2011年09月27日

セレッソの冒険が終わった

 J2に陥落して3期にわたり苦闘を続け、J1に復帰した昨期は鮮やかに上位進出してACL出場権を獲得、さらにACLでは1/16ファイナルでライバルのガンバに競り勝ってベスト8進出。技巧と判断力の富んだ若手選手と、実戦的なブラジル選手をうまく組み合わせた攻撃指向の強いサッカーでのアジア制覇への野望は、失敗に終わった。

 勝負は、金甫�Qがラフプレイ2発で削り出されたところで決まった試合だった。1本目は金相植が、完全に足裏を見せて当たっており、2本目の崔[吉吉]淳は、止めようと思えば止められたのに意図的に止めなかった頭突き。本来であれば、この時点で全北は9人になってもおかしくないほど、ひどい反則だった。しかし、金相植にしても崔[吉吉]淳にしても、ホームグラウンドの試合で、物事を無難にまとめる習性があるアラブ系の主審ならば黄色で止まると判断しての事だったのだろう。
 いつもいつも言っている事だが、このような試合でのラフプレイでの審判の判定の甘さについては、日本協会は明確に抗議をすべきだと思う。この試合の判定は覆らずとも、審判の能力を上げて、選手が傷つくラフプレイを少しでも減らして行く努力は、アジアのレベルアップのためにとても重要なはず。韓国サッカー界にとっても、日本と共に世界最高レベルを目指そうと言うならば、このような世界大会では通用しない策をとる事は避けるべきだろう。
 清武が本調子ではなく、金甫�Qまでがピッチを去ってしまっては、セレッソはボールを落ち着けるポイントがなくなり、そのまま全北に押し込まれてしまった。元々、セレッソは組織的に稠密な守備をするのではなく、前線のタレントがしっかりとボールを収めて、反対サイドのゴールを頻繁に襲う事で、守備組織を再構築する事が守備の基盤となる。
 そして、全北は李東国が32歳になってなお絶好調。ルイスとエニーニョの2人の能力も相当高い。この3人に最終ラインに持ち込まれてしまっては、茂庭、藤本、扇原のセレッソの中央の3人には荷が重い。何とか中盤で敵の攻勢を止めたかったのだが、上記した攻撃力激減で失敗した。
 正直言って、今日の李東国は、ちょっと今日の茂庭ではどうしようもない感じがした。茂庭は決して能力は低くないのだが、プレイの連続性と言うか、集中の継続にムラがある。そして、今日はダメな茂庭だった。対して李東国の忌々しい事。2点目のヘディングの位置取りの絶妙な事、3点目のグラウンダシュート直前の間合いの取り方のうまさ。この選手をちゃんと見たのは、98年のアジアユース、遠藤、中田浩二、播戸らの世代だった訳だが、時々酒盛りなどして引っ込んだりもしたが、まあお元気でしたね。観戦していた趙広来氏が「ああ、またベテランに頼らなければならないのか」と仏頂面なのも、おもしろかったが。
 しかし、この試合に関しては、李東国の美しいプレイは忘れ去られ、件のラフプレイだけが記憶されて行く事になるだろう。2002年に韓国代表選手が見せた見事なプレイは誰も覚えておらず、審判団の怪行動しか覚えていないのと同じように。もう1回言おう。韓国サッカー界は我々と共に世界を目指したいのか、我々が世界を目指すための捨て石として今日のような恥ずかしいサッカーを継続していきたいのか、どちらを選ぶか真剣に考える時期に来ているのではないか。まあ、我々としてはどちらでも構わないが。

