不遜な妄想。
ACL1次ラウンド第3節、アントラーズはシンガポール国防軍、ガンバはスリウィジャヤと対戦。それぞれ日本のトップクラブが東南アジアのクラブと手合わせした。
スリウィジャヤにしてもシンガポール国防軍にしても非常によいチームだと思う。また昨年ガンバを苦しめたチョンブリ、一昨年レッズを悩ませたペルシク・ケディリなどの記憶も新しい。いずれも、組織的に人数をかけて守り、スピードを活かした鋭いカウンタアタックを見せた。精神的な粘り強さを含め、中々見ていても愉しいサッカーを演じてくれる(もっとも昨期、一昨期に登場したここに挙げた他のクラブは、精神的にももろくあまりよいチームではなかったが)。
しかし、これら4チームのいずれも、日本や韓国のトップチームを破り、上位に進出する可能性は非常に少ないだろう。しっかりとチームでボールを保持するための基本戦術と技術(どこに動くか、どちらに向くかと言う判断力、「止める蹴る」のボール扱いなど)が明らかに甘い。
それでも最終ラインが分厚く守り、俊足選手を軸に巧妙なカウンタアタックを見せ、再三日本の強豪クラブを悩ませた。けれども、そう言った鋭いカウンタを見せても、多くの場面では最後のところで日本のセンタバックの強さと読みのよさを破りきれない。また守備面においても、引いて守り切るには各選手の強さが足りない。
代表チームに目を転じても状況は同じだ。一昨年のアジアカップ、4国分散開催した東南アジア各国(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア)だが、結局準々決勝に進めたのはベトナム一国。ワールドカップ予選にしても、今回の最終予選10国、前回の最終予選8国、いずれにも東南アジア勢は残れなかった。日本や韓国などのアジアトップのみならず、中東の2番手国(たとえばバーレーンやUAE)に対しても、タフなタイトルマッチで勝ち切る事が難しいのが現状だ。
たとえば1970年代あたりまでは東南アジアの存在感はもっと高かった。ビルマ(現ミャンマー)は当時アジア屈指の強国。また日本のみならず韓国も中々マレーシアに勝てなかった。けれども、80年代に入り中東諸国が台頭、さらに90年代に日本がアジア最高峰に加わるあたりから、全くと言ってよいほど東南アジア勢はアジアのトップに加われなくなってきた。唯一の例外は90年代半ばにアジアチャンピオンズカップを2連覇したタイのファーマーズバンクくらいか。
過去も幾度も語ってきたように、いつか我々がワールドカップで優勝しようとするためには、アジア周辺国が相応に強い事は必要条件の1つだと考えている。そう言う観点からすると、東南アジアのチームがもう少し強くあって欲しいところなのだが。
鍵は2つあると思う。
1つは試合経験。ACLにせよ、ワールドカップ予選にせよ、アジアカップにせよ、日本を初めとしたアジアのトップ国との真剣勝負の機会がどの程度あるか。シンガポール国防軍の深澤と新井が語っているが、経験とは直接戦う選手達のみならず、サポータを含めた関係者全てのものなのだ。ただし、現状のシードシステム下においては、このような経験を積む機会は中々訪れない。また、現状の東南アジア選手の実力では、JリーグやKリーグに「買われる」のも簡単ではなさそう。
2つ目は攻撃の変化。スピードを活かしたカウンタは確かに効果的。しかし、直前にもうワンテンポ落としたり、ラストパスでもう少し溜めを作ったり、もう少し「緩」があれば「急」がより活きてくるはず。ところが東南アジア選手の「緩」は往々にして、ボールをこねる事で完全に「急」の効果をなくしてしまう事が多い。このあたりの問題を解決した戦術眼を持つ選手が登場しないものだろうか。
などと考えると、我々が欧州南米の強豪といかに伍するかの話と何か似ているように思えたりして。
2009年04月10日
2009年04月09日
続々ACLを愉しむ
ACLの1次ラウンドの日本のクラブの対戦相手は、3,4節に豪州と東南アジアの遠距離国クラブ、他の節は韓国、中国の近距離国クラブと、はっきり2分された。ここまでくると、あまり偶然とは思えず、何がしか日本勢が有利になる、あるいは不利になる作為があるのではないかと邪推もしたくなる。しかし、日程が揃ったところでのメリットあるいはデメリットがどうにも思いつかない。やはり偶然の賜物なのだろうか。
この2節は、他節の韓国、中国との対戦と比べ(1)移動距離が大きい(2)気候の相違、の2点からホームチームの優位が一層際立つ事が予想していた、しかし結果は全く異なるものとなるのだからやはりサッカーはおもしろい。
アントラーズはシンガポール国防軍との難しい試合に貴重な勝利。
試合間隔が短くなるとてきめんに強さを失うこのクラブにとって、この試合は非常に難しいものになる事が予想された。敵地への移動の疲労、中2日と言う試合間隔の短さ、赤道直下の蒸し暑さ、不慣れな人工芝。そして、シンガポール国防軍は決して弱くなかった。ここ最近Sリーグで圧倒的な強さを誇り、帰化選手を含め同国代表にも多数選手を輩出(しかも、シンガポール代表は昨年のワールドカップ予選で、レバノンに連勝、サウジやウズベクにそれなりに検討したのは記憶に新しい)、深澤、新井と言った日本選手を含めた外国人選手の補強(日本人の2人も他のクラブでの活躍が評価されて引き抜かれたと言う)も分厚い。
そのような環境下で、アントラーズは小笠原と野沢を中心に落ち着いて攻勢を取って勝利。先制しながらもすぐに追いつかれるイヤな展開だったが、内田の個人技で突き放し、大迫が追加点を決めた。内田がいよいよ本格的な代表選手に育ってきたのは大変めでたいし、大迫が何のかの言って実績を挙げているのも結構な事だ。
PKを曽ヶ端が止め、終了間際にはやや幸運な自殺点で止めを刺せた事もあり、内容以上と言える3点差の勝利を確保。この厄介な相手に敵地で3点差は大きい。しかも、直接対決で完敗した水原三星が上海申花に敗れ、自力での1位突破も復活した。
戦闘能力と勝負強さが抜群のこのクラブだが、過密日程に弱い悪癖を今後どうカバーしていくのか。
グランパスは4クラブで唯一勝ち点を落とした。
もっとも、ホームとは言え「よく引き分けた」と言いたくなるような非常に悪い内容だったので「負けなかっただけよし」と考えるべきかもしれない。
開始早々にミスがらみで速攻を許し失点、これで完全にバランスが狂う。吉村と玉田が不在も大きく、前半はほとんど攻撃の形を作れなかった。後半から起用された玉田がきれいなFKを決めてかろうじて同点としたが、あれが目一杯で、もう1点入る匂いは感じられなかった。若手FWの花井がほとんど機能せず、左サイドバックに起用された竹内も残念なできで、これなら第1節に抜擢された佐藤将也の方がいいように思えた。
このホームでの連続引き分けで、初戦の蔚山現代に対する敵地勝利の価値が小さくなってしまった。もっとも、この日の吉村不在、玉田半分、竹内と花井起用は、正にターンオーバそのもの。ピクシーは辛抱強く、初戦の貯金を巧く利用しながら、過酷な日程を乗り切る采配を狙っているようにも思えるが。
誰もが驚いたのが、フロンターレの敵地での圧勝。
どうやらセントラルコースト・マリナーズは、憲剛、ジュニーニョ、鄭大世などの中心選手の特長を全く調べていなかったようだ。随分と舐められたものだ。それにフロンターレのチーム状態のよさ(開幕1ヶ月で、ほぼベスト布陣が固まってきて、チームの調子が上がってきている事)が加わっての大差と言う事なのだろう。けれども、長旅でしかもJリーグと中3日のフロンターレに、あそこまで劣勢になるのだから、ひどいチームだ。いったい、どうやって浦項と引き分けたのだろうか。加えてあきれたのは、終盤の中国代表を思わせるラフプレイの連発。放置する審判もひどかったが(こういうひどい判定を見ていると、意気軒昂に赤だ黄色だと振り回す日本の審判も悪くないなと思えてくる)、トップレベルで国際試合を戦っていると言う矜持を持たない選手を見るのは本当に不愉快だ。
少なくともこの日のマリナーズは、過去ACLに登場した豪州クラブでは、最低のクラブと言っても過言ではないだろう。熱狂的に応援するフロンターレサポータの方々が再三画面に映ったが、大枚をはたいて敵地を旅し、あんな歯ごたえのない質の低いチームとの対戦を見せられてさぞ不愉快な事だったろうな(と羨望を婉曲に語ったりして)。
ともあれ、フロンターレにとって、この敵地での完勝は大きい。ほぼ完全に浦項とのマッチレースとなったこのリーグ戦残りを関塚氏と憲剛は、いかに戦っていくのだろうか。
そして、ガンバは順当に大差の勝利。
序盤こそスリウィジャヤの粘り強い守備網とGKのファイプレイで中々得点できなかった。しかし、前半40分に見事に先制。左右に細かなパスをつなぎ、ペナルティエリアやや外の中央で、前を向いた佐々木が敵DFの意表をついた浮き球でのラストパス。タイミングよく抜け出したレアンドロが強烈に決めたもの。この佐々木のラストパスは正に芸術的、突破とクロスが武器の佐々木が、中央からこのような変化あるプレイを見せるようになったとは。これでガンバの選手層はまた一段と厚くなった(あのパスを見た時に「あれっ、二川が出ていたっけ」と思ったのは私だけでしょうか)。
直後にルーカスの巧みなサイド攻撃から再びレアンドロが決めて突き放す。そして、後半立ち上がりにFWを増やし猛攻をしかけて、一層の大差をつけて勝負を決めてしまうあたり、西野采配にせよ、それに呼応する選手達にせよ、大したものだ。
何人かの選手の使い方について。再三鋭いロングシュートを狙っていた下平、この選手は常に攻撃時に狙いを持ったパスを出そうとする姿勢がすばらしい。この日はとうとう安田をベンチに追いやってしまった。もっとも、安田は後半下平の前に起用され得点を決めるなど活躍、この2人を縦に並べる策も非常に面白い。レアンドロを1枚下げて使える事が判明したのも重要。上記の佐々木の成長と合わせ、ルーカスを(あるいは遠藤を)休ませる方策(選択肢と言うべきか)が増えてきたと言う事だろう。
スリウィジャヤも中々いいチームだった。散発的だが速攻で反撃。先制直前に山口が完全に裏を取られたものの、松代が超ファインプレイで防いだ場面に先行されていれば、かなり厄介な試合になっていた事だろう。また感心したのは、大差がついても気持ちが折れず、粘り強く守り、時に速攻を狙い、自棄になったファウルもなかった事だ。マリナーズとは偉い違いで、戦闘能力差から大差がついたが、気持ちよいチームだった。
次節は敵地の試合は相当厳しい試合になるだろう。高温多湿の気候に加え、バレンパンへの移動(乗り換えが必要だろうから相当厳しい移動になる)による消耗。西野氏が幾多の名手達を用いていかに悪環境に立ち向かうかを愉しみにしたい。
この2節は、他節の韓国、中国との対戦と比べ(1)移動距離が大きい(2)気候の相違、の2点からホームチームの優位が一層際立つ事が予想していた、しかし結果は全く異なるものとなるのだからやはりサッカーはおもしろい。
アントラーズはシンガポール国防軍との難しい試合に貴重な勝利。
試合間隔が短くなるとてきめんに強さを失うこのクラブにとって、この試合は非常に難しいものになる事が予想された。敵地への移動の疲労、中2日と言う試合間隔の短さ、赤道直下の蒸し暑さ、不慣れな人工芝。そして、シンガポール国防軍は決して弱くなかった。ここ最近Sリーグで圧倒的な強さを誇り、帰化選手を含め同国代表にも多数選手を輩出(しかも、シンガポール代表は昨年のワールドカップ予選で、レバノンに連勝、サウジやウズベクにそれなりに検討したのは記憶に新しい)、深澤、新井と言った日本選手を含めた外国人選手の補強(日本人の2人も他のクラブでの活躍が評価されて引き抜かれたと言う)も分厚い。
そのような環境下で、アントラーズは小笠原と野沢を中心に落ち着いて攻勢を取って勝利。先制しながらもすぐに追いつかれるイヤな展開だったが、内田の個人技で突き放し、大迫が追加点を決めた。内田がいよいよ本格的な代表選手に育ってきたのは大変めでたいし、大迫が何のかの言って実績を挙げているのも結構な事だ。
PKを曽ヶ端が止め、終了間際にはやや幸運な自殺点で止めを刺せた事もあり、内容以上と言える3点差の勝利を確保。この厄介な相手に敵地で3点差は大きい。しかも、直接対決で完敗した水原三星が上海申花に敗れ、自力での1位突破も復活した。
戦闘能力と勝負強さが抜群のこのクラブだが、過密日程に弱い悪癖を今後どうカバーしていくのか。
