2007年07月20日

豪州戦を前に

 まず改めて日本のここまでの守備振りを振り返る。 
 ここまで3失点と言うのは確かに失点数としては褒められたものではない。ただし、各試合後にそれぞれ振り返ったが、ベトナム戦の失点は相当問題だが、カタール戦、UAE戦の失点は「やや仕方が無い」ものだったのも確かだ。そして、この大会の日本の守備振りは中々のものがある。中澤の強さ、阿部の知的な位置取り、啓太の献身と中央の3人の能力が高く、ほとんど守備ラインの背後を取られていない。中盤の守備も、元々遠藤と憲剛は敵の攻撃を狭めるのは巧みだし、巻の前線チェックは言うまでもない。高原と中村も、オシム氏の指示をよく聞き、守備の役割をよくこなしている。したがって、後方から前線によいボールが入りづらいのも間違いない。
 この大会で、しいて押し込まれたと言えば、UAE戦の序盤、ベトナム戦の前半の一部の時間帯。これらの時間帯は敵が相当人数をかけて前掛りに来た。しかしその時間帯でも、よいセンタリングやミドルシュートを許したくらいで、ペナルティエリア内でよい体勢でシュートを狙われるようなピンチはほとんどなかった。これは灼熱高湿の中、日本の守備網がいかに機能しているかと言う事だ。
 もちろん、豪州の高さは脅威だし、ビドゥカは巣晴らしいポストプレイヤだ。決して楽な守備にはならないだろう。しかし、今の日本の組織守備があれば、そう簡単によいクロスやクサビを通させる事はないはずだ。

 さてここで豪州の試合振りを振り返ってみる。一見尻上がりの調子に見えるがいかがか。
 初戦のオマーン戦は、攻撃がどうもチグハグのうちに逆襲から巧く組み立てられて先制を許す。その後もどうにも攻撃がかみ合わぬままに、逆襲から決定機を複数回許すがGKシュバルツアのファインプレイで防ぐ。そして終盤パワープレイで追いついた。攻撃のリズムの悪さと、速攻に対する守備の甘さ(特に前半ドリブル突破を許したためか、DF陣がズルズルと引いてしまう事と、裏側のマークを見落とす傾向があった)が気になった。一方で終盤のパワープレイは迫力十分。オマーンクラスのCBではちょっと守り抜くのは難しいかなと言う印象だった。
 ところが続くイラク戦は完敗。前半に先制を許し、後半早々にビドゥカのさすがとしか言いようのないヘディングで追いついたが、これが精一杯。イラクのボランチのアクラム(遠藤をちょっと太めにしたような名手だ)のスローテンポのゲームメークを全く止められない。中盤で技巧で振り切られて数的優位を作られ、逆襲から失点を重ねた。さらにパワープレイを読んでいたイラク守備陣はラインをしっかり上げて対処。番狂わせと言うよりは順当負けと言う印象すらした。
 最後のタイ戦。最初、4−0と言う得点差を見て、さすが本調子になってきたかと思った。しかし映像を見る限り最も出来が悪かったのがこのタイ戦だった。セットプレイから先制した前半は上々の調子、特にタイは高さと強さ(と言うより重さと言う方が適切か、どうしてもタイを初めとする東南アジア勢は体質的に細身の選手が多く、ぶつかり合いで飛ばされてしまう場合が多い)に課題があるが、そこを巧くついて攻め込んでいた。しかし、後半様相は一変する。同点を狙うタイの俊敏な攻撃に、守備陣がついていけない。両翼はスピードを止められず、センタリングを簡単に許し、中央は最初の一歩で振り切られて裏をつかれる。シュバルツアの奇跡的なセービングと、タイのシュートの拙さがなければ、2、3点取られてもおかしくない内容だった。それでも終盤、ビドゥカが敵2人を吹き飛ばす見事な強さからシュートを決め、さらにセンタリングを打点の高いヘッドで合わせ、一気に3点差に。ロスタイムにはこの日サブに回っていたキューエルが速攻から決め4点差に。終わってみれば大差がついたが、後半半ばは青息吐息と言う試合だった。
 豪州の苦戦に対して「アジアでの戦い方を知らないから」と言う理由を語る方々が多いがそうだろうか。豪州が蒸し暑さに悩んでいるのは確かだろう。しかし、それは決して高湿でない祖国を持ち、悲しい要因から準備が思うようにできないイラクでも同じはずだ。また上記したように、ここまでの苦戦は一部の中東諸国が好む極端な守備作戦にやられたものでも、審判の不可解な判定に悩まされたものではない。豪州はチームとしての機能性が足りないから苦戦しているのだ。
 昨年のワールドカップ、豪州は非常にシステマティックなサッカーでブラジルやイタリアに対抗した。日本やクロアチアを終盤のパワープレイで破った(クロアチアには引き分け)のは確かだが、それはあくまでも無理攻めの世界。むしろ、日本戦は日本の弱点である高さを突こうとするばかりに攻撃は逆に単調になり、後半は再三日本の逆襲を許していた。あの試合は日本が疲弊した選手を適切に交代すれば勝てた試合だった。繰り返すが昨年の豪州を評価すべきなのは、ブラジル戦やイタリア戦で見せた丁寧なビルドアップ、稠密な中盤守備なのだ。そして、その良さは本大会ほとんど見せる事はできていない。