 ともあれセレッソ。
 香川が去り、乾が去り、マルチネスが離脱し、それでもこのクラブは次々にタレントを見出し、完成させてきた。それも皆、技巧と判断に優れた攻撃タレントを。
 昨期、昇格直後にセレッソが見事なサッカーを見せてJ1で3位になったのは、相当な話題となった。ただ、この偉業は「3位になった事」よりも、「なぜこれだけのチームが簡単にJ1に戻ってこられなかったのか」が本質だと思っている。クルピ氏の攻撃タレント指導能力、セレッソ若年層チームの攻撃タレント育成能力、セレッソスカウト陣の攻撃タレント発見能力。いずれも、すばらしいものがある。香川がドイツに去った後も、乾らを軸に上位進出した手腕には恐れ入った。しかし、あの豪華絢爛なタレント集団ならば、J1の3位になる事そのものは驚きではなかったのだから。
 そして、今日の何とも言えない負け方と、J2を中々脱出できなかった事には、明らかな共通点がある。上記した通り、クルピ氏の作るチームは、攻撃面のよさを発揮できなくなると、守備がガタガタになる。全北と、J2のではレベルが確かに異なる。でも、当時の我々ベガルタを含めたJ2のチームは、皆その弱点を執拗についた。そして、日程的に平日試合が多かったり、代表に香川がとられたりすると、てきめんにセレッソの隙は広がっていた。
 そう言う意味では、J2時代に愉しく遊んでもらった仲間としては、今日のセレッソの冒険の終わりは、何とも甘酸っぱい想いを感じたのだ。ただし、その終わる直接要因が、あの愚にもつかない主審と、清武を休ませればよかった五輪予選のせいだった事に、憤りはあるのだが。

 果たしてセレッソはクルピ氏を引き止める事ができるのだろうか。
 もう1回クルピ氏はやり直してくれないだろうか。このクラブには、丸橋も山口蛍も永井龍も杉本健勇も、そして(今日ルイスとエニーニョにチンチンにやられると言う最高の失敗経験を積んだ)扇原がいるのだから。また、すばらしいチームを作るとても愉しいシゴトが待っているのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(10) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
武藤様がこれまでお書きになった記事ですが、
例えばどのような雑誌やウェブサイトを
探せば拝読させていただくことが可能でしょうか?
差し支えなければ、ぜひ教えてください。
Posted by suzuki at 2011年09月28日 09:14
ACLで負け続けるのは,単にJリーグのチームに力がないからなのか,分かりませんが,各チームには出場するなら選手を補強するなどACL対策は立てているのでしょうかね.
ベスト4より前に敗退したら,Jリーグの勝ち点から相応の減点をするくらいがいいと思いますよ.
鹿島とか,毎年出るだけで,Jリーグでは大きな顔してますが,最初からACLを辞退してほしいと思いますよ.
Posted by 若さま at 2011年09月28日 10:24
確かに昨晩はひどかったですが、ジャッジも含めてアウェイということで、その対応が出来ていないため、ACL初参戦のチームはだいたい韓国か中国で撃沈されるというイメージがあります。

セレッソはJ2でも優勝していないし、カップ戦タイトルとっていない・・・「勝ちきる」経験がないチームだという印象があるのです。そこの壁をどう乗り越えるのか。
一方では海外移籍しやすいことをウリに有能な若手を集めるというチーム方針のようで、それだとどんどんメンバーが入れ替わるので、前述のスキル蓄積は難しい。
今後のセレッソは、そういった戦略次第のように思います。

>ベスト4より前に敗退したら,Jリーグの勝ち点から相応の減点
本場のCLでも、ビッグチームがとんでもないところで負けたりしていますけど。そういうジャイアントキリングもサッカーのおもしろさのひとつでは?
毎年ACL圏内を確保できるって、すごいことだと思います。アントラーズやガンバは並行して天皇杯もそこそこ行ってますしね。
Posted by mimi at 2011年09月28日 11:54
ぜひ抗議して欲しい。
もうそれに尽きます。
このままでは、ACLは罰ゲームだ。なんて言われます。

それとも、あのようなラフプレーさえもかわす技術かパスワークか何かを身につけろということなのでしょうか?