グランパスは4クラブで唯一勝ち点を落とした。
もっとも、ホームとは言え「よく引き分けた」と言いたくなるような非常に悪い内容だったので「負けなかっただけよし」と考えるべきかもしれない。
開始早々にミスがらみで速攻を許し失点、これで完全にバランスが狂う。吉村と玉田が不在も大きく、前半はほとんど攻撃の形を作れなかった。後半から起用された玉田がきれいなFKを決めてかろうじて同点としたが、あれが目一杯で、もう1点入る匂いは感じられなかった。若手FWの花井がほとんど機能せず、左サイドバックに起用された竹内も残念なできで、これなら第1節に抜擢された佐藤将也の方がいいように思えた。
このホームでの連続引き分けで、初戦の蔚山現代に対する敵地勝利の価値が小さくなってしまった。もっとも、この日の吉村不在、玉田半分、竹内と花井起用は、正にターンオーバそのもの。ピクシーは辛抱強く、初戦の貯金を巧く利用しながら、過酷な日程を乗り切る采配を狙っているようにも思えるが。
誰もが驚いたのが、フロンターレの敵地での圧勝。
どうやらセントラルコースト・マリナーズは、憲剛、ジュニーニョ、鄭大世などの中心選手の特長を全く調べていなかったようだ。随分と舐められたものだ。それにフロンターレのチーム状態のよさ(開幕1ヶ月で、ほぼベスト布陣が固まってきて、チームの調子が上がってきている事)が加わっての大差と言う事なのだろう。けれども、長旅でしかもJリーグと中3日のフロンターレに、あそこまで劣勢になるのだから、ひどいチームだ。いったい、どうやって浦項と引き分けたのだろうか。加えてあきれたのは、終盤の中国代表を思わせるラフプレイの連発。放置する審判もひどかったが(こういうひどい判定を見ていると、意気軒昂に赤だ黄色だと振り回す日本の審判も悪くないなと思えてくる)、トップレベルで国際試合を戦っていると言う矜持を持たない選手を見るのは本当に不愉快だ。
少なくともこの日のマリナーズは、過去ACLに登場した豪州クラブでは、最低のクラブと言っても過言ではないだろう。熱狂的に応援するフロンターレサポータの方々が再三画面に映ったが、大枚をはたいて敵地を旅し、あんな歯ごたえのない質の低いチームとの対戦を見せられてさぞ不愉快な事だったろうな(と羨望を婉曲に語ったりして)。
ともあれ、フロンターレにとって、この敵地での完勝は大きい。ほぼ完全に浦項とのマッチレースとなったこのリーグ戦残りを関塚氏と憲剛は、いかに戦っていくのだろうか。
そして、ガンバは順当に大差の勝利。
序盤こそスリウィジャヤの粘り強い守備網とGKのファイプレイで中々得点できなかった。しかし、前半40分に見事に先制。左右に細かなパスをつなぎ、ペナルティエリアやや外の中央で、前を向いた佐々木が敵DFの意表をついた浮き球でのラストパス。タイミングよく抜け出したレアンドロが強烈に決めたもの。この佐々木のラストパスは正に芸術的、突破とクロスが武器の佐々木が、中央からこのような変化あるプレイを見せるようになったとは。これでガンバの選手層はまた一段と厚くなった(あのパスを見た時に「あれっ、二川が出ていたっけ」と思ったのは私だけでしょうか)。
直後にルーカスの巧みなサイド攻撃から再びレアンドロが決めて突き放す。そして、後半立ち上がりにFWを増やし猛攻をしかけて、一層の大差をつけて勝負を決めてしまうあたり、西野采配にせよ、それに呼応する選手達にせよ、大したものだ。
何人かの選手の使い方について。再三鋭いロングシュートを狙っていた下平、この選手は常に攻撃時に狙いを持ったパスを出そうとする姿勢がすばらしい。この日はとうとう安田をベンチに追いやってしまった。もっとも、安田は後半下平の前に起用され得点を決めるなど活躍、この2人を縦に並べる策も非常に面白い。レアンドロを1枚下げて使える事が判明したのも重要。上記の佐々木の成長と合わせ、ルーカスを(あるいは遠藤を)休ませる方策(選択肢と言うべきか)が増えてきたと言う事だろう。
スリウィジャヤも中々いいチームだった。散発的だが速攻で反撃。先制直前に山口が完全に裏を取られたものの、松代が超ファインプレイで防いだ場面に先行されていれば、かなり厄介な試合になっていた事だろう。また感心したのは、大差がついても気持ちが折れず、粘り強く守り、時に速攻を狙い、自棄になったファウルもなかった事だ。マリナーズとは偉い違いで、戦闘能力差から大差がついたが、気持ちよいチームだった。
次節は敵地の試合は相当厳しい試合になるだろう。高温多湿の気候に加え、バレンパンへの移動(乗り換えが必要だろうから相当厳しい移動になる)による消耗。西野氏が幾多の名手達を用いていかに悪環境に立ち向かうかを愉しみにしたい。
2009年03月19日
続ACLを愉しむ
何のかの言いながら、ACLの4試合の映像を情報遮断状況で愉しむ事に成功した。この2週間で、4クラブともホームで中国クラブと敵地で韓国クラブと試合をするのだから、不思議な日程だな。
グランパスは明らかに雪中の死闘の疲労が痛手になったと見る。ピクシーの工夫に満ちたターンオーバ、マギヌン、中村はスタメンから外れ、吉村も前半だけの起用。しかし、どうしても1点が奪えぬまま、後半半ばには全体の運動量が落ち、攻め切れなかった。終盤には、吉田の軽率なミスからあわや失点と言うピンチも。明らかに戦闘能力の落ちる相手だっただけに、ホームで勝ち点3を取れなかったのは痛恨だった。まあ、先週の蔚山での敵地での勝利による貯金があるので、この痛恨もよしとすべきなのだろう。
野次馬としては、このような苦しい試合だったのだから、小川あたりの個人的な活躍で勝負を決めて欲しかったのだが。また終盤に、巻弟を起用しダヴィと2トップを組ませた以上は、単純なパワープレイもありかと思えたが、杉本を他の選手は丁寧にサイドを崩す事を狙っていた。このあたりは「正解がない」問題で難しいところ。
フロンターレは大幅にチーム編成を変更。格段にバランスがよくなった。横山(終盤は菊地)が中盤後方を固め、中央からは憲剛と谷口、両翼からは森と村上が、それぞれ飛び出して変化ある攻撃。。奪えた得点はCKからの寺田の一撃のみだったが、前半左サイドを巧みに崩した憲剛の一撃、後半ジュニーニョのパスを受けた森が右サイドを見事にえぐり、黒津のシュートが敵GKにはばまれた場面、と完璧に近い決定機も作れた。最大のライバルとの敵地戦、引き分けはよい成果だ。
先日このクラブの選手層がそれほど厚くないと述べたが、この日井川、山岸、レナチーニョ、田坂、菊地、黒津がベンチに控えるのだから、相応なターンオーバも組めそう。関塚氏の手腕が愉しみ。
終盤起用されたレナチーニョが機能しなかったのが気になるのだが。
ガンバは苦しい戦いだった。
ショッキングだったのは失点場面。先制し押され気味の前半をしのぐ。後半一気に猛攻をしかけてきて、しばらく我慢の時間帯。その上で巧く逆襲をしかけて、安田も勇気を持って攻め上がったところで、ボールを奪われる。そこから逆襲速攻ではなく、丁寧なつなぎから完全に崩されてしまった。ガンバ相手に中盤から完全に崩せるのだから「これは凄いチームだ」と素直に感心した。
が、FCソウル、守備はダメダメだった。先制点もレアンドロ、ルーカスのプレスにあわてたCBのミスから。そして2点目に至っては、CKに対してGKが全くの間抜けた飛び出しで空振りしたのみならず、レアンドロのマーカが棒立ち。これだけのレベルの試合では、めったにお目にかかれない無様な守備だった。
3点目はビューティフルゴール。レアンドロのパスを受けた下平の高精度の低いクロスを山崎が落としレアンドロがズドン。この場面の前も再三よい上がりをしていた下平だが、トップのレアンドロはほとんど下平を使おうとしなかった。そのため、再三悪い体制でレアンドロがボールを奪われ、攻め込まれる要因にもなっていた。これはルーカスが守備を重視した位置取りをしていた事も絡んでいたのだが。ともあれ、あの苦しい時間帯に、レアンドロがよい意味でのチームプレイを選択した事、下平が特長である「センタリングを正確に狙うプレイ」を成功させた事の2点は、今後のガンバには実に大きいと思う。
もう1つ。ソウルの再三の好シュートを藤ヶ谷が押さえたのも勝負の分岐点となった訳だが、シュート力、GK力の差が出た試合と観る事ができる試合だった。特に先制の山崎の一撃は、敵DFのミスから生まれたこぼれ球を、強烈にニアに蹴り込んだもの。韓国のチームにこのような「個」の差で勝てたのは気持ちよかった(「個」と言う単語は、このような時に使うものだと、私は思う)。
そして大迫。
ようやく強情なオリヴェイラ氏がメンバを変えてきた。のは驚かなかったが、さすがに大迫スタメンにはビックリ。マルキーニョスを左右に遊弋させ、ポストプレイをこなすFWを最前線に置きたかったのだろうが、田代よりも大迫を評価したと言う事だろうか。しかし、大迫をマークしたブルガリア人は代表歴もあると言う相当強力なCB。思うようにボールを収める事もできず苦戦が続いた。しかし、肝心なところで大物振りを発揮してくれるのだから、オリヴェイラ氏も笑いが止まらないところだろう。1点目のアシストは、青木のパスの強さとコースも抜群だったが、実にやわからいラストパス。2点目も、マルキーニョスの突破とセンタリングは完璧だったが、一瞬前に出ると見せてDFを釣り出しておいて、マイナスのセンタリングに合わせて、左足を強震するスペースを確保したの動きは素晴らしかった。もちろん、利き足でない左での強いインステップキックをネットに突き刺した事そのものも言うまでもなし。交代直前の得点と言い、パワープレイ対応のためDFを増やそうとする交代準備さなかに敵の退場がありプレイを継続できた事といい、「運」も持っているのだな。解説の名波氏が大迫がミスするたびに「判断は悪くない、柔らかさはすばらしい、まだ身体ができていないから」等と、技巧の粋を尽くしてかばっていたが、何とかばいがいのある若者であることか。
もちろん、小笠原の復活はほぼ完璧。それでも前半の伊野波のミスなど苦しい試合だったが、杜威の中国代表選手らしい愚かしい退場(それにしても、これだけ経験のある代表選手がどうしてこんなに馬鹿なのか)で、一気に楽になった。
この試合の成功で、オリヴェイラ氏がターンオーバに目覚めるかどうか。
次節、次々節は、豪州、東南アジアのクラブとの対戦。厳しい遠征を、各クラブがどうこなすか。週中4試合観戦は身体にこたえるが、愉しいものだ。
グランパスは明らかに雪中の死闘の疲労が痛手になったと見る。ピクシーの工夫に満ちたターンオーバ、マギヌン、中村はスタメンから外れ、吉村も前半だけの起用。しかし、どうしても1点が奪えぬまま、後半半ばには全体の運動量が落ち、攻め切れなかった。終盤には、吉田の軽率なミスからあわや失点と言うピンチも。明らかに戦闘能力の落ちる相手だっただけに、ホームで勝ち点3を取れなかったのは痛恨だった。まあ、先週の蔚山での敵地での勝利による貯金があるので、この痛恨もよしとすべきなのだろう。
野次馬としては、このような苦しい試合だったのだから、小川あたりの個人的な活躍で勝負を決めて欲しかったのだが。また終盤に、巻弟を起用しダヴィと2トップを組ませた以上は、単純なパワープレイもありかと思えたが、杉本を他の選手は丁寧にサイドを崩す事を狙っていた。このあたりは「正解がない」問題で難しいところ。
フロンターレは大幅にチーム編成を変更。格段にバランスがよくなった。横山(終盤は菊地)が中盤後方を固め、中央からは憲剛と谷口、両翼からは森と村上が、それぞれ飛び出して変化ある攻撃。。奪えた得点はCKからの寺田の一撃のみだったが、前半左サイドを巧みに崩した憲剛の一撃、後半ジュニーニョのパスを受けた森が右サイドを見事にえぐり、黒津のシュートが敵GKにはばまれた場面、と完璧に近い決定機も作れた。最大のライバルとの敵地戦、引き分けはよい成果だ。
先日このクラブの選手層がそれほど厚くないと述べたが、この日井川、山岸、レナチーニョ、田坂、菊地、黒津がベンチに控えるのだから、相応なターンオーバも組めそう。関塚氏の手腕が愉しみ。
終盤起用されたレナチーニョが機能しなかったのが気になるのだが。
ガンバは苦しい戦いだった。
ショッキングだったのは失点場面。先制し押され気味の前半をしのぐ。後半一気に猛攻をしかけてきて、しばらく我慢の時間帯。その上で巧く逆襲をしかけて、安田も勇気を持って攻め上がったところで、ボールを奪われる。そこから逆襲速攻ではなく、丁寧なつなぎから完全に崩されてしまった。ガンバ相手に中盤から完全に崩せるのだから「これは凄いチームだ」と素直に感心した。