 ビドゥカがおり、あの苦しいタイ戦を守り抜いた守備陣を抱える豪州は十分な強敵だ。また、彼らは経験豊富なプロフェッショナル、難しい試合も最後まで諦めずに戦ってくるだろう。
 しかし、一方でサッカーとは確率の世界。日本が豪州にやられる確率は、カタールやUAEにやられる確率よりは高いだろう。しかし、この大会のここまでの両国のサッカーの質を考えれば、どうしても楽観的にならざるを得ない。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(9) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
韓国脱落の予想で騙されたので信用できませんw。
Posted by at 2007年07月21日 17:11
あれに騙されるような奴ひっこんでろってんだw。
Posted by at 2007年07月21日 17:28
3−0で楽に勝てそうなん気がするんですけどな。日本のパスワークについていけなさそう。あとアジアの審判様もラフプレーには脊髄反射するし。
Posted by at 2007年07月21日 17:50
後半はフィニッシュの精度が問われそう。
Posted by ランキン at 2007年07月21日 20:15
オシム監督もジーコ監督も変わらないような…。

何がどうとは言えないんですが、ちょっと残念な采配だった。オシム監督が何がしたかったのか私には分かりませんでした。

日本よりの判定だったのに、PK戦にまでもつれこんでは嬉しくありません…。

武藤さんの解説を楽しみにします。
Posted by ランキン at 2007年07月21日 22:09
監督の違いが現われるのは試合中の采配にだけ、
だってのなら簡単な話やないですか。

例えば交代時間や選手投入のタイミングだとかいうのなら
今日だって、それこそジェフでやってたころと同じ感じですし、
ジェフでの実績で引っ張ってきたんですから、
そういうのも織り込み済みでみんな見てるものだと思ってましたけども。
Posted by at 2007年07月21日 22:32
嬉しくないんならサッカー見るのやめれば。
Posted by >>ランキン at 2007年07月21日 22:09 at 2007年07月21日 23:12

日本が勝ったのに、そんなお通夜みたいになるのもどうかと・・・

W杯でくやしい思いをさせられた相手に
リベンジしたのだから、素直に喜びましょうよ。

Posted by >ランキンさん at 2007年07月22日 00:01
加地 >> 今野 (怪我による交代)
巻 >> 佐藤寿 (ヴィド、アロがいなくなり高さへの脅威が軽減したことと足が止まりがちになっていた豪守備陣の引っ掻き回し)
中村憲 >> 矢野 (そりゃもうパワープレー)

オシム監督の意図は見たまんまなような…

実際、佐藤寿が抜け出したシーンと終了間際のパワープレーでは決定機を演出しているわけですし。
(それを決められるかどうかはまた別ですけどw)

ジーコのあの日あの時、交替で出た小野が試合に絡むことなくただグラウンドをフラフラと漂っていたのとはまったく違うと思いますよ。
Posted by >ランキンさん at 2007年07月22日 00:18
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