティエリア内で見事なトラップをしてシュートを狙おうとしたボールをかっさらい、振り向き様のシュート(またも榎本好捕)。後半に入り、今野(だと思ったが梶山だろうか)のロングボールを右オープンで受けて切り返して、左足でドライブシュート(これまた榎本好捕)。
 そして先制点。平山がしっかりと受けたボールをカボレ、羽生とつなぎ、敵DFの前でボールを受けるや大きめのトラップで敵DF2人を外し、鮮やかな強シュートを決めてしまった。もう、このトラップを何と形容したらよいのだろう。羽生からのボール、敵DFの位置取り、敵陣、自分の可動距離、これらを一瞬で判断し、強いボールを蹴る事ができるところに完璧にボールを置き直した。トラップと言う言葉の元々の意味は「罠にかける」と言うものだが、正にこの石川のトラップは「止める」のではなく「蹴るための場所に意のままにボールを置き直した」プレイ。判断と技術が高度に組み合わされた見事な得点だった。参った。

 今のFC東京は、完全に正のフィードバックがかかり始めている。平山に収まるからカボレが自信満々裏を狙える。石川を押さえたくても、羽生と米本とがあちらこちらに顔を出すので、押さえられない。そのため、ズルズルと後方に下がると、梶山が悠然と高精度なサイドチェンジを通してくる。軽率に前に出て行けば、この日の2点目のような鋭い逆襲の餌食になる。
 重要な事は、このチームはまだ「連動が成熟している」ようには全く見えない事だ。両サイドバックの長友も徳永も、前線に顔を出そうとするのだが、まだまだタイミングなり周囲の選手の使い方が固まっていないから、それほど効果的ではない。それでも、石川と平山を軸に崩してしまうのだから、恐れ入る。
 もちろん、監督交代直後のヴィッセルの守備組織の甘さは割り引いて考える必要があるだろう。しかし、石川の大化けと言う刺激が、チーム全体のレベルを一気に上げようとしているように思えたのだ。

 これまた余談ながら、カタールのクラブが、ヴィッセルで冴えない采配を繰り返したカイオ・ジュニオール氏を雇う理由が、よくわからない。Jでボカスカ得点するブラジル人ストライカならば、理解できるけれど。カイオ氏に大枚をはたくならば、清水秀彦氏あたり(笑)の方がよほど役立つと思うのだが。まあ、いいか。

 今の石川は、ドリブル、パス、シュートいずれも極めて鋭く、さらにボールを受ける動きも大きい。国内でここまで鮮やかな万能な単独攻撃を見せてくれた日本人選手は、過去そうは記憶にない。80年代半ばの木村和司、90年代初頭の福田正博、幻と消えた90年代半ばの前園真聖、そして渡欧直前の中田英寿、中村俊輔くらいか。そして、石川が彼らと異なるのは28歳と言う「遅咲きの完成」である点だ。今までの豊富な経験が、何かどこかで完璧にかみ合った事で、このすばらしい石川直宏が完成したのだろう。
 先日来、代表入りへの期待を再三書いてきた。ところで、欧州のクラブのスカウト達には、まだ石川の覚醒は気がつかれていないのだろうか。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
正直、石川のプレーだけ次元が違う
今、こういう選手を日本で生で見られるのは幸せな事だと思う
絶対にスタジアムで生で体感するべき

Posted by たらら at 2009年07月08日 11:41
石川だけ別次元の選手みたいでしたね
しかし平山押してますね(笑)
試合みた感じでは病み上がりらしく、いつもよりさらに鈍い平山だったので、ここで殊更平山押しの文章に違和感を感じましたが、まあ見方は人それぞれですよね
Posted by 佐原 at 2009年07月08日 14:39
ネガティブ思考で申し訳ありませんが、こういう時に限って大きな怪我をしないか心配してしまいますね。
Posted by どめ at 2009年07月08日 17:15
テレビでみた限り(ニアに打ちセーブされた)平山へのパスは不満です。平山としてはもっと強いパスが欲しかったと思います。
Posted by いつも楽しみにしてます。 at 2009年07月09日 04:03
岡田武史監督(52)は最近2試合のリーグ戦で3得点と好調の元日本代表FW高原直泰(30)=浦和=と、得点ランク2位の9点を挙げている元日本代表MF石川直宏(28)=FC東京=を直接視察する。(7/9デイリースポーツ)

このまま石川が日本代表入りして、9月のオランダ遠征(対オランダ、対ガーナ)で活躍し、そのまま欧州移籍へ、なんてことが本当にあるかもしれませんね。
但し、今の好調さをキープする必要がありますが。



日本代表後期日程(現時点で判明分)
9/5親善オランダ対日本(オランダ・エンスヘーデ)、

9/9親善ガーナ対日本(オランダ・ユトレヒト)、

10/10親善日本対スコットランド(横国)、

10/14親善日本対トーゴ(大分ビックアイ)、

10月中アジア杯予選日本対香港(日本)、

11/14親善イングランド等の欧州勢対日本(国外での親善試合交渉中)、

11/18アジア杯予選香港対日本(香港)、

2010/1/6アジア杯予選イエメン対日本(イエメン)、

3/3アジア杯予選日本対バーレーン(日本)
Posted by 日本代表後期日程他 at 2009年07月09日 16:23
>羽生からのボール、敵DFの位置取り、敵陣、自分の可動距離、これらを一瞬で判断……

 あのスペースをパスを受ける前から察知し、そこからゴール枠内へ蹴るシュートの角度、強さもイメージしてますね。そして流れるような、イメージ通りの動作。
 凡人たる自分は最初見た時、トラップ失敗がたまたま上手いところに落ちたと思ったものですが、何度もスロー再生を見て凄みに気付きました。
 見てみたいですね。代表での石川。
Posted by 風見鶏 at 2009年07月10日 23:54
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