が、FCソウル、守備はダメダメだった。先制点もレアンドロ、ルーカスのプレスにあわてたCBのミスから。そして2点目に至っては、CKに対してGKが全くの間抜けた飛び出しで空振りしたのみならず、レアンドロのマーカが棒立ち。これだけのレベルの試合では、めったにお目にかかれない無様な守備だった。
3点目はビューティフルゴール。レアンドロのパスを受けた下平の高精度の低いクロスを山崎が落としレアンドロがズドン。この場面の前も再三よい上がりをしていた下平だが、トップのレアンドロはほとんど下平を使おうとしなかった。そのため、再三悪い体制でレアンドロがボールを奪われ、攻め込まれる要因にもなっていた。これはルーカスが守備を重視した位置取りをしていた事も絡んでいたのだが。ともあれ、あの苦しい時間帯に、レアンドロがよい意味でのチームプレイを選択した事、下平が特長である「センタリングを正確に狙うプレイ」を成功させた事の2点は、今後のガンバには実に大きいと思う。
もう1つ。ソウルの再三の好シュートを藤ヶ谷が押さえたのも勝負の分岐点となった訳だが、シュート力、GK力の差が出た試合と観る事ができる試合だった。特に先制の山崎の一撃は、敵DFのミスから生まれたこぼれ球を、強烈にニアに蹴り込んだもの。韓国のチームにこのような「個」の差で勝てたのは気持ちよかった(「個」と言う単語は、このような時に使うものだと、私は思う)。
そして大迫。
ようやく強情なオリヴェイラ氏がメンバを変えてきた。のは驚かなかったが、さすがに大迫スタメンにはビックリ。マルキーニョスを左右に遊弋させ、ポストプレイをこなすFWを最前線に置きたかったのだろうが、田代よりも大迫を評価したと言う事だろうか。しかし、大迫をマークしたブルガリア人は代表歴もあると言う相当強力なCB。思うようにボールを収める事もできず苦戦が続いた。しかし、肝心なところで大物振りを発揮してくれるのだから、オリヴェイラ氏も笑いが止まらないところだろう。1点目のアシストは、青木のパスの強さとコースも抜群だったが、実にやわからいラストパス。2点目も、マルキーニョスの突破とセンタリングは完璧だったが、一瞬前に出ると見せてDFを釣り出しておいて、マイナスのセンタリングに合わせて、左足を強震するスペースを確保したの動きは素晴らしかった。もちろん、利き足でない左での強いインステップキックをネットに突き刺した事そのものも言うまでもなし。交代直前の得点と言い、パワープレイ対応のためDFを増やそうとする交代準備さなかに敵の退場がありプレイを継続できた事といい、「運」も持っているのだな。解説の名波氏が大迫がミスするたびに「判断は悪くない、柔らかさはすばらしい、まだ身体ができていないから」等と、技巧の粋を尽くしてかばっていたが、何とかばいがいのある若者であることか。
もちろん、小笠原の復活はほぼ完璧。それでも前半の伊野波のミスなど苦しい試合だったが、杜威の中国代表選手らしい愚かしい退場(それにしても、これだけ経験のある代表選手がどうしてこんなに馬鹿なのか)で、一気に楽になった。
この試合の成功で、オリヴェイラ氏がターンオーバに目覚めるかどうか。
次節、次々節は、豪州、東南アジアのクラブとの対戦。厳しい遠征を、各クラブがどうこなすか。週中4試合観戦は身体にこたえるが、愉しいものだ。
2009年03月15日
ACLとJリーグ
この週末、ACL出場クラブはJで難しい試合を余儀なくされた。
アントラーズとフロンターレは苦杯、グランパスは雪中の引き分け、選手層が分厚いガンバだけが快勝。中2、3日のタフな試合の連続が、早くも出場国を苦しめている。
そして、この4クラブはこの火曜、水曜に、再び厳しいACLを戦わなければならない。
このオフに精力的な補強を行ったガンバは、質量ともに豊富な選手層を誇る。西野氏もしたたかにゼロックスを捨てて準備に使い、J開幕以降の3試合でもターンオーバ的な采配を行っている。この3試合でフル出場しているのは、山口、遠藤、橋本、ルーカスの4人だけ。今節は、チーム状態が悪いジュビロだった事もあり、きっちりと大差で勝利した。ただし、ACLの次節はグループリーグ最大の難敵FCソウルとのアウェイゲーム。FCソウルは前節敵地でインドネシアの スリウィジャヤに勝ち、早くも2チームの直接対決の様相を呈してきているだけに重要な試合だ。
豪雪下で散々苦労したグランパス。疲労感もへったくれもない最低最悪の条件下の試合だったが、吉田、阿部、杉本、山口、巻弟と言った開幕時に控えに回っていた選手達も順調に機能してていた。次節は瑞穂に北京国安を迎える。北京は前節ホームで豪州のニューカッスルに完勝していると言う。しかし、前節にガンバ、フロンターレが中国クラブに「格」の差を見せ付けて完勝しているだけに、しっかりと勝ち点3を確保したいところだ。こちらのグループは蔚山、ニューカッスルをを含めて混戦になる可能性もあるだけに、次節に勝利すればそのまま独走体制に入れる可能性もある。
今期に入ってまだチームとして存分に機能していないフロンターレ。次節に敵地で戦う浦項戦は、1次リーグで最も難しい試合となろう。前節浦項は敵地で豪州のセントラルコーストとは0−0の引き分けに成功している。浦項からすれば、次節のホームゲームでフロンターレに勝てれば、一気に独走体制に入れる思惑もあるはず。チーム状態が必ずしもよくないフロンターレは、何としても引き分けには持ち込みたいところだが、関塚氏はどのような修正を加えてくるだろうか。
そして、シーズン開始早々に早くもドツボにはまっているアントラーズ。昨年もそうだったが、中1週間あれば圧倒的な強さを発揮するこのクラブだが、週2試合となると極端に弱くなる。1週前のレッズ戦の完勝は、鮮やかなカウンタアタックも見事だったが、リード以降の執拗な守備が見事だった。しかし、水原戦の完敗にせよ、今日のアルビレックス戦の序盤の失点にせよ、あのレッズ戦は幻だったのかと思わせる最終ラインの淡白さ。これはもう、技術、戦術、精神力の問題とは思えない。単に体調の問題だろう。
次節の対戦相手の上海申花はホームでしっかりとシンガポール・アームド・フォーシズ(アルビレックス出身の日本人選手が2名奮戦しているとの事だが)に勝っている。勝ち点勘定からずれば、前節に敗れているアントラーズとしては、ホームだけに必ず勝たなければならない試合となってしまった。もし、ここで引き分けてしまえば、このまま水原と上海に引き離されてしまう怖れが相当あるからだ。
早くも「危機的状況」に陥っているアントラーズ。もっともこのクラブは、このような苦しい状況を再三跳ね返してきた歴史がある。幸い、小笠原もアルビレックス戦では後半45分間プレイできたと言う。逆襲を期待したい。
それにしても、ACLは厳しい大会だ。
おそらく、日本のトップクラブならば、ACLに専念できるならば、上位進出する事はそれほど難しくはないだろう。けれども、Jを戦いながらACLを戦う事は、あまりに過酷だ。4つのクラブが、この厳しい戦いを勝ち抜こうともがく事そのものが、日本サッカー界の血となり肉となるのだろう。
アントラーズとフロンターレは苦杯、グランパスは雪中の引き分け、選手層が分厚いガンバだけが快勝。中2、3日のタフな試合の連続が、早くも出場国を苦しめている。
そして、この4クラブはこの火曜、水曜に、再び厳しいACLを戦わなければならない。
このオフに精力的な補強を行ったガンバは、質量ともに豊富な選手層を誇る。西野氏もしたたかにゼロックスを捨てて準備に使い、J開幕以降の3試合でもターンオーバ的な采配を行っている。この3試合でフル出場しているのは、山口、遠藤、橋本、ルーカスの4人だけ。今節は、チーム状態が悪いジュビロだった事もあり、きっちりと大差で勝利した。ただし、ACLの次節はグループリーグ最大の難敵FCソウルとのアウェイゲーム。FCソウルは前節敵地でインドネシアの スリウィジャヤに勝ち、早くも2チームの直接対決の様相を呈してきているだけに重要な試合だ。
豪雪下で散々苦労したグランパス。疲労感もへったくれもない最低最悪の条件下の試合だったが、吉田、阿部、杉本、山口、巻弟と言った開幕時に控えに回っていた選手達も順調に機能してていた。次節は瑞穂に北京国安を迎える。北京は前節ホームで豪州のニューカッスルに完勝していると言う。しかし、前節にガンバ、フロンターレが中国クラブに「格」の差を見せ付けて完勝しているだけに、しっかりと勝ち点3を確保したいところだ。こちらのグループは蔚山、ニューカッスルをを含めて混戦になる可能性もあるだけに、次節に勝利すればそのまま独走体制に入れる可能性もある。
今期に入ってまだチームとして存分に機能していないフロンターレ。次節に敵地で戦う浦項戦は、1次リーグで最も難しい試合となろう。前節浦項は敵地で豪州のセントラルコーストとは0−0の引き分けに成功している。浦項からすれば、次節のホームゲームでフロンターレに勝てれば、一気に独走体制に入れる思惑もあるはず。チーム状態が必ずしもよくないフロンターレは、何としても引き分けには持ち込みたいところだが、関塚氏はどのような修正を加えてくるだろうか。
そして、シーズン開始早々に早くもドツボにはまっているアントラーズ。昨年もそうだったが、中1週間あれば圧倒的な強さを発揮するこのクラブだが、週2試合となると極端に弱くなる。1週前のレッズ戦の完勝は、鮮やかなカウンタアタックも見事だったが、リード以降の執拗な守備が見事だった。しかし、水原戦の完敗にせよ、今日のアルビレックス戦の序盤の失点にせよ、あのレッズ戦は幻だったのかと思わせる最終ラインの淡白さ。これはもう、技術、戦術、精神力の問題とは思えない。単に体調の問題だろう。
次節の対戦相手の上海申花はホームでしっかりとシンガポール・アームド・フォーシズ(アルビレックス出身の日本人選手が2名奮戦しているとの事だが)に勝っている。勝ち点勘定からずれば、前節に敗れているアントラーズとしては、ホームだけに必ず勝たなければならない試合となってしまった。もし、ここで引き分けてしまえば、このまま水原と上海に引き離されてしまう怖れが相当あるからだ。
早くも「危機的状況」に陥っているアントラーズ。もっともこのクラブは、このような苦しい状況を再三跳ね返してきた歴史がある。幸い、小笠原もアルビレックス戦では後半45分間プレイできたと言う。逆襲を期待したい。
それにしても、ACLは厳しい大会だ。
おそらく、日本のトップクラブならば、ACLに専念できるならば、上位進出する事はそれほど難しくはないだろう。けれども、Jを戦いながらACLを戦う事は、あまりに過酷だ。4つのクラブが、この厳しい戦いを勝ち抜こうともがく事そのものが、日本サッカー界の血となり肉となるのだろう。
2009年03月12日
ACLを愉しむ
とにかく慌しい。4クラブがACLに出場しており、リーグ戦の合間に国際試合の映像を4本週中で愉しめるからだ(まあそれを言い始めると、欧州や南米発信分を含めたら無尽蔵に映像を愉しめるのだが)。昨期までは1次リーグ時は2クラブしか出ていなかったら、偉い違いだ。幸い、欧州チャンピオンズリーグを真似て、1次リーグの開催日を火曜日と水曜日の分散開催にしてくれたので、1日2試合。でも、平日に2日連続で2試合追いかけるのは不可能に近いな。
実は等々力での生観戦も検討していたのだが、事情あって叶わず残念。考えてみれば、フロンターレのACLはこの試合以来だと思うと、どうしても見たかったのだが。
日本ホームの2試合は、戦闘能力差がかなりあった。敵地となると(審判の判定基準を含め)厄介かもしれないが、ホームでは「番狂わせもあり得ない」差があった。
ガンバは前半の山崎、レアンドロ、ルーカスの組み合わせが効果的だった。安田も右サイドバックでそこそこの出来だったし、下平も丁寧にクロスを狙って存在感をアピール。このクラブはしばらく、ターンオーバの実験を続けながら戦っていくのだろうな。
参戦に失敗したフロンターレ。内容は悪かったが、戦闘能力差で勝ち切る。ヴィトール・ジュニオールとレナチーニョが独善的過ぎて、チームのバランスを崩している(この2人で点を取ったのだが)。ジュニーニョと3人並べる策は有効とは言えない。これで森をベンチに置いたり、山岸を窮屈な使い方をするのは、野次馬からは疑問。関塚氏もACLは本気で狙っているのだろうから、まずは資源の見極めをしようとしているのだろうか。
