2007年01月02日

勝者のメンタリティ −天皇杯決勝(上)−

 不思議な試合だった。レッズのチームコンディションは相当酷かったのだろう。前半から圧倒的に押し込むガンバ。最終ラインで我慢するレッズ。試合は終始そのペースで進んだ。

 レッズは守備的MFの啓太と山田が、両翼のカバーに追われ、結果的にガンバの遠藤が再三フリーでボールに触れるので、猛攻が継続する。たまにレッズがボールを奪い逆襲を仕掛けても、小野が明神に押えられており、さらに後方の押し上げが遅く攻め上がるのは前線の3人だけと言う状況で、すぐにガンバに攻め返される。

 ただし、レッズの最終ライン、特に内舘の読みが冴え、GK都築も大当たりでガンバはどうしても最後で崩し切れない。この展開が約85分間継続した。

 レッズは劣勢を立て直すべく、長谷部、岡野を投入するも、状況はそう好転しない。さらに啓太が足を引きずり始め、ポンテの運動量も目に見えて落ち出し、いよいよ憂色が濃くなってくる。一方で、このような展開にありがちだが、ガンバはガンバで攻め疲れと言うかチーム全体の運動量が落ちてきた。

 そして迎えた運命の瞬間、長谷部が見事なボール奪取から右に流れながら、素早く前線の岡野へ展開。圧倒的に攻勢を取っていたためか、ガンバの守備陣の反応がやや鈍い。岡野独特の縦に出る動きの陽動動作から、鋭角のセンタリング、緩いボールに永井が見事な反応から決勝点を決めた。時間帯がまた絶妙だった。もし、これよりも5分以上早ければ、ガンバは人数をかけての無理攻めも可能だったろうが、あまりに残り時間がなかった。

 正直言って、あまり爽快感を感じる試合ではなかった。私は守備的なサッカーを否定はしない。インテルナショナルがバルセロナを仕留めた試合などは拍手喝采ものだった。けれども、この日のレッズの守備網と駆け引きが見事だったとは思えない。守備組織は崩され、最終ラインの都築と内舘でかろうじて守り切った試合。上述したが、点が入る直前の終盤、啓太が足を引きずったあたりでは、「もう絶望」と言う雰囲気すら漂っていたのだ。

 それでも、レッズは勝利した。



 これはブッフバルド氏の勝利である。

 交代で起用された長谷部と岡野が唯一機能したのがこの場面。また永井にしても、必ずしもワントップを張るタイプではないが、ワシントン不在となってからブッフバルド氏は辛抱強く起用を継続、この日も少ない好機からガンバ最終ラインの隙を突く努力を継続していた。この3人で得点してしまうのだから恐れ入る。ブッフバルド氏の下、永井、相馬、都築そして小野と言った国内屈指のタレントたちは控えに甘んじても、モチベーションを切らさなかった。文句無くここ2シーズン国内のトッププレイヤとしてプレイしてきた長谷部も、このビッグゲームで控えの座を了解し、終盤に勝負どころで活躍した。あり余る選手達1人1人のモチベーションを切らさずに、彼らが必要な時に戦わせる事に成功したのだから凄い。

 さらには、逆襲からの一撃の期待すら難しい圧倒的な劣勢に陥りながらも、都築、内舘を中軸に辛抱に辛抱を重ね、守り切った。既にリーグ優勝と言う最高の栄誉を獲得してしまっており、レギュラメンバの多くを欠き、ただでさえモチベーションを保ちづらい天皇杯。この状況にも関わらず、選手達を最後まで辛抱させ切ったのだから、ブッフバルド氏の指導力はやはり凄い(この天皇杯制覇でレッズは08年シーズンのアジアチャンピオンズリーグの出場権を獲得できた。けれども、ここのところタイトルを連取しており、07年シーズンアジア制覇を「本気で」狙っているレッズイレブンに、その権利獲得への意欲が「必勝のモチベーション」になったとは考えづらい...それはそれとして、この「天皇杯優勝クラブが翌々シーズンのACL出場権を獲得する」と言う制度はもうやめられないものなのか)。

 試合終了後、ブッフバルド氏は「勝者のメンタリティ」と自慢したと言う。あり余る選手達1人1人のモチベーションをシーズン中維持しきった事、集中しづらい状態のタイトルマッチで苦しい展開に陥っても選手達のモチベーションが落ちなかった事。なるほど、おっしゃる通り「勝者のメンタリティ」なのかもしれない。そして、紛れも無く西ドイツ全盛期の代表戦士だった男から、その「勝者のメンタリティ」を啓太、闘莉王らレッズの選手達が伝授された事は、日本サッカー界にとっても非常に貴重な財産になるようにも思う。



 ブッフバルド氏就任時点で、レッズは確かに強力なメンバを揃えていた。しかし、レッズを常時優勝を争うチームにし、さらにタイトルを多数奪取したのは、紛れも無くブッフバルド氏だ。以前は、時に策に走り過ぎて墓穴を掘る事も多かったが、今シーズンはそのような悪癖も消えて来た。

 ブッフバルド氏は、監督としてのキャリアをレッズからスタートした。ドイツに帰国後も経歴を積み上げていくに違いない。ドイツ代表監督が、日本でキャリアをスタートしたとすれば、それはそれで嬉しいではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:12| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 明けましておめでとうございます。今年も楽しく(時には怪訝に)拝見させていただきます。<br />
<br />
 私事なのですが、今年のACLのアウェイ観戦に行くのですが、海外でサッカー観戦するのは初めてです。そこで、武藤さん的には、対〇〇戦が一番良いと思いますか?(一ヶ国しか観戦出来ません)<br />
<br />
 開催国によって金銭面や日程面などが異なりますが、そういったことは抜きにして単純に、どこのクラブとの試合がおすすめか!是非とも、アドバイスしていただけたら幸いです。<br />
<br />
 「そんなことは自分で決めろ」と言われたら、それまでなのですが…新年初?の書き込みでしたので『ダメ元』で、お願いしてみました。よろしくお願い致します。<br />
<br />
 では、今年もお体にお気を付けてがんばって下さい。
Posted by HARU at 2007年01月04日 02:15
長谷部、岡野を投入する前のレッズはバイタルエリアがぽっかり空いていて<br />
そこをガンバに突かれていた感じなので、あの交代は少し遅かったかなと思いました。<br />
ちょっと山田が下がりすぎたのと小野が上がりすぎたのが原因かと。<br />
交代後に、これでバランスが取れて互角になったと思ったのですが<br />
ガンバはフルメンバーでレッズはブラジル人3人抜きだと思い出して冷や汗が。<br />
来年も強そうですね。<br />
<br />
西野さんの交代しない采配は悪くなかったと思います。<br />
今回はやけにバランスの良いチームだったので<br />
シジクレイを入れたら上手くいかなくなりそうな気がしました。
Posted by Unknown at 2007年01月04日 19:39
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