2012年12月23日

関口と過ごした9年

 関口がレッズに移籍する。
 毎期ごとに、海外を含む他クラブに移籍する噂が駆け巡りながら、1月中旬頃には再契約を結ぶのが定例となっていたので、今回もそうなるのではないかと淡い希望も抱いていた。でも、さすがに今期はダメだった。仕方がないとは言え、残念だ。
 私が関口を初めて認識したのはこの試合だった。その半年後、J2に陥落した我がクラブに加入した関口は、我々に丸9シーズンの間、付き合ってくれた訳だ。人生において9年、サッカーにおいて2.25ワールドカップと言う期間は、決して短くない。やはり、何とも言えない空虚感にとらわれる。

 関口と過ごした9シーズンは、ちょうど3年ずつの、3つの期間に分けられる。
 最初の3年間は、ベガルタが正にブレていた時代。ベルデニック氏、都並氏、ジョエル・サンタナ氏と監督も方針もクルクル変わった時期で、関口も必ずしも定位置を掴めなかったが、経験積んで行った時代だった。まだ18歳のシーズン1年目、ベルデニック氏に抜擢されたこの若者の長所が独特のリズムのドリブルである事、そして前に出る事ができる能力が格段な事は、すぐにわかった。もっとも、よい体勢でボールを受ければ、敵への脅威となるが、簡単にボールを奪われるとピンチを招いていた。関口本人も、ベガルタと言うチームも、そのような対応が甘い時期だった。まあ、この3年は腹が立つ事も多かった。しかし、今となれば、この方針クルクルも、お三方に指揮を執ってもらった事も、それぞれ1つ1つが経験とでも言うべきなのかもしれない。だいたい、算数ができない監督に沈められたり、あまり役に立たなかった選手が後にセレソンになるなどと言った経験は、他のクラブのサポータには、積もうと思っても、そう簡単に積めないのだから(おっと、後者はそうでもないか)。
 次の3年間は、ベガルタの強化計画が軌道に乗り始め、散々はね返されながら昇格を果たすまでの時代。よい筋力トレーニングを継続したのだろう、子供の体型から大人の身体になった関口は、ドリブル突破の後のシゴトも少しずつこなせるようになってきた。また、サイドMFとして、しっかりとした守備をした後に長駆して突破できるスタミナも身につけた。そして、鮮やか活躍幾度もして、関口はJ1昇格に貢献してくれた。
 そして今期を含めた3年間。J1で4位、2位なんて、1度たりとも想像した事があったかい?しかもACL出場権も獲得したのだぜ。J1昇格最初のシーズン、関口は日本代表にも選考された。そして、気がついてみたら、ベガルタはJ1で上位を争うのが珍しくなくなり、関口は長駆してフィールドを上下し、菅井と連係をとりながらサイドを切り崩し、日本のサッカー狂の誰もが知る存在となった。精神的にもチームのリーダ格として、梁が不在の時は腕章を巻き、「献身できる天才肌」と言う存在感を見せるようにもなった。

 正直言って、今の関口は「河岸を変える事を検討する時期」だと思う。
 代表に選ばれ、日本のトップレベルに後一歩のところまでたどり着いた所で、もう1つ壁が破り切れない状況になっているからだ。今期にしても、シーズン途中、太田に完全に定位置を奪われ、控えに甘んじてしまった。そして、再三勝負どころで、交代起用されても、必ずしも決定的な活躍ができていない。このようなケースで、同じ監督の下、戦い続けるのは、よくない結果を生む事が多い。こうして、下降してしまう選手を、過去幾度も見て来た。客観的には、この移籍は妥当なものかもしれない。
 また、(結果的とは言え)控えに回っていた関口の人件費を、他に振り当てる事が、より短期的なクラブの成功につながる可能性もあるだろう。今期の2位と言う成績は、多くの選手に相当なサラリーアップをしなければならないものなのだし。
 加えて、現実的に浦和レッズと言うクラブは、我々よりもより多くの金銭条件を出せるのは自明な事。短い現役生活を考えれば、関口のその選択もまた適切なものだ。余談ながら、レッズが多額の金銭を関口に約束できるのは、レッズの歴史的努力によるものだ。数十年以上にも渡るサッカーどころとしての地域としての蓄積、やはり数十年にも及ぶ旧三菱以来のチームとしての伝統、J開幕以降ホームタウンを重視してきた数々の施策、ワールドカップ開催時に鉄道駅から歩ける距離に専用競技場を作った見識、アジアチャンピオンや拡大トヨタカップでの輝かしい成果。これら全ての蓄積が、関口へのより高い金銭的評価の提示につながっているのだから。
 もちろん、柏木、梅崎、マルシオ・リシャルデス、原口、山田直輝らとの定位置争いは厳しいものだろうし、関口の短期的将来が格段に明るいものかどうかはわからない。けれども、「河岸を変えた」関口が、さらなる成長を遂げ、1年半後のブラジルで応援できたとしたら最高なのは言うまでもない。

 だからと言って、そう飲み込めるものでないのは、言うまでもない。やはり残念だ。

 1つだけ。この移籍は関口にとってはステップアップではない。今期も昨期も、リーグ戦の成績で、我々はレッズを上回っているからだ。つまり、関口は定位置を失い、より金銭的によい条件を出すと言う下位のクラブに移ったに過ぎないのだ。
 俺は、本当に小さい男だな。

 朴柱成が去った。何とも寂しい。
 そして、関口が去った。何とも残念だ。
 この2人を失った事で、また新たなサッカーのすばらしさに触れる事ができた。
posted by 武藤文雄 at 02:17| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小さくないです。サポーターとしては頭と心の理想的なバランスで尊敬します。

ちなみに関口は右WBが主戦場になると思うので、ライバルは平川や宇賀神(もしくは梅崎)になると思われます。
Posted by 赤い人 at 2012年12月23日 03:34
私も関口と同じ時期にサポーターになり(正確には2003/4/29ジュビロ戦からの途中加入)まさに関口と過ごした9年間でした。
Posted by dera(YAMASITA13) at 2012年12月23日 14:54
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