驚いたのはグランパス。韓国のクラブに敵地での逆転勝利なのだから大したものだ。勝ち点勘定上、この敵地での快勝は非常に大きい。前半、互角の攻防をしながらCKから失点。その後、巧みな蔚山の守備に苦戦したが、セットプレイからの3得点で逆転してしまった。苦しい時間帯に、的確に展開した吉村が利いていた。また左サイドバックの佐藤将也は、私は初めて認識する選手だったがいい選手だな。前に出る思い切りがいい。それにしても廉基勳はいやらしい選手だった。
下平と言い佐藤将と言い、日本では人材不足と言われていた左DFに、若い優秀なタレントが出てきているのは結構な事だ。
で、アントラーズである。
先日も述べたが、このクラブは昨期もACLで強豪とはあまりよい試合をしていない。この日もそうだが、中2,3日の試合となると運動量が落ちて、きめ細かな守備ができなくなるのだ。序盤は互角の攻防で、ダニーロやマルキーニョスが決定機をつかみながら、李雲在のファインセーブに阻まれる。しかし、前半半ばから中盤の活動量が落ち、水原にペースを奪われる。
そして前半終盤にセットプレイから失点。何かラインメークが中途半端だったため、第2波でやられた。さらに信じられない事に、前半残り時間がほとんどないのに、無理に攻め込んでボールを奪われた逆襲速攻から追加点を食らった。先制を許したのは残念だったろうが、無理に攻め返す時間帯でも場面でもなかった。このような試合運びの巧さがこのクラブの持ち味なのだが、頭に血が上がったような無謀な攻撃をしては、Kリーグのチャンピオンの餌食になっても仕方がなかった。
後半も丹念に攻め込むが、水原の守備は厚く奏功せず。後半半ばには小笠原を投入しペースをつかむが、崩し切れぬうちに逆襲から3点目を奪われ万事休す。この3点目場面は、岩政も伊野波も不思議なほど淡白だった。さらに曽ヶ端の信じがたいミス。このあたりも疲労なのだろうか。
敵地で強い相手と戦ったのだから負けるのは仕方がない。けれども、試合間隔がないとここまで不出来なのは、改めて驚くばかり。昨期の課題が何も解決されていないのか。TV解説の名波浩氏が「出場32クラブのうち、最もこのタイトルが欲しいのはアントラーズのはず」と、かつてのライバルチームに期待を寄せていた。しかし、各選手のガンバリが利かない完敗。いくらシーズン初めとは言っても、疲労が蓄積している事も考えられないのだが。
レッズとの開幕戦にある程度のピークを持ってくるのは理解できるが、前節のゼロックスよりはこの水原戦の方が、格段に重要な試合だと思うのだが、コンディショニングを含めた準備の失敗としか言いようのない敗戦だった。
実は等々力での生観戦も検討していたのだが、事情あって叶わず残念。考えてみれば、フロンターレのACLはこの試合以来だと思うと、どうしても見たかったのだが。
日本ホームの2試合は、戦闘能力差がかなりあった。敵地となると(審判の判定基準を含め)厄介かもしれないが、ホームでは「番狂わせもあり得ない」差があった。
ガンバは前半の山崎、レアンドロ、ルーカスの組み合わせが効果的だった。安田も右サイドバックでそこそこの出来だったし、下平も丁寧にクロスを狙って存在感をアピール。このクラブはしばらく、ターンオーバの実験を続けながら戦っていくのだろうな。
参戦に失敗したフロンターレ。内容は悪かったが、戦闘能力差で勝ち切る。ヴィトール・ジュニオールとレナチーニョが独善的過ぎて、チームのバランスを崩している(この2人で点を取ったのだが)。ジュニーニョと3人並べる策は有効とは言えない。これで森をベンチに置いたり、山岸を窮屈な使い方をするのは、野次馬からは疑問。関塚氏もACLは本気で狙っているのだろうから、まずは資源の見極めをしようとしているのだろうか。
驚いたのはグランパス。韓国のクラブに敵地での逆転勝利なのだから大したものだ。勝ち点勘定上、この敵地での快勝は非常に大きい。前半、互角の攻防をしながらCKから失点。その後、巧みな蔚山の守備に苦戦したが、セットプレイからの3得点で逆転してしまった。苦しい時間帯に、的確に展開した吉村が利いていた。また左サイドバックの佐藤将也は、私は初めて認識する選手だったがいい選手だな。前に出る思い切りがいい。それにしても廉基勳はいやらしい選手だった。
下平と言い佐藤将と言い、日本では人材不足と言われていた左DFに、若い優秀なタレントが出てきているのは結構な事だ。
で、アントラーズである。
先日も述べたが、このクラブは昨期もACLで強豪とはあまりよい試合をしていない。この日もそうだが、中2,3日の試合となると運動量が落ちて、きめ細かな守備ができなくなるのだ。序盤は互角の攻防で、ダニーロやマルキーニョスが決定機をつかみながら、李雲在のファインセーブに阻まれる。しかし、前半半ばから中盤の活動量が落ち、水原にペースを奪われる。
そして前半終盤にセットプレイから失点。何かラインメークが中途半端だったため、第2波でやられた。さらに信じられない事に、前半残り時間がほとんどないのに、無理に攻め込んでボールを奪われた逆襲速攻から追加点を食らった。先制を許したのは残念だったろうが、無理に攻め返す時間帯でも場面でもなかった。このような試合運びの巧さがこのクラブの持ち味なのだが、頭に血が上がったような無謀な攻撃をしては、Kリーグのチャンピオンの餌食になっても仕方がなかった。
後半も丹念に攻め込むが、水原の守備は厚く奏功せず。後半半ばには小笠原を投入しペースをつかむが、崩し切れぬうちに逆襲から3点目を奪われ万事休す。この3点目場面は、岩政も伊野波も不思議なほど淡白だった。さらに曽ヶ端の信じがたいミス。このあたりも疲労なのだろうか。
敵地で強い相手と戦ったのだから負けるのは仕方がない。けれども、試合間隔がないとここまで不出来なのは、改めて驚くばかり。昨期の課題が何も解決されていないのか。TV解説の名波浩氏が「出場32クラブのうち、最もこのタイトルが欲しいのはアントラーズのはず」と、かつてのライバルチームに期待を寄せていた。しかし、各選手のガンバリが利かない完敗。いくらシーズン初めとは言っても、疲労が蓄積している事も考えられないのだが。
レッズとの開幕戦にある程度のピークを持ってくるのは理解できるが、前節のゼロックスよりはこの水原戦の方が、格段に重要な試合だと思うのだが、コンディショニングを含めた準備の失敗としか言いようのない敗戦だった。
2008年12月28日
今年のガンバと去年のレッズ
拡大トヨタカップ終了後、約1週間が経ったが、気になる報道がある。それは「昨年のレッズは守備的に戦った(だからケシカラン)が、今年のガンバは攻撃的に戦った(だから立派だ)。」と言う議論だ。
いくらなんでも違うだろう。
確かに最終スコアは3−5と0−1。いかにも攻撃的な試合と守備的な試合のそれに思える。また両クラブのアジアチャンピオンになった際の最大の強みがそれぞれ攻撃力と守備力にあったのは確かだ。今年のガンバは遠藤を軸に両サイドバックを含めたボール回しで中盤を作り多くの好機を作るのが基盤。昨年のレッズは闘莉王や啓太を軸に分厚く守り少ない好機をワシントンあたりが活かすのが基盤。そして、両チームとも、その強みを最大限に活かそうとして戦ったのは間違いない。
けれども、ガンバは守備を軽視していなかったし、レッズは攻めるべき時は攻めていた。
たとえば、ガンバはしっかりとボールを回して押し込まれる事を防ぎ、ユナイテッドの逆襲に対しても素早い守備への切替で対抗していた。むしろ、守備を考えつつも(少ないながらも)「勝つ確率」を高めるのが、マイボールをしっかり回すと言う選択だったのだろう。
また、ガンバの3−5と言うスコアは、一見点の取り合いで打ち破られたように見える。けれども、前半で2点差にされ、1点差に詰めたところで一気に突き放されて終盤2点を奪ったに過ぎないのだから、スコアとしては褒められたものではなく完敗と言うべき。試合後(試合中も)の西野氏や遠藤の憮然とした態度も、そのあらわれと言えるだろう。残念ながらガンバの攻撃的サッカーがユナイテッドを苦しめた訳ではなかったのだ。
もっとも誤解されては困るが、上記のエントリでも述べたが、私はガンバの失点、特に前半のCKからの失点はどうしようもないものだったと思う。もちろん、あれらの失点を防ぐためにどうすべきかは熟慮されるべき。しかし、山口がもっと空中戦の腕を磨くこと、明神がC・ロナウドを押えられる駆け引きを身につける事、と言う何とも言い難い結論になる(この2失点を「集中力欠如」などと語るのは勘弁して欲しい)。また、ガンバが丁寧につないで、遠藤の好パスから幾度も好機を掴んだ試合内容も十分に評価されるべきだと思っている。
一方で、昨年のレッズ。分厚く守っていたのは確かだが攻撃を軽視していた訳ではない。マイボールになったら、つなげるところは必死につなぎを狙っていた。大体、ボールを奪って即クリアを続ければ、ミランに圧倒的に押し込まれ、悲惨な試合になっていた事だろう。ミランの守備が落ち着く前の序盤の時間帯に、交通事故を狙い積極的にミドルシュートを狙っていたし、失点する後半半ばにしても、啓太や長谷部が押し上げから敵陣を伺っていた。唯一の失点は坪井とカカーの個人能力差によるものだったが、あの時間帯にレッズも相応に仕掛けていたが故の失点とも言えた。レッズは決して「引きこもっていた」訳ではないのだ。
何か一部の論調を見ると、「日本サッカーは世界いずれの国と戦う際にも、攻撃的なサッカーをしなければならない」と語っているかのようだ。たとえば98年フランス大会で守備を重視してアルゼンチンに対抗した戦い方を否定するような暴論が語られるのも同様の例だろう。
確かに日本の選手は、欧州、南米の列強と比較すれば「肉体的強さ」で劣る場合があるから、最終ラインで敵を止めるサッカーはあまり向いていない。したがい強敵と戦う際も、よくボールを回しできるだけ最終ラインの勝負を避ける方がよい結果に近づく確率を高められる事が多い。今後も日本のチームがが欧州、南米の列強と戦う際は、このような作戦を採る事になるだろう。そして、そう言った策を採りつつ、その時その時のメンバ構成で微調整が行われる。たとえば、闘莉王なり、98年の井原なり、欧州南米の列強と個人守備能力で相応に対抗できる選手がいれば、後方をある程度重視する策はそれなりに合理的なのだ。それでも、昨年のレッズにせよ98年の代表にせよ、啓太や長谷部、名波や中田が、しっかりと中盤を構成していたのだ。
せめて報道関係者には、先入観や妄想的な理想論なく試合をしっかりと見る事を望みたいものだ。
いくらなんでも違うだろう。
確かに最終スコアは3−5と0−1。いかにも攻撃的な試合と守備的な試合のそれに思える。また両クラブのアジアチャンピオンになった際の最大の強みがそれぞれ攻撃力と守備力にあったのは確かだ。今年のガンバは遠藤を軸に両サイドバックを含めたボール回しで中盤を作り多くの好機を作るのが基盤。昨年のレッズは闘莉王や啓太を軸に分厚く守り少ない好機をワシントンあたりが活かすのが基盤。そして、両チームとも、その強みを最大限に活かそうとして戦ったのは間違いない。
けれども、ガンバは守備を軽視していなかったし、レッズは攻めるべき時は攻めていた。
たとえば、ガンバはしっかりとボールを回して押し込まれる事を防ぎ、ユナイテッドの逆襲に対しても素早い守備への切替で対抗していた。むしろ、守備を考えつつも(少ないながらも)「勝つ確率」を高めるのが、マイボールをしっかり回すと言う選択だったのだろう。
また、ガンバの3−5と言うスコアは、一見点の取り合いで打ち破られたように見える。けれども、前半で2点差にされ、1点差に詰めたところで一気に突き放されて終盤2点を奪ったに過ぎないのだから、スコアとしては褒められたものではなく完敗と言うべき。試合後(試合中も)の西野氏や遠藤の憮然とした態度も、そのあらわれと言えるだろう。残念ながらガンバの攻撃的サッカーがユナイテッドを苦しめた訳ではなかったのだ。
もっとも誤解されては困るが、上記のエントリでも述べたが、私はガンバの失点、特に前半のCKからの失点はどうしようもないものだったと思う。もちろん、あれらの失点を防ぐためにどうすべきかは熟慮されるべき。しかし、山口がもっと空中戦の腕を磨くこと、明神がC・ロナウドを押えられる駆け引きを身につける事、と言う何とも言い難い結論になる(この2失点を「集中力欠如」などと語るのは勘弁して欲しい)。また、ガンバが丁寧につないで、遠藤の好パスから幾度も好機を掴んだ試合内容も十分に評価されるべきだと思っている。
一方で、昨年のレッズ。分厚く守っていたのは確かだが攻撃を軽視していた訳ではない。マイボールになったら、つなげるところは必死につなぎを狙っていた。大体、ボールを奪って即クリアを続ければ、ミランに圧倒的に押し込まれ、悲惨な試合になっていた事だろう。ミランの守備が落ち着く前の序盤の時間帯に、交通事故を狙い積極的にミドルシュートを狙っていたし、失点する後半半ばにしても、啓太や長谷部が押し上げから敵陣を伺っていた。唯一の失点は坪井とカカーの個人能力差によるものだったが、あの時間帯にレッズも相応に仕掛けていたが故の失点とも言えた。レッズは決して「引きこもっていた」訳ではないのだ。
何か一部の論調を見ると、「日本サッカーは世界いずれの国と戦う際にも、攻撃的なサッカーをしなければならない」と語っているかのようだ。たとえば98年フランス大会で守備を重視してアルゼンチンに対抗した戦い方を否定するような暴論が語られるのも同様の例だろう。
確かに日本の選手は、欧州、南米の列強と比較すれば「肉体的強さ」で劣る場合があるから、最終ラインで敵を止めるサッカーはあまり向いていない。したがい強敵と戦う際も、よくボールを回しできるだけ最終ラインの勝負を避ける方がよい結果に近づく確率を高められる事が多い。今後も日本のチームがが欧州、南米の列強と戦う際は、このような作戦を採る事になるだろう。そして、そう言った策を採りつつ、その時その時のメンバ構成で微調整が行われる。たとえば、闘莉王なり、98年の井原なり、欧州南米の列強と個人守備能力で相応に対抗できる選手がいれば、後方をある程度重視する策はそれなりに合理的なのだ。それでも、昨年のレッズにせよ98年の代表にせよ、啓太や長谷部、名波や中田が、しっかりと中盤を構成していたのだ。
せめて報道関係者には、先入観や妄想的な理想論なく試合をしっかりと見る事を望みたいものだ。
2008年12月27日
いかにも「トヨタカップ」らしかった大会
第1回トヨタカップは81年の2月。79−80年シーズンの欧州チャンピオンのノッティンガム・フォレストと、80年シーズンの南米王者のナショナル・モンテディオが戦った。同年12月に、ジーコのフラメンゴが、世界最強と呼ばれていたリバプールを粉砕した試合が行われた以降は、毎年12月に行われ、今大会で29回目。拡大化されてからは4回目となる。
80年代は、日程に苦しむ欧州勢に対し、準備万端で臨むウルグアイやアルゼンチンの南米勢が、技巧レベルで上回りながらも見事な組織戦で守り、エースの一撃で勝つ試合が多かった。また、当時は欧州勢、南米勢ともに、11人満遍なく質の高い選手を抱えているとは限らないチームも多く、長所を活かしながら短所をカバーする監督のチーム戦術も見所だった。こう言った一連の試合は地味ながらも、娯楽として一級品だったのみならず、その駆け引きや戦術的な日本中のサッカー観を高めるものだった。
一方でたまには、能力の高い選手を揃え連動性の高い攻撃サッカーを見せるチームも登場した。上記のジーコフラメンゴ、85年のアルヘンチノス・ジュニアーズとプラティニユベントス(今なお、私はこの試合がトヨタカップ史上最高の試合で、この時のアルヘンチノスが最も興奮するサッカーを見せてくれたと思っている)。F・バレーシが率いファン・バステン、ライカールト、マルディニ、グーリットらの歴史的スターを満載したACミラン。
このACミランあたりから、欧州トップクラブへの好選手の偏在が進み始める。欧州の外国人選手の上限制限が大幅に緩和され、さらに欧州チャンピオンズ「カップ」が「リーグ」と名前を変え欧州各国の金満クラブの試合数が激増したからだ。南米勢が真っ当に戦闘能力で対抗できたのは、名将テレ・サンターナ氏が老トニーニョ・セレーゾ、若きカフー、レイナウド、ジュニーニョらを率い、クライフバルセロナとACミランを連破したあたりまでだった。以降は、欧州勢の圧倒的戦闘能力に、いかに南米勢が抵抗するかと言う大会になる。
80年代の「戦闘能力優位のチームが敢えて守る」と、90年代半ば以降の「戦闘能力が劣るチームが工夫として守る」は、決定的に異なる。能動と受動、戦略と対応の相違。
それでも「拡大化」以降ですら、サンパウロやインテルナショナルが、リバプールやバルセロナを屠るのだからサッカーは面白い。そして、今大会も「真っ当な抵抗そのものが難しいのではないか」と予測されたキトも、実に見事な抵抗を見せた(やや微妙な判定と思えるヴィディッチの退場も大きかったのだが)。いやもちろん、ガンバの抵抗も十分評価に値するものだったが。
しかし、現実的に「世界選抜」風の欧州トップクラブと、自国の優秀な選手に外国人選手を補強したほか地域のトップクラブとの対戦は、あまりに戦闘能力に差があり過ぎるのもまた確か。ただでさえ差があるスターティングメンバだが、試合が進むに連れて交代選手の質量の厚みで、差がどんどん開いてくるのだから。もちろん、マンソの存在そのものは大変な驚きだったが(おそらく他国関係者には遠藤が驚きだったろうが)。
などと考えると、今回の拡大トヨタカップは、結構「過去」を思い出させてくれる大会だった。
決勝戦のユナイテッドの慎重極まりない戦い方。ヴィディッチの退場と言う不運があり後半は一層「慎重」になるのは仕方がない部分もあった。しかし、前半から後方に人数を残し、ほとんど無理をせずに戦うのには驚いた。まあ、C・ロナウドとルーニーとテベスの錯綜する動きだけで結構崩せると言う事もあるだろうが。そして後半1人減った後も、運動量を増やしダイナミックなサッカーで人数をカバーするような無理はせずに、安全重視で戦い、ルーニーの個人技で奪った1点を確実に守って時計を進めた。この「慎重」さには、80年代の南米チームを思い起こしたのだ(全くの余談だが、赤いジャージを来て「マンユ〜」と応援していた人々が、あのような「慎重さ」に終始して1−0でまとめた試合に、不平不満を述べずに歓声を送っていたのは不思議だった、彼らは「物凄く強いスーパーチーム」を見に来たのではないのだろうか、まあ他人事だからどうだっていいけれど)。
また、ユナイテッドがらみを除く試合は、同レベルの戦い。いずれのチームも、いくばくかの弱点を抱えていた。例えば、ガンバ−パチューカ戦。ガンバのCBが裏を取られる弱点がある事は我々はよく知っているが、一方でパチューカのCBも横への揺さぶりに弱点があった。この試合、両チームはそれぞれボール回しの良さ(それも日本風の人数をかけた回しと、メキシコ風の局地戦とサイドチェンジの組み合わせによる回しは、それぞれ個性があって面白い)を活かしながら、敵の弱点を突く攻撃を狙っていた。揺さぶり切って先制したガンバが逃げ切った試合だったが、とても面白い試合だった。いや、この試合の他でも、長所を前面に出し、短所をカバーする駆け引きがとても愉しめる大会だった。これはこれで、やはり80年代のトヨタカップを思い起こした。
結局真剣なタイトルマッチの試合って、多くはこうなるのだろうなと。
拡大トヨタカップが日本を去る。2年間のUAE開催後にまた戻ってくるとの話だが、寂しい話だ。他人事ながらUAEで本当に観客が多数入るのかを含め。
ただし、「世界クラブ選手権」である以上は一ヶ国独占開催が叶わないのも仕方がない事か。これまでが幸せ過ぎたと言う事だろう。最後の大会も素晴らしかったし、過去の思い出を振り返るだけで、十分に愉しめるのだし。
80年代は、日程に苦しむ欧州勢に対し、準備万端で臨むウルグアイやアルゼンチンの南米勢が、技巧レベルで上回りながらも見事な組織戦で守り、エースの一撃で勝つ試合が多かった。また、当時は欧州勢、南米勢ともに、11人満遍なく質の高い選手を抱えているとは限らないチームも多く、長所を活かしながら短所をカバーする監督のチーム戦術も見所だった。こう言った一連の試合は地味ながらも、娯楽として一級品だったのみならず、その駆け引きや戦術的な日本中のサッカー観を高めるものだった。
一方でたまには、能力の高い選手を揃え連動性の高い攻撃サッカーを見せるチームも登場した。上記のジーコフラメンゴ、85年のアルヘンチノス・ジュニアーズとプラティニユベントス(今なお、私はこの試合がトヨタカップ史上最高の試合で、この時のアルヘンチノスが最も興奮するサッカーを見せてくれたと思っている)。F・バレーシが率いファン・バステン、ライカールト、マルディニ、グーリットらの歴史的スターを満載したACミラン。
このACミランあたりから、欧州トップクラブへの好選手の偏在が進み始める。欧州の外国人選手の上限制限が大幅に緩和され、さらに欧州チャンピオンズ「カップ」が「リーグ」と名前を変え欧州各国の金満クラブの試合数が激増したからだ。南米勢が真っ当に戦闘能力で対抗できたのは、名将テレ・サンターナ氏が老トニーニョ・セレーゾ、若きカフー、レイナウド、ジュニーニョらを率い、クライフバルセロナとACミランを連破したあたりまでだった。以降は、欧州勢の圧倒的戦闘能力に、いかに南米勢が抵抗するかと言う大会になる。
80年代の「戦闘能力優位のチームが敢えて守る」と、90年代半ば以降の「戦闘能力が劣るチームが工夫として守る」は、決定的に異なる。能動と受動、戦略と対応の相違。
それでも「拡大化」以降ですら、サンパウロやインテルナショナルが、リバプールやバルセロナを屠るのだからサッカーは面白い。そして、今大会も「真っ当な抵抗そのものが難しいのではないか」と予測されたキトも、実に見事な抵抗を見せた(やや微妙な判定と思えるヴィディッチの退場も大きかったのだが)。いやもちろん、ガンバの抵抗も十分評価に値するものだったが。
しかし、現実的に「世界選抜」風の欧州トップクラブと、自国の優秀な選手に外国人選手を補強したほか地域のトップクラブとの対戦は、あまりに戦闘能力に差があり過ぎるのもまた確か。ただでさえ差があるスターティングメンバだが、試合が進むに連れて交代選手の質量の厚みで、差がどんどん開いてくるのだから。もちろん、マンソの存在そのものは大変な驚きだったが(おそらく他国関係者には遠藤が驚きだったろうが)。
などと考えると、今回の拡大トヨタカップは、結構「過去」を思い出させてくれる大会だった。
決勝戦のユナイテッドの慎重極まりない戦い方。ヴィディッチの退場と言う不運があり後半は一層「慎重」になるのは仕方がない部分もあった。しかし、前半から後方に人数を残し、ほとんど無理をせずに戦うのには驚いた。まあ、C・ロナウドとルーニーとテベスの錯綜する動きだけで結構崩せると言う事もあるだろうが。そして後半1人減った後も、運動量を増やしダイナミックなサッカーで人数をカバーするような無理はせずに、安全重視で戦い、ルーニーの個人技で奪った1点を確実に守って時計を進めた。この「慎重」さには、80年代の南米チームを思い起こしたのだ(全くの余談だが、赤いジャージを来て「マンユ〜」と応援していた人々が、あのような「慎重さ」に終始して1−0でまとめた試合に、不平不満を述べずに歓声を送っていたのは不思議だった、彼らは「物凄く強いスーパーチーム」を見に来たのではないのだろうか、まあ他人事だからどうだっていいけれど)。
また、ユナイテッドがらみを除く試合は、同レベルの戦い。いずれのチームも、いくばくかの弱点を抱えていた。例えば、ガンバ−パチューカ戦。ガンバのCBが裏を取られる弱点がある事は我々はよく知っているが、一方でパチューカのCBも横への揺さぶりに弱点があった。この試合、両チームはそれぞれボール回しの良さ(それも日本風の人数をかけた回しと、メキシコ風の局地戦とサイドチェンジの組み合わせによる回しは、それぞれ個性があって面白い)を活かしながら、敵の弱点を突く攻撃を狙っていた。揺さぶり切って先制したガンバが逃げ切った試合だったが、とても面白い試合だった。いや、この試合の他でも、長所を前面に出し、短所をカバーする駆け引きがとても愉しめる大会だった。これはこれで、やはり80年代のトヨタカップを思い起こした。
結局真剣なタイトルマッチの試合って、多くはこうなるのだろうなと。
拡大トヨタカップが日本を去る。2年間のUAE開催後にまた戻ってくるとの話だが、寂しい話だ。他人事ながらUAEで本当に観客が多数入るのかを含め。
ただし、「世界クラブ選手権」である以上は一ヶ国独占開催が叶わないのも仕方がない事か。これまでが幸せ過ぎたと言う事だろう。最後の大会も素晴らしかったし、過去の思い出を振り返るだけで、十分に愉しめるのだし。
2008年12月21日
遠藤保仁とダミアン・マンソ
拡大トヨタカップ2008を一言で言えば...
世界中のサッカー狂が、遠藤保仁とダミアン・マンソと言う卓越した選手の存在を知る事ができた素晴らしい大会だったのではないか。
共に既に20代後半、と言うか30歳前。遠藤は00年ワールドユースで大活躍、マンソは01年に欧州に1度渡ったらしい。したがい、もっと知られる機会があってもよかった。しかし、共に代表チームに同世代に優れたMFが多かったためか、「世界」で話題になる事は少なかった。
この2人が鮮やかな活躍をした今回の拡大トヨタカップ。世界のサッカー界がいかに奥深いものかを、たっぷりと堪能できる大会であった。世界のサッカー界は西欧のトップ国を中心に動いているのは確かだ。しかし、そうでない地域でも、このような創造的で魅惑的なプレイヤが爪を研いでいるのだ。
30年近くに渡り、我々日本人はクラブの世界選手権を自国で堪能する幸運に恵まれてきた。そして、その幸運はしばらく小休止する(「しばらく」だと思いたいのだけれども)。
その最後の年に、2人の(これまで世界的に全く無名だった)偉大な攻撃創造主が世界を驚かせた試合を堪能できた。幸せな大会だった。そして、そのうちの1人が日本人だったのだ。
こうやって、少しずつ、少しずつ、我々は世界に近づいて行く。トヨタカップが我々の手元に返ってくるかどうかはわからない。しかし、小休止前の2年間でようやく我々は参加できた。昨年のレッズ、今年のガンバ。このような小成功(あるいは小失敗)を執拗に継続する事が、「ブラジル、アルゼンチン越え」のための方法論なのだと、明神がC・ロナウドに完敗した瞬間を思い出しつつ、再確信。
世界中のサッカー狂が、遠藤保仁とダミアン・マンソと言う卓越した選手の存在を知る事ができた素晴らしい大会だったのではないか。
共に既に20代後半、と言うか30歳前。遠藤は00年ワールドユースで大活躍、マンソは01年に欧州に1度渡ったらしい。したがい、もっと知られる機会があってもよかった。しかし、共に代表チームに同世代に優れたMFが多かったためか、「世界」で話題になる事は少なかった。
この2人が鮮やかな活躍をした今回の拡大トヨタカップ。世界のサッカー界がいかに奥深いものかを、たっぷりと堪能できる大会であった。世界のサッカー界は西欧のトップ国を中心に動いているのは確かだ。しかし、そうでない地域でも、このような創造的で魅惑的なプレイヤが爪を研いでいるのだ。
30年近くに渡り、我々日本人はクラブの世界選手権を自国で堪能する幸運に恵まれてきた。そして、その幸運はしばらく小休止する(「しばらく」だと思いたいのだけれども)。
その最後の年に、2人の(これまで世界的に全く無名だった)偉大な攻撃創造主が世界を驚かせた試合を堪能できた。幸せな大会だった。そして、そのうちの1人が日本人だったのだ。
こうやって、少しずつ、少しずつ、我々は世界に近づいて行く。トヨタカップが我々の手元に返ってくるかどうかはわからない。しかし、小休止前の2年間でようやく我々は参加できた。昨年のレッズ、今年のガンバ。このような小成功(あるいは小失敗)を執拗に継続する事が、「ブラジル、アルゼンチン越え」のための方法論なのだと、明神がC・ロナウドに完敗した瞬間を思い出しつつ、再確信。
2008年12月20日
明神とC・ロナウド、播戸とルーニー
驚いたのはガンバMFの構成。遠藤をボランチに明神と並べ、橋本とルーカスを攻撃的MFと両翼に開かせた。二川と佐々木の離脱と言う苦しい状況で、遠藤の個性と能力を最大限に活かす事に活路を見出そうとしたのだろう。そして、播戸と山崎の2トップは双方の動きをよく意識した連動で前線にスペースを作ろうとする。
そして、立ち上がりユナイテッドの守備が落ち着かない時点でガンバは仕掛ける。安田のクロスを2トップが巧く受けて明神がミドルシュート。続いて安田が見事なドリブルでG・ネヴィルを抜いて思い切りよいシュート(枠に飛ばせ、お前は代表選手だろうが)。加地の速いセンタリングに2トップが絡み、流れたところをルーカスがロブで狙うも枠を捉えきれず。そして、最大の決定機、ユナイテッドのFK崩れから逆襲、遠藤の完璧なパスから播戸が抜け出すも、ファン・デル・サールに止められる。そして、ガンバが「勝とうとする」ならば、ここまでで先制しなければならなかった。
以降はガンバが中盤でボールをキープしても、ほとんど突破は叶わなくなった。それでも、橋本の飛び出し(動き出しが実に的確)あるいは明神の長駆に遠藤なりルーカスが展開すれば、相応に攻め込む事はできていた。しかし、この序盤の攻防で、G・ネヴィルは安田のまたぎを、エヴラは加地の加速タイミングを、ファーディナンドとヴィディッチは山崎と播戸の横の連動を、それぞれほとんど把握してしまった。格の違いと言ってしまってはそれまでだが、よほどの事がない限りガンバが得点しそうな雰囲気はなくなってしまった。ユナイテッドは以降、落ち着いて様子を見ながら丁寧に時計を進める。
ガンバのサッカーの特長は、遠藤を軸にしたボールキープにあり、両サイドバックを加えた8人の選手が変幻自在の攻撃を見せる事にある。今期はバレーの離脱により、最後のフィニッシュに少々苦労した面はあったものの、中盤で優位に立つのがこのチームの考え方。そして、ACLでは敵地の試合を含めいずれの試合でも、その優位性で栄冠を掴んだ。
そう言う意味では、ユナイテッドはガンバが、ここ数年で初めて対する「中盤で優位に立てない」チームだった。またガンバのCBは必ずしも「強く」ない。山口も中澤もよい選手ではあるが、山口は単純な強さや速さに、中澤は身体の入れ方や技巧に優れた選手への対応に、それぞれ課題がある。とすれば、ガンバがユナイテッドに「勝とうとする」ならば引いて最終ラインで粘るやり方は適切ではない。マイボールになれば中盤で素早くつなぎ攻め切る、攻め切れずとも悪い形でボールを奪われない。それにより、ユナイテッドによい形で攻め込まれる時間帯を最小限にする。そして、ボールを奪われた直後に可能な限り早く切替え、前線の選手はプレスをかけ、後方の選手は位置取りを修正する。そして、明神と遠藤の読みのよさを軸に速攻を止める。そしてボールを奪ったら全員で押し上げて、再びキープして振り出しに戻る。この攻守を知力と体力の限りを尽くしてくり返す事が、ガンバが「勝とうとする」最も適切な手段だった(そして、おそらく日本代表がワールドカップで列強に勝利するためにも)。そして、西野氏はそれを狙った布陣を敷き、選手達も忠実に西野作戦を遂行した。
しかし、ファーディナンド、エヴラ、アンデルソンあたりのロングバスの早さと長さと精度には恐れ入る。僅かにプレスがずれると、逆サイドに開いているC・ロナウドなりナニなりにピタリ。加地と安田はテベスとギグスが中央にいるだけにある程度の絞りは必要ゆえ、この両翼に密着はできないため、この攻撃だけはどうしようもない。しかし、加地はナニに対して我慢を重ねた丁寧な対応で何とか破綻をきたさない。安田は安田で、勝負どころでC・ロナウドに思い切りよいタックルを仕掛け、大きな切り返しでかわされる事で山口にカバーリングする時間を稼いだ。これはこれで、中途半端に抜かれるよりは格段によい対応だった。
けれども前半CKから2失点。
1点目は山口がヴィディッチに完全に競り負けた。ヴィディッチの完璧な位置取り、ジャンプのタイミング、ギグスの完璧な精度のボール。守備を見事に引き締めていた山口、決して空中戦に弱いとは言えない山口が完敗したのだから、もうどうしようもない。正にガンバとユナイテッドの差そのものが出た1点目ではないか。
2点目は明神がC・ロナウドに駆け引きでやられ、競りかける事もできなかった。見事な陽動動作、ギグスの完璧な精度のボール。中盤を見事に引き締めていた明神、執拗に敵に絡む能力に関しては日本屈指の明神が完敗したのだから、もうどうしようもない。正にガンバとユナイテッドの差、いや日本とワールドクラスの差そのものが出た2点目ではないか。
もうどうしようもない、どうしようもないのだけれども、このどうしようもない差を何とかしないと、真っ当な抵抗はできない事になる。この西野氏の痛恨は、小柄で俊敏な選手を軸に戦おうと言う日本代表の岡田監督にも同じ問題として降りかかってくるのだろうか。
現実的に前半で2点差をつけられてしまっては、「勝とうとする」機会は極めて小さなものになった。いよいよガンバは遠藤を軸に前に出るしかない。たださすがにユナイテッドも、2点差と言う事で無理をしなくなった。試合は微妙な均衡状態に陥る。
ファーガソン氏は、スコールズに代えフレッチャー、負傷したヴィディッチに代えエヴァンス、そしてテベスに代えルーニーをそれぞれ起用。なんとまあ豪華絢爛なベンチな事だ。ただでさえ戦闘能力差が格段にあるのだが選手層の厚みも全く違うのだな。西野氏は終盤に寺田を起用するくらいのカードしかなかったのに。
ルーニーが起用された直後、橋本の見事な走り出しと遠藤の見事なパスでガンバは3対2を作り出し、橋本→山崎で見事に1点差に追いつく。粘り強くボールをつないでいたが故に作れた見事な攻撃だった。
これでユナイテッドにギアが入った。3点目、フレッチャーがガンバCBの裏にボールを通し、ルーニーが中澤を振り切って一発。あのようなボールがガンバの最大の弱点なのだが、どうやらユナイテッドはしっかりと調査をしていたようだ。4点目、これまでほとんど前進していなかった(加地の突破を警戒していたのかもしれない)エヴラが前進するや、パスコースが増えたユナイテッド、加えてこれまた自重してされていた2.5列目(フレッチャー)の前進。5点目、ルーニーの完璧なトラップ、前半の決定機に得意の右足に持ち出せなかった播戸との差。
ちょうど1点を奪った直前にルーニーが交代出場していた事が、ユナイテッドのギアシフトとピタリ合ってしまった(ルーニーの交代そのものがユナイテッドの守備の隙を作ったとも理解可能だが)。中澤もせめてユナイテッドにギアが入る前に1度ルーニーと対応していればと思うけれど。
遠藤のPKに対して最後まで動かなかったファン・デル・サール。3点目のフレッチャーの狙い。明らかにユナイテッドはガンバをしっかりと調べていた。
ベンチで待機する選手を含めた圧倒的な戦闘能力差、その差はC・ロナウドと明神の競り合い、ルーニーと播戸の勝負どころのトラップ能力、それぞれに顕著に見出された。それに加え、しっかりとガンバを調べていた準備。「勝とうとする」事がほとんど難しい試合だったのだ。
それでも西野氏も山口とその仲間達も決然として戦った。4点目を奪われた時にオーロラビジョンに大映しになった悔しそうな西野氏の表情、痛いほど気持ちが伝わってくるいい表情だった。
だったのだけれども...
そして、立ち上がりユナイテッドの守備が落ち着かない時点でガンバは仕掛ける。安田のクロスを2トップが巧く受けて明神がミドルシュート。続いて安田が見事なドリブルでG・ネヴィルを抜いて思い切りよいシュート(枠に飛ばせ、お前は代表選手だろうが)。加地の速いセンタリングに2トップが絡み、流れたところをルーカスがロブで狙うも枠を捉えきれず。そして、最大の決定機、ユナイテッドのFK崩れから逆襲、遠藤の完璧なパスから播戸が抜け出すも、ファン・デル・サールに止められる。そして、ガンバが「勝とうとする」ならば、ここまでで先制しなければならなかった。
以降はガンバが中盤でボールをキープしても、ほとんど突破は叶わなくなった。それでも、橋本の飛び出し(動き出しが実に的確)あるいは明神の長駆に遠藤なりルーカスが展開すれば、相応に攻め込む事はできていた。しかし、この序盤の攻防で、G・ネヴィルは安田のまたぎを、エヴラは加地の加速タイミングを、ファーディナンドとヴィディッチは山崎と播戸の横の連動を、それぞれほとんど把握してしまった。格の違いと言ってしまってはそれまでだが、よほどの事がない限りガンバが得点しそうな雰囲気はなくなってしまった。ユナイテッドは以降、落ち着いて様子を見ながら丁寧に時計を進める。
ガンバのサッカーの特長は、遠藤を軸にしたボールキープにあり、両サイドバックを加えた8人の選手が変幻自在の攻撃を見せる事にある。今期はバレーの離脱により、最後のフィニッシュに少々苦労した面はあったものの、中盤で優位に立つのがこのチームの考え方。そして、ACLでは敵地の試合を含めいずれの試合でも、その優位性で栄冠を掴んだ。
そう言う意味では、ユナイテッドはガンバが、ここ数年で初めて対する「中盤で優位に立てない」チームだった。またガンバのCBは必ずしも「強く」ない。山口も中澤もよい選手ではあるが、山口は単純な強さや速さに、中澤は身体の入れ方や技巧に優れた選手への対応に、それぞれ課題がある。とすれば、ガンバがユナイテッドに「勝とうとする」ならば引いて最終ラインで粘るやり方は適切ではない。マイボールになれば中盤で素早くつなぎ攻め切る、攻め切れずとも悪い形でボールを奪われない。それにより、ユナイテッドによい形で攻め込まれる時間帯を最小限にする。そして、ボールを奪われた直後に可能な限り早く切替え、前線の選手はプレスをかけ、後方の選手は位置取りを修正する。そして、明神と遠藤の読みのよさを軸に速攻を止める。そしてボールを奪ったら全員で押し上げて、再びキープして振り出しに戻る。この攻守を知力と体力の限りを尽くしてくり返す事が、ガンバが「勝とうとする」最も適切な手段だった(そして、おそらく日本代表がワールドカップで列強に勝利するためにも)。そして、西野氏はそれを狙った布陣を敷き、選手達も忠実に西野作戦を遂行した。
しかし、ファーディナンド、エヴラ、アンデルソンあたりのロングバスの早さと長さと精度には恐れ入る。僅かにプレスがずれると、逆サイドに開いているC・ロナウドなりナニなりにピタリ。加地と安田はテベスとギグスが中央にいるだけにある程度の絞りは必要ゆえ、この両翼に密着はできないため、この攻撃だけはどうしようもない。しかし、加地はナニに対して我慢を重ねた丁寧な対応で何とか破綻をきたさない。安田は安田で、勝負どころでC・ロナウドに思い切りよいタックルを仕掛け、大きな切り返しでかわされる事で山口にカバーリングする時間を稼いだ。これはこれで、中途半端に抜かれるよりは格段によい対応だった。
けれども前半CKから2失点。
1点目は山口がヴィディッチに完全に競り負けた。ヴィディッチの完璧な位置取り、ジャンプのタイミング、ギグスの完璧な精度のボール。守備を見事に引き締めていた山口、決して空中戦に弱いとは言えない山口が完敗したのだから、もうどうしようもない。正にガンバとユナイテッドの差そのものが出た1点目ではないか。
2点目は明神がC・ロナウドに駆け引きでやられ、競りかける事もできなかった。見事な陽動動作、ギグスの完璧な精度のボール。中盤を見事に引き締めていた明神、執拗に敵に絡む能力に関しては日本屈指の明神が完敗したのだから、もうどうしようもない。正にガンバとユナイテッドの差、いや日本とワールドクラスの差そのものが出た2点目ではないか。
もうどうしようもない、どうしようもないのだけれども、このどうしようもない差を何とかしないと、真っ当な抵抗はできない事になる。この西野氏の痛恨は、小柄で俊敏な選手を軸に戦おうと言う日本代表の岡田監督にも同じ問題として降りかかってくるのだろうか。
現実的に前半で2点差をつけられてしまっては、「勝とうとする」機会は極めて小さなものになった。いよいよガンバは遠藤を軸に前に出るしかない。たださすがにユナイテッドも、2点差と言う事で無理をしなくなった。試合は微妙な均衡状態に陥る。
ファーガソン氏は、スコールズに代えフレッチャー、負傷したヴィディッチに代えエヴァンス、そしてテベスに代えルーニーをそれぞれ起用。なんとまあ豪華絢爛なベンチな事だ。ただでさえ戦闘能力差が格段にあるのだが選手層の厚みも全く違うのだな。西野氏は終盤に寺田を起用するくらいのカードしかなかったのに。
ルーニーが起用された直後、橋本の見事な走り出しと遠藤の見事なパスでガンバは3対2を作り出し、橋本→山崎で見事に1点差に追いつく。粘り強くボールをつないでいたが故に作れた見事な攻撃だった。
これでユナイテッドにギアが入った。3点目、フレッチャーがガンバCBの裏にボールを通し、ルーニーが中澤を振り切って一発。あのようなボールがガンバの最大の弱点なのだが、どうやらユナイテッドはしっかりと調査をしていたようだ。4点目、これまでほとんど前進していなかった(加地の突破を警戒していたのかもしれない)エヴラが前進するや、パスコースが増えたユナイテッド、加えてこれまた自重してされていた2.5列目(フレッチャー)の前進。5点目、ルーニーの完璧なトラップ、前半の決定機に得意の右足に持ち出せなかった播戸との差。
ちょうど1点を奪った直前にルーニーが交代出場していた事が、ユナイテッドのギアシフトとピタリ合ってしまった(ルーニーの交代そのものがユナイテッドの守備の隙を作ったとも理解可能だが)。中澤もせめてユナイテッドにギアが入る前に1度ルーニーと対応していればと思うけれど。
遠藤のPKに対して最後まで動かなかったファン・デル・サール。3点目のフレッチャーの狙い。明らかにユナイテッドはガンバをしっかりと調べていた。
ベンチで待機する選手を含めた圧倒的な戦闘能力差、その差はC・ロナウドと明神の競り合い、ルーニーと播戸の勝負どころのトラップ能力、それぞれに顕著に見出された。それに加え、しっかりとガンバを調べていた準備。「勝とうとする」事がほとんど難しい試合だったのだ。
それでも西野氏も山口とその仲間達も決然として戦った。4点目を奪われた時にオーロラビジョンに大映しになった悔しそうな西野氏の表情、痛いほど気持ちが伝わってくるいい表情だった。
だったのだけれども...
2008年11月12日
当たり前だがオランダから学べる事が大きい事を喜ぶ
スキポール空港から、車は南に向かう。隣で運転してくれている中田徹氏との付き合いは長い。今を去る事23年前、日本サッカー狂会ワールドカップ香港戦応援バスで隣同士になって以来だ。
あのバスは2つの意味で歴史的な存在。日本代表チームを応援するために貸し切りバスが出たのはおそらく史上初めての事だったろう。そして、お盆の大渋滞に巻き込まれ、神戸ユニバー競技場に着いた時は既にキックオフ15分後、そしてその15分の間に木村和司と原博実の得点で日本が2−0でリードしていたのだ。入場して電光掲示板を眺めた時の複雑かつ間抜けた気持ちは今でも忘れられない。
当時、彼は大学1年、私は社会人1年で、共に「若者」と言える年齢だったが、あれから20年以上経ち2人ともすっかりオジサンとなってしまった。彼が欧州に定住した後は、先方の帰国、当方の渡欧など、会えそうな機会が幾度かあったが叶わず、今回の再会は実に11年ぶり、フランスワールドカップ予選以来の事となる。
そして23年前同様、隣同士でサッカー談義に花を咲かせながら向かったのは、アムステルダムから100kmちょっと南方のティルブルグ市はヴィレムUスタジアムだった。
23年前と異なり、車は無事キックオフ1時間前に到着。三ツ沢競技場を一回り大きくして屋根を完備したスタジアムはまだガラガラ。既に三々五々集まりつつある地元のサポータは、スタジアムの建屋の一部に作られたパブでビールやコーヒーを愉しみながら談笑している。我々もパブに入り込み、テレビ映像でNEC対PSVの試合を愉しむ事にした。そして、この試合が終了すると、キックオフの20時45分まではあと約15分。さすがにこの時間となると、会場は大入り。スタンドは8割方埋まっていた。
まず驚いたのは、屋根に強力そうなヒータが付いており、さらにスタンドの作りがうまいためか風がほとんど当たらない事。11月上旬と言う事で、結構肌寒い気候だったのだが、それなりに快適に観戦が可能だった。これがさらに寒い季節になってくると何とも言えないが、このようなインフラの工夫で厳寒期の試合に対応するのは1つのやり方である事が勉強できた。少なくとも関東圏で11月、12月あたりにナイトゲームをしようとするならば、最低このようなインフラが欲しいものだ。ちなみに、本件と昨今国内で末期的症状の暴言を繰り返している人との関連については帰国してから述べたい。
さて選手入場。ゴール裏から応援が始まり、それがスタンド中に広がっていくのは、いずこの国でも同じ事。ただし、バックスタンドの方々を見る限り、私と同年輩の中年以降の人が多いように思えたが、熱狂振りは中々。どうやら、ほとんどの人々が常連のようだ。実際中田氏によると、特にオランダの場合は、多くのクラブの観客はシーズンチケット保有の固定客との事、パブと言い、ヒーターと言い、しっかりとインフラを揃え、熱狂的な固定客を抑えるのが、こちらの考え方のようだ。
ちなみに敵地のサポータも少数来ていたが、何と入り口から完全隔離。ちょうど幾人かが入場する場面に遭遇したが、厳重な囲い(非常に細かな金網ごし)に、地元サポータを罵る殺伐とした野次を飛ばしていたし、試合中は発炎筒が投げられたりもした。とても快適だったこの日のスタジアムライフで、僅かに感じたあまりに荒廃した雰囲気の対比の大きさ。Jリーグをこうしてしまっては絶対にいけない。
ヴィレムUの対戦相手はローダJC。典型的なオランダリーグ中下位の対決だと言う。選手の粒と言う意味では、ローダの方が一枚上との事だが、今期は下位に沈み9節終わったところで18チーム中17位、一方ホームのヴィレムUは11位とそこそこの出来らしい。
ローダとしてはこの試合に捲土重来を考えていたのか、敵地ながら激しいプレスをかけ序盤から攻勢に出る。ヴィレムUはいわゆる4−1−3−2の形なのだが、オランダ特有のMF同士がマンマークで付く形のため、特に右サイドで常に劣勢になり完全に押し込まれ、幾度か決定機を許す。「このままホームチームが苦戦すると、周囲も重苦しくなるのだろうか」などと考え始めた前半半ば、試合が動く。ヴィレムUのエースストライカのデムージュが中央ペナルティエリア僅か外でクサビを受けたところで、ローダDFのサエスが軽率なファウルでFKを提供。その直接FKを、ヴィレムUの中盤のリーダボタハが左足で直接決めて先制したのだ。
実はこのFKを獲得した場面で、ヴィレムUは守備が機能しない右サイドMFを交代させていた。明らかに守備を意識した狙いで交代カードを前半半ばに切る事を余儀なくされていた事になる。ところがこの交代劇と同時に、やや幸運に掴んだセットプレイから先制できたのだから、サッカーは面白い。
ともあれ、これ以降はヴィレムUペースとなった。交代出場で入ったマシセンがカゴとドイスボランチを組み、変則の4−2−2.5−1.5に切替え守備が安定。以降は、デムージュの強引なプレイを軸によくパスが回るようになり、完全に攻勢を取る。後半に入っても、ヴィレムUペースは継続、幾度となく決定機を掴む。一方のローダも、局面により4DFと3DFを切替ながら抵抗するが、うまくいかない。
後半も半ばに入り、そろそろ追加点が入らないとイヤな雰囲気になるのではないかと思われた時間帯、ヴィレムUは変化あふれるドリブルが武器のスーパーサブのジラーを投入。狙いはズバリ当たり、右から左にうまくボールを回し、ジラーが余裕を持った状態からゴールエリア、ゴールライン沿いまで切れ込んで、中央に低いボールを入れて、全くフリーとなったボタハが余裕を持ってこの日の2点目を決めた。
以降もヴィレムUペースが続くが、40分過ぎにローダの交代で投入されたFWのユル・マトンドが、ペナルティエリア外から自棄気味?に打った無回転系のシュートが見事に枠を捉え、1点差。終盤、ローダはパワープレイから、ヴィレムUGKアエルツを脅かす場面を作ったものの、そのまま試合終了となった。何か、現状の順位がそのまま出た印象の試合。1万数千の地元サポータの歓喜を背に競技場を去る事となった。
大昔にテレビでオランダの下位チームの映像を見た際には、割と長いボールで勝負するチームが多かった印象があったのだが、どうしてどうして。オランダ代表チーム同様、両軍とも丁寧にボールをつなぎ組み立てるサッカーだった。
Jリーグと比較した印象としては、やはりこちらに一日の長があるなと思った事としては
(1)守備ラインに相当きついプレスがかかっても、センタバックが粘って、あまり長いボールに逃げない
(2)スライディングタックルの深さは相当
(3)敵陣タッチ沿いに巧くボールを持ち出すと、(それほどドリブルが得意な選手でなくても)取りあえずは仕掛ける
(4)もし仕掛け損ねても、DFとの間に身体をこじ入れ容易にはボールを奪取されないように工夫する
などが見受けられた。
一方で、守備ラインの裏を狙うスルーパスを出せる選手や、鋭角に鋭いクロスを蹴る事のできる選手などは見受けられなかった。J1のチームには、必ずこのような変化技を持った選手がいるものなのだが(もちろんこれらの仕事をブラジル人に頼る場合も多いが、日本選手にも変化技を使う選手は結構いるものだ)。これは、オランダリーグではEU以外の選手を雇用する場合は30万ユーロ以上の年俸を払うと言うルールがあるので容易に南米から選手を連れて来られない事、海外を含めたトップクラブにオランダ産の格段な選手が取られてしまうなどの事情があるのだろうが。
もう1つ。中盤をそれぞれマンツーマン気味に付く事を重視するためか、時々中盤のバランスが崩れ、唐突にフリーの選手ができて守備に穴が空くのには驚いた。これは(J2ではたまに見かけますが)今日のJ1では滅多に見かけない凡ミス。もっとも、勝ちに行かなければならない時にまでバランスを考えてしまう事が多い日本のトップレベル(に限らないような気もするが)と比較して、どちらがよいかは断定しかねるが。
もちろん試合そのものをタップリと愉しんだのだが、加えて「この名門国から学べる事が無数にある」と言う当たり前の事を体感できた充実した一日だった。
あのバスは2つの意味で歴史的な存在。日本代表チームを応援するために貸し切りバスが出たのはおそらく史上初めての事だったろう。そして、お盆の大渋滞に巻き込まれ、神戸ユニバー競技場に着いた時は既にキックオフ15分後、そしてその15分の間に木村和司と原博実の得点で日本が2−0でリードしていたのだ。入場して電光掲示板を眺めた時の複雑かつ間抜けた気持ちは今でも忘れられない。
当時、彼は大学1年、私は社会人1年で、共に「若者」と言える年齢だったが、あれから20年以上経ち2人ともすっかりオジサンとなってしまった。彼が欧州に定住した後は、先方の帰国、当方の渡欧など、会えそうな機会が幾度かあったが叶わず、今回の再会は実に11年ぶり、フランスワールドカップ予選以来の事となる。
そして23年前同様、隣同士でサッカー談義に花を咲かせながら向かったのは、アムステルダムから100kmちょっと南方のティルブルグ市はヴィレムUスタジアムだった。
23年前と異なり、車は無事キックオフ1時間前に到着。三ツ沢競技場を一回り大きくして屋根を完備したスタジアムはまだガラガラ。既に三々五々集まりつつある地元のサポータは、スタジアムの建屋の一部に作られたパブでビールやコーヒーを愉しみながら談笑している。我々もパブに入り込み、テレビ映像でNEC対PSVの試合を愉しむ事にした。そして、この試合が終了すると、キックオフの20時45分まではあと約15分。さすがにこの時間となると、会場は大入り。スタンドは8割方埋まっていた。
まず驚いたのは、屋根に強力そうなヒータが付いており、さらにスタンドの作りがうまいためか風がほとんど当たらない事。11月上旬と言う事で、結構肌寒い気候だったのだが、それなりに快適に観戦が可能だった。これがさらに寒い季節になってくると何とも言えないが、このようなインフラの工夫で厳寒期の試合に対応するのは1つのやり方である事が勉強できた。少なくとも関東圏で11月、12月あたりにナイトゲームをしようとするならば、最低このようなインフラが欲しいものだ。ちなみに、本件と昨今国内で末期的症状の暴言を繰り返している人との関連については帰国してから述べたい。
さて選手入場。ゴール裏から応援が始まり、それがスタンド中に広がっていくのは、いずこの国でも同じ事。ただし、バックスタンドの方々を見る限り、私と同年輩の中年以降の人が多いように思えたが、熱狂振りは中々。どうやら、ほとんどの人々が常連のようだ。実際中田氏によると、特にオランダの場合は、多くのクラブの観客はシーズンチケット保有の固定客との事、パブと言い、ヒーターと言い、しっかりとインフラを揃え、熱狂的な固定客を抑えるのが、こちらの考え方のようだ。
ちなみに敵地のサポータも少数来ていたが、何と入り口から完全隔離。ちょうど幾人かが入場する場面に遭遇したが、厳重な囲い(非常に細かな金網ごし)に、地元サポータを罵る殺伐とした野次を飛ばしていたし、試合中は発炎筒が投げられたりもした。とても快適だったこの日のスタジアムライフで、僅かに感じたあまりに荒廃した雰囲気の対比の大きさ。Jリーグをこうしてしまっては絶対にいけない。
ヴィレムUの対戦相手はローダJC。典型的なオランダリーグ中下位の対決だと言う。選手の粒と言う意味では、ローダの方が一枚上との事だが、今期は下位に沈み9節終わったところで18チーム中17位、一方ホームのヴィレムUは11位とそこそこの出来らしい。
ローダとしてはこの試合に捲土重来を考えていたのか、敵地ながら激しいプレスをかけ序盤から攻勢に出る。ヴィレムUはいわゆる4−1−3−2の形なのだが、オランダ特有のMF同士がマンマークで付く形のため、特に右サイドで常に劣勢になり完全に押し込まれ、幾度か決定機を許す。「このままホームチームが苦戦すると、周囲も重苦しくなるのだろうか」などと考え始めた前半半ば、試合が動く。ヴィレムUのエースストライカのデムージュが中央ペナルティエリア僅か外でクサビを受けたところで、ローダDFのサエスが軽率なファウルでFKを提供。その直接FKを、ヴィレムUの中盤のリーダボタハが左足で直接決めて先制したのだ。
実はこのFKを獲得した場面で、ヴィレムUは守備が機能しない右サイドMFを交代させていた。明らかに守備を意識した狙いで交代カードを前半半ばに切る事を余儀なくされていた事になる。ところがこの交代劇と同時に、やや幸運に掴んだセットプレイから先制できたのだから、サッカーは面白い。
ともあれ、これ以降はヴィレムUペースとなった。交代出場で入ったマシセンがカゴとドイスボランチを組み、変則の4−2−2.5−1.5に切替え守備が安定。以降は、デムージュの強引なプレイを軸によくパスが回るようになり、完全に攻勢を取る。後半に入っても、ヴィレムUペースは継続、幾度となく決定機を掴む。一方のローダも、局面により4DFと3DFを切替ながら抵抗するが、うまくいかない。
後半も半ばに入り、そろそろ追加点が入らないとイヤな雰囲気になるのではないかと思われた時間帯、ヴィレムUは変化あふれるドリブルが武器のスーパーサブのジラーを投入。狙いはズバリ当たり、右から左にうまくボールを回し、ジラーが余裕を持った状態からゴールエリア、ゴールライン沿いまで切れ込んで、中央に低いボールを入れて、全くフリーとなったボタハが余裕を持ってこの日の2点目を決めた。
以降もヴィレムUペースが続くが、40分過ぎにローダの交代で投入されたFWのユル・マトンドが、ペナルティエリア外から自棄気味?に打った無回転系のシュートが見事に枠を捉え、1点差。終盤、ローダはパワープレイから、ヴィレムUGKアエルツを脅かす場面を作ったものの、そのまま試合終了となった。何か、現状の順位がそのまま出た印象の試合。1万数千の地元サポータの歓喜を背に競技場を去る事となった。
大昔にテレビでオランダの下位チームの映像を見た際には、割と長いボールで勝負するチームが多かった印象があったのだが、どうしてどうして。オランダ代表チーム同様、両軍とも丁寧にボールをつなぎ組み立てるサッカーだった。
Jリーグと比較した印象としては、やはりこちらに一日の長があるなと思った事としては
(1)守備ラインに相当きついプレスがかかっても、センタバックが粘って、あまり長いボールに逃げない
(2)スライディングタックルの深さは相当
(3)敵陣タッチ沿いに巧くボールを持ち出すと、(それほどドリブルが得意な選手でなくても)取りあえずは仕掛ける
(4)もし仕掛け損ねても、DFとの間に身体をこじ入れ容易にはボールを奪取されないように工夫する
などが見受けられた。
一方で、守備ラインの裏を狙うスルーパスを出せる選手や、鋭角に鋭いクロスを蹴る事のできる選手などは見受けられなかった。J1のチームには、必ずこのような変化技を持った選手がいるものなのだが(もちろんこれらの仕事をブラジル人に頼る場合も多いが、日本選手にも変化技を使う選手は結構いるものだ)。これは、オランダリーグではEU以外の選手を雇用する場合は30万ユーロ以上の年俸を払うと言うルールがあるので容易に南米から選手を連れて来られない事、海外を含めたトップクラブにオランダ産の格段な選手が取られてしまうなどの事情があるのだろうが。
もう1つ。中盤をそれぞれマンツーマン気味に付く事を重視するためか、時々中盤のバランスが崩れ、唐突にフリーの選手ができて守備に穴が空くのには驚いた。これは(J2ではたまに見かけますが)今日のJ1では滅多に見かけない凡ミス。もっとも、勝ちに行かなければならない時にまでバランスを考えてしまう事が多い日本のトップレベル(に限らないような気もするが)と比較して、どちらがよいかは断定しかねるが。
もちろん試合そのものをタップリと愉しんだのだが、加えて「この名門国から学べる事が無数にある」と言う当たり前の事を体感できた充実した一日だった。