ACLは欧州の審判を派遣して欲しい。
中国済南の女子サッカーロンドン五輪予選がそうだったように。
Posted by むさきち at 2011年09月28日 15:13
ワタシは泣いています
ベッドの上で・・・じゃなくTVの前でした

私のcerezoがかくも無残な痛められ方をして経験と言うならそんなものはいらないなあと思います
8番と10番と20番さえ止めればいいのに出来ないのにはイライラしましたがそれはサッカーの楽しみでもありました
でも自国の代表を高給取りと怒って削りに削りお得意の頭突きで選手生命の危機に晒すなんて信じられない人間性です
全北現代の監督や選手の謝罪コメントも無いとはどういうことなのか

武藤氏の的確な指摘の通り私の関心事は「レヴィーを引きとめてくれ」です
この素晴らしい監督と共にいつか必ずアジアチャンポンになりたいと心底思います
Posted by ロベルトヤマ at 2011年09月28日 15:52
>ベスト4より前に敗退したら,Jリーグの勝ち点から相応の減点をするくらいがいいと思いますよ.

いくらなんでも妄言がすぎるでしょう。

そういえば少し前は、ACLは遠征費用がかさんで、相当勝ち上がらないと収入を出費が上回る状況だったと思いますが、あれは解消されたんでしょうか。
Posted by yocc at 2011年09月28日 16:01
桜サポですが、言いたい事を綺麗にまとめてくださってありがとうございますと言いたいです

無様な姿をお見せしましたが
元々満身創痍の状態では、あれが精一杯でした

自分も試合が終わって思ったのは、ぼろぼろにされたウチの選手たちよりも
「Kリーグで首位独走のチームがこんなサッカーしか出来ないのか?
この程度のサッカーで満足してていいのか?韓国」
ってことでした

ウチラはどん底から這い上がるのは得意ですからね

普通にやっても多分普通に負けてただろう
と思うくらい前線3人は強力でしたので、
「普通のサッカーの試合」が見たかった、というのは甘いんですかねぇ

経験は大事だと思いますが、アジアの一部でしか通用しない経験って
果たして必要なのか?と考えさせられました
Posted by でぃ〜 at 2011年09月29日 11:12
> 韓国サッカー界は我々と共に世界を目指したいのか、我々が世界を目指すための捨て石として今日のような恥ずかしいサッカーを継続していきたいのか、どちらを選ぶか真剣に考える時期に来ているのではないか。まあ、我々としてはどちらでも構わないが。

短期的に直接的な被害者になる我々が、「どちらでも構わない」という訳にはいかないでしょう。
中長期的に見ても、もし我々が韓国を常に上回りその実力差が更に開いた時、韓国が大人しくなると思いますか? むしろより酷くなるとしか思えないのですが。

だからと言って私達サッカーファンにできることなんてほとんど無いのが歯痒いのですけどね・・・
なので私なんかより遥かに発信力のある武藤さんに、ことあるごとにこの問題を取り上げて頂ければと期待してます。
Posted by kt at 2011年09月29日 18:34
さすがは今期ACLで名古屋・鹿島を屠ったKリーグにおけるダントツ首位のチームというか、
長居での試合でも全北の圧力はJリーグでもなかなかお目にかかれないぐらい感じたので
アレがなくとも2回やったら1回はかなりの確率で負けがくるなということは覚悟しておりました。
おまけに去年J1ベスト2の失点数に貢献したアマラウを諦めてまで獲得したボギョンを壊されては。

しかしラフプレーといえば中国へのマークに気をとられがちで、
韓国については武藤さんもちょっとノーマークだったような気がしますが、パンチの効いたやつを頂いちゃいましたね。

代表チームがにわか仕込みの攻撃サッカーが、札幌で年季の違いをみせつけられてぼこぼこにされたり、
八百長でリーグが大荒れになったり、と彼らも02年以来の本気モードが来てるのかも。
これもサッカー、なのか?
Posted by brave blossoms at 2011年09月30日 22:50
まあ今回、あちらには周到にもラフプレーより先に抗議しなければならないポイントを作られてしまいましたね。

趙広来監督が仏頂面をしていたとすればそれは、
頼らなければならないのは李東国というより全北が見せたあの韓国伝統のサッカースタイルである
ということに国民のコンセンサスが向くことではないかと。

果たして彼は韓国のフィンケとなるのかどうか。
となるとさしずめ崔康熙・全北はピクシー、いや闘莉王・名古屋か。
Posted by at 2011年10月01日 00:05